2023年02月17日

attac気候カフェ:問題だらけの気候変動対策計画〜政府のGX方針を検証・批判する

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attac気候カフェ
問題だらけの気候変動対策計画
〜政府のGX方針を検証・批判する〜

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日時:225日(土)18時開場 18時30分開始
場所:文京区民センター 3階 3B会議室
  (最寄駅 都営三田線「春日」駅 東京メトロ「後楽園」駅)

講 師:深草亜悠美さん(国際環境NGO FoE Japan)
参加費:500円
   
*オンライン参加あり。希望される方は集会前日の2/24までに
  attac-jp@jca.apc.org までお申し込み連絡をお願いいたします


 昨年岸田政権が、日本の地球温暖化対策、CO2対策をかかげ発表したGX(グリーントランスフォーメーション)。

 こんご10年強のあいだに、150兆円をかけて脱炭素、温暖化ストップを目指すということですが、その内容は原発使用延命、「革新炉」開発、排出CO2回収貯留、水素・アンモニア利用など、実際に化石燃料依存から脱却し温暖化を止めるには、あまりに問題だらけ、現実性にも欠けた、むしろ対策先送りとしかいいようのないものです。

 さらに政府はCO2を大量に排出する石炭使用もいまだ続けるなど、世界の流れに逆行する方向さえあらためようとしていません。
こうした、日本の現状の問題点を具体的に指摘し批判していく学習会をひらき、世論、行動にむすびつけていくこころみを、ささやかながら、はじめていきたいと思います。

 まず第一弾としてFoEの深草亜悠美さんを講師にお招きし、お話を聞くあつまりを今月2月25日(土)夜ひらきます。深草さんは、昨年暮れのエジプトCOP27に参加されているので、その報告もお願いしたいとおもっています。

 のこされた時間も少ない地球環境の未来を憂慮し、問題意識を持たれているみなさまのご参加をお待ちしております。

20230225気候カフェチラシ.pdf
※プリントアウトの際、A4用紙で一枚あたりの2ページで印刷すると手のひらサイズのフライヤーになります。

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2018年01月11日

COP23に向けたVia Campesinaの呼びかけ

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以下は、COP23の対抗アクションで行われた小規模農家の世界組織、Via Campesina(ビア・カンペシーナ、農民の道)の集会で配布された声明を、昨日の反核WSF&COP23参加報告会用に根岸恵子さんが翻訳してくれました。


Via CampesinaのCOP23に向けての声明
気候危機への解決は、食料とエネルギー主権のための小規模農家の闘いの中にある

行動への呼びかけ


母なる大地の劇的な温暖化と空前の天候異常と海面上昇による人的被害について、11月6日から17日までドイツのボンにおいて気候変動のための会議が開催されます。

貪欲な利益を貪り続ける資本主義のシステムは、現在の気候危機に対処することができません。パリ協定での気温上昇を2度に抑えるという不十分な提言でさえ、宙ぶらりんのまま、トランプ大統領のアメリカはCOPを離脱してしまいました。

私たちは今年、強大なスケールで起きた気候変動の衝撃を目にしました。ハリケーン(ハーヴェイ、イルマ、マリアなど)、洪水(インド、ネパール、バングラディシュ、シエラレオネなど)、嵐、豪雨、熱風などなど。数千万の人が家を失い、殺され、いつくかの島は島ごと消えてしまったのです。多くの場合、人々は生きるのに必要な術を失ったのです。最も影響を受けたのは、小規模農家、貧困者、地域労働者、先住民、漁民でした。

私たちはこの気候危機の原因を知っています。世界的な食料産業のシステムは、50%以上の温室効果ガスの排出の責任があります。農薬、有害物質、化石燃料エネルギーの使用を通して、また、プランテーション、鉱山、材木の量産は、貨物運搬の土地使用、森林伐採を通して。危機の加害者は、カネの力に物を言わせて、虚偽の解決策を押し付け、宣伝しています。

例えば、“温暖化防止に貢献する”農業、REDDとREDD+、ブルーカーボン【注】、そして、自然とそのサービスの経済的利益を追求する、他のすべてのグリーン経済の計画。

多国籍企業は気候への交渉を、人民をないがしろにして、経済と財政の好機として利用し、私たちの権利を損なっています。

COP23が近づくにつれ、私たちは公共政策のために闘う重要性を再確認しています。農業学の促進と支援、エネルギーシステムの地域でのコントロール、企業が天然資源を略奪することを推奨するような間違ったエネルギー政策や化石燃料から脱却し、変革のためにこうした政策を共同で行うということです。

私たちの小規模農業は、私たちを養ってくれるマザー・アースと私たちの知恵を使って、土とともに有機物質、生物多様性を保護し回復させます。私たちは農環境を選ぶためにアグリビジネスの試みを拒否します。そして、小規模農民のための農環境を守り進めていくことにかかわっていきます!

Via Campesina[農民の道]、私たちの土地、私たちの知識、私たちの種、私たちの権利のために、議論はいらない。現在そして将来、気候犯罪を引き起こすこのシステムに対して、私たちは総動員で力強く抵抗していきましょう。私たちは自由貿易協定、悲惨な石油、ガス、石炭などの鉱山プロジェクトと、それに匹敵するすべての排他的な巨大ダムや高速道路、空港、プランテーションなどの計画と闘うべきです。私たちは、財政、社会、生態系の生産システムを緊急に変えなければなりません。同じように労働と富を共有し、水、土地、動植物などの共有財産の保全をしなければなりません。

私たちはボンの国連のCOPの外で、市民社会を結集するために仲間や友達、社会運動に呼びかけていきます。私たちの声を本当の解決策を広げましょう!

闘いのためにCOPに結集しよう!
食べ物と権利と私たちの農業のために


【注】
これらの政策や概念は先進国による抜本的な排出削減を回避するものである、としてオルタグローバリゼーション運動は批判している。
・REDD:「途上国の森林減少・劣化に由来する排出の削減」と呼ばれる、途上国での森林減少・劣化の抑制や森林保全による温室効果ガス排出量の減少に、資金などの経済的なインセンティブを付与することにより排出削減を行おうとするもの。
・REDD+:上記のREDDに、森林保全、持続可能な森林経営および森林炭素蓄積の増加に関する取組を含めた対策。
・ブルーカーボン:海の生き物によって吸収・固定される炭素のこと。グリーン・カーボンは森林が吸収する炭素のこと。

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2017年10月02日

パブロ・ソロンさん、マリー・ルーさんの講演ツアー(東京)

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PDFファイルはこちらからダウンロードできます。
Pablosolon1027tokyo.pdf
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2016年09月26日

ATTAC/CADTMモロッコの声明(2016年9月15日)

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ATTAC/CADTMモロッコの声明(2016年9月15日)
COP22 マラケシュ(モロッコ)に向けて
気候変動に対する社会運動の戦略は何か?


原文(英語): http://www.cadtm.org/COP22-in-Marrakech-Morocco-What

モロッコは11月7-18日、マラケシュで開催されるCOP22を主宰するための準備を進めている。COP22はエコロジーの危機の深刻化 ? それは資本主義システムが直面している文明の危機の1つの側面である - という背景の中で開催される。今回のCOP会合はまた、これまでの会合が温室効果ガス排出削減と工業大国に対する拘束力を伴う措置の導入に失敗してきたという背景の中で開催される。工業大国は依然として石炭、天然ガス、石油、鉱物および種々のエネルギー源の採取や、工業的農業、土壌・海・大気の中に存在する天然資源から利益を上げる多国籍企業のニーズに従っている。

世界の有力者たちは「グリーンな投資」をベースとした解決策を提案しているが、それは生産力主義、消費主義の論理の破滅的影響をさらに悪化させるものである。この論理は、少数の支配的な人たちが地球上の大多数の人々−−現在の世代と将来の世代を含む−−の犠牲の上に自らを富裕化させるものである。

モロッコでは国際金融機関や企業によって押し付けられている政策は同じ目的を持っている。すなわち、外国および国内の企業がわれわれの国の豊かな資源を強奪し、都市および農村の大衆、貧困階級を困窮化させることである。政策を決定する者たちは人間と環境を破壊する政策を遂行する上で、自分たちの責任を逃れようとする。その代わりに彼らは気候変動について語り、「グリーン開発」のプロジェクトを打ち上げる。それは公的な投資を通じて民間資本のための新しい分野を創出し、その一方で公的債務を悪化させ、緊縮政策をもたらす。さらに悪いことには、それはいかなる経済的、社会的、環境的な実現性調査なしで進められている。

COP22を主宰することによってこれらの政治家たちはまた、この国の政治的安定性を強調することで「グリーンな投資」を持続させようとしている。一方、国際機関や主要大国はモロッコをこの地域における「例外」として描き出すことによって彼らの新植民地的政策を維持しようとしている。

これらの政治家たちは自分たちの政策に箔を付けるために、COP22の国内運営委員会(2016年に国王が指名)に「市民社会代表」の枠を設けることによって市民社会団体を取り込もうとしている。この「市民社会代表」はCOP22の準備のためのロードマップを作成した。その中には国内の12の地域における活動(市民社会、種々の国家機関、民間セクターが参加する)や、アフリカ大陸ツアーが含まれる。このツアーはアフリカの12の国においてNGOやネットワークや連合組織の間での、COP22の課題とモロッコの役割についての関心を高めることを目的としている。

この政府公認の動きにモロッコ・クライメートジャスティス(公正な気候)連合(CMJC)が参加している。CMJCはこのロードマップに従いつつ、独自にモロッコのいくつかの地域で「COP22プレ企画」と称する集まりを計画している。これはCOPのイメージに沿って企画されている。つまり、気候変動に関する知識の普及から専門知識の提供まで、そして政府機関や民間セクターによって進められてきた気候変動対策についての展示、種々の「パートナー」の間の対話などである。このすべてが国家やそのパートナーに対する一切の批判や、それらからの独立性なしに進められている。しかもこのCMJCは今年5月にチュニジアのハンマメットで開催された「社会的公正とクラーメート・ジャスティスのためのマグレブ・フォーラム」など、国外での市民社会の動員に関与している。そしてこれらのすべての準備が、9月23〜25日にマラケシュで開催されるCMJC呼びかけの国際会議に集約されようとしている。

このように公認の市民社会団体とCMJCは、COP22の期間中の祝祭的雰囲気の醸成に寄与している。そのような雰囲気は、クラーメート・ジャスティスをめぐる論争、不平等を永続化させる政治的、経済的、社会的な選択をめぐる広範な論争を回避して、「グリーンなプロジェクト」の推進とそのための資金の調達にお墨付きを与えることに通じるだろう。

ATTAC/CADTMモロッコは気候変動の問題が専門家だけの問題ではなく、また、政府間の交渉に限定されるような問題ではないと考える。私たちにとって、気候変動は市民の日常生活の中心にある問題であり、市民たちは社会・環境の条件の劣化を引き起こしている自由主義的政策との決別を求めている。市民たちはまた、真の民主主義の中で解決策をめぐる決定に関与および参加することを求めており、そのような解決策は社会的公正と富の分配における平等をベースとしたものでなければならない。そのためには社会的不公正の犠牲者である大衆の諸階級を結集する闘争を先導することが必要である。

ATTAC/CADTMモロッコはまた、モロッコ国家が自らの目的に奉仕させるためにCMJCを取り込もうとすることを容認できない。この点がCMJC内での運営委員会の多数派のアプローチと私たちとの中心的な対立点であり、私たちが今年前半にCMJCから脱退した主要な理由である。それだけではなく、私たちは民主主義の欠如と決定手続きの不透明性にも重大な懸念を抱いていた。

CMJCによって主導されているこの半官製の動きと並行して、ATTAC/CADTMモロッコは「COP22を監視するための民主主義的ネットワーク」(REDACOP22)の中でいくつかの市民団体、人権団体、労働組合と連携してきた。このネットワークはこの国で政治的・経済的権力を行使している勢力や国際的な債権者、援助国から独立した民主主義的な環境運動の確立を目指している。私たちはこれを環境の破壊と劣化の実際の被害者、つまり労働者階級、貧農、小規模漁民、遊牧民、先住民族等の動員をベースとして実現しようと計画している。REDACOP22は現在、大衆の環境をめぐる闘争の経験に依拠したローカル組織の設立を進めている。私たちはこの戦略的枠組みの中でCOP22をめぐる動員のために尽力している。社会的公正と環境問題における公正の実現を目指す抵抗闘争の形態に焦点を当てるためである。

ATTAC/CADTMモロッコは11月4-5日に、モロッコで最も気候変動の影響を受けている都市の1つであるサフィにおいてクライメートジャスティスに関する国際会議を開催する。同6日にはREDACOP22がマラケシュで開催する国際会議に参加する。

ATTAC/CADTMモロッコは、マラケシュでのCOP22開催の全期間を通じて、真のクライメートジャスティスのためのあらゆるイニシアチブや動員に参加する用意がある。私たちのアクションはCOP22で公式に検討されるまやかしの、市場ベースの提案や解決策を非難することに焦点を当てる。エコロジーの危機が資本主義システムの危機の最も危険な側面であるという事実は、私たちがラディカルなオルタナティブの発展に尽力することを促している。


ATTAC/CADTMモロッコ


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2015年12月14日

【連続学習会】安保法制と原発(核と被ばくをなくす世界社会フォーラム)

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【核と被ばくをなくす世界社会フォーラム】連続学習会

安保法制と原発

講師 山崎久隆さん(たんぽぽ舎副代表)

日 時 12月19日(土)午後18時30分
場 所 スペースタたんぽぽ(地図
住 所 東京都千代田区三崎町2-6-2ダイナミックビル4F
参加費 800円

原発を作っている企業、東芝、日立、三菱重工は、同時に大手兵器産業でもあります。このことは何を意味しているのでしょうか。原発は、もともと核兵器のために開発された技術を民生用の発電設備に転用したものであり、核兵器のための技術という側面と切り離せません。安倍政権の憲法を無視した安保法制をふまえたとき、原発の問題はこれまでとは質的に異なる意味をもつようになりました。この学習会では、原発メーカーの兵器産業としての側面に注目しながら、安保法制との関りに切り込みます。

主催 核と被ばくをなくす世界社会フォーラム
 http://www.nonukesocialforum.org/
 twitter@Nonukes_WSF
問い合せ 070-5553-5495(小倉)

※2016年3月23〜27日まで「核と被ばくをなくす世界社会フォーラム」を開催します。詳細はこちら
 
タグ:wsf 反核
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2015年03月10日

気候変動 - 昨年12月のCOP20(ペルー・リマ)についての論評(2)

米中合意がリマ会合(COP20)を座礁させた

ワルデン・ベロ


テルスール英語版2014年12月29日付け

How the US-China Deal Subverted the Lima Climate Talks
By Walden Bello
Source: teleSUR English

国連気候変動枠組み条約第20回締約国会合(COP 20)が気候破滅に向かう勢いを反転するような結果をもたらすという希望は、各国の代表団がリマに集まる3週間前に発表された合意、つまり米中気候合意によって打ち砕かれてしまった。

画期的な合意?

温室効果ガスの累積に最も大きく寄与してきた国と、現在の炭素排出量が世界で最大の国の間の、9カ月間にわたる秘密会談の結果であると言われている合意は、各方面から「画期的」と称賛されている。

徹底的な気候変動懐疑論者である米国の共和党は、予想されていた通り、この合意が米国の雇用を犠牲にし、中国に一方的に有利であると非難した。しかし、この合意は古くからの環境オブザーバーたちからも相当な批判を受けている。

困惑を招いた主要な項目は、中国の排出量が減りはじめるのが2030年以降となるという合意内容である。米国の約束について言えば、排出量を2005年と比較して26-28%減らすというものであり、それ自体は重要だが、21世紀末までに2℃以上の気温上昇へと向かっている軌道を修正するためには十分でない。米国の削減量が実質的に効果を示すには、基準を世界的に合意されている基準である1990年レベルに置かなければならない。

さらに、この合意が法的強制力を持っていないことも批判されている。これは決定的に重要なことである。なぜなら、単なる行政的措置では米国の交渉代表が約束した削減を実現するために十分でなく、共和党が支配する新しい議会が民主党の大統領に、中国との約束を守るために必要な権限を与えるような法律を制定するとは考えられないからである。

リマ会合に向けたオバマと習のメッセージ

しかし、これがこの合意が12月の最初の2週間にリマに集まった190カ国以上の交渉代表に伝えたもっとも困惑させるメッセージだった。

基本的に、オバマと習近平が交渉代表たちに告げたのは以下のことだった。「われわれはわれわれの間で合意したことを多国間のプロセスに従属させるつもりはない。また、われわれが示す排出量削減量は、何をしなければならないかについての客観的な評価によって決定され、公平と『共通だが差異のある責任』の原則によって導かれるのではなく、われわれが議題に上らせると決定したことがらによって決定される。さらに、約束の順守は自主的(任意)であり、法律的な強制力を持つ義務的なものではない」。

米中合意はもちろん、リマでの交渉の結果に影響を及ぼした要素の1つにすぎない。しかし、それは決定的な要素だった。その理由の1つとして、この合意が義務性のない排出削減目標を設定する一方的で不透明なプロセスの先例となったことにより、2015年12月のパリでのCOP会合で、排出削減義務をベースとした、より厳格な気候変動抑止の体制を確立するという希望が打ち砕かれたということがある。さらに、先進国側の非妥協的姿勢を前にして、米中の合意は発展途上国に、金持ちの先進国こそが「共通だが差異のある責任」の原則に従って排出量削減の負担を負うべきであるという確固とした立場から名誉ある撤退を行うための言い訳を提供した。この議論でのデッドロックを打ち破った文言は、この原則を「共通だが差異のある責任と、各国の異なる状況に照らしたそれぞれの能力」という文言で置き換えた米中合意の引き写しだった。金持ちの先進国(および新興経済大国)にとって、このような表現で先進国と途上国の間の区別をぼかすことは大きな勝利だった。なぜなら、それは大部分が自分たちの生産と消費によって蓄積されてきた温室効果ガスの扱いが、すべての国の責任になったことを意味するからである。先進国の好意的な反応は理解できる。なぜなら、「みんなの責任だ」と言うことは「誰の責任でもない」ことを意味するからである。

中国が利己主義的な動機によって「共通だが差異のある責任」の原則の再定義を推進したことによって、多くの発展途上国は「気候に関する行動のためのリマ宣言」に署名する以外の選択肢がない状況に置かれた。ある交渉代表がこれを「中国の気候問題での“旋回”(ピボット)」と呼んだが、そのような旋回の結果多くの国が絶望的な状況に取り残されたと感じても不思議ではない。

気候変動問題に取り組んできたジュビリーサウスのリディ・ナクピルによると、リマ会合の結果は、「京都議定書からの撤退の新たな、そして致命的な一歩」だった – 京都議定書は先進国を義務的な排出量削減で拘束してきた。ナクピルや他の気候変動問題の活動家たちはリマ宣言が、2015年12月のパリ会合で開始されると想定されている新たな気候変動対策の体制の脆弱な土台を確立したと見ている。この新しい体制の中心となるのは、「目標とされる国ごとに決定される寄与("intended nationally-determined contributions")」(INDC)、あるいは義務的な約束の代わりに各国が実施する自主的な排出削減の目標である。

リマ宣言の欠陥

リマ会合の結果についてのおそらく最も包括的な分析が「フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス」の代表のパブロ・ソロン(元ボリビア国連大使)によって提供されている。彼によると、リマ合意の主要な欠陥は下記の点にある。

*合意の序文では「損失と損害」について言及しているが、気候を汚染している諸国による排出で現在被害を被っている国や地域に対してどのような補償が支払われるのかについて、明確なことは何も言っていない。

*テキストは現在の生産と消費のパターンを変更する必要性について何も述べていない。「種々の提案はそれぞれの国で生み出される排出量を削減することに焦点を当てていて、消費される排出量については取り上げていない」と彼は指摘している。彼によると、先進国で消費される製品やサービスに関連する二酸化炭素排出の3分の1が自国の外で排出されており、その大半は途上国で排出されている。「先進国が自国の外で二酸化炭素を排出する製品を消費するのを減らそうとしない限り、先進国の排出を減らすだけでは不十分である」。

*テキストは化石燃料の既知の埋蔵量の75-80%を採掘しないでおく必要があることについて沈黙している。これは地球の温度上昇を1.5℃あるいは2℃以内に抑制できるように二酸化炭素排出量を削減しようとするなら不可欠の条件である。「実際、1892行にわたるテキストの中に、『化石燃料』について言及されているのは『化石燃料への補助』の段階的削減について述べている1カ所だけであり、ほかには『高炭素消費の投資の削減』についての一般的な言及があるだけである」と彼は指摘している。

*宣言は「南」の諸国の適応を支援するためとされるグリーン気候基金1000億ドルの調達方法を明確にするのを避けている。

彼は緩和あるいは排出削減に関連する記述に対して最も強く批判している。新しいシステムの柱となるのは「目標とされる国ごとに決定される寄与」(INDC)と呼ばれる排出削減に関する自主的な約束である。各国が自国のINDCを守ることを保証するための強力な順守メカニズムについて、いかなる提案もなされていないと彼は指摘する。「大きな汚染国が期限に従って排出を削減できず、気候変動の影響を受けやすい国に損害を及ぼした場合にどうするのかがテキストでは全く検討されていない。政府や企業に対して約束の履行を要求し、怠慢に対して制裁を課すメカニズムについて何も言及されていない。テキストで述べられているすべてのオプションは、検討または評価のプロセスのみを考慮している。強力な順守メカニズムを欠く気候に関する合意は政治的宣言に過ぎない」と彼は述べている。

ソロンの憂慮は発展途上国にとって非常に重要である。なぜなら、この数年間にカナダ、ロシア、ニュージーランドが京都議定書から離脱し、オーストラリアと日本は議定書の下での法的拘束力を持つ目標に到達できなかったからである。しかし、これらの諸国は制裁を課されていない。

しかし、ソロンにとって最も重大な問題は、「共通だが差異のある責任」の原則が、「共通だが差異のある責任と、各国の異なる状況に照らしたそれぞれの能力」に引き下げられたことである。これは米国の中国のそれぞれの交渉代表、トッド・スターンと解振华(Xie Zhen Hua)が連携して、米中合意におけるこの原則の再定義をCOP会合が採用するようにロビー活動を行った結果である。近年、多くの貧困国と市民社会団体は、歴史的に温室効果ガスの蓄積に最も寄与してきた先進諸国と、現在最大の排出国となりつつある新興大国が排出削減の負担を引き受ける主要な責任を負うべきであると主張してきた。新たに定式化された原則は、ソロンによると、「先進国と新興国の温室効果ガス排出の責任を希薄化する」。大きな敗者になるのは貧しい発展途上国であり、大きな勝者は中国と米国である。この両国は、ソロンによると、「彼らが作り出した気候のカオスに対する責任を消去する合意を取り付けた」。

ワシントン・北京気候枢軸

これまで米国と中国は互いに相手側の非妥協的な態度を、自国の炭素排出量削減を回避する口実として利用してきた。世界はこのゲームにうんざりするようになったので、両国は相互に対立しているという見せかけをやめて、協調姿勢を示すようになった。両国の気候に関する合意とリマ宣言 –両国がその作成に中心的な役割を演じた- によってこの2つの大国は世界の気候変動対策のパラメーターを設定した。これらのパラメーターは世界が4-6℃の気温上昇に向かうこと、そしてわれわれの世代が破滅させた世界の遺産を将来の世代に残すことを確実にするものにほかならない。

[筆者はフィリピン下院議員、長年にわたって環境問題に関わってきた]


タグ:気候変動 COP
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気候変動 - 昨年12月のCOP20(ペルー・リマ)についての論評(1)

昨年12月にリマで開催されたCOP20は、注目度も低く、当初から「COP21(2015年パリ)での合意に向けた予備的な合意」という位置づけだったこともあり「成果らしいもの」も乏しかったようです。(参考:外務省の発表 )。COP20の概要と特徴、背景そして社会運動の側の取り組みと今年のパリでのCOPに向けた動きなどについて、いくつかのレポートを順次紹介します。


COP20リマ:地球灼熱化へのロードマップ

パブロ・ソロン


(「ハフィントンポスト」紙のブログ「ジェネレーション・チェンジ」、1月9日投稿)
Pablo Solon“From Bad to Worse: Lima's Roadmap for Global Burning”

昨年12月の国連気候変動会合[COP20]で採択された「気候に関する行動のためのリマ宣言」("Lima call for climate action")は、2020年以降に関する合意のためのロードマップを示しているが、それは[2010年(COP16)の]カンクン合意よりも弱められた内容であり、2015年のパリ[COP21]でもっとひどい合意に至るための基礎をつくった。

カンクン合意は京都議定書の解体に道を開き、義務的な排出削減目標に代えて自発的約束を前面に押し出した。このアプローチは失敗だった。カンクン合意から4年を経た今、2020年時点での二酸化炭素排出削減量に約12ギガ・トンの不足が明らかになっている。「今まで通りのやり方(business-as-usual)」のシナリオでは、2020年時点での地球上の二酸化炭素排出量は57ギガ・トンになる。カンクン合意では、この値が1-2ギガ・トン減るだけだが、国連環境計画(UNEP)の排出量ギャップ報告書によると、全地球的な気温上昇を2℃以内に抑制するためには2020年までに二酸化炭素排出量を44ギガトン以下にする必要がある。

2010年代における排出量ギャップはリマ会合では全く縮小されなかった。これは2020年代に「2℃以内」への道に近づくことを不可能にする。なぜなら、そのためには世界の排出量は2020年までにピークを越えていなければならないからである。しかも、中国は2030年までにようやく排出量のピークに到達するだろうと発表している。

リマ宣言のテキストは、[2015年の]パリ合意の結果が、排出量削減に関してはカンクン合意における自由放任的なやり方を基礎とすることをあらかじめ想定している。「約束(“Pledges”)」という語が、「目標とされる国ごとに決定される寄与("intended nationally-determined contributions")」に置き換えられ、各国はそれを2015年の3月までに、但し、準備できた場合にのみ、報告するよう求められる。しかもその基になる基準は各国の選択に任される。リマにおける決定は、目標の報告に関する「2トラック方式」(先進国と途上国で異なる方式を採用する)、緩和・適応・損失と損害・資金・技術移転・能力確立を含む対象範囲の明確化という途上国からの提案を露骨に排除している。

最終段階で「共通だが差異のある責任と、各国の異なる状況に照らしたそれぞれの能力」という文言が付け加えられたが、これは米中合意のコピペであり、リマにおける合意にいかなる具体的な影響も残していない。パリ合意は先進国と新興国の温室効果ガス排出に対する歴史的責任を一層希薄化させるだろう。

リマにおける決定は先進国に対して、途上国への「より強力な資金支援を提供および動員する」ことを促している。ここで「動員する」とは、資金支援に公的セクターからだけではなく、民間セクターや、炭素市場、融資からの支援を含めてもよいことを意味する。

あらゆる美辞麗句にもかかわらず、採択された決定には損失と損害についての何の言及もなく、適応、資金、技術移転、能力確立については一般的な言及があるだけである。

決定への追加として、パリ合意に組み込む要素のテキストが採択された。いくつかの国は自分たちの提案がリマの決定のテキストの中のオプションとして十分には取り入れられていないと考えている。その中の最良の提案も、実際には気候変動に取り組むために必要な目標から大きく遅れている。以下に10の例を挙げる。

1) 排出量削減への寄与は任意であり、2020年以降の時期の新しい排出量ギャップがわかるのは、排出量が多い国が自分たちの目標を提出した場合でも、2015年3月以降になる。パリ会合では主要な問題は取り上げられないだろう。つまり、排出量削減の規模と、それが地球全体の気温上昇を1.5-2℃に要請するという目標にどの程度適合しているかということである。このテキストは世界の二酸化炭素排出量を2025年までに40ギガトン以下に抑制する必要があることについて何も言っていない。最も先進的な提案は「グローバルな排出収支」について言及しているが、具体的な数値やタイムラインを示していない。

2) テキストには、既知の化石燃料の埋蔵量の75-80%はそのまま地中に残しておくという提案がないが、これは気温上昇を1.5-2℃に抑制するレベルまで二酸化酸素排出量を制限するためには不可欠である。

3) われわれの現在の生産と消費のパターンを変える必要について、何の言及もない。提案は国内での排出の削減に焦点を当てており、国が消費する排出量を取り上げていないが、実際には先進国で消費される製品やサービスに関連する排出の約3分の1は海外で起こっている。

4) 気候変動緩和のための約束の履行を確保するための強力なメカニズムについて何の提案もない。気候問題についての、強力な順守メカニズムがない合意は単なる政治的宣言に過ぎない。

5) 2010年のカンクンでは、「マザーアース(母なる大地)の権利」を認識するという提案があった。これは人間が自然との関係を変え、自然を対象として扱うのをやめるべきであるという認識を反映していた。今回のテキストでは、この提案は検討すらされていない。「マザーアースの全体性の保護」は一度だけ触れられており、人権は「開発の権利」と同列に置かれている。

6) 各国が「排出権」(炭素オフセット)を買うことによってではなく、本当に排出量削減の約束を守ることを確保するために、パリ合意には炭素市場メカニズムを含めるべきではないという提案はどこにもない。代わりにテキストは炭素市場や炭素価格設定の種々の方法に言及している。

7) 資金に関連して、もっともラディカルな提案は、先進国が2020年以降、毎年GDPの1%を提供するというものである(合計で年に約4500億ドル)。別の提案は、年に500-1000億ドルという数字を挙げており、さらに別の提案は単に「具体的な数値は掲げるべきでない」と述べている。資金の出所については、民間や「代替の財源」(炭素市場など)を通じて資金を「動員」する(「提供する」ではない)という傾向が顕著である。

8) 「要素」に関するテキストは、民間投資を促進するものであるが、気候災害から利益を得たり、それを利用しようとすることを回避するために民間投資への規制が必要であるという提案はどこにもない。

9) パリ合意の法的な扱いについては依然として論争中であるが、おそらく米国は批准することを迫られないだろう。

10) 最後に、どの提案もジオエンジニアリングを回避あるいは禁止しようとしていない。これは非常に危険である。なぜなら、化石燃料の埋蔵量の80%をそのまま地中に残しておく必要性に言及することなく「2050年までに排出量を差し引き0にする、あるいは脱炭素化を実現する」ことを提案することは、パリ会合でこのような技術に門戸を開くことになりかねないからである。

結論として、2010年代における排出量ギャップを埋めることなく、「自発的寄与」という枠組を継続し、次の10年間のための明確な目標がなく、強力な実施メカニズムがなく、詐欺的な炭素市場メカニズムを強化するような「合意」は、人間と地球上の生命の未来を重大な危機に陥れるものである。
 
 
タグ:気候変動 COP
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2013年01月28日

ドーハCOP18は万事休すだが、希望は会議場の外にある

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ドーハCOP18は万事休すだが、希望は会議場の外にある
(Doom At Doha, But Hope Outside)


マッズ・ライル(「デモクラシー・センター」)

2012年12月8日

[原文(英語): http://www.zcommunications.org/doom-at-doha-but-hope-outside-by-mads-ryle]

あなたがすでに国連気候変動枠組条約締約国会議(UNFCCC COP)における気候変動への対応のプロセスがちょっとしたジョークだと思っているなら、あなたは今年カタールの首都ドーハで開催されているサミットに最高に悲劇的な皮肉を感じているかも知れない。地理的に隔離され、政治的に非民主主義的なカタール首長国は、国民一人当たりGDPが世界最高であるだけでなく、そのオイルマネー経済のおかげで二酸化炭素排出量も世界最高である。

気候変動に関わっている活動家にとって、会議に参加するため、あるいは会議に抗議するためドーハにやってくるのは困難で、多くの費用がかかっただろう。しかし、おそらくは活動家やジャーナリストたちが(あるいは各国政府も)この年次会合を信用する、あるいは少なくとも気候変動に対する実効性のある行動を進めるためのフォーラムとみなしている時代は過ぎ去っただろう。会議場の中と外に最大の群衆を集めた2009年コペンハーゲンの会合で、街頭のデモに参加していた人たちはすでに、公正な取り決めが行われる可能性についていかなる幻想も持っていなかった。この人々は、交渉が企業の利益と、「グローバルサウス(地球の南側)」の人々にとって構造的に不公正な交渉プロセスによって行き詰っていることに光を当てるためにデンマークにやって来たのである。

コペンハーゲンでは、抜け穴だらけの「拘束力のある合意」にさえ失敗し、3年後には京都議定書が失効寸前となった。2011年のダーバンでは合意を先延ばしにし、2015年までに、2020年に発効する合意を実現することが決定された。締約国会議の出発となったリオ地球環境サミットの20周年(2012年6月)は、悲しい成人式となり、人々の意識に上ることはほとんどなかった。それはいかがわしい「グリーン経済」 - それは悲しいほど痛めつけられた自然の最後の欠片に搾取のための市場価値を与えようとしている - をめぐる進展を除けば、見るべきものはほとんどなかった。

大いに賞賛された京都議定書について言えば、オスカー・レイエス[環境ジャーナリスト、「インスティテュート・フォー・ポリシー・スタディーズ」の研究員]が2011年のCOP会合の後で述べているように、「ダーバン会議は京都議定書をゾンビのような状態に追いやり」、排出量に関する拘束力のある目標から一層遠ざかってしまった。カナダ、ロシア、日本が京都議定書から離脱する意図を一斉に表明した。「インスティテュート・フォー・ポリシー・スタディーズ」のジャネット・レッドマンが「こんな条約を施行することにどんな意味があるのか?」と問うのももっともである。

もちろん、すべての環境団体がこの国連のプロセスから完全に離れたわけではない。ドーハに来ることが予想されていた1万7千人のうち約7千人はNGO活動家だと思われる。クライメート・アクション・ネットワーク(CAN)は依然としてCOP交渉に積極的に関与しており、ダーバン会合で新たに設立された「公正で野心的かつ法的拘束力を持つ協定」の実現の方法を検討するための「特別作業グループ」に、楽観的に、要求を提出しつづけている。また、市民社会の監視がなければ交渉担当者たちが好き勝手に交渉を進める危険性があると指摘する人々もいる。以前にボリビア政府の気候変動交渉チームの一員であったネレ・マリエンは、「交渉担当者はいずれにしても好き勝手に進める」ということを認めているが、それにもかかわらず、NGOが彼らを監視している方がよいと考えている。大衆の関心を引き付けることだけが目的だとしてもである。

ボリビアの交渉チームは、過去数年間、特別の役割を果たし、富裕国の企業寄りの主張に対する抵抗の中心点として、また、困窮化させられてきた「南」の代弁者としての地位を確立してきた。交渉チームの中のマリエンと彼女の同僚たちは自分たちを、会議場の外に集まったクライメート・ジャスティス(公正な気候変動対策)運動の一部だと考えていたし、ボリビアの提案(炭素会計の推進など)が多くの諸国の旧態依然のアプローチに対する重要な対案であると考えていた。しかし、彼女は2011年のCOP会合の前に、ボリビアがダーバン合意に署名しようとしていることを知って、「同意できないものに同意したくない」という立場で交渉チームを辞めた。

驚くような連携

現在ではこのような抵抗の足がかりすら失われているようであり、多くの人々は国連のプロセスが気候問題の活動家にとって時間の無駄であると考えている。コペンハーゲン以降、運動は分散化の時期に入っており、依然として再評価の時期である。しかし、私が話した何人かの活動家は、「オキュパイ」運動や同様の経済的公正を求める運動が草の根の行動と市民的不服従を鼓吹しており、それによって気候変動に関連する行動が再び活性化していることを指摘している。これは化石燃料の採掘を阻止するための具体的なキャンペーンという形をとっており、そこにはしばしば、驚くような連携が生み出されている。

スコット・パーキンは熱帯雨林アクション・ネットワークの活動家であり、この数年、「ライジング・タイド・ノースアメリカ」(RTNA)で活動してきた。後者のグループは、コペンハーゲン以降の企業主導のプロセスに一切の幻想をもつことなく、「採掘が行われる場所での草の根の行動に本気で取り組むという戦略に着手した。これは約3年後の今、成功しはじめている」。パーキンは米国における気候変動に関わるさまざまな運動を楽観的に見ており、2012年は「ビッグイヤー」だったと言っている。

彼は、ラディカル派が主流の環境運動団体に圧力をかけ、徐々に左傾化させることができたと言っている。「今ではこれらの団体はみんな、最前線となっているコミュニティーと協力することに心から同意し、非暴力直接行動の戦術に対して、より開かれている。彼はこれを世界経済の状態と、「オキュパイ」運動や同様の運動の帰結であると言う。

現在米国で起こっている大きな闘いは、テキサス州におけるタールサンド採掘地の封鎖と、キーストーンXLパイプライン計画に反対するキャンペーンの第2段階である。パーキンによると、封鎖の行動に最初に駆けつけたのはダラスとオースティンからの「オキュパイ」運動の活動家だったが、「彼ら/彼女らはテキサスの地主たち、保守主義者とも肩を組んで闘った。その中には自称ティーパーティーのメンバーも含まれる」。企業による石炭採掘や輸送あるいは危険で有毒な原油パイプライン建設のための「土地収用」、土地強奪と、そこからの汚染物による地域社会の汚染の最前線にさらされることによって、想像できなかったような連合が形成されている。

キーストーンの運動はすでに「決着済み」となっているかも知れないが、パーキンにとって、「もっと重要なことは、それが直接行動運動のための訓練場所であり、そのような行動への関与を強化する機会だということである。私たちは『オキュパイ』運動が実現したことにさらなるパワーと信頼性を与えており、それを化石燃料に対する運動に応用している。それは気候変動に関する運動の創生の瞬間である」。

草の根に戻る

クリス・キッチンは「コーポレート・ウォッチ」の研究員で、英国のクライメート・ジャスティス・コーポレートに参加している。彼は(2008年に)ポーランドのポツナンで開催されたCOP14にクライメート・アクション・ネットワークとともに参加した後、「COPのプロセスに影響を与えようとするのは時間の無駄だ」という結論に達した。彼は翌年、COPの失敗を強調し、真の行動のためのネットワークを確立するためにコペンハーゲンに行った。彼は、コペンハーゲンで得られたようなメディアの注目は、メッセージを伝えるための良い機会となる - メッセージが正しく表現されるならば - ことを認めているが、しかし、「COPはすでに企業や国家の利益にあまりにも完全に牛耳られており、市民社会の側からのいかなる形での関与も、それを正当化する力として作用する・・・街頭でのデモも場合によっては交渉プロセスを支持するものとして解釈されることがあり、よく注意しなければならない」。 '

気候変動に関する草の根の運動は常に、エコロジーの危機を資本主義に対する社会・政治的批判という、より大きいレンズの中で見てきた。クリスは、米国のパーキンと同じように、経済危機の中で緊縮財政政策に反対する運動が世界的に高揚しているのに伴って、英国でも気候変動に関する行動が「回復期」に入っていると見ている。彼は「それはすごいことだ。デモを続けて、国会議員たちに何かに署名させても、成果が得られないということを人々が認識したのだ」と言う。

英国におけるいくつかの運動団体のエネルギーは、シェールガス採掘のためのフラッキング[水圧による岩層の破砕]に対する闘いに向かっている。現在「フラック・オフ・UK」などの運動に参加している活動家の多くは、コペンハーゲンでのクライメート・ジャスティスを要求する行動の中心的なオルガナイザーだった。その一人は私に次のように語った。「人類の現在の苦境に真剣に取り組むような国際的な取り決めへの期待は(そのような期待があったとしても)、今では完全に霧散してしまった。今ではいわゆる『グリーンな資本主義』、つまりこれまで通りのビジネスに若干のグリーンウォッシュをふりかけただけのやり方が前面に出てきている」。

この状況に直面して、「考えられる唯一の希望は、地域社会による草の根からの一斉の行動によって変化を強制することである。これは夢物語のように思えるかも知れないが、実際には、気候変動や化石燃料の採掘の影響に対する反応は、私たちに多少の希望を与えている。化石燃料を供給しつづけるための強引で急速な動きの中で、採掘場所が文字通り人々の裏庭まで迫っている。ますます多くの人々が、このシステムの影響を目の前で、個人的な体験として目撃するようになっている。

最前線での運動

ボリビアに本拠を置くデモクラシー・センターが最近まとめたいくつかの報告は、気候変動に影響を及ぼす決定の最前線にあり、その直接の影響にさらされるコミュニティーが、その問題に自分たちの決定権を行使しようとしている多くの事例を提供している。さらに、彼ら/彼女らがそのために必要な支持を獲得することに成功しているのは、地域の人々に対して「世界的な気候変動」について話すよりも、これらの決定が彼ら/彼女らに及ぼす影響に焦点を当てるという戦略がベースとなっている。

キーストーンと同じように、大きく注目されているキャンペーンの1つであるワシントン州の「パワー・パースト・コール」連合(石炭の輸出に反対している市民運動)は、環境を汚染するエネルギーを供給する(アジア市場への輸出向け)施設をターゲットにしている。このキャンペーンが急速に支持を拡大したのは、巨大な石炭輸送列車が観光産業や地域の空気の質などに及ぼす悪影響について語ることによってである。このダイナミックな運動はまた、これらの問題について決定する権利を、国家機関や世界銀行などの国際機関に委ねるのではなく - それらの機関では企業の力が強く、市民の力は最も弱い - 地方レベルで確保するための闘いの重要性を示している。

世界銀行は米国務省とともに、コソボに新世代の石炭火力発電所を建設する計画を推進してきた。コソボは小国で、所得水準が低く、現在の不十分かつ非効率的なエネルギー供給システムを考えれば、そのような圧力に弱い。コソボの活動家たちは、米国でそのような計画への財政支出に反対している活動家たちの支持を得て、この計画を阻止するために全力をあげており、対案として、長期的に持続可能なエネルギー戦略を主張している。学術的な分析によって、新しい石炭火力発電所は現在稼働している汚い、非効率的な発電所に代わるものだから「クリーンである」という神話を粉砕するのと同時に、コソボの活動家たちは、ここでも、農民や農村の地主を巻き込むことに成功し、彼ら・彼女らが自分たちの土地での露天掘りによって受けた直接の影響について話す機会を提供した。

米国とヨーロッパ以外でも、同様のことが起こっている。タイで、非常に変わったキャンペーンだが、エネルギー問題に関するタイ政府の意思決定プロセスに精通しているある夫婦が、大臣や国営の電力会社と協力して、再生可能エネルギーの静かな革命を起こした。太陽光、バイオマス、バイオガスや他の資源を利用する小規模のエネルギー生産者による発電と送電網を通じた販売を認可する政策は、発展途上国のための持続可能なモデルとして注目されている。

一方、インドは、急増するエネルギー需要を満たすために石炭火力発電の建設を推進しているもう1つの国であり、化石燃料に依存した発展というおなじみの道を進もうとしている。しかし、ここでも活動家たち - 漁民や農民 -は、法律上の支援を提供する活動家たちと共に、発電所ごとに、政府の計画を阻止し、自分たちの生活を守るために文字通り命をかけて闘っている。

ドーハから期待できるものは何もないが、私たちはこのような化石燃料産業に対する草の根の運動の多くの、多様な例に注目するべきである。ここにこそ本当の行動がある。ここでこそ人々と思想の間の新しいつながりが形成されつつある。
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2013年01月24日

ドーハCOP18後の現実:「逆ユートピア」を拒否する

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ドーハCOP18後の現実:「逆ユートピア」を拒否する
(After Doha: rejecting dystopia by default)


私たちは、気候変動に対する政府の無策によってもたらされた恐怖と不安を糧にして繁栄する防衛産業や軍に反対する必要がある。

ベン・ヘイズ、ニック・バクストン
TNI(トランスナショナル・インスティテュート)

2012年12月17日

[原文(英語) http://www.tni.org/article/after-doha-rejecting-dystopia-default ]

世界の政治指導者たちは、警告を聞いていなかったとは言えないだろう。12月初旬のカタールでの国連気候変動交渉に先立って、世界銀行や国際エネルギー機関(IEA)、国際的なコンサルティング会社のPwCが気候変動は危険なレベルに至ると予測しただけではない。ニューヨークやカリブ海、フィリピンの島々を荒廃させた季節はずれのハリケーンを通じて、自然さえ警鐘を鳴らしているかのようだった。この大合唱を前にして、世界各国の政府が何らかの対応をすると期待した人もいただろう。現実には、この国連サミットは国際的なメディアの大きな話題となることもなく終り、その成果は、「地球の友」(FoE)が「どこから見ても失敗」でしかない「インチキな取引」と決め付けたような、もう1つの空虚な宣言だけだった。

地球とそこに住む人々が直面している最大の難問の1つを前にして、政治指導者たちは明らかに私たちを見捨てた。銀行を救済し、金融システムを支えるためには大規模な協調的行動を行った各国政府が、それとは全く対照的に、炭素に依存した私たちの経済を慎重な計画を通じて転換するための大胆な一歩を踏み出すのではなく、脇に退き、市場と化石燃料関連の巨大企業にフリーハンドを与えることを選択した。

彼らの選択は、よく言われるように、「何もしない」ということではなく、危険な気候変動を積極的に助長するということである。中国で石炭火力発電所が建設されるごとに、あるいは北極海の油田が採掘されるごとに、また、米国でシェールガス田の岩層が破砕されるごとに、炭素が大気中に放出され、1000年にもわたって空気中にとどまる。そのことは、将来において最もラディカルな脱炭素化の措置が取られた場合ですら、急激な地球温暖化を防止するのに十分でないかもしれないことを意味する。

世界銀行総裁のジム・ヨン・キム博士は、同銀行の報告書で予想されている今世紀末までに7.2度(華氏)の気温上昇[摂氏で約4度]は「非常に恐ろしい世界をもたらす」と述べている。

ドーハでは、気候変動がすでに世界の最も貧しく、最も脆弱な人々に対して引き起こしてきた「損失と損害」を賠償する方法の問題が初めて中心的な議題に上った。地球規模の気候変動を止める、あるいはそれに備える(国連の用語では「緩和」と「適応」)ための議論が、現在では賠償の要求と、気候変動に関連して誰が何に対して賠償しなければならないかについての関心の増大(これは保険業界においても大きな関心となっている)の脇に退けられたのは悲劇的な皮肉である。

このような物語は、あまりにも痛ましく、人々の意欲を失わせる。今では、子どもたちの未来に、人々が気候変動の最悪の影響を防止するために力を合わせている世界を想像するよりも、ディストピア(逆ユートピア)を想像する方がはるかに容易である。大衆的な行動を促すのとは全く逆に、恐怖と不安は人々を一斉に無関心と無気力へ追いやり、あるいは陰謀論に慰めを求めるように仕向けている。

誰のために何を守るのか?

このような無関心は、「不安の政治」や、国防総省が「結果の時代(“the age of consequences”)」と呼んでいるものを歓迎している - あるいは少なくともそこから利益を追求しようとしている - 者たちによって利用されている。世界中で、たいていは密室の中で、防衛官僚と軍の戦略家たちは(彼らの政治的リーダーたちの発言とは違って)気候変動を自明の前提と考え、それがもたらすリスクに適応し、機会を活用するするためのオプションと戦略を開発するためのシミュレーションに取り組んでいる。

ドーハでの気候変動交渉のわずか1カ月前に、米国国立科学アカデミーはCIAの委託による「気候変動と米国の国家安全保障上の懸念の間の想定される関連性に関する証拠を評価する」ためのレポート発表した。この研究は、結論として「安全保障のアナリストにとっては、今後10年間に気候に関わる驚くべき事態を予測しておくことが賢明である。それは予期しなかった、破壊的影響をもたらす可能性がある単独の事象や、同時的または連続的に発生する一連の事象を含み、その後次第に - おそらくは加速度的に - 重大性と頻度を増すだろう」と述べている。

軍や諜報機関が気候変動の問題を真剣に取り上げていることが、一部の環境運動家の間で無批判的に歓迎されている。これらの機関自身は、自分たちは自分たちの仕事をしているだけだと言っている。ごく少数の人々が、次のように問うている。気候変動を公正や人権に関わる問題としてよりも、安全保障上の問題として位置付けることは、どのような結果をもたらすだろうか?

すでに「(戦争に伴う)付随的被害」などの概念によって汚染されている世界において、この新しい「気候をめぐる戦争」ゲームの参加者たちは、自分たちが考えていることを率直に語ることを必要としていないが、彼らの議論が言外に示唆していることは常に同じである。資源がますます枯渇し、不安が増大する時代に、「北」の先進工業国がどのようにして、気候難民や資源戦争や破綻国家の「脅威」から自分たちを守り、重要な戦略資源と供給チェーンへの支配を維持するかということである。たとえば提案されている「EUの気候変動と国際安全保障」戦略で使われている表現によると、気候変動は「脅威を乗数的に拡大する要素」であり、それは「ヨーロッパの利益に直接に影響を及ぼす政治および安全保障上のリスクをもたらす」ものである。

恐怖から利益を得る

国際的安全保障の醜悪なリアルポリティックス(現実政治)に寄生している産業もまた、気候変動に備えている。2011年に開かれた防衛産業関係者の会議では、エネルギー・環境市場が、防衛産業の年間1兆ドルという貿易額の少なくとも8倍の価値があることが示唆されている。この会議において、「航空宇宙、防衛、安全保障部門は、この機会から排除されるのではなく、これに対応するための努力を加速している。これは約10年前に強力な民間HLS(国土安全保障)ビジネスが出現して以来の最も重要な隣接市場になることは確実だと思われる」と示唆された。

これらの投資の一部は歓迎すべき、重要なものとなるかも知れないが、気候安全保障についての議論は同時に、ハイテクの国境監視システム、群衆制御技術、次世代攻撃用兵器システム(無人偵察機など)や殺傷力の弱い兵器などへの投資ブームを煽っている。民主主義国家がこのような方法で気候変動後の世界に備えようとしているというのは考えたくないことであるが、毎年新しいシステムの試作品が開発され、新しいシステムが市場に出回っている。この10年間に世界中で国境の軍事化が進んでいるのを見れば、2012年に気候難民になりたくないと思うだろう。2050年のことまで気が回らないかも知れない。

将来への不安から利益を得る立場にあるのは防衛産業だけではない。生活に欠かせない商品が、希少性、人口の過剰、不平等に対する不安を基盤として、新しい安全保障の物語に組み込まれつつある。「食糧安全保障」、「エネルギー安全保障」、「水の安全保障」等がますます強調されるようになっているが、そこには誰のために何を保障するのか、また、それが誰の犠牲の上に実現されるのかの分析がほとんどない。しかし、韓国とサウジアラビアで感じられている食糧への不安がアフリカにおける土地強奪と搾取に拍車をかけており、食料価格の上昇が広範な社会不安を引き起こしている時、警鐘が鳴らされるべきである。

気候安全保障をめぐる議論は、そのような結果を当然のことと考えている。それは勝者と敗者、守られる者と切り捨てられる者を前提として語られており、「テロとの戦争」によってひどく歪められた安全保障観をベースとしている。そのため、公正かつ協調的な方法で未来に立ち向かっていくために必要な国際的連帯ではなく、基本的には「廃棄可能な人間」を想定している。

気候変動に対する2つの領域での闘争

私たちの未来の「安全保障問題化」の忍び寄る動きに立ち向かうために、私たちはもちろん、できるだけ早く私たちの化石燃料中毒を終わらせるために闘い続け、北米でのタールサンド開発反対の闘いのような動きを結合し、自治体や政府に対して低炭素経済への移行を迫るための広範な市民の連携を作り出さなければならない。私たちは気候変動を止めることはできない。それはすでに起こっている。しかし、私たちはまだ最悪の影響を防ぐことができる。

しかし、私たちは同時に、気候変動への適応の問題を私たちの手に取り戻す準備もできていなければならない。この問題への取り組みを、土地強奪と権力者の利己的な安全保障上の利害による土地の囲い込みをベースにしたものから、普遍的な人権とすべての人の尊厳をベースにしたものに変えていかなければならない。私たちは、困難な決断をしなければならない時に、私たちの未来を防衛官僚や企業の手に委ねることはできない。

最近のハリケーン・サンディーをめぐる経験 - オキュパイ運動がこの危機に迅速に対応し、連邦政府に恥をかかせた - は、地方的な災害において大衆運動が積極的に対応する力を持っていることを示した。

しかし、地方的な対応だけでは十分ではない。私たちは(環境の)回復のためのツールをグローバル化しながら、企業や軍の力を抑制するための、より広範な国際的戦略を必要としている。これは、食糧、水、エネルギーの問題や、極端な気候への対処をめぐって、私たちの政府が好む市場ベースのアプローチや安全保障に取り付かれたアプローチに対する実行可能なオルタナティブ(対案)となる進歩的な解決策を提案することを意味する。

おそらく最も重要なことは、私たちがこれらのアイデアを未来のための前向きな構想としてまとめ、それによって人々がディストピアを拒否し、すべて人々のための快適かつ公正な未来を取り戻すよう力づけることである。
 
タグ:COP 気候変動
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気候変動交渉は「空振り三振」だ:WSF2013を気候変動への分析と戦略の再考のためのスペースに

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2011年WSFダカールで発言するパブロ・ソロン

気候変動交渉は「空振り三振」だ
WSF2013を気候変動への分析と戦略の再考のためのスペースに


2012年12月
パブロ・ソロン
(フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス事務局長、元ボリビア国連大使・気候変動交渉代表)

[原文(英語): http://pablosolon.wordpress.com/2012/12/18/strike-four-for-climate-change/ ]

野球では、3ストライクでアウトになる。気候変動交渉で、私たちはすでに4ストライクだ。コペンハーゲン、カンクン、ダーバン、そして今回はドーハ。バットを4回振ったが、そのたびに前回よりもひどい空振りに終わっている。排出量削減目標は、2020年までに対1990年比で少なくとも40~50%だったはずだ。4回のCOPを経て、現在の目標値はわずか13~18%へと引き下げられている。私たちは今や、地球全体の気温が4~8℃上昇するという方向へ進み始めてしまっている。

一部の国連交渉担当者たちは「完全主義は善政の敵である」と言っている。それに対しては、こう答えよう。「家が全焼しようとしている時にできる最悪のことは、嘘をつくことである」。今は、何が起こっているのかを再考し、世界規模のカタストロフィ(大破局)を回避するための新たな戦略を模索する時である。

気候変動の証拠がない?

気候変動はもはや理論的な可能性という問題ではない。それは人々の生命や、自然や経済に明らかな影響を及ぼしている。

気候変動はすでに、毎年約40万人の死に関わっている。今月[2012年12月]、カタールのドーハでCOP18交渉が開催されている時期に、台風ボパがフィリピンを襲い、猛威をふるって700人以上の死者を出した。数十年に一度の強烈な台風がミンダナオ島を荒廃させ、70,000戸以上の家屋を損壊させ、現在30,000人以上が避難所生活を余儀なくされている。

気候変動の経済への影響も、今では明らかになっている。ハリケーン・サンディは米国に600億ドル以上の損害をもたらした。「気候脆弱性モニター」というタイトルの報告書によると、気候変動が世界にもたらしているコストは年に1.2兆ドル、つまり世界のGDPの1.6%である。さらに、2030年までにはこのコストは世界のGDPの3.2%まで上昇する可能性があり、一部の国ではそれがGDPの11%を占めると予想されている。

さまざまな事実によって、気候変動否定論者の国でさえ、人々の認識は変わり始めている。現在では米国人の5人中4人が、地球温暖化がが起こっていると考えるようになっている。しかし、あらゆる証拠と、認識のわずかな前進にもかかわらず、UNFCCC(国連気候変動枠組条約)の交渉は後退してきた。ドーハ会議は、京都議定書を強化して、より多くの国を参加させ、より強力なコンプライアンス(遵守)のメカニズムと、科学に基づいて設定されたグローバルな目標を組み込むのではなく、より軟弱な(参加国も減った)京都議定書の第2約束期間と、新しい合意の約束(その合意の発効は2020年)で終わった。

私たちの誤り

気候変動交渉に関わっている人々は通常 - 私も気候交渉担当者だったが - 国をベースとして考える。そのため、対立は先進国と発展途上国の間の対立となる。それは歴史的に排出してきた国と被害国の対立であるが、今では、一部の被害国も大規模な排出国になっているため、複雑さが増している。この状況は、一種の行き詰まりをもたらしている。つまり、富裕国は新興国が同様の排出量削減を行わない限り、さらなる排出量削減を拒否すると主張し、新興国は歴史的な責任を負うべき国が先導しない限り、自ら排出量削減に動くことは拒否すると主張している。

交渉の行き詰まりについてのこのような説明は、本当の原因を掘り下げていない。何が起こっているのかを理解するために、私たちはこのような国をベースにした論理 - 先進国、発展途上国、新興国、後発発展途上国 - を超えて、階級の観点から、全世界のエリートたちの経済的利益を問題にする必要がある。交渉の行き詰まりは米国と中国の間の対立によるのではなく、エネルギー関連の巨大プロジェクトから莫大な利益を得ている米国と中国のエリートたちの共通の利害の結果である。温室効果ガス排出量の大幅削減についての世界的な合意があるとすれば、彼らはどのぐらいの量の石油を埋蔵されたままにしておく必要があるだろうか? どのぐらいの数の石炭火力発電所を閉鎖しなければならないだろうか? いくつの巨大ダム建設を断念しなければならないだろうか? どのぐらいの数の汚染物質を含む商品の生産と販売を中止する必要があるだろうか? 一言でいえば、彼らの利益はどのぐらい減るのだろうか?

これらのエリートたちは政府をコントロールして、巨大エネルギー・プロジェクトを正当化するような経済成長曲線を投影させる。これらの経済的権力を握る勢力は、エネルギーの30%以上が送電中に失われても、プロジェクトが完成後に期待されていたエネルギーを生成しなくても、ダムがメガモール(巨大商業施設)に電気を供給するだけであっても、バイオ燃料が食糧生産を減少させても、また、排出量市場が森林にとって良いことなのかどうかについても全く気にしない。彼らが気にするのはビジネスを行うことだけである。

「発展の権利」と「競争力」は、エリートたちの利益への飽くなき渇望を隠蔽するために使われている。貧しい人々の名において、彼らは莫大な富を蓄えている。彼らは自分たちのプロジェクトを推進するために他国からの脅威を利用する一方で、「敵国」のエリートたちとビジネスを行っている。

エリートたちは二酸化炭素排出の連鎖のいたるところに関与している。化石燃料の抽出、巨大インフラ・プロジェクト、原子力のような危険なエネルギーの推進、REDDを通じた森林の金融資産化で、自然を破壊する消費財のマーケティング、そしてバイオ燃料やGMO、最近では合成生物学やジオエンジニアリングなどの虚偽の解決策の開発等である。

気候変動に対処するためには化石燃料の埋蔵量の3分の2以上は、地中に残しておかなければならない。そのことなしにいかなる真の解決策もありえない。これらの埋蔵資源を支配する民間多国籍企業と国家官僚は、金の卵を産むガチョウを失いたくない。採掘が人類とマザーアース(母なる大地)に大きな破局をもたらすとしてもである。結局のところ、彼らはそれが悲惨な結果をもたらすことを知っているが、「まだまだ先のことで、今すぐのことではないから、かまうもんか」とでも思っているのだろうか? それに、今何かが起こったとしても、自分たちだけは安全なところにいられるように資産をため込んでいる。金持ちたちは気候変動の最悪の影響から逃れるために、より多くの手段を持っている。

「温室効果ガス排出量」の問題は、時には、本当の問題、つまり大企業の利潤率を維持するために人間と自然の搾取の強化を必要とする資本主義システムの論理を覆い隠す。

おそらく最大の誤りは、気候変動交渉を排出量削減率をめぐる争いに切り縮めてしまったことだろう。私たちはもっと大きな、本当の問題、つまり地球が限界に達しているという問題について議論するべきだったし、化石燃料の埋蔵量、多国籍企業、消費と生産のパターン、このシステムの下での搾取や強欲、利潤への執着の全体的な論理的構造等の問題を議題に上らせるべきだった。

私たちは開発、成長、民族国家という概念を超えて見通し、地球システムの問題や、自然の生命サイクルを尊重する経済モデルの必要性について議論する必要がある。2010年にボリビアで開催された「気候変動とマザーアースの権利に関する世界民衆会議」は、その方向に向けた適切な一歩だったが、それは最初の一歩にすぎない。

戦略の再考

新たな分析は新たな戦略を要求する。今は気候変動交渉の外で具体的な勝利を獲得することを通じて、この交渉に異議を唱える時だ。先進国と発展途上国の両方において、さまざまな社会運動がシェールガスの開発、天然ガス・パイプラインの建設、タールサンドの採掘に対して、また、他のいくつかの採掘産業や破壊的な産業に対して闘っている。私たちは闘争を地球規模で活気づけるような勝利を必要としている。

私たちは、環境の危機を食糧危機や金融危機と結びつけることによって、気候変動との闘いの新しいアプローチを進める必要がある。私たちは、気候変動の問題に関わっていない新しい社会的アクターを結集する必要がある。多くの人々にとって、緊縮財政政策との闘争と気候変動との闘争が同じ敵と対決しているということは自明ではない。最近(2012年11月に)フィリピン・マニラで開催された「移住問題に関する世界社会フォーラムにおいて、「アジアの社会運動総会」は次のような声明を発表した(この声明には70以上の運動団体および組織が署名した)。「私たちはこれらの闘争を強化し、食糧、水、健康、エネルギー、雇用、人権の要求と、気候変動、金融投機、土地強奪、新自由主義的な自由貿易協定と投資協定、多国籍企業の免責、移民や難民の犯罪扱い、家父長制と女性への暴力、緊縮財政と社会保障の削減に対する闘争を結合する必要がある」。[この声明の日本語訳はATTAC Japan(首都圏)のブログに掲載
されています http://attaction.seesaa.net/article/305669690.html]

私たちは、国家、地域またはグローバルレベルでの「気候に関する住民投票」の推進のような新たなキャンペーンの実施について議論する必要がある。私たちは、人々が自分たちやマザーアースの将来について決定するための民主主義的権利を取り戻すために、あらゆるスペースを活用する必要がある。

私たちはアグロ・エコロジー(エコロジー的農業)、食料主権、分散型のエネルギー生産と消費等のオルタナティブを強化していく必要がある。私たちは、より多くのエネルギーが必要であり、そのための唯一の方法が巨大プロジェクトであるという嘘を解体する必要がある。私たちは、それらのプロジェクトの背後にはよく知られた企業の利益が絡んでいること、また、そうではない地域的な、あるいは小規模なオルタナティブが可能であることを数字や具体的な経験を通じて示す必要がある。

社会運動の活動家と気候変動の問題に関わっている活動家が集まり、私たちの分析、オルタナティブ、戦略を再考、再創造するための格好の機会が、2013年3月にチュニジアで開催される世界社会フォーラム(WSF)の中の「気候スペース」である。今こそ、気候変動に立ち向かうための私たちの分析、オルタナティブ、戦略を再考する時である。
 
 
posted by attaction at 13:43 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月07日

気候変動に関するアジアの社会運動団体の声明

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現在、ドーハで開催されているCOP18に関連して、アジアの社会運動団体が連名で発表した声明です。ATTAC Japanも賛同しています。

気候変動に関するアジアの社会運動団体の声明

第5回・移住問題に関する世界社会フォーラム(WSFM)〔2012年11月26-30日、フィリピン・マニラ、http://www.wsfm2012.org/〕中に開催されたアジア社会運動総会にて採択。

私たちはこの1年間に世界の多くの地域で、ハリケーン・サンディのような、かつて経験したことがないような激しさの、気候変動に関連する現象を経験してきた。多くの国で激しい暴風雨、洪水、干ばつ、水循環の断絶などの現象が「新しい標準」となっている中で、私たちにはもはや時間の余裕はない。また、気候変動が気候難民を生み出していることも明らかになっている。2050年までに2億人が気候変動によって移住を余儀なくされると推定されている。2010年だけでもアジア全体で3000万人以上が、環境や気象関連の災害によって移住を余儀なくされ、気候難民の数は増えつづけている。気候変動はまた、農作物や農地に大きな損害を与え、食糧危機を一層悪化させ、一層多くの人々を飢餓に追いやっている。

しかし、気候変動による荒廃がますます深刻化しているにもかかわらず、国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の交渉は、温室効果ガスの排出量を安定させ、削減するためのグローバルな合意に向かって進むのではなく、後退しつづけている。気候変動交渉の前提は常に、先進国がその歴史的責任を果たさなければならないという原則に基づいていたが、カンクンからダーバン、そしてカタールへと進む中で、交渉は先進国がこれまでの約束を逃れる方法に焦点を当てるようになってきた。今では、現在交渉のテーブルに載っている提案によると、先進国は削減義務を自主的な誓約に引き下げることによって約束を逃れられるようになるだけでなく、排出権市場やそのほかの抜け穴を増やすことによって、何もしなくてもよいようになる。国連環境計画(UNEP)による調査からの推定では、そのような抜け穴が全くない場合でさえ、これらの諸国の現在の誓約では地球の温度が最大で5℃上昇する。

この気候のカオスに向かう行進を止めるには遅すぎることはないし、それは不可能ではない。私たちは何をすべきかを知っている。

第1に、科学は、温室効果ガス排出の主要な原因が石油、ガス、石炭の利用によって発生する二酸化炭素(CO2)であることを明らかにしている。国際エネルギー機関(IEA)によると、気温上昇が2℃以内にとどまる確率を50%にしておくためには、世界の石炭、石油、ガスの確認埋蔵量の3分の2をそのまま開発しない状態にしておかなければならない。この確率を75%にしたければ、地下に埋蔵されている石油、ガス、石炭の80%をそのままにしておかなければならない。

第2に、歴史的に見れば米国が主要な排出国であり、米国は他の国よりも緊急かつ大幅に排出を削減しなければならない。国連気候変動交渉において附属書1締約国と呼ばれるすべての先進国は緊急に大幅な削減を行い、2020年までに1990年の水準の40?50%以上を削減するべきである。これらの約束は、年間の石炭、石油、ガスの使用量の目標として具体化されるべきであり、オフセットや排出権市場などの抜け穴を利用してはならない。

第3に、発展の権利は、環境を汚染しつづけ、工業国の開発の道筋を後追いする権利として解釈するべきではない。発展の権利は、国家が人々の基本的な権利とニーズ、そして自然と調和した生活を送る権利を保証する義務として理解されるべきである。

この観点から、中国、ブラジル、南アフリカ、インドなどの新興国も排出削減の目標を設定するべきである。これらの諸国は急速に温室効果ガスの大きな排出国となっている。これらの諸国の拘束力のある目標は、「歴史的な、共通だが差異のある責任」の原則に従って、附属書Iの諸国の目標より低く設定されるべきである。

第4に、石油、石炭、ガス会社への補助金を打ち切り、それらの資源の使用を制限することは非常に重要な前進であるが、それだけでは十分ではない。私たちはまた、それらの資源と同様に自然を破壊し、人々の生活に悪影響を及ぼす可能性があるあらゆる偽の解決策 − バイオ燃料、遺伝子組み換え作物、合成生物学、ジオエンジニアリング、原子力、大企業とグリーン経済による資源収奪など − の推進を阻止する必要がある。

私たちがこの地球上に私たちの未来があることを望むなら、私たちには本当の解決策が必要である。私たちは、人々を搾取し生態系を破壊するすべての支配的な、利潤至上主義的で持続不可能な資本主義システムを越えて進む必要がある。私たちが気候変動との闘いにおいて真の前進を勝ち取るためには、全世界の社会運動がこの闘争において力と勢いを取り戻す必要がある。鉱山の採掘、火力発電所、シェールガス、タールサンド、大型ダム、土地強奪、水の民営化、バイオ燃料、遺伝子組み換え作物、REDDに対する草の根の運動がすでに進むべき道を示している。私たちはこれらの闘争を強化し、食糧、水、健康、エネルギー、雇用、人権の要求と、気候変動、金融投機、土地強奪、新自由主義的な自由貿易協定と投資協定、多国籍企業の免責、移民や難民の犯罪扱い、家父長制と女性への暴力、緊縮財政と社会保障の削減に対する闘争を結合する必要がある。

私たちはまた、化石燃料に依存するシステムから低炭素社会に向けて、集団的に、漸進的に転換する必要がある。そのためにはまた、持続不可能な資本主義システムの変革が必要である。社会運動はすでにそのような変革の提案や解決策を豊かに蓄積している。食糧主権、エコロジー的農業などの代替案はすでに実践されており、さらに発展している。私たちが自然と調和し共存するためには、資本主義の人間中心的な考え方を放棄し、私たちが自然の1つの構成要素にすぎないこと、また、健康的な生活を送るためにはマザーアース(母なる大地)の権利を承認し、支持することによって、生命の循環、自然の全体性と相互依存関係を尊重する必要があることを認識する必要がある。

人類と自然は絶壁に立っている。しかし、遅すぎることはない。私たちは何をすべきか知っている。私たちが一緒にそれを行うならば、私たちはシステムを変革することができる。

2012年11月28日、フィリピン・マニラにて

賛同団体

国際/地域団体
Building and Wood Workers' International - Asia Pacific (BWI Asia Pacific)
Coalition Against Trafficking in Women - Asia Pacific (CATW AP)
EU-ASEAN FTA Network
Focus on the Global South
Global Network Asia
International Domestic Workers' Network (IDWN)
La Via Campesina
Migrant Forum in Asia
RESPECT Network - Europe
Transnational Institute

国内団体
Alliance of Progressive Labor (APL-SENTRO)
All Nepal's Peasants' Federation
Ang Nars-PSLINK
Aniban ng mga Manggagawa sa Agrikultura (AMA)
Alyansa ng Kabataang Mindanao para sa Kapayapaan (AKMK)
Associated Labor Unions (ALU-TUCP)
ATTAC Japan
Bangladesh Krishok Federation
Bangladesh Kishani Sabha
Basic Education Sector Teachers Federation (BESTFED)-PSLINK
Bhartiya Kisan Union, BKU, India
Commission for Filipino Migrant Workers
Confederation of Labor and Allied Social Services (CLASS-TUCP)
Development through Active Networking Foundation (DAWN)
Federation of Free Workers (FFW)
Forum Komunikasi Buruh Perkebunan Sumatera Utara
FSPMI (Federation of Indonesia Metal Workers Union)
Greenresearch Environmental Research Group
Iligan Survivors Movement (ISM)
Indonesia Fisherfolk Union / Serikat Nelayan Indonesia (SNI)
Indonesian Political Economy Association (AEPI)
Kapisanan ng Maralitang Obrero (KAMAO-SENTRO)
Karnataka Rajya Raitha Sangha, India
KILOS KA, Mindanao
Koalisi Anti Utang (Anti-Debt Coalition) Indonesia
KRuHA-Indonesia (People's coalition for the right to water)
KSPI (Confederation of Indonesia Trade Union)
Lanao Alliance of Human Rights Advocates
Labor Education and Research Network (LEARN)
Liga ng Makabagong Kabataan (LMK)
Mindanao Peoples' Peace Movement (MPPM)
MONLAR, Sri Lanka
National Confederation of Transportworkers' Union (NCTU-SENTRO)
National Union of Workers' in Hotel Restaurant and Allied Industries
(NUWHRAIN-SENTRO)
Network for Transformative Social Protection in Asia
NOUMINREN, Japan
Partido ng Manggagawa
Philippine Airline Employees' Association (PALEA)
Philippine Independent Public Sector Employees Association (PIPSEA-SENTRO)
Philippine Metalworkers' Alliance (PMA-Sentro)
Philippine Rural Reconstruction Movement
Public Services Labor Independent Confederation (PSLINK)
Ranaw Disaster Response and Rehabilitation Assistance Center (RDRRAC)
Serikat Petani Indonesia
Sintesa Foundation
South Indian Coordination Committee of Farmers Movements (SICCFM)
Suluh Muda Indonesia (SMI Sumut)
Sumpay Mindanao
Sustainable Alternatives for the Advancement of Mindanao (SALAM)
TRUSTED Migrants - The Netherlands
Workers' Solidarity Network (WSN-SENTRO)
World March of Women Pilipinas
WomanHealth Philippines
Youth and Students Advancing Gender Equality (YSAGE)
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2012年09月14日

attacフランス:公正で民主的なエコロジカル・トランジションを突きつけよう

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諸国政府の犯罪的な無為無策に対し、
公正で民主的なエコロジカル・トランジションを突きつけよう

Attacフランス
2012年9月11日

[ATTACフランスは気候に関する国連交渉の最終セッション(9月5日〜8月30日)にあわせて、アジアの社会運動が開催した会議に参加するためにタイ・バンコクに招待された]

 国連および欧州連合(EU)をはじめとする多数の諸国政府は、ダーバンで開かれた直近の締約国会議(COP)の結果を歓迎したが、Attacは激しく非難した(1)。「ダーバン・パッケージ」の内容は、京都議定書の枠組みにおける排出削減の第二約束期間の確認、すべての国を対象とした新たな交渉プロセスの開始、緑の気候基金の創設といったものだった。バンコクでのこの数日間の協議によって、ダーバン合意の真の内容が明らかになっている。

 京都議定書の枠組みにおける第二約束期間はゴマカシの煙幕にすぎない。ダーバンでは、俎上にのぼった選択肢を「控えておき」、決定はすべて次のドーハでのCOP(2012年11月)に先送りしていた。京都議定書に調印していないアメリカに加え、カナダとロシアと日本は、第二約束期間を受け入れようとしない。さらに重大なことに、現在俎上にのぼっている約束では、2020年の温室効果ガス削減は、1990年比で13%にしかならず、今後2100年までに世界の気温は4度から6度上昇するおそれがある。EUはどうかといえば、20%の排出削減という約束を維持するだけで、それ以上は踏み込もうとしない。つまり第二約束期間の削減(年間1.5%)は第一約束期間(年間1.6%)よりもやや低いことになる。いやはや、あんまりだ。

 世界のすべての国を対象とする今回の交渉プロセスは、気候に関する過去20年来の交渉の中核となってきた原則を崩そうとする空前の攻撃にさらされている。排出削減について拘束的な約束を望まない国は(アメリカだけでなく中国も)、新たな合意は「柔軟」で「ダイナミック」なものにすべきだと主張している。「柔軟」にしたいのはなぜか。温暖化を最大2度に抑えるという目標をきれいさっぱり捨て去るためだ(2)。「ダイナミック」にしたいのはなぜか。法的に拘束力のある約束を回避して、科学によって論証された気候上の要請および諸国政府間の「共通だが差異ある責任」の原則ではなく、各国の現実と事情に応じて、各国の約束を設定できるようにするためだ。

 緑の気候基金に関しては、決定機関の構成がようやく確定したが、基金に依然としてカネが集まっていないため、この決定機関が何を決めるのかはっきりしない。「先進諸国」が貧困諸国を支援するために約束した1000億ドルという金額の達成について、2020年までとするのか、2020年とするのか、2020年以降とするのか、諸国の議論が続いている状況だ。

 つまりバンコクでは、重要な決定は2020年まで何一つ下されないことが明らかになったのだ。この間にも、温室効果ガスの排出と世界の気温上昇の記録は更新を続け、異常気象の頻度と程度を増大させており、その被害を最も受けやすい人々の生活に与える影響はますます耐えがたいものとなっている。

 Attacフランスは「諸国政府の犯罪的な無為無策」を非難する。社会的で民主的な真のエコロジカル・トランジションを敢行するために、世界の市民の動員を呼びかける。


(1) 「約束なき合意であり、これでは世界の気温上昇は4度以上になってしまう。この合意の目的は、2020年にしか実施されない新たな任務を2015年に定めるための交渉を通じて、責任を拡散させることである」- http://www.france.attac.org/articles/conference-de-durban-lagonie-dun-mandat

(2) アメリカの代表団長は最近、2度という目標についてもっと「柔軟」に考えることを諸国に要請した。

原文:http://www.france.attac.org/articles/linertie-criminelle-des-etats-opposons-une-transition-ecologique-juste-et-democratique
 
posted by attaction at 10:29 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月02日

フクシマ・シンドローム:真実か暴力か

フクシマ・シンドローム:真実か暴力か
原題 "THE FUKUSHIMA SYNDROME - A choice between truth and violence"

エリザベス・ぺレード・ベルトラン
Elizabeth Peredo Beltrán*


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地球という惑星は“不自然な”やり方で劇的に変化している。地球はもはや20〜30年前と同じではなく、地球が私たちを育み守る力も変化してきた。人間の介入が地球の変化 - そして人間の安全に生きる能力における変化 - をあまりにも大きな規模で誘発してしまったため、それは自然の本来の力によって引き起こされるいかなる自然災害をも上回る影響をもたらしていると科学者たちは断言する。地球圏-生物圏国際協同研究計画(IGBP)が2004年に発表した研究報告によると、「今や人間の活動は、いくつかの生物地球化学的循環において、自然と同等あるいは自然以上の要因となっている。その影響の空間的広がりは、地球の循環の流れを通じて、あるいはそれぞれの状態変化の蓄積を通して、地球規模に達している。これらの変化の速度は数十年から数何百年の単位であり、これに対して地球システムの自然な力学の中で同等の変化が起こるのは何百年から何千年の単位である」(El Cambio Global y el Sistema de la Tierra(Un Planeta bajo Presi’on)(IGBP, 2004)

地球の変動、荒廃の兆候

私たちが“人間の介入”について語るとき、すべての人間が地球に同等の影響を及ぼすことが暗黙の前提とされているかも知れない。しかし、そのような前提は、危機の原因を人口増加の問題という枠組みで捉え、生産と消費のモデル、資源の不公平かつ不公正な配分、そして北と南の両側のエリートたちが私たちの地球にもたらしている顕著な荒廃といった構造的原因について語ろうとしない新マルサス主義に近いものである。

それはまた、このような略奪的な考え方と対立し、生物・生態系の多様性を尊重する持続可能な生活習慣を維持し、地球上での人類と自然の間の必要なバランスを回復する潜在的可能性を持っている全世界の多くの文化、民族、慣習の存在を無視している。

科学的根拠だけでなく経験的データからも、この60年間は“人間と自然界との関係が人類史上もっとも急激に変化した時代“だった。これを最も良く象徴している危機のひとつが気候変動である。なぜなら、それは地球と人類を死滅の危機へと導いてきたすべての構造的原因に関係しているからである。

ショッキングなことに、この危機について国際社会に警告を発している科学者を“テロリスト”だと非難するような懐疑主義者が存在する。米国の超保守的なティー・パーティー運動が気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国連経済社会理事会への拠出金の削減を要求しただけでなく、「人類は危機に瀕している」という認識を広めてきた科学者たちに対する審問を要求してきたことは偶然ではない。

反啓蒙主義はまた、このような地球の変動の時代の一部を成しており、緊急の変革の必要性を強く主張する私たちに刃向ってくる。

地球の危機は多面的であり、私たちの経済モデル、生産システム、人間関係における不平等、そして特にエネルギー・システム - それは市場と過剰消費の論理によって設計・確立されているために人間の真の必要にはほとんど対応していない - に直接に関係している。石炭などの化石燃料、あるいは「代替エネルギー」と称される農作物燃料や核エネルギーの使用は、人類が簡単に囚われてしまう“ブラック・ホール”になっている。

この危機は資本主義の結果であると同時に20世紀に資本主義社会と社会主義社会の両方で採用された「開発主義」の結果でもある。しかし、そのルーツは500年前にさかのぼるヨーロッパの植民地主義にあり、その考え方こそが領土の占領、自然の搾取、人間の知恵の系統的な簒奪を正当化し、非人間的な、消費に明け暮れる生活様式に奉仕するような堕落をもたらした。

このようなシステムは構造的、経済的で、生産を基礎としたものであるだけでなく、人間の主観や文化に根付いた価値観の中にも存在する。それらは強固な文化的なルーツを持つ支配のシステムなのだ。おそらくはそれこそが、私たちに“自然の声”がほとんど聞こえない、それどころか自分たちの身体を通じて受け取っている自然からの警告さえ聞こえない理由だろう。“人間の中の自然”と私たちが呼ぶ仕組みが、私たちの集合的記憶の中で“異質な何か”に変化してしまった。地球に対する裏切りを構成する行為は何百、いや何千とさえある。それらは全て私たちに影響を及ぼし、私たちを揺さぶり、私たちの芯にまでとどき、私たちを泣かせさえする。だが、私たちはそれらを忘れ、集合的忘却の域へと追いやり、暴力や不正義や死や荒廃と共存できるようになってしまう。

他人を犠牲にしてでもより良い生活をしたいという過剰消費と貪欲を支えているだけでなく、この荒廃をどんどん許容していくような文化的寛容にもその根を持つ支配的なパラダイムを変えるにはどうしたらよいのだろうか。

フクシマ・シンドローム:我々の時代にとっての暗喩

日本を襲った悲劇の中で、地震と津波によって多数の人命が失われ、市全体が消失し、さらに福島原子力発電所の爆発は恐ろしい結果を引き起こした。600万人余の人々へのエネルギー供給が停止し、切迫しているにもかかわらず隠されている放射能汚染による深刻な影響の危険が住民の健康を脅かしてきた。東京電力は「後進国」への原子力エネルギーの販売と輸出を継続するために、高い効率というイメージと、起こっている事態が制御下にあるというイメージを維持しようとしたが、繰り返される虚偽の情報や健康被害に関する矛盾に満ちた情報のために日本の人々が経験した悲劇によって、その試みは粉砕された。この悲劇のもっとも衝撃的な例として、冷却水のあふれ出しを“制御する”という不条理な作業に身を投じ、最後には命を差し出すことになってしまった作業員たちがいた。

福島は、多くの理由で私たちを震撼させた出来事の1つである。

第1に、それは「何事も金と科学と技術でなんとかできる」し、「何事も制御可能だ」という新自由主義的かつ開発主義的資本主義を支える原理総体に疑問を投げかけた。フクシマは技術も、控え目な投資(なぜなら、常に投資よりも経費節約が優先されるから)も、技術者や労働者の英雄的努力も、悲劇を回避するのに十分ではなかったことを衝撃的な形で示した。

第2に、フクシマは原発と核エネルギーに反対する闘いの中で、日本の活動家たちと全世界が30年余にわたって私たちに対して発してきた無数の警告を確証してしまった。これらの人たちが、原子力エネルギーをクリーンな代替エネルギーあるいは持続可能な技術として売り込み、このエネルギーの輸出とこのエネルギーへの依存を促進してきた大企業や「先進国」を非難したのは正しかった。フクシマはまた、1979年のペンシルベニア州スリー・マイル島や1986年のチェルノブイリをはじめとする多くの重大な原発事故のことを思い起こさせる。グリーンピースは福島におけるセシウム137の放出が30年以上にわたって食物連鎖に影響を及ぼす可能性があると警告している。このような技術が間違った解決策であり、地球に住む人間にとっての危険 - しかも地球の変化の中で、危険に対する脆弱性が100倍に高まっている - をますます強めるだけであることは一層明確になっている。

第3に、それは多くの悲しみを伴いながら、エネルギーの問題を再び、より広い文脈の中で議論の俎上にのせた。エネルギーへのアクセスを確保し需要に応えるために何をするべきかを見据えながらである。言い換えれば、エネルギー・モデルをより持続可能で、自然と人間への悪影響が少ないシステムへと変えるにはどうしたら良いのかということである。これは“良く生きる”ことや“母なる地球”を大事にすることを提唱している「南」からの要求 - これまでは控えめに、どちらかと言えばイデオロギー的あるいはレトリック的なレベルでしか表現されてこなかった - への言及を含んでいなければならない。これらの要求は、私たちの生産と消費の仕組みが自然との釣り合いの原則と、人間間の互恵的で、より民主主義的で持続可能な財の配分に基づいたものでなければならないことを示唆している。

第4に、フクシマは新自由主義的支配に典型的な - あるいは、あらゆる経済的権力に見られる‐パターンを露見させた。つまり、真実を隠し、事実を操作し、目を閉じたままでも簡単に消費できる製品を販売するというパターンである。これはもっとも重要な問題の1つであるかも知れない。なぜなら、それは主観性と日常生活の文化を基盤に確立されている新自由主義システムの力に直接に関係しているからである。

日本の人々は一連の相互に矛盾する、時期遅れの、虚偽の情報に晒されてきた。編み込まれた2本の糸のように真実と虚偽が錯綜する状況の中に人々が囚われてしまっているかのような印象を受ける。最後には、放射能汚染とよく似た状況に行き着く。放射能汚染も同じようなやり方で作用するのである。専門家たちは、原子炉の炉心の中にはウラニウム融合の結果として生成される50種類以上の放射性汚染物質があると言っている(放射能の寿命が短いものもあるが、数百年という非常に長い期間にわたるものもある)。それらの物質の構造は人間の生物学的構造と非常によく似ているため、人体に蓄積される可能性がある。私たちの身体にとって、例えばストロンチウムは、非常に有害であるにもかかわらず、私たちの身体に同化されていくヨウ素やカルシウムと“似ている”。身体はそれらを自分の一部と“信じて”吸収していくのである。

この例は、私たちが「開発」や「福祉」として売り込まれたものを“信じる”過程とよく似ている。また、開発や福祉の背後にあるもの、その起源、仕組み、そして開発の名の下に行われる不公正や危害に目を向けることなく生きることに慣れていく過程ともよく似ている。

フクシマの悲劇と全く同じように、企業、大国、そして権力者たちは、自分たちが原子力エネルギー利用によってだけでなく、温暖化ガスの放出、農作物燃料の生産、農業用化学製品の無制限の使用を通して何を引き起こしているのかを知っている。彼らはいわゆる“自由貿易”や、遺伝子組み換え作物による生物の改造を伴う“グリーン・エコノミー”なるものを推進するとき、自分たちが何を引き起こすのかを知っている。彼らは自分たちが「南」とそこに住む人々にもたらしている危害を知っている。彼らは自分たちの行動の事実と結果を知っているが、その真実を民衆には明かさない。

この意味で、フクシマの悲劇は、気候と環境の危機のリアルな隠喩である。全人類がある種のフクシマ・シンドロームを生きている。それは私たちが生命の価値を忘却することにおいて、どこまで来てしまったのかを明らかにしている。権力者たちは何が起きているのかを知っているが、自分たちの業務と、自分たちの権力を維持するための同盟関係を気遣うことを優先する。彼らは危険を承知しながら、労働者を死に追いやる。彼らは死が私たちを脅かしているということを知っていながら、現実を粉飾し、制御手段を作動させているだけである。彼らは生きる権利など尊重しない。

「最も重要な闘いは真実のための闘いだ」と言ったマハトマ・ガンジーの思想にもう一度立ち返るならば、現代社会が提示する選択は、真実と暴力とを闘わせるものだ。私たちは、真実と非暴力を同時に追求するという原則に加えて、私たちを圧倒してしまうようなシステムの危険に立ち向かい、私たちの未来を築くための決定的な基盤として、記憶を取り戻し、忘れないでいることの必要性を強調するべきである。

自然や“最も弱いもの”よりも資本、技術、権力を信頼するということは、この地球上に生き続けるための鍵とはならない。記憶 - および免責に対する闘い - は、真実、非暴力と共に、回復力に満ちた社会への移行のための戦闘の旗印だ。回復力に満ちた社会は、今まさにその実現のための闘いが行われており、その支持者たちはこれまでに十分に権力と嘘と恥辱の犠牲になってきた。

これらの原則は、日々重ねていく変革のために欠かせない土台になるに違いない。なぜならば、苦痛や、強欲のもたらす死や、私たちにあらゆるもの(「真実」さえ)を売り付けようとする絶望的な試みにも関わらず、がれきの中を突き抜け出てくる緑の草の葉のように、希望が殻を破って前進することは可能だと、これらの原則は教えているからだ。
(2011年7月14日付)

*エリザベス・ペレード・ベルトラン:ボリビアの社会心理学者、作家、水・文化・反人種主義などの問題の活動家。経済変革を目指す女性たちのラテンアメリカ・ネットワーク(REMTE)のメンバー。米国ワシントンの「フード・アンド・ウォーター・ウオッチ」の理事。80年代に女性の歴史ワークショップを設立。2003年まで家事労働者の権利全国委員会の議長。「ボリビアのブルー・オクトーバーのための全国運動」のコーディネーター。現在ソロン財団の理事長。

原文(スペイン語)
http://agendaglobal.redtercermundo.org.uy/2011/07/14/el-sindrome-de-fukushima/

[この日本語版は英語版より訳出しました]
英語版:http://www.funsolon.org/index.php?option=com_content&view=article&id=288:the-fukushima-syndrome-a-choice-between-truth-or-violence&catid=29:cambio-climatico&Itemid=43

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2011年12月13日

2011年COP17は気候アパルトヘイトに屈した!(クライメート・ジャスティス・ナウ!の声明)

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2011年COP17は気候アパルトヘイトに屈した!
解毒剤はコチャバンバ会議の合意文書だ!

CJN!(クライメート・ジャスティス・ナウ!)プレスリリース
12月10日、南アフリカ・ダーバン

原文はこちら

広範な社会運動と市民社会の連合体であるクライメート・ジャスティス・ナウ!(CJN!、「今すぐ公正な気候変動対策を!」)は、ダーバンで開催された国連COP17気候変動サミットの決定が「人道に対する罪」であると考えます。世界がこの国の多数民族である黒人の解放闘争に鼓吹されたこの南アフリカで、世界の最も金持ちの諸国は皮肉なことに、「気候アパルトヘイト」という新しい体制を作り出しました。

「地球の友インターナショナル」のニンモ・バッセイさんは次のように述べています。「実効性のある行動を2020年まで遅らせるというのは地球規模の犯罪です。この計画の下では世界の気温が4度上昇することが容認されていますが、それはアフリカや小さな島嶼諸国、そして世界の貧困層と弱者にとっては死刑宣告です。このサミットは気候アパルトヘイトを強化し、世界の最も裕福な1%が99%を犠牲にしても仕方ないと決定しました」。

ボリビア多民族国家の元交渉代表のパブロ・ソロンさんは次のように述べています。「京都議定書の第二約束期間がダーバンで確認されたというのは嘘です。実際の決定は次のCOPに延期されだけであり、金持ちの国からは排出削減について何の約束もありません。つまり京都議定書は、一層微力なものになると予想される新しい合意に置き換えられるまでの間、生命維持装置につながれるということです」。

世界を汚染してきた人たちは実効性のある行動を妨害し、再び投資家や金融機関を救済することを選択し、すでに崩壊しつつある炭素市場を拡大しようとしています。これは最近のすべての金融市場の活動と同様に、主に選ばれた少数の者をさらに富裕にするやり方です。

ワシントンの「ポリシー・スタディーズ研究所」のジャネット・レッドマンさんは次のように述べています。「”何もしないこと”は、実際には私たちの現在の経済システムが経済、社会または環境の危機に対処できないことを証明するものです。金融危機を引き起こした銀行は現在、私たちの惑星の未来を投機の対象にすることによって大儲けをしています。窮地に追い込まれた金融セクターは、破綻したシステムを支えるためにさらに新しい商品を開発することに活路を見い出そうとしています」。

EUによって提案された「ロードマップ」についての交渉にもかかわらず、ダーバンでの失敗はそれが袋小路であり、どこにも通じていない道であることを示しています。「クライメート・ジャスティス・ナウ!」の代表者たちは、科学者たちによって示された地球環境保全のための必要条件に基づき、また民衆運動からの信認を受けた真の気候変動対策プログラムが、2010年にボリビアで開催された「気候変動とマザーアース(母なる大地)に関する世界民衆サミット」で提起された[注記]ということを、世界のすべての地域の人々が想起するよう訴えます。コチャバンバの合意文書は国連に提案されましたが、交渉文書から抹消されています。この文書は前進するために絶対不可欠な、公正で効果的な方法を提起しています。

注記:「開発と権利のための行動センター」のブログに全文(日本語訳)が掲載されています:http://cade.cocolog-nifty.com/ao/2010/04/post-c4fb.html


背景についての補足

技術をめぐって

持続可能な発展と技術に関する国際的な組織であるETCグループのシルビア・リベイロさんは次のように述べています。「技術をめぐる議論は、自国の多国籍企業の利益を代表して発言する工業先進国に乗っ取られてきました。特許による技術の独占への批判や、技術の環境、社会、文化の観点からの評価は、ダーバンの結論からは除外されています。これらの根本的な問題をめぐる懸念に対処しなければ、技術に関わる新しいメカニズムは単に多国籍企業の利益を増大させる - ナノテクノロジー、合成生物学、ジオエンジニアリングなどの危険な技術を「南」の諸国に売りつけることによって - ためのグローバルなマーケティング手段となるでしょう」。

農業をめぐって

世界最大の小作農・小規模農民の運動体であるビア・カンペシナ(「農民の道」)の北米コーディネーターのアルベルト・ゴメスさんは次のように述べています。「農業が向かうべき唯一の道は、アグロ・エコロジカルな(生態系と調和した農業を目指す)解決策を支援し、農業を炭素市場から隔離しつづけることです。企業によるアグリビジネスは、その生産の社会的、経済的、文化的モデルを通じて、気候変動と飢餓の増大の主要な原因の1つとなっています。したがって、私たちは自由貿易協定や経済連携協定を拒否し、生命に知的財産権を適用しようとするすべての試みや、現在提案されている技術パッケージ(農薬、遺伝子組換え)、および現在の危機を悪化させるだけの偽りの解決策を提供する技術パッケージ(バイオ燃料、ナノテクノロジー、気候変動対応型農業)を拒否します」。

REDD +と森林炭素プロジェクトをめぐって

「REDDに反対し、生命の尊重を求める先住民族と地域社会のグローバル連合」はCOP17の第1週に発表した宣言の中で、次のように述べています。「REDD +は先住民族と森林に依存する地域社会の生存を脅かしています。REDD +に沿ったプログラムや政策の実施の結果として先住民族が権利の侵害にさらされていることが、ますます多くの証拠によって明らかにされています。・・・REDD +とクリーン開発メカニズム(CDM)は、炭素市場と、森林、土壌、農業、さらには海洋からのオフセットを通じて、森林、樹木、空気の私有化と商品化を促進しています。私たちは炭素市場を、地球温暖化の抑制につながらない偽善として非難します」。

世界銀行とグローバル気候基金をめぐって

米国の「草の根のグローバル・ジャスティス連合」のテレサ・アルマゲルさんは次のように述べています。「世界銀行は失敗した新自由主義経済の悪役です。私たちは世界の気候破滅と貧困の多くに責任を負っている反民主的な機関によってではなく、参加型の統治機構によって管理される気候基金を必要としています」。

ジュビリーサウスのリディー・ナクピルさんは次のように述べています。「グリーン気候基金はグリーディー(貪欲)企業基金に変質してしまいました。基金は金持ち国によってハイジャックされ、その指示に従って、民間部門により多くの利益を提供するように構成されました」。

グリーン・エコノミーをめぐって

ジュビリーサウスのリディー・ナクピルさんは次のように述べています。「私たちは発展途上諸国の人々のために、世界銀行のような非民主的な機関から完全に独立した資金を提供する気候基金を必要としています。銀行は気候の破滅と貧困を悪化させるようなプロジェクトに資金を供給してきた長い歴史を持っています。・・・基金は基金は金持ち国によってハイジャックされつつあり、世界銀行が暫定的な受託者として指定され、発展途上国のために集められた資金に民間部門が直接にアクセスできるように編成されようとしています。これはグリーディー企業基金と呼ばれるべきです」。

気候政策はいわゆる「グリーン・エコノミー」に向けた急激な転換をもたらしており、それは費用対効果や貿易と投資の機会に関する経済的計算における倫理的責任や歴史的責任を危険なほど希薄にさせています。気候変動の影響の緩和と変動への適応はビジネスとして扱われるべきではなく、また、それに関わる融資が民間部門や利益追求の論理によって条件づけられるべきではありません。生命は売り物ではありません。

気候債務をめぐって

「ポリシー・スタディーズ研究所」の「持続可能なエネルギーおよび経済ネットワーク」の共同ディレクターであるジャネット・レッドマンさんは次のように述べています。「”北”の先進工業国は気候債務を返済するモラル的および法律的義務を負っています。 先進工業国は安価な石炭や石油を利用することによって、地球とすべての人々の未来を犠牲にして豊かに成長しました。これらの諸国は、その結果として発生した損失や損害を賠償し、現在の排出量を大幅に削減し、発展途上国がクリーン・エネルギーの道に転換するのを資金的に支援しなければなりません」。

先進工業国は、その歴史的責任を引き受ける際に、公正で、効果的で、科学的な解決策の基礎として、自分たちの気候債務をすべての面にわたって弁済しなければなりません。これは金銭的な保証に限定されるべきではなく、公正性の回復、すなわち私たちのマザーアースとそのすべての生き物のバランスの回復にも焦点を当てるべきです。私たちは先進工業国に対して、責任を持って行動することを要請します。おそらくそのことによってのみ、壊されてきた信頼関係を再確立し、プロセスを前進させることができるでしょう。

真の解決策をめぐって

エクアドルのアクシオン・エコロヒカのイボンヌ・ヤネスさんは次のように述べています。「気候変動への唯一の真の解決策は、石油と石炭とタールサンドを土の下に埋まったままにしておくことです」。

oilwatch-on-cop17.jpg
Keep the oil in the soil
This image, by the fantastic Vanessa and we’re using everywhere. Please distribute through your lists. Feel free to reproduce, but please credit the artist.
‘Keep the oil in the soil and the coal in the hole’. this message supporting supply side mitigation and against new and old frontiers in fossil fuel extraction is one all climate activists can get behind.
posted by attaction at 16:58 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年11月26日

【満員御礼】12月7日 モラレス大統領来日・市民集会---   地球は売り物ではない!   ボリビアからの提案

このイベントの受付は終了しました。

ボリビアから先住民族出身のエボ・モラレス大統領が来日するのを機に、東京で市民集会を開催します。500年にわたる侵略・植民主義に対する先住民族の抵抗の歴史からモラレス大統領の「資本主義か、マザーアースか」の呼びかけの意義を考え、メキシコのカンクンで気候変動枠組み条約締結国会議、COP16が開催される中で、あらためて中南米の民衆そしてボリビア政府が呼びかける気候変動への取り組み−コチャバンバ合意について考えてみませんか。

日時:12月7日(火)夜6時半から8時半

発題者
●ゲバラからモラレスへ−モラレス大統領誕生の意義
 太田昌国
●気候正義とコチャバンバ合意
 秋本陽子(ATTAC Japan首都圏)
●モラレス政権と先住民族運動
 青西靖夫(開発と権利のための行動センター)

資料代:500円

会場:コチャバンバ・東京店(アンデス・フォルクローレ音楽館)
   3階スペース http://www.cochabamba.jp/
住所 〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町1-13-4
地図 http://www.cochabamba.jp/?info=1
交通 地下鉄「新御茶ノ水駅」B3出口、または
   「淡路町駅」「小川町駅」A7出口から2分

主催(11月29日現在)
・ATTAC Japan(首都圏)
・開発と権利のための行動センター
・地球の子ども新聞
・ティナラク織の会「カフティ」
・ジュビリー関西ネットワーク
・日刊ベリタ
・アジア太平洋資料センター
・ピープルズ・プラン研究所
・先住民族の10年市民連絡会

連絡先 090-6308-8014(開発と権利のための行動センター 青西)
    Eメール cade-la@nifty.com

※会場のスペースに制限がありますので、参加希望の方はご連絡ください。定員を上回る場合にはお断りすることがあるかもしれません。予めご了承ください。
posted by attaction at 23:34 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年09月14日

9/20 attac cafe -COP10生物多様性について考える-


 10月18日(月)〜29日(金)に、名古屋で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が開催されるにあたり、生物多様性について考える学習会を企画しました。
 おそらく誰もが、生物の多様性を存続させることが重要だと考えているでしょう。しかし、生物多様性とは何なのか、そして、それはどのようなあり方で保たれるのがよいのかについては、議論が尽くされているとは言えません。
 私たちは、雑草を手がかりに生物多様性について考えることにしました。講師は農業ジャーナリストの西沢江美子さんです。西沢さんは、あちこちの日本の農村を歩き、最近は、農村の女性たちへの聞き取り調査をしておられますが、最近、特に気になっているのが雑草だそうです。西沢さんは、護岸工事によって在来種の雑草が外来種に駆逐されており、雑草に異変が起きていると言います。工事後、完成した護岸には色鮮やかな草花が植えられ、一見すると、きれいですが、そのことによって在来種の植生が失われていると西沢さんは指摘しています。
 このあたりのお話を手がかりに、いろんな角度から生物多様性について考えてみることにしました。西沢さんの提起を受けてから、COP10の状況を報告し、その後で、参加された皆さんと討論をしていきたいと思います。ぜひご参加ください。


[日時] 9月20日(月)14:00〜17:00
[場所] ATTAC Japan(首都圏)事務所(最大30名)
千代田区神田淡路町1-21-7静和ビル1F-A (Tel & Fax: 03-3255-5910)
    総評会館裏(JR御茶ノ水駅歩5分、地下鉄新御茶ノ水、小川町歩3分)
[内容] 雑草から見た生物多様性:西沢江美子さん
COP10で何が議論になっているか:ATTAC Japan(首都圏)運営委員
[参加費] 無料(どなたでも参加できます)
[連絡先] ATTAC Japan(首都圏) attac-jp(a)jca.apc.org (a)を@にしてください。

posted by attaction at 18:55 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年06月29日

セルジュ・ラトゥーシュさんに聞く 「収縮する社会」に暮らし生きるとは−

 Serge Latouche:
 1940年1月12日ヴァンヌ生まれ。経済学者、哲学者。パリ第11大学ジャン・モネ学部(法学、経済学および経営学部)名誉教授。「良心的経済成長拒否者」であり、雑誌『Entropia』(脱成長に関する理論的・政治的研究誌)友の会会長 

 菅直人新総理は就任演説で「強い」という言葉を何度も使い、日本が「成長」および「発展」を目指すことを宣言しました。しかし、貧困がふつうになってしまった私たちにとって、そのことばは空疎なひびきを持っているようにも思えます。成長を目指すことが発展につながり、人々に幸福をもたらすという考え方は、神話どころか、全くの嘘なんだ、ということに気づいている人は少なくないでしょう。
 このたび来日されるフランスの思想家、セルジュ・ラトゥーシュさんは、「脱成長」または「収縮社会」ということばを使って、人びとがどのような社会をめざし構想できるのかについて提案しています。
 今、私たちは、メキシコ湾のペリカンがどうなっているかを知っています。全身がべっとりと原油にまみれ、それでも黒々とした海面にくちばしを突き刺しては上げて、ばたばたとしながら必死に生きようとしています。そんな憐れなペリカンを私たちは何にたとえることができるのでしょう。
 ラトゥーシュさんに聞いてみましょう。あなたの考える「脱成長」とは、「幸福」とは何ですか。
   続きを読む
posted by attaction at 08:13 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

メキシコ湾原油流失:世界にあいた穴

ディープウォーター・ホライゾン(石油掘削基地)の惨事は、単なる産業事故ではなく、地球が被ったひどい傷である。メキシコ湾岸からのこの特別報告の中で、ひとりの卓越した著者かつ活動家が、いかにその傷が資本主義の心臓部に於ける傲慢をむき出しにしたかを示している
    
ナオミ・クライン 2010年6月19日(土)付 ガーディアン紙
原文
  
その市民集会に集まった人たちはみんな、BPや米政府からの紳士達に節度を持って振る舞うよう再三指示されていた。これらのお偉いさん達は忙しいスケジュールの合間をぬってわざわざルイジアナ州プラケマインズ教区の高校の体育館に火曜日の夜出向く時間を作ってくれたんだからというわけだ。プラケマインズ教区とは、かの茶色の毒が沼地をずるずると流れ突っ切っている湾岸部の多くの集落の一つで、米国史上最大の環境惨事と呼ばれるようになってしまったものの一部に当たる。

「他人に話しかける際には、自分がそう話しかけて欲しいと思うような、丁寧な話し方で話すように」と、開場からの質問を受け始める直前に、集会の司会が最後のダメ押しをした。

そしてしばらくの間、ほとんど漁民からなる集会参加者は、驚くべきほどの自制心を示した。彼らは愛想の良いBP渉外広報担当官のラリー・トーマスが、彼らの収益損失を補償しろとの訴えに応じようと「鋭意努力している」とだけ言って、そのあと、明らかにトーマス氏ほどにこやかでない下請け契約会社の担当者に詳細説明をまかせてしまうまでは、辛抱強く彼に耳を傾けていた。十分なテスト実験もしていない上にイギリスでは使用禁止になっている製品だと彼らの耳に入っている情報に反して、この下請け会社の人が、原油を覆うように大量に撒かれている原油分散化学薬剤がまったく安全だと知らせると、参加者たちは環境保護庁の役人の話を一言漏らさず聞き分けようと(静かに)していた。しかし海岸警備隊大佐のエド・スタントンが3度目に演台に立って、BPがちゃんと掃除をするのを見届けるつもりだから安心して下さいと言ったとき、参加者たちの忍耐が切れ始めた。
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posted by attaction at 07:53 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年04月22日

「惑星か死か!」と問いかけるモラレス大統領

今日22日は、ボリビアのモラレス大統領が提案し国連で採択(昨年4月)された「マザーアースデイ」です。

ボリビアのコチャバンバ(ベクテル社との「水戦争」に民衆が勝利した記念すべき地)では世界125カ国以上から2万人、70以上の政府代表が参加して歴史的な第1回の「気候変動とマザーアース(母なる地球)の権利に関する世界民衆会議」が開催されています。

本日が最終日で、「軍事予算を削減して地球温暖化対策に予算を回せ!」「地球環境を破壊する浪費的な資本主義システムの変革を!」を問う「世界一斉投票」(全国民〔全人類〕投票)などいかなる宣言・行動方針が採択されるのか注目されます。

全体集会ではモラレス大統領が2万人の参加者を前に「惑星か死か!」と問うと会場を埋め尽くした群衆は「我々は勝利する!」と叫んだそうです。いよいよ民衆こそが地球環境を守り世界を変革する時代がおとずれていることを予感させる画歴史的なイベントを象徴する光景です。

地球環境を破壊し人類を破滅に追いやろうとしているグローバル資本主義に対する南側の民衆を中心として北側を含めた社会運動(グローバル・クライメート・ジャスティス運動)側の反撃が始まろうとしているのです。 

以下、続々と以下のHPなどで最新ニュース、最新映像などがアップされつつあります。

気候変動とマザーアース(母なる地球)の権利に関する世界民衆会議 公式HP(英語)

コチャバンバ会議のライブ映像

日本からもこの会議に呼応する動きが出始めています。
セカンドライフでボリビアの「人民の気候サミット」を視聴しよう
posted by attaction at 11:45 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

デモクラシーナウがコチャバンバから中継

ボリビア・コチャバンバで20日から開催されている「「人民の気候サミット」を「デモクラシーナウ」が連日、現地から報道しています。

特設ページ

英語ですが、映像だけでも雰囲気はよくわかります。テキストも付いていますので、じっくり読むこともできます。

オープニングでモラレス大統領は「資本主義を止めるか、マザーアースか壊れるかのどちらかしかない」とアジっています。世界から1万5千人が参加しているそうです。 関連の報道で、住友鉱山の銀山による環境破壊に対する住民(先住民)の抗議行動や、住友鉱山がリチウム開発の権利を手に入れようとしていることが取り上げられています。 モラレス大統領は、資源開発を国内の産業の発展につなげるという立場を強調していますが、いろいろと難しい問題に直面しているようです。 エクアドルのヤスニ問題と同様に、「経済発展」と先住民の権利、自然の「権利」をどのように考えていくのかが非常に具体的に、シビアーに問われています。 そのような背景もあり、コチャバンバの会議は、「南」の主導によって、本当の問題に対する本当の解決策を議論する重要な出発点になっています。
posted by attaction at 11:26 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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