2024年02月18日

ウクライナ債務を無条件で帳消しに!民衆のための支援を!〜日ウクライナ経済復興推進会議への申し入れ行動(2・19)〜

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◆ウクライナ債務を無条件で帳消しに!民衆のための支援を!◆
ウクライナの抵抗する人々とロシアの反戦平和の声に連帯しよう
日ウクライナ経済復興推進会議への申し入れ行動(2・19)

集合日時と場所
・2024年219日(月)時集合
・メトロ日比谷線「神谷町駅」1・2・5番出口側の改札(六本木方面)
・要請文 https://x.gd/ZzvT7

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要請文:ウクライナ債務を無条件で帳消しにし、民衆のための支援を行ってください

外務大臣 上川陽子 様

私たちはウクライナ市民に連帯して、ロシア軍の完全撤退とウクライナの平和を求める「ウクライナひまわり連帯行動」です。このたび、日本国政府・外務省に対して、ウクライナ債務の無条件帳消しを要請します。

ロシア・プーチン政権によるウクライナ侵略からすでに2年、民衆蜂起のマイダン革命から「ロシア系住民を守る」という口実で東部地区の紛争への介入とクリミア併合から数えると10年になります。激しい戦闘に加え、占領地での拷問や子どもの拉致、そしてほとんど毎日行われる都市部への空爆など、ウクライナの人々は厳しい状況に置かれるなか、復興には4860 億ドル(72 兆円)という、ウクライナのGDP(22年)の3倍近い費用が必要と言われています。

こうしたなか、日本政府は本日「日本ウクライナ経済復興推進会議」を開催します。政府は「官民が一体となり、オールジャパンで支援することが大事」と訴えますが、かねてから日本の支援で問題とされてきた「支援という名の融資」の問題が、このウクライナ支援においても色濃く反映されています。日本政府が率先して行われた世界銀行グループ・多数国間投資保証機関(MIGA)への拠出金もウクライナ支援というよりもウクライナへ進出する日本企業をはじめとするビジネス案件を担保するものです。

MIGAの長官は2015年まで三菱UFJ銀執行役員を務めた俣野宏氏が務めるなど「官民一体となった取り組み」とは言え、復興の財政的支援のベースとされる国際通貨基金(IMF)によるコンディショナリティ(融資条件)のもとで進められるビジネス優先の構造改革の一環であり、そこでは年金支給年齢の引き上げや農地売買の促進、緊縮財政による医療や教育といった公共サービスへの悪影響などにより、ウクライナの労働者や農民の生活は今後ますます厳しさを増すという予測もされています。開戦後すぐに実施された日本政府の円借款でも、国営ガス会社の輸送システムの民営化、年金や退職金に関わる法改定など、人びとの生活に大きく影響する案件が並んでいます。

一方、ウクライナ復旧・復興にかかわる国際協力機構(JICA)の小早川徹・ウクライナ支援室長は「欧州連合加盟を見込んだ事業進出の期待は高いが、戦闘が継続されるなかでの大規模な投資には慎重にならざるを得ないというギャップが日本企業にはある。できるところから支援していきたい」という姿勢を示してもいます。

私たちは、日本政府が戦時下のビジネス支援への前のめり姿勢を改め、「できるところからの支援」として、まず昨年1月16日に日本政府が支払い猶予を決定したJICA関係債務約78億円を、コンディショナリティなしの無条件で帳消しにすることを求めます。

この支援にはなんの憂慮も必要ありません。債務免除については、軍事クーデター政権への支援になるとして、民主化を願うミャンマーや日本の市民らの反対の声を無視してまで単独で実施した経験もあることから、日本政府単独の政治的意志さえあれば可能です。

幸いにも、ウクライナに対する債務の無条件帳消しについては、ウクライナ国内や国際的な市民社会からも強く求める声があります。新たな債務と過酷なコンディショナリティの押し付けとなるビジネス優先の支援ではなく、ウクライナの庶民の生活の復興を中心に据えた支援を行うよう強く要請します。

第二次世界大戦終結後にマーシャル・プランの一環として、欧州諸国の対米債務が帳消しにされ、欧州復興の基となりました。それは可能であり、ウクライナの戦後復興にも不可欠です。

最後に、ロシア軍のクリミアを含むすべての占領地域からの完全撤退、イスラエルによるラファをはじめとするガザ全域に対するジェノサイドの即時停止、ミャンマー軍事クーデター政権に対する支援の停止を実現するために、外交努力を尽くして実現するよう求めます。

2024年2月19日  
ウクライナひまわり連帯行動

連絡先 uarentaibokin@gmail.com
(ウクライナ民衆連帯募金)
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タグ:ウクライナ
posted by attaction at 18:43 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2024年01月30日

ウクライナの債務を無条件で帳消しに!民衆のための支援を〜2.17-19ウクライナひまわり連帯行動

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ウクライナの債務を無条件で帳消しに
民衆のための支援を

2.17-19ウクライナひまわり連帯行動

217日(土) スタンディング&連帯集会
 12時〜 スタンディング@新宿駅南口
 14時〜 連帯集会 千石アカデミー@三田線「千石駅」
 発言 加藤直樹「侵略下の社会運動と抵抗」/稲垣 豊「ウクライナ債務の無条件帳消しを」
219日(月) 日本ウクライナ経済復興推進会議への申し入れ
(詳細後日)

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ロシアのプーチン政権がウクライナへの侵略を始めてすでに2年となります。激しい戦闘に加え、占領地での拷問や子どもの拉致、そしてほとんど毎日行われる都市部への空爆。ウクライナの人々は厳しい状況に置かれています。経済的な被害も膨大です。復興には4110 億ドル(58 兆円)が必要と言われていますが、これはウクライナのGDP(22年)の2.6 倍に当たります。戦後の復興に向けて、国際社会はウクライナを支えていく必要があるでしょう。

こうしたなか、ウクライナを支援する諸国は各国で「ウクライナ復興会議」を開き、経済的、社会的な復興支援策を話し合っています。2月に開催される「日本ウクライナ経済復興推進会議」も、その一つです。ところが現在行われている(軍事以外の)支援の大部分は、困っている人を助ける人道支援ではなく、「財政支援」と呼ばれる「貸付」です。しかもそれは、戦争前からの、そして戦後復興を見越したIMFや世界銀行など多国籍金融機関によるウクライナへの有償支援(利子付き融資)に対する「担保の提供」にすぎません。そしてこうした融資には医療、教育、社会保障といった公共サービスの削減などの新自由主義的な条件が付けられています。

日本政府の支援も同じです。76億ドル(約1兆1000ドル)の支援のうち62億ドルは、IMFなどに対する債務担保の性格が強い金融措置です。22年5月に決められた円借款では、国営ガス会社の輸送システムの民営化、年金や退職金に関わる法改定が融資の条件とされました。

ウクライナ人の研究者であり、民主的左派グループ「社会運動」の活動家でもあるユリア・ユルチェンコさんは、こう訴えています。「例えば、多くの幼稚園や学校が爆撃を受けましたが、その再建のために民間投資家を誘致し、ある種の豪華な建物を建設することが提案されています…雇用機会が完全に枯渇し、雇用の受け皿も、幼稚園も、その他のサービスへのアクセスもないとき、人々は何のためにウクライナに戻ってくるというのでしょう…復興の中心には人間がいなければなりません」

ウクライナの「社会運動」は今、「無条件の債務帳消し」を世界に呼びかけています。ウクライナの抵抗に連帯する各国の運動の中からも、債務帳消しを支持する声が上がっています。実際、第二次世界大戦終結後にマーシャル・プランの一環として、欧州諸国の対米債務が帳消しにされ、欧州復興の基となりました。それは可能であり、ウクライナの戦後復興にも不可欠なのです。

こうした国際金融機関の債務支配が、人びとの生活再建を妨げている国は、他にもあります。こうした状況は世界の民衆の力で断ち切らなくてはなりません。ウクライナ債務の帳消しは、そうした挑戦の一環でもあります。侵略によって生活を破壊されたウクライナの人びとに必要なのは、支援国や国際資本のための支援ではなく、民衆のための、人間のための復興支援です。

日本の地に生きる民衆として、「日本ウクライナ経済復興推進会議」に対し、無条件の債務帳消しを求めましょう!


賛同人(賛同は2月15日まで募集中!)
稲垣豊(attac首都圏)、稲葉奈々子(上智大学教員)、いのうえしんぢ(イラストレーター)、植松青児、加藤直樹(ノンフィクション作家)、川名真理(沖縄への偏見をあおる放送をゆるさない市民有志)、木本将太郎(フリーランス)、京極紀子(バスストップから基地ストップの会)、久下格(元国鉄労働組合員)、清末愛砂(室蘭工業大学大学院教授)、小塚太(ピースネット)、杉原浩司(武器取引反対ネットワーク[NAJAT])、鈴木剛(労働運動家/全国ユニオン会長)、砂押克至(attac首都圏)、林克明(ノンフィクションライター)、横山晋(アジア連帯講座)・・・引き続き募集中!

連絡先:uarentaibokin@gmail.com(ウクライナ民衆連帯募金)

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タグ:ウクライナ
posted by attaction at 13:13 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2020年05月23日

サンダース、オマル始め世界300人以上の議員がIMFと世界銀行に貧困国の全債務帳消しを要求

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先週水曜日、バーニー・サンダースをはじめとする世界300名以上の議員が、IDA(国際開発協会ー貧国国が加盟)の国際金融機関への債務を帳消しするよう要求する書簡を提出したそうです。Common Dreamsというオンライン紙の記事を翻訳しました。原文・書簡本文と署名者のリストはリンク先の原文にあります。

Led by Sanders and Omar, 300+ Global Lawmakers Call on IMF, World Bank to Cancel All Debt of Poor Nations Amid Covid-19 Crisis

ご想像通り、署名者に日本の議員はいません(泣)

CADTMサイトにも報告が出てましたね。

Along with Bernie Sanders and Alexandria Ocasio-Cortez, 300 parliamentarians from around the world are writing to the IMF and World Bank to cancel the debt

いくつか数字が出ていたので、そこの部分だけ訳しました。

「国連はコロナ危機が世界の貧困層を50億人ー全人口の8%増大させると試算している。世界食糧計画は、パンデミックの結果として世界的経済危機が起こり、飢餓のふちに追いやられる人が、1億3500万人から2億6500万人からへと倍増する危険性があるとみる。一方で途上国はおよそ11兆ドルの対外債務を抱えており、毎年3兆9億ドルを債務返済に充てている。64か国が、現在、自国の健康保健予算以上の金額を債務返済に充てている。」

以下、Common Dreams紙記事の日本語訳です。

◎コロナ危機のさなか、サンダース、オマル始め世界300人以上の議員がIMFと世界銀行に貧困国の全債務帳消しを要求
2020年5月13日 Common Dreams紙(オンライン)

本日(5月13日)、バーニー・サンダース上院議員とイルハン・オマル下院議員の提唱の元、様々な国の300名以上の議員たちが、貧困国が負う債務の全面的帳消しを、主要国首脳並びに国際通貨基金や世界銀行などの国際金融機関に要求した。この債務は、コロナ危機と闘い、経済的窮状を克服しようとする貧国の足かせとなっている。

「これは我々の世代がいまだかつて経験したことのない、世界経済そして人々の健康の危機なのです。」と、声明文の中でミネソタ州選出民主党議員のオマルは述べる。「私たちはこの機を逃さず、この危機と闘う経済的ゆとりのない国々の債務を帳消しすることで、国際社会としてこれらの国々を救済するべきです。IMFへの最大の出資国、並びに世界銀行設立の主導者として、合衆国はこの努力のかじ取りをするべきです。」

バーモント州選出上院議員であるサンダースは、徹底した救済策を取らなければ、貧しい国々は「国民の健康と安全を守るために使うべき資金を、持続不能な債務返済に回さなければ」ならなくなる、と警鐘を鳴らす。

「これらの国々が、食料、医薬品、防護服、医療機器を買うのに必要な資金を奪われてしまうのを見過ごすわけにはいかない。我々国際的議員ネットワークの提案は決してラディカルなものではない。これは、何億もの人々を脅かす貧困、飢餓、病気の激増を防ぐために国際金融機関が最低限するべきことなのだ。」

議員たちの書簡は、本日(5月13日)世銀総裁デイビッド・マルパス、IMF専務理事クリスタリナ・ゲオルギエヴァ、並びに米国大統領ドナルド・トランプ、英国首相ボリス・ジョンソン、カナダ首相ジャスティン・トルドーを含む主要国の首脳たちに送られた。

書簡は、70か国以上に上る国際開発協会(IDA)加盟国の債務の、単なる支払い停止や支払い延期ではない完全な帳消し、加えて、さらなる財政支援を行うことを要求する。スペイン、メキシコ、ブラジル、ペルー、フランス、イタリア、アルゼンチンを含む20か国以上の議員数百人が賛同者に名を連ねている。

主な内容は以下の通り:「この前例のないパンデミックが続く間、全IDA諸国が国際金融機関に対して負う債務の帳消しに賛同するよう、我々はすべてのG20首脳に呼び掛ける。十分な公衆衛生的対策を取る資金やゆとりのない脆弱なコミュニティは、コロナバイルスによる影響をそれだけ甚大に受けることになる。」

ワシントンポスト紙のイシャーン・タルールが書いているように、コロナ危機は「世界的な格差の深刻さを改めて見せつけた。パンデミックの前でさえ、64もの国々が、自国民の健康のために使う以上の予算を、富裕国やIMFのような国際金融機関、そして民間の債権者への債務返済に充てていた。」

サンダースは本日、Covid-19パンデミックは「我々が国際社会として行動しなければならないこと、この危機において我々は本当の意味で一つであることを示した。これはつまり、われわれは自分たちの中でもっとも弱い者たちを守らなくてはならないということだ」と述べた。
posted by attaction at 22:45 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2019年08月08日

【8・30】TICAD 7に反対するアピールとデモ

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★アフリカの資源・環境・未来を奪うTICADにNO!
★TICAD 7に反対するアピールとデモ

◎2019年830日(金)
 午後6時半アピール開始 7時半デモスタート
◎横浜・桜木町駅前広場       
◎主催:横浜でTICADを考える会・2019 

 8月28日から30日にかけて、横浜で第7回アフリカ開発会議(TICAD7)が開催されます。TICADは、アフリカの「開発」をテーマに日本政府が主導し、国連、国連開発計画(UNDP)、世界銀行、アフリカ連合委員会(AUC)と共同で1993年以後開催、5年に一度東京開催でスタート(T〜V)しましたが、「X」以後3年に一度開催されています。

 横浜では2008年(W)、2013年(X)に続き3回目の開催、他の先進諸国や中国など、世界中がアフリカの「富」を狙う中、いかに日本が主導権を握るか、アフリカへの「投資」「開発」を議論、アフリカを収奪するために行う会議です。

 TICAD7の公式テーマは「Advancing Africa’s Development through People, Technology and Innovation アフリカに躍進を!ひと,技術,イノベーションで。」 まさに出遅れた帝国の焦りを表現しています。

 米国主導の「対テロ戦争」がアフリカ各地に広がりをみせています。自衛隊のアフリカや中東でのプレゼンスも日増しに強まっています。日中、米中の緊張関係とも絡んで、中国の進出も無視できない要因になっています。日本政府のアフリカへの関心は経済進出とともに軍事安全保障においても強まりつつあります。

 強国同士の経済的軍事的な縄張り争いの舞台になりつつあるアフリカです。アフリカは私たちにとって「遠い世界」、無関係な世界ではありません。

 私たちは、アフリカの民衆の生存を脅かす日本政府のアフリカ政策に反対します。日本政府と日本企業のための開発国際会議=TICADに反対します。

 TICAD7の狙いを批判し、話されたこと決まったことを振り返りながら、反対の声を上げていきたいと思います。
posted by attaction at 13:58 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年07月04日

TPP11関連法の成立に抗して

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TPP11は残念ながら6月29日、国会で関連法が成立してしまいました。協定は早ければ来年年明けにも発効といわれています。

米国トランプ大統領が中国はじめ日本・EU・カナダなどに対して貿易戦争を仕掛ける中、日経新聞などではあたかもTPP11のような多角的な自由貿易協定がトランプ式保護主義に対抗する正義のように称賛されており、辟易しています。どっちもどっち、でしょう?

自由貿易体制が何を守り、何を見捨ててきたか、すっかり忘れているようです。関税引き上げの保護主義は一見自国を守る!みたいにも感じますが、逆に相手国も関税を上げるため、輸出時に高率関税という輸出経費がかかるようになります。

トランプの大衆迎合的な劇場型の保護主義は今、関税上げの我慢競争に発展し、その結果ハーレーダビッドソンの一件のような皮肉な結果をもたらしています。(トランプ激怒には笑っちゃいましたけど…ここまできたら茶番です)

さらに7月からは2カ国間の日米貿易協議も始まる見通しとのことで、貿易摩擦の高まりも懸念されます。

今後、ATTACも関連している行動団体では、TPP11の発効阻止ならびに現在交渉が本格化しているRCEPや日EU・EPAに注目し、下記のような行動を予定しています。

お時間の許す方は是非ご参加ください。

〇7月5日(木)14時〜17時の院内集会
集中するRCEP交渉会合・閣僚会合(6月25〜7月1日)、日EU・EPA合意署名式、新たな日米経済対話の枠組みFFR(7月に第1回を)を質すために設定します。
  ・14時〜15時:事前学習会
  ・15時〜17時:政府担当官による説明と質疑・意見交換
  ※場所:衆議院第2議員会館・第1会議室

〇7月10日(火)18時〜:日EU・EPA署名抗議官邸前行動
  ※場所:首相官邸前歩道

 ※ブリュッセルでは、EUの市民団体が、EU本部前で現地時間11日の合意署名式に抗議する行動を実施します。

よびかけ:TPPプラスを許さない!全国共同行動

<共同事務局>
TPP阻止国民会議(連絡先:山田正彦法律事務所)
フォーラム平和・人権・環境(連絡先:平和フォ−ラム)
STOP TPP!!市民アクション(連絡先:全国食健連)
タグ:TPP
posted by attaction at 09:38 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年02月26日

ギリシャ債務監査予備報告書(日本語版)が完成しました

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【朗報!】お試し版がこちらのサイトから無料ダウンロードできます!ぜひアクセスを!

ギリシャ債務監査予備報告書(2015年6月)

エグゼクティブサマリー
イントロダクション
第1章 トロイカ関与以前の債務
第2章 ギリシャの公的債務の推移 2010−2015年
第3章 ギリシャの公的債務の債権者別内訳(2015年)
第4章 ギリシャの債務メカニズム
第5章 持続可能性に反するコンディショナリティ―
第6章 人権に対する“救済”プログラムの影響
第7章 MoU/了解覚書と融資契約に関する法的問題点
第8章 不公正、債権者の悪意、違法性、持続不能性を基準とした債務の審査結果
第9章 ギリシャ国家債務の支払の拒否


68頁、カラー
1冊1500円(attac会員価格1000円)
送料:1冊215円、2冊300円、3〜4冊360円、5冊以上は無料

申し込み:attac-jp@jca.apc.org
振込先:郵便振替口座 00150−9−251494「アタック・ジャパン」

※メールあるいは通信欄に「債務監査報告書」購入の旨を記載いただき、送付先、冊数をお知らせください。入金を確認してからの印刷、郵送となります。ご了承ください。


2015年1月25日の総選挙ではトロイカの緊縮押し付けに抗議する民衆によって押し上げられた急進左派連合(SRYZA)が勝利し、同年4月にギリシャ議会に公的債務の真実に関する委員会が設置されました。同委員会は長年債務帳消に取り組んできたCADTMのエリック・トゥサンが委員長に就任し、同年6月17日に予備報告書を発表し、ギリシャ債務の帳消しを訴えました。

2015年7月6日に行われた国民投票でトロイカの緊縮付き融資へのOXI(NO)が過半数を占めたにもかかわらず、SYRIZA・チプラス大統領はその翌日にはトロイカの緊縮政策を受け入れる決定を行いました。同年9月20日に行われた総選挙では、チプラス体制に反発するSYRIZA内反対派が離脱して人民連合を形成し、トロイカへの屈服反対を訴えましたが、総選挙ではSRYZA政権が多数を維持し、現在に至っています。

SYRIZA/チプラス政権の転換によって、債務の真実委員会の活動は終了し、すでに3年近くが経過して状況は変化していますが、この予備レポートで明らかにされた債務問題はギリシャだけでなく、グローバルな金融資本主義の真実の一端を明らかにしています。ぜひこの機会にお買い求めください。

【attaction関連記事】
ギリシャ債務帳消しを求める書簡(2016年6月2日)
http://attaction.seesaa.net/article/438543597.html
ギリシャ債務真実委員会のレポート翻訳に向けて(2015年8月3日)
http://attaction.seesaa.net/article/423493515.html
スペイン・ギリシャの広場占拠から続く「もうひとつの道」(2015年7月13日)
http://attaction.seesaa.net/article/422305318.html
ギリシャ:反対票のみごとな勝利(2015年7月6日)
http://attaction.seesaa.net/article/421873582.html
ギリシャの抵抗する人々と公的債務真実委員会を支持するアピール(2015年5月13日)
http://attaction.seesaa.net/article/418877621.html
注目!<11.14 全欧州・反緊縮策ゼネスト迫る>(2012年11月14日)
http://attaction.seesaa.net/article/301773994.html
【IMF/世銀総会】No!No!No!No! IMF Partyでの発言(2012年10月13日)
http://attaction.seesaa.net/article/300616537.html
SYRIZAユース大会(アテネ)でのエリック・トゥーサンのスピーチ(2012年10月29日)
http://attaction.seesaa.net/article/299508906.html
【ギリシャ】EUにおけるクーデター?(2011年11月9日)
http://attaction.seesaa.net/article/234373584.html
ギリシャ:1つの悲劇の2つの脚本(2010年7月24日)
http://attaction.seesaa.net/article/157257592.html
新たな勝利をもたらしたギリシャのゼネスト(2010年5月23日)
http://attaction.seesaa.net/article/150824913.html
ギリシャ民衆との連帯:欧州attacの声明(2010年5月21日)
http://attaction.seesaa.net/article/150568363.html
ギリシャ危機の意味(2010年5月13日)
http://attaction.seesaa.net/article/149750155.html
ギリシャを暗闇の中に押し込めるIMF(2010年5月10日)
http://attaction.seesaa.net/article/149411369.html
パリでのギリシャ労働者連帯行動(2010年5月7日)
http://attaction.seesaa.net/article/149057228.html
ギリシャ民衆に連帯を!(2010年4月29日)
http://attaction.seesaa.net/article/148223377.html



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2017年09月06日

一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム 閉会のあいさつ

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「一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム」閉会のあいさつ

李美笑(食物環境衛生署職工権益工会副主席)


2日間にわたる「一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム」はこれをもって円満に終了します。わたしはこの会議を代表して参加されたゲスト、スタッフ、そして参加者の皆さんに感謝を述べたいと思います。

グローバル化の第二波

講演者と参加者の発言によって、一帯一路についての共通認識がふかまりました。わたしは2005年に韓国で行われたWTOとグローバル化に反対するシンポジウムを思い出しました。そこでは多くのワークショップが開催され、影響を受ける各国から市民団体の代表が集まり、経済的グローバリゼーションのもとで大国が小国に対して、環境、労働、医療、教育、文化、芸術など各方面におよぼす負の影響について報告がされました。一帯一路も同じような影響を及ぼしているようです。違うのは、そのけん引役が「欧米」から「中国」に代わり、中央アジアからアフリカにかけて影響が及ぶということです。これはグローバル化による経済侵略の第二波とみることができるでしょう。

経済発展

「一帯一路」(BRICSサミット)のロゴは帆船をかたどっており、これは中国がブラジル、ロシア、インド、南アフリカのBRICS諸国をナビゲートすることをほのめかしています。この5か国は急速な経済成長が見込まれています(原注)。多くの人が「一帯一路」によってBRICSから利益が見込まれると考えるさなか、IMFのエコノミストStephen L.Jenは次のように述べています。「GDPと人口統計のデータにのみ依拠して投資を行えば間違いを犯す」。「汚職と政府のガバナンスなどの問題は一貫して無視されてきた。政治と経済の権力エリートから利益をうける都市部において過度な融資が行われていることは言うにおよばずである」。エコノミストらは、このような現象がみられるブラジル、インド、南アフリカ、トルコ、インドネシアをFragile Five(脆弱な5か国)と呼び、これにロシアを加えた6か国をSorry Six(お気の毒な6か国)と呼んでいるのです。

弱肉強食

中国で長年続いてきた改革開放政策は、国有資産を私有私産に転換したことで、一部の人が豊かになったことは確かです。しかしその一部の人々の富は海外に流出していき、国内の民衆に流れることはありませんでした。中国が進めてきた経済発展は、必ずしも安定的でも長期的でもなく、そして草の根の民衆に恩恵を及ぼすものでもないのです。それは政治と経済の権力エリートらに新たなビジネスチャンスをもたらしただけでした。かれらは環境を破壊する多くの鳴り物入りのプロジェクト契約を締結してきましたが、その建設にかかる費用の借り入れは、民衆が一生、あるいは次の世代以降にまでかけて返済を迫られることになるのです。

香港は、このような経済発展戦略における融資プラットフォームと位置付けられており、金融、物流、電子ビジネスの発展においてチャンスがあると言われています。しかし中国における投資の経験から、小資本の投資は成功よりも失敗のほうが多く、大規模な国有あるいは民間企業のみが利益をえることになるだろうと予測されます。クジラが小魚を飲み込むような事態になってしまうでしょう。

環境破壞

中国では経済開発のために、多くの高速道路、高速鉄道、ダムが建設されてきました。道路沿いの農村は天をひっくり返したような変化にみまわれ、田畑は収用され、家屋は取り壊され、伝統的建築や祠が破壊されて工場が建設されました。多くの出稼ぎ労働者が汗、ときにはその命とひきかえに生活の糧を得ました。しかし環境保護と労働安全衛生はまったく軽視されました。経済発展は自然環境と資源から限界以上の搾取を行い、多くの河川と農地は不可逆的な損害を被りました。このような環境の破壊と労働者に対する搾取、そして文化の喪失という特性は、今後の一帯一路によって他の国々にも拡大することが予見されます。

グローバル資本の魔の手に対抗するには、まず自身の立ち位置を固めることです。労働者教育とサービスのネットワークを確立し、地域労働者とつながり、労働組合の聯盟をつくり、アジア全体の研究をおこない、ボーダレスな社会運動にとりくみ、グローバルなモニタリングで、正義と平和の精神をすべての場所に送り届けることで、労働者の権利を保障し、わたしたちの住むこの地球を守ることができるのです[訳注]。

最後に、8カ国地域から参加していただいた18名のゲスト、通訳を担っていただいた友人の皆さん、すべてのボランティアスタッフと参加者の皆さん、もちろん7つの主催団体と実行委員会のみなさんに、あらためて感謝します。今日の集まりをスタートとして、今後も引き続き協力していきましょう。団結こそ力です。謝謝!謝謝!


(原注) 
BRICS5か国が全世界に占める割合は人口45%、貿易額17%、GDP25%になる。2020年にはブラジル、中国、インドの経済的生産高の合計は、イギリス、アメリカ、カナダ、ドイツ、イタリアの合計を超えると予測されている。

[訳注] 
「労働者教育とサービスのネットワークを確立し……正義と平和の精神」は、主催7団体の名称を組み込んだ内容になっている。主催はアジア・モニタリング・リソース・センター(AMRC)、香港天主教正義和平委員会、無國界社運、香港職工会聯盟(HKCTU)、労働者教育サービスネットワーク、全球化監察、街坊工友服務處の7団体。

タグ:一帯一路
posted by attaction at 15:22 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月05日

【香港】一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム(1日目)

【香港】一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム(1日目)

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『一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム』プレス・リリース
2017年9月4日


全球化監察 Globalization Monitor

中国アモイでのBRICSサミットにあわせて、香港で7つの団体(香港職工会連盟HKCTU、アジアモニタリングリソースセンターAMRC、無國界社運ボーダレスムーブメント、全球化監察グローバリゼーションモニター、香港天主教正義和平委員会、労工教育サービスネットワーク、街坊工友服務處勞工組)が9月2日から3日までの日程で「一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム」を開催し、政府の公式見解に挑戦する民衆の声をあげた。このフォーラムでは、BRICSの貿易協力および中国の「一帯一路」の関係諸国と民衆に及ぼす影響を議論した。フォーラムには8カ国地域から13名の研究者および社会運動アクティビストが参加し、200名近くの市民らと交流した。

パトリック・ボンド(南アのマンデラ政権時代の経済顧問):BRICSの希薄な関係

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フォーラムは、最初に職工会連盟HKCTUの蒙兆達幹事が開会のあいさつを行った。今回のフォーラムは国際的プラットフォームであり、国境を越えた民衆の連帯を示すものであり、民主的な政治システムには強力な市民の力こそが重要だと強調した。

つづいて、南アフリカのネルソン・マンデラ政権時代に政府の経済顧問をつとめたパトリック・ボンド氏(現ウィットウォーターズランド大学教授)の講演がおこなわれた。BRICS五カ国の関係性が脆弱であり、中国とインドのあいだには緊張関係があること、アメリカはトランプを筆頭にネオコンが中国との対決姿勢を強めていると指摘した。他方、中国主導の「BRICSサミット」は市民社会の声を封鎖して行われており、さらに五カ国の間で監視体制を強めていこうという主張もみられると批判した。かれは最後に、資本はこれらの国際的な協定によって海外に展開しているが、他方でまた「反グローバル化」現象もみられると指摘。民衆の側はこのような矛盾を利用して、国際連帯を通じて人権問題を解決する方向に進むこともできると指摘した。

インドネシア:われわれは中国の「厨房」なのか

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ピープルズ・フォーラムはBRICSだけでなく、一帯一路の沿線諸国における開発問題にもテーマが及んだ。カナダの民主経済学院から参加したインドネシア籍のHendro Sangkoyo博士は、中国の一帯一路のプロジェクトによって、インドネシアには中国から多くの投資が流入しており、その多くが大型インフラであると指摘した。Hendro博士はインドネシア経済回廊の事例を紹介した。地元政府はこれらの経済活動のために、巨大なコンクリート工場を建設しなければならず、熱帯雨林をはじめとする環境に大きな影響を与えるという。同じくインドネシアから参加したFahmi Panimbangは、中国から投下される多額の資金は精錬工場、石炭火力発電、農業などに向けられており、なかでもパームオイル生産関連の投資が群を抜いているという。中信建設は2005年に180万ヘクタール、中国海洋石油公司は2007年に100万ヘクタールの熱帯雨林をパームオイル、砂糖、キャサバ畑の開発に着手。Panimbang氏によると、中国は現在世界第二位のパームオイルの消費国であり、「われわれは中国の厨房のようになっている。われわれの土地から必要なものだけを持って行き、ゴミだけを置いていく」。このほかにスリランカ、ミャンマーのアクティビストからも現地のレポートを受けた。

區龍宇(香港):一帯一路は地政学的危機を招く

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中国の労働運動を研究する香港の區龍宇は、「一帯一路」プロジェクトにおいて、中国は香港を重要な融資プラットフォームと位置付けていると指摘した。しかし一帯一路の推進は、必然的に地政学的危機を招くと指摘し、香港人は意図せずしてそのなかに引き込まれ、香港の政治的リスクを高めることになると述べた。

参加者の一人、陳さんは、一帯一路という言葉は聞いていたが、それは政府の説明だったので、市民の側がどのような意見を持っているのかを聞きたくて参加した、と語った。
タグ:一帯一路
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2017年09月04日

AIIBとADBの補充と協力関係について

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写真は2016年5月にADBの中尾武彦総裁(右)とAIIBの金立群総裁が両機関の協力を維持する覚書(MOU)を締結、署名した際のもの。

9月4〜5日の日程で中国・アモイで開かれているBRICsサミットにあわせて、香港で一帯一路やBRICSの問題点を議論する【一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム People's Forum on One Belt One Road and BRICS】が開催されました。南ア・元マンデラ政権の経済顧問を務めたこともあるパトリック・ボンドさんの基調講演からはじまり、これまでもADBや世界銀行などの経済政策によって影響をうけ、さらに一帯一路でも深刻な影響を受けるであろうミャンマー、スリランカ、インドネシア、インド、香港、台湾などからのスピーカーも各国における影響を論じました。今後、翻訳などで紹介したいと思います。以下は日本からの発言(15分)です。

AIIBとADBの補充と協力関係について
ATTAC首都圏(日本)

みなさんこんにちは、日本のattac首都圏という団体でオルタ・グローバリゼーション運動に参加しています。今回、日本の社会運動団体に発言の機会を与えていただき感謝しています。というのも、日本はBRICSでもなく、一帯一路の沿線諸国でもなく、またアジアインフラ建設銀行(AIIB)にも参加していませんし、日本政府は一帯一路やAIIBに対しても公然と慎重な姿勢を示しているからです。さらには、今回の発言者リストを見ると、私だけが帝国主義国からきた発言者のようですし。この国の帝国主義はかつて多くのアジア諸国――来場のみなさんの住んでる香港、中国、台湾、インドネシア、ビルマなど――を銃で抑圧し、戦後はカネで抑圧しています。そんな国からの参加者に発言の機会あたえていただいた主催者の包摂性にあらためて感謝します。

先ほど司会の區龍宇さんから、AIIBと日本主導といわれるアジア開発銀行(ADB)の比較について話してもらうとありましたが、私は専門家ではないので、比較ではなく関係性について短く提起したいと思います。

ADBは1966年に設立された多国籍開発機関です。日本政府がいわば最大の株主であり、また歴代の総裁も日本の財務相の高官が歴任しています。いわばAIIBの先輩格にあたるのですが、この「先輩」はこれまでもずっと市民社会からの批判を受けてきました。まずそのことを紹介したいとおもいます。

スクリーンに映っているのは、今年の4月に発表されたNGO Forum on ADBというNGOネットワークの声明の一部です。

◎アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり(2017年4月20日)
・ADBは搾取的な開発モデルである
・ADBは圧政を支持している
・ADBは偽りの解決策を提供している
1)ダム建設への融資、住民の追い出し、環境破壊
2)不平等、負債、民間部門への富の移転
3)気候変動と設立50年にあたってのADBの脱炭素化
4)透明性の欠如、抑圧、市民社会団体のためのスペースの縮小
5)ADBによる労働の搾取
6)社会的包摂と、脆弱な立場のグループに対するADBの影響


全文は英語ですがhttps://www.forum-adb.org/apcで見られます(日本語はこちら)。

今年の5月、ADB設立50周年の総会が日本で開催されました。その際にも日本で、ADBはこれらの問題に対して責任を回避することはできないという抗議の声をあげていました。

孔子いわく「五十而知天命」(50にして天命を知る」)だそうですが、アジア民衆の批判の声を聞けば、ADBもいくらかは自らの天命を理解したのではないか、と思います。

次の表はAIIBとADBの対比表です。しかし先ほども言いましたように専門家ではありませんし、数字上の比較はあまり面白くないとおもいますので、ここではADBとAIIBの協調関係について一点だけ提起したいと思います。

はじめに指摘しておきたいことは、ADBの最大の融資対象国は中国だということです。

昨年は中国がADBに加盟して30年です。1986年に加盟して、89年5月には北京でADB総会も開催しています。この総会で楊尚昆国家主席は祝辞を述べていますが、同じ時に北京の街頭では学生と労働者が民主主義のための声をあげていました。それから30年弱が経過しましたが、この30年は「改革開放」の時期とほとんど重なっています。「改革開放」を進める中国政府にとってもADBをはじめ国際開発金融機関との良好なパートナーシップは極めて重要でした。

AIIBの初代総裁の金立群氏は、中国財務省で80年代から国際金融畑で経験を積んできたベテランです。これまで中国政府の世銀、ADB担当などを歴任し、88〜93年に世銀副執行理事、03〜08年にはADB副総裁を務めてきました。その後、08〜13年に中国投資公司(政府系ファンド)監理長、13〜14年に中国国際金融公司会長に就任しています。金氏のあとも続けて中国の財務官僚からADBの副総裁を出し続けています。

このようにADBとAIIBの上級管理職は密接なつながりがあります。それは上級管理者だけでなく、スタッフにおいては密接という以上に、代行業務さえおこなっています。ADBの職員数3000人に比べ、AIIBは職員が100人弱ということもあり、ADBの職員はAIIBのプロジェクト準備などに関する業務を有料で支援しています。

このような「補完と協力」の関係は、高官を含むスタッフのあいだだけでなく、実際の融資業務においても同様です。

ADB総裁の中尾武彦氏は、AIIB創設前からも協力することを表明していましたし、2015年6月にAIIB創設に向けた調印が行われた際にも次のように声明のなかで述べています。

「ADBはアジアにおける長い経験と専門性を活用し、同地域が直面する膨大なインフラ需要に応えるべく、AIIBと緊密に連携し、協調融資を行っていくことにコミットしています。」

この「長い経験と専門性」がなにを意味するかは、さきほどインドネシアの先生が具体的に述べました。

この声明ののち、ADBはAIIBと協調融資でパキスタンの道路建設プロジェクトにそれぞれ1億ドルを融資することを決めています。このプロジェクトは、1,800kmにおよぶ中央アジア地域経済協力(CAREC)交通回廊の重要な一部を構成しています。そしてこれはAIIBにとって初めての融資プロジェクトになります。

同年11月にはADBとAIIBの二件目の協調融資案件として、バングラディッシュ天然化ガス生産・輸送プロジェクトへの協調融資がADBで承認されています。

このようにAIIBは誕生のときからADBをはじめとする国際開発金融との協調融資をおこなっています。この傾向は、しばらくは引き続き継続されるでしょう。

もちろん今後のAIIBが順調に発展しADBの支援が必要となったとき、ADBとAIIBの協調・補完関係がどうなっていくのかを予測することは難しいですが、すくなくとも現在の中国政府の政策が続く限り、中国マネーが世界に影響を与えるように、グローバル資本主義が中国マネーにもこれまで以上に影響を与えることは断言できます。

日米欧の中央銀行の金融緩和によって、巨額のマネーが金融機関や多国籍企業に貯まっています。一帯一路やAIIBは金融資本主義にとっても重要な資本輸出のルートになる可能性もあるでしょう。

ADBによると、アジアの途上国の経済成長を維持するには2016年から2030年までに、26兆ドルの資金が必要となるといいます。

日本をふくむ先進国のマネーは投資先を探しています。それゆえ私たち日本の社会運動もひきつづき一帯一路とAIIBの動向に注目していかなければなりません。日本帝国主義はかつては銃で、そして戦後はカネでアジアの友人たちをひどい目に合わせましたが、わたしはそのような資本主義のグローバリゼ―ションによる包摂性や持続可能性を望みません。みなさんと一緒に別な解決方法を探りたいとおもいます。

そろそろ時間のようです。このあとは食事の時間です。かつて日本帝国主義はみなさんに恐ろしい被害と飢餓をもたらしましたが、わたしはそのような歴史もここで繰り返したくはありませんので、最後に一つだけ紹介したいと思います。

国際的な債務帳消し運動である債務帳消委員会の共同代表、エリック・トゥーサンの著書『世界銀行』から、最後の一章「世銀に対する告発状」の結論部分を紹介したいと思います。

・総じて、世界銀行は世界寡占システム(一握りの大国とそこに籍を置く多国籍企業)に支配された専制的独裁機関だ。これは人類と環境に害を及ぼす国際資本主義システムの増強を担ってきた。
・富を再分配し、社会正義を重視し、自然を尊重した発展に向けて、人々の努力を後押しする民主的な新しい国際機関が早急に立ち上げられるべきである。
・世界銀行とともに、その主要な柱となっている資本主義システムのラディカルな転換が必要である。

わたしは、この結論はADBやAIIBに対しても適応できると思います。

ありがとうございました。

(了)
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2017年08月29日

【香港】一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム

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【一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム】
People's Forum on One Belt One Road and BRICS

今回のフォーラムにはアジア各地の社会運動活動家と研究者が香港に集まり、香港のスピーカーや参加者と経験および研究の交流を行います(英語通訳あり)

【ヘビー級の豪華ゲスト(入国の安全を考え一部は匿名です)
1. 南アフリカのマンデラ政権時代の経済顧問
2. 香港バプテスト教会大学の鄭韋教授
3. アジアの社会運動活動家や著名な研究者
4. 本土研究社の陳剣青
5. 工傷(労災)権益協会の陳錦康
6. 労働運動研究者の區龍宇
7. 馬寶寶ファームの卓佳佳
8. 香港職工盟工會(HKCTU)の幹事

【9月2日】BRICsの矛盾、民衆による統制が重要となる
時間:午後1時から夜10時30分
場所:黄大仙聖雲先小堂(黄大仙正?街102號)
交通:黄大仙港鐵站D2出口
内容:午後1時から5時 一帯一路とBRICsの紹介
   夜7時半から10時 アジア各国と「一帯一路」の状況について
 
【9月3日】資本の拡張が各国にもたらす影響 一帯一路の得失
時間:午前9時30分から午後1時30分
場所:The Good Lab 小劇場 (西九龍通州街500號星匯居L1)
交通:港鐵長沙灣站B出口8分鐘,南昌站A出口步行10分鐘
内容:中国から香港への投資について

【事前の申し込みが必要です。申し込みはこちらから: https://goo.gl/7Uxt2n

共催団体
アジアモニタリングリソースセンター(AMRC)
香港天主教正義和平委員會
無國界社運
職工盟(HKCTU)
労工教育及服務網絡
全球化監察
街坊工友服務處
タグ:一帯一路
posted by attaction at 09:27 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

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中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

ロビン・リー
中文 英文

一帯一路は中国の海外における政治経済の影響力を大幅に引き上げる外向型発展戦略であるが、それはまた国内にも大きな影響をもたらす。前稿(こちらhttp://attaction.seesaa.net/article/452765275.html)のように、一帯一路の目的のひとつが生産能力の過剰を解決するなどの国内問題であるという面があるが、他方で、中国企業による海外投資の利潤回収だけが、この戦略の成否を判断する基準となるともいえる。一帯一路の計画によれば、この戦略はさらなる貿易と投資の機会をもたらすのであり、国内の繁栄の発展を促すものとされている。確かに一帯一路は中国のすべての省と自治区(以下、省区)の発展と改革を支持する意図を持っているのである(原注1)。

この計画では、それぞれの省と自治区は、それぞれ独自の役割を果たすとされている。多くの省区ではそれに対応する地方開発計画が制定されている。顕著なのは新疆ウィグル自治区と福建省である。両者の地理的位置によって「核心地区」に認定されている。新疆は中央アジア、南アジア、西アジアに対する「西側の窓口」と中国西部の金融中心とされた。福建省は海のシルクロードにとっても重要な位置づけであり、物流、運輸、海運業のさらなる発展を期待されている。重慶(直轄市)、陝西省、四川省、雲南省の西部地区は新疆とあわせて、インフラと都市化計画を重点的に発展させ、国際貿易の機会を拡大する。甘粛省、寧夏省は新疆とともに良好な自然環境と農業資源を有していることから、それらの産業の発展を目指している。福建省、広東省、江蘇省、浙江省などの東部の沿海省は、金融や専門サービス、航空物流、ハイエンド製造業、eビジネス、医療保険、バイオテクノロジーなどのハイテク産業の発展が期待されている(原注2)。

中国各地の発展の不均衡ゆえに、一帯一路の一部のプロジェクトは発展途上地区の開発を進めることを目的としている。この目的も極めて重要視されている。というのも中国共産党の支配の正当性と中国社会の安定は、かなりの程度において経済成長と就業形態の安定に依拠しているからである。しかし近年、経済成長の鈍化の圧力がこれらの安定を脅かしている。

新疆は以上のような発展途上の状況にある。前述のように、一帯一路と中国−パキスタン経済回廊の政府の計画によって経済効果がもたらされる可能性がある。しかし他方で、中国政府はウィグル人を厳しい統制下におき、抵抗には弾圧で応えており、それにくわえて他の地区から多くの移民を新疆に送り民族同化をおこなっている。このような政策によって新疆は極めて不安定な地区になっている。

「ウィグル人権プロジェクト」という団体が発表したレポートは、一帯一路およびそれが新疆にもたらす影響を報告している。レポートでは、中央政府がこれまでインフラ建設、投資、移民を奨励した発展戦略―たとえば大西北開発(1992年)、西部大開発(2000年)、新疆工作フォーラム(2010、2014年)―は、ウィグル人の経済状況を改善しなかっただけでなく、その分散化が促進され、さらにはウィグル人が開発計画の策定に関与する権利を奪われていたとされている。このレポートでは、一帯一路とそれまでの国家主導の発展モデルは継承関係にあるので、ウィグル人の文化的アイデンティティを阻害し、同化と周辺化がさらに加速され、投資利益もウィグル人が公平に享受できないだろうと分析している(原注3)。レポートでは、新疆研究と中国の台頭を研究しているマイケル・クラークの分析を紹介している。

「2008年以降、ウィグル人とチベット人の中国統治者に対する抵抗はさらに激化しており、それがこの地域の経済発展と現代化の進展をさらに加速させる必要を北京に迫っている。なぜならこれがかれらを現代中国に融合させる主要な手段だからである」(原注4)

漢人の研究者の王力雄は、著書『私の西域、あなたの東トルキスタン』で、上記の批判者が提起した問題を指摘している。つまり中国政府は新疆のいわゆる現代化計画において、ウィグル人が政策決定の過程に参加する権限を保障しておらず、少数民族にとっての本当の権利も享受できてないという指摘である(原注5)。

一帯一路は比較的新しい政策であることから、現在のところ全面的評価を下すことは困難である。しかし中国の過去数十年の開発の結果は次の疑問を提起させずにはおかない。大多数の中国人が一帯一路の成果を享受し、本当の意義での有効性を獲得することが、果たして本当に可能なのか、という疑問である。1980年代以前は、中国の経済的不均衡の程度は大きくなかった。改革開放以降、経済的不均衡は拡大しはじめ、現在は世界でもっとも格差の大きな国家のひとつとなっている。2000年以降、中国政府はジニ係数[格差指数]の公式発表を停止した。しかしいくつかの統計では2012年のジニ係数は0.73、あるいはそれ以上の数値を示している。これは人口のなかで最も豊かな1%の人間が、全国の富の三分の一を保有していることを意味している(原注6)。

また急速な経済成長と開発によって、自然破壊と環境汚染が中国における深刻な問題になっており、民衆の健康に深刻な影響を及ぼしている。大気を例にとれば、大量の燃料用石炭と工業生産、自動車の排気ガスが増加し、中国の多くの大都市でスモッグが発生している。とくに北方でそれは深刻である。南京大学環境学院が2016年に発表した研究では、中国の市民の死亡原因の三分の一近くがスモッグと関連があるという(原注7)。別な報道では、中国の地下水の60%以上がすでに汚染されているという。原因の大半は工場からの排水と化学品による汚染だという。グリーンピースの指摘では、中国では3.2億人が清潔な水を得ることができていない(原注8)

中国政府がこの発展の方向性を近い将来に変更するという兆候はみられない。一帯一路は、海外投資によって国外の生態系と住民に悪影響を及ぼすだけでなく、中国国内においても、これまでの開発戦略と同様に、エリートの利益と共産党支配の擁護を目標の主眼に置いていることから、庶民と環境への影響が劇的に好転することはないだろう。


原注(英語版とは若干の差異がある:訳注)
[1] One Belt One Road: A role for UK companies in developing China’s new initiative, China-Britain Business Council.
[2] One Belt One Road: China-Britain Business Council and 2015 OBOR action plan http://en.ndrc.gov.cn/newsrelease/201503/t20150330_669367.html.
[3] End of the Road: One Belt, One Road and the Cumulative Economic Marginalization of the Uyghurs, Uyghur Human Rights Project, March 2017.
[4] Ibid p20 and Understanding China’s Eurasian Pivot, Michael Clarke, 10th September 2015, The Diplomat: www.thediplomat.com/2015/09/understanding-chinas-eurasian-pivot/.
[5]《我的西域,你的東土》, 大塊文化,台北,2007年。
[6] 北大報告:中國1%家庭佔有全國三分之一以上財產,人民網
2014年7月26日, http://news.163.com/14/0726/05/A22CNRP90001124J.html
[7] Smog linked to a third of deaths in China, study finds. Alice Yan. 22nd December 2016. South China Morning Post. http://www.scmp.com/news/china/society/article/2056553/smog-linked-third-deaths-china-more-deadly-smoking-study-finds.
[8] World Water Day: 10 facts you ought to know. Ma Tianjie. 22nd March 2013. Greenpeace. http://www.greenpeace.org/eastasia/news/blog/world-water-day-10-facts-you-ought-to-know/blog/44439/.
タグ:一帯一路
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2017年08月16日

中国の一帯一路がグローバル化2.0なのか? それは自然環境にどのような影響をあたえるのか

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中国の一帯一路がグローバル化2.0なのか? 
それは自然環境にどのような影響をあたえるのか


ロビン・リー
中文 英文

 中国が2013年末に初めて「一帯一路」発展戦略を提起して以来、より多くの国際的注目を受け、ますます多くの国々が中国とのあいだで関連する連携協定を締結している(原注1)。「グローバリゼーション2.0」と称されるこの提起の趣旨は「シルクロード経済ベルト」(一帯)と「海のシルクロード」(一路)の建設を通じて、アジア、アフリカ、ヨーロッパのあいだで連携、貿易、インフラ建設のネットワークを発展させるというものである。これによって世界経済に大きな影響を及ぼすとともに、中国の国際的な政治と経済の利益をさらに拡大するものになるだろう。多くの政府と企業がこの政策を歓迎しているようにみうけられる。というのも彼ら自身にもチャンスをもたらすと考えられているからだ。彼らは、政治エリートと資本が最大限の利益を獲得できように、それに対応する戦略を策定した。だがこの政策が民衆と我々の生活世界に対して与える影響については、より厳しい分析と判断が必要である。なかでも中国が「一帯一路」を通じて推進するグローバリゼーションが自然環境にとってどのような意味を持つのかは、極めて注目すべき分野の一つである。

「一帯一路」に関する政府文書や声明は、いずれも気候変動対策と環境保護の必要性が指摘されており、この戦略を実施する際にはエコ建築と投資が環境の及ぼす影響に配慮することを約束している。さらに中国は「一帯一路」を通じて、他の途上国の持続可能な発展の実施能力の向上支援も可能になると論じる評論家もいる。いずれにしても、政府の声明において、いかに環境の持続性を確保しながら投資プロジェクトを実施するのかという明確な政策指導は基本的には示されていない。実際には、現有のプロジェクトの実施状況および今後発生する可能性のある影響を詳細に分析すれば、「一帯一路」が自然環境に対して深刻な影響を構成し、自然環境の後退、汚染、自然資源の枯渇をもたらす可能性があり、さらには「一帯一路」の沿線諸国の人口構成に不利な影響を与えることになるかもしれない。

中国国家発展・改革委員会が2015年に公表した「シルクロード経済ベルトと21世紀の海のシルクロードの共同建設の展望と行動を推進する」のなかで、風力エネルギーと太陽光エネルギーなどのクリーンで再生可能なエネルギーへの投資と協力を推進することを約束しているが、同時に「石炭、石油、天然ガス、金属鉱物、その他の従来のエネルギー資源の調査と開発」の協力についても強化する、とされている(原注2)。

石炭投資についていえば、中国はすでに多くの海外投資プロジェクトに参加している。地球環境研究所(Global Environment Institute)の統計によると、2001年から2016年までに、中国は「一帯一路」諸国域内の240の石炭火力発電プロジェクトに参加しており、そのうちインド、インドネシア、モンゴル、ベトナム、トルコの五カ国のプロジェクトへの参加が最も多くなっている(原注3)。パキスタンの石炭火力発電への投資はさらに注目するに値する別のケースである。それは中国−パキスタン経済回廊の一部であり、中国はこの投資に数十億ドルを投じており、そのうちガシム港電力発電所は中国が海外で行う石炭火力発電投資のうちでも最大の投資額である。つまり、世界中が気候災害に直面し、炭素密集型エネルギーの使用をただちに減少させなければならないにもかかわらず、「一帯一路」は海外での化石燃料の使用を引き続き拡大させるのである。それゆえこの戦略は環境の持続可能な発展という約束と相反することになる。

また、中国のクリーンエネルギーと再生可能エネルギーにかんする約束も、いま以上に原子力発電――このエネルギーは環境と人類の安全にとってのリスクとなっている――を使用することを含んだものである。原子力発電を拡大させている中国は、安全基準の低さに批判が集まっている。中国の水力発電投資においても環境リスクをもたらす。大規模ダムは自然環境を破壊し、生物多様性に大きな影響を及ぼす。また巨大ダム建設によってその地を追われる住民への社会的影響については言うに及ばずである。中国は国内外ですでに多くのダムプロジェクトに参加している。2010年までに49カ国の200余りのプロジェクトにかかわっており、その多くが世界でも最大規模の水力発電所である(原注4)。そのうちのいくつかのプロジェクトについては、多くの懸念が示されている。三峡ダムプロジェクトを例にとれば、このプロジェクトでは2300万人の住民が移転し、環境や住民の生活用水にも悪影響を与えた。国外では、カンボジアのメコン流域の大型ダムプロジェクトにおいても、人類と自然環境にとって脅威を与えており、十分な環境評価が行われることなく、プロジェクトが開始された(原注5)。

新シルクロード経済帯と海のシルクロードが通過する地域の多くは、自然環境が脆弱であり、資源も非常に希少であることから、気候変動と人類の活動にとってもさらに悪化が懸念される。一部の地域では住民の移転が問題になっているが、新しいプロジェクトによって沿線の多くの地区に人口が集中することで、さらなる自然環境の破壊が懸念されている。このような脆弱性は、一帯一路戦略がもたらす懸念の一因となっており、環境の持続可能性にもとづいて「一帯一路」投資を行うのであれば、この種の脆弱性にたいする厳しい分析と評価が必要となろう(原注6)。たとえばタンザニアのバガモヨでは、アフリカ最大の港湾建設の計画があるが、周辺地域では絶滅に瀕するマングローブと地元住民の漁場があり、住民の生計への影響や敏感な環境条件が存在している(原注7)。またロシアでは、環境団体が中国資本によるザバイカエリでの潜在的な影響を指摘している。この投資プロジェクトはアマジャル林−パルプ一体化プロジェクト(原注8)とポクロフカ−ログノフ港湾プロジェクトと関連しており、どちらも黒竜江省の「一帯一路」の重要な構成部分とされている。正確な環境影響評価を欠いたまま、プロジェクトに関連して伐採とダム建設が始まっているが、これは資源の枯渇と現地の豊富な生物多様性を破壊する可能性がある(原注9)。

実際、環境の汚染と破壊の問題は中国資本による海外投資プロジェクトに対する信頼を喪失させているのかもしれない。中国が「世界の工場」となるにつれて、アフリカは自然資源の原産地として中国にとってますます重要になっている。というのも中国国内だけでは石油、天然ガス、鉱物、木材などの資源を十分に提供することができないからである。中国企業はときには現地の腐敗役人と結託し、環境破壊を行い、現地の環境法に違反しているという指摘もなされている。たとえば中国石油化工工業が2005年にガボンで石油埋蔵調査をした際にガボンの国定自然公園と熱帯雨林を広範囲に汚染した事件は、多くの非難を巻き起こした(原注10)。

注目すべきは、中国政府は中国海外企業が海外投資プロジェクトの多くで真剣な環境影響評価を行っておらず不評であることを受けて対策に乗り出したことである。しかし中国商務部と環境保護部が2013年に共同で公表した「対外投資協力における環境保護ガイダンス」は法的強制力がなく、海外経営をおこなう中国企業に対する拘束力に乏しい。これは投資受け入れ国側に環境基準を制定させて(多くの諸国で環境基準は緩い)、企業それぞれに各自の企業の社会的責任(CSR)、もしくはアジア開発銀行などの融資機関(原注11)の基準を順守させることを期待している、ということを意味する(しかしこれらの基準では環境は守れないだろう)。

さらに注目すべきは、「一帯一路」の目標のひとつ、鉄鋼やセメントなど、中国の高汚染産業の過剰生産能力を国外に吸収させるという目標である。しかしこれは国内の過剰生産力をさらに激化させることになるかもしれない。なぜなら海外市場の開拓によって、これらの業界では生産量を削減しなくなるかもしれないからだ。中国の地方政府も、国内の汚染を減少させる代わりに地方政府の収入も減少することになるので、生産を減少させたくないと考えている。中国は国内の過剰生産能力を吸収するために、海外で鳴り物入りの箱物インフラ・プロジェクトへの投資をおこなうことで、さらなる環境リスクを作り出すかもしれない。中国国家発展銀行と中国の商業銀行は、すでに「一帯一路」関連諸国のプロジェクトに対して数十億ドルの融資を行っている。しかしこれらの銀行は資源配分の効率化と過剰投資に関する記録においては不評を重ねている。中国国家発展・改革委員会の研究レポートによると、1997年以来、これらの金融機関の非効率投資の累計は66.9兆人民元に達しており、計画に従って実現した投資プロジェクトは60%に満たないという(原注12)。それゆえ、もしこの状況が進展すれば、「一帯一路」の投資プロジェクトの一部では、投資プロジェクトは不必要あるいは十分に活用されない可能性があり、それは世界の資源とエネルギーを浪費することになるだろう。

中国は過去において海外での環境保護にかんして不名誉な実績を記録してきたが、「一帯一路」においても明確な約束と執行メカニズムを欠いており、加えて投資と発展戦略の一部において本質的に環境に対して有害なものもある。それゆえ「一帯一路」が環境に及ぼす影響に懸念を表明することには十分な理由があるのである。中国は環境保護ではなく経済成長を優先して考慮してきたことから、自らも深刻な環境的後退に直面している。そして今また、途上国を利用して自然資源に対するみずからの需要を満たしはじめつつあるが、実際のところそれは自国の問題と環境コストの一部を他国に移転することに他ならない。このような発展経路を歩んだのは中国が最初ではないが(北米と欧州はこの歩みの長い歴史を持っている)、いかなる国家にあってもこの種の搾取的な方法を継続する理由も口実もない。我々の世界は気候の危機に直面しており、人類のある種の活動はすでに地球環境に破壊的な影響を与えており、それは人類の未来にとっても脅威となっている。われわれは公然たる透明性の努力を通じて、生態系を修復・保護し、未来の世代に居住可能な地球を残さなければならない。これは世界各国の政府と民衆が早急に取り組まなければならないことである。だが「一帯一路」はこの取り組みと相反する戦略なのである。


原注1 2017年5月現在、68の国と国際機関が関連する協定を締結している。

原注2 《願景与行動》http://www.ndrc.gov.cn/gzdt/201503/t20150328_669091.html

原注3 China’s Belt and Road Initiative Still Pushing Coal, Feng Hao, 12th May 2017, https://www.chinadialogue.net/article/show/single/en/9785-China-s-Belt-and-Road-Initiative-still-pushing-coal.

原注4 Hydropower: Environmental Disaster or Climate Saver? China Water Risk, 6th July 2010, http://chinawaterrisk.org/resources/analysis-reviews/hydropower-environmental-disaster-or-climate-saver/.

原注5 China Dams the World: The Environmental and Social Impact of Chinese Dams, Frauke Urban and Johan Nordensvard. 30th January 2014. E-International Relations.

原注6 一部の研究者は、プロジェクト実施前であっても、ベースラインを測定し、モニタリングを行う必要があるとしている。詳細はBuilding a new and sustainable ‘Silk Road Economic Belt’, Li, Qian, Howard and Wu. 2015.
を参照。

原注7 http://thediplomat.com/2015/12/the-port-of-bagamoyo-a-test-for-chinas-new-maritime-silk-road-in-africa/.

原注8 このプロジェクトの中国語資料はこちら。
https://www.banktrack.org/download/summary_chinese_and_english_of_the_dodgy_deal_information/170428_amazar_chineseenglish_summary.pdf。(中国語訳者注)

原注9 Environmentalists warn Shenzhen stock exchange about risks of Amazar “Belt and Road” project in Russia. 12th May 2017, http://www.transrivers.org/2017/1922/

原注10 China’s environmental footprint in Africa, Ian Taylor, February 2007, China Dialogue, https://www.chinadialogue.net/article/show/single/en/741-China-s-environmental-footprint-in-Africa

原注11 《商務部環境保護部関於印発“対外投資合作環境保護指南”的通知》。 2013年2月28日,中華人民共和国商務部。

原注12 ‘One Belt’ infrastructure investments seen as helping to use up some industrial over-capacity, Eric Ng, 2nd November 2015, South China Morning Post. http://www.scmp.com/business/article/1874895/one-belt-infrastructure-investments-seen-helping-use-some-industrial-over

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2017年04月26日

アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり

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アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり
ASIAN PEOPLES CALL: CHALLENGING ADBS IMMUNITY

原文(英語):https://www.forum-adb.org/registration

2017年4月20日

はじめに

アジア開発銀行(ADB)は1966年の設立以来、この地域から貧困をなくすために貢献する機関であるという幻想を流布してきた。同行は半世紀にわたるアジア太平洋地域における活動の中で、インフラ、研究、技術移転のために2500億ドル以上の融資を行ってきたと言っている。 ADBは恥知らずにも、その加盟国に不当な債務を押し付け続けている - 融資したプロジェクトや政策が破滅的な結果をもたらした場合でもである。ADBの50年にわたる活動は、人々を居住地から追い出し、貧困と栄養不良と空腹に追いやった実績を残してきた。森林、川、海、耕作地など環境のあらゆる面に破壊的な影響を及ぼし、そこを生息地とする多くの動物種や植物種の生存を脅かし、絶滅の危機に追いやってきた。ADBはまた、環境を汚染するエネルギー・プロジェクトに融資することを通じて地球温暖化に寄与したという点でも有罪である。

2017年4月19-20日にフィリピン大学SOLAIR(労働・労働関係学部)に集まった地域コミュニティー、青年組織、学生、市民団体の代表は、以下のことを宣言する。

●ADBは搾取的な開発モデルである – ADB のビジネス・モデルは国家を経済成長の基本的な推進機関とみなす偏狭な開発観である。ADBはこの考え方に基づいて、国別戦略的パートナーシップ戦略(CPS)や改革政策(構造調整計画、政策・金融・統治改革に関する技術支援)を通じて搾取するべき部門や資源を選び出し、民間部門の輸出指向型の利益追求に供してきた。ADBは貸し手の力を悪用して政府に対して慣習法に基づいて管理されている自然資源を取得するよう強制し、政府はADBに依存しているという虚偽の物語を作ってきた。それらはすべて融資を押し付け、民間部門の事業機会を開放することを目的としている。

●ADBは圧政を支持している - ADBは良い統治と民主主義について語っている。しかし独裁的で抑圧的な政権や、不安定な紛争地域 - ミャンマー、サモア、パプアニューギニア、インド北東部、アフガニスタン、パキスタンなどの - への融資を続けている。ADBはそのような融資を通して圧政を支援し、国家機関を利用して資源を強奪し、人権を抑圧し、市民社会やすべての反対意見を圧殺することを助長している。

●ADBは偽りの解決策を提供している – 思い上がったADBは、自らをアジアにおける知識供給者であるとみなしており、この十年間はいわゆるクリーン・エネルギー投資と社会投資(保健、教育、農業)の組み合わせを通じて偽りの解決策を提供してきた。これらの投資はすべて民間資本に社会開発部門を開放するものであり、利用者にとっては料金の値上げ、格差と債務の拡大をもたらすものである。ADBはアジア・インフラ投資銀行(AIIB)との競争に脅威を感じ、国境を越えたインフラ・プロジェクトへのより無謀な融資に突き進んでおり、地球温暖化の真っ只中で環境を汚染する化石燃料への投資を続けている。ADBは人権問題への冷淡な姿勢を維持し、一貫して人権問題を否認しており、どの事業方針やガイドラインにも人権という用語を使用していない。ADBは設立50周年を迎えるが、いまだにアジア全域におけるどのプロジェクトや事業にも、中核的な労働基準を適用することを頑強に拒んでいる。われわれは長年にわたってADBの内部統治メカニズムに批判的に関与し、その中で、ADBがその方針や手続きを遵守しているか否かの最終判断がすべてADB理事会に委ねられていることを現認してきた。つまりADBは自身の行為についての調査官、裁判官、陪審員を兼任しているのであり、外部に向けた、あるいは公的な説明責任に関するいかなる義務も負っていない。ADBの免責は、国際機関としてのADBに奔放な自由を許容しているが、50年にわたって破壊的な事業実績が継続していることを考えれば、この免責に異議を唱えることが決定的に重要である。

われわれはADBの免責が各分野に及ぼしている破壊的な影響を検討した結果、次の結論に達した。

1) ダム建設への融資、住民の追い出し、環境破壊

●ADBのダム建設への融資は、現地の地域社会に多くの災禍をもたらしてきた。バングラデシュ、ネパール、キルギス共和国、カンボジア、ラオスで共通に見られることは、ADBの約束と、地上で起こった現実の差である。ラオス、バングラデシュ、キルギスタンではADBのプロジェクトは環境の破壊をもたらし、住民の生活に影響を及ぼした。

●特に、ラオスのセバンファイ川下流では、水質の劣化のために流域のコミュニティーの住民が皮膚病に罹った。環境破壊の問題だけではなく、コミュニティーの住民への補償が支払われなかったか、遅延したか、あるいは住民の苦境に対応していなかった。ADBによる地域コミュニティーとの協議は行われなかった。これらの地域におけるADBのプロジェクトは、コミュニティの利益を増進する政策を実施するのではなく、環境の悪化、生計の喪失、病気、非自発的移転をもたらした。このことはさらに、人権侵害をもたらしている。

●ラオスの事例にみられるように、影響を受けた人々は、政治的および社会的な状況のために、説明責任を求める手段にアクセスできなかった。バングラデシュとカンボジアでは苦情申し立てが行われたが、ADBの苦情処理メカニズムが迅速でないため、いまだに問題への対処は行われていない。経済成長が環境や人々の生命、生活に優先すると考えられていることは明らかだった。

2)不平等、負債、民間部門への富の移転

●ADBが融資したプロジェクトは社会・環境への負の影響に責任を負っている一方で、民間部門債務の救済や人権侵害にも責任を負っている。それは公的債務の増加、プロジェクトの遅延、目標の未達成、企業の不当なやり方からの当事者の保護の欠落、環境および健康の保全の欠落をもたらす。退去を強制された家族の移転が生活条件の回復をもたらすことはなかった。それは開発の恩恵よりも大きな被害をもたらした果たされない約束を物語っている。

●債務監査を通じてADBの免責に異議を申し立てるべきである。不当な債務を宣言する際の原則は、現在では国際的な原則とみなされている。したがって、われわれは債務返済の停止を要求し、最終的にはすべての不当な債務の帳消しを要求する。

3)気候変動と、設立50年にあたってのADBの脱炭素化

●ADBが継続的に石炭部門を支援していることは、アジアの人々を気候変動や健康および環境への危害に対してますます脆弱な立場に追いやっている。それは人々を居住地から追い出し、気候に起因する移民/気候難民になることを強制する。これは人権 - 健康的で清浄な環境への権利を含む – への重大な違反である。

●したがって、われわれはADBに対して、石炭部門への融資を中止し、アジアの脱炭素化を開始することを要求する。われわれはまた、ADBが地域社会に根ざした持続可能なエネルギーのためのプロジェクトを優先することを要求する。さらに、ADBが気候変動および気候に起因する移民/難民の対策に貢献することに全責任を負うことを求める。

4)透明性の欠如、抑圧、市民社会団体のためのスペースの縮小

●ADBは融資条件(コンディショナリティー)を課すことによって免責と不処罰の機構を拡大してきた。融資条件には民間部門との利益分配を可能にするための法律改正が含まれる。ADBは自らの政策や、国内法・政策の遵守すら保証していない。われわれはすべての政府が、企業に便益を図り、民間部門の利益に叶うために法律を改定する権限を行使するのをやめるよう求める

●ADBは人権に関わる法律や原則に違反するプロジェクトを支援するべきではない。ADBは政府と結託して軍事化と腐敗を伴うプロジェクトを推進するべきではない。ADBはそのような体制を容認、支持、支援するのではなく、抑圧的な体制による人権侵害や強制的行方不明などの重要な問題について発言するべきである。

●ADBの免責は不処罰につながり、プロジェクト開発者や国家が人々の権利を無視すること、また、企業が国内法に違反して環境を破壊することを許容することになる。ADBはそのような違反に無関係を装い、免責の背後に隠れることはできない。

5) ADBによる労働の搾取

●われわれはADBがプロジェクトの全期間を通じて労働基準違反を許容しているために民間企業が労働者の権利を尊重していないことを目撃してきた。これは特にフィリピンの例に見られる。そこでは地区の水道管理機関が、当該地区の職員や組合労働者や住民との協議なしに民営化または閉鎖された。そのため、われわれはADBが公共サービスを公共部門に戻し、公共財や公共施設の提供において公共機関間、または公共機関・住民間のパートナーシップのための、より革新的な措置を導入するよう要求する。

●ADBはいまだに中核的労働基準を導入しておらず、それが基本的な権利侵害につながっている。ADBの免責のために、これらの違反行為を現地の裁判制度の下で告発できない。したがってわれわれはADBに対して、すべての事業においてILOの中核的労働基準を尊重すること、また、労働権の侵害に対する告発から逃れるために免責を利用するのをやめることを要求する。

6) 社会的包摂と、脆弱な立場のグループに対するADBの影響

●ADBの事業には脆弱な立場のコミュニティの真の参画がない。ADBは協議に女性、障害者、先住民族などの脆弱な立場の人々を含めるための真剣な努力を払っていない。特に、障害者について、ADBはエンパワメントとアクセス可能性を強化するメカニズムをほとんど導入していない。

●移住を伴うプロジェクトのために、女性は一層貧困に陥りやすい状況にある。先住民族も、特に先祖伝来の土地において福祉の向上よりも権利の侵害を経験している。特に懸念されるのは、地域コミュニティーとの協議が強制(軍事化)を伴っているケースがあることである。いくつかの事例においては市民社会団体に対して共産主義者、テロリスト、過激派という決めつけが行われ、批判的主張をターゲットとすることで民主主義的スペースを縮小させている。

●したがって、われわれはこの問題をADBの「2030年までの道筋」戦略の検討の中で取り上げ、全範囲にわたる人権を追求することと、対話のための民主主義的スペースを広げることにより強い強調を置くことを要求する。

アジア民衆はADBの免責に異議を唱えることを呼びかける

われわれはまた、これまで述べてきた闘争および証拠は、ADBがアジアの人々に対する責任を全く果たしておらず、免責を主張し続ける根拠がないことを証明していると宣言する。今やアジアのあらゆる地域でADBの偽りの免責の主張に異議を唱える時である。ADBは借り入れ国およびその国民の開発パートナーとしての信頼を裏切っており、自らのすべての行動と影響に対して完全な責任を負うべきである。

したがって、われわれアジア民衆はわれわれの政府と国民の代表に対して、ADBの免責を剥奪し、ADBにわれわれの尊厳、権利、主権、そしてマザーアース(母なる大地)に対して行ってきたすべての行為の責任を負わせることを要求する。

posted by attaction at 10:19 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月24日

アジアの開発と環境・人権・平和を考えるシンポジウム

アジアの開発と環境・人権・平和を考えるシンポジウム

 アジア開発銀行(ADB)は「貧困のないアジア」を目指すとして、主に「開発途上国」における開発プロジェクトへの融資や技術支援等を行ってきました。しかし、「支援を受ける側」の諸国の多くの住民団体やNGO、社会運動団体は、開発プロジェクトがもたらす住民立ち退き、環境破壊、債務の拡大などの問題を告発し、もっと現地の声を聞くよう訴え続けてきました。

 5月4日から横浜で第50回アジア開発銀行(ADB)年次総会が開催されます。また、TPPの頓挫の後、注目が集まっているRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の会合が3月神戸に続き、5月上旬にフィリピン・マニラで開催されます。

 この機会に、これまでのアジアにおける「開発援助」のあり方や金融機関の活動、通商協定のあり方がアジアにおける人々の生活、人権、環境に何をもたらしてきたのかを国際シンポジウムで検証します。また、ジャスティス(社会的公正)という観点から、これからのアジア、人々の間の関係をどのように構想するのか、そしてADBや日本政府の支援のあるべき姿をアジア各国のNGOや活動家、日本の皆さんと共に考えます。5月2日には全体会を、5月3日には分科会を行い、水や食べ物の問題から気候変動、債務、労働の問題などの分野に分かれ、議論をおこないます。

 ADB総会が始まる5月4日には、各国の活動家といっしょに、会場近くでのアクションを予定しています。

<1日目>
5月2日(火)18:30-21:00(18:00開場)
[場所] 文京シビック4Fホール
[内容]
−「アジアの公正な貿易を目指して-RCEPを中心に」アフサール・ジャファリ(Focus
on the Global Southインド)
−「気候変動とクライメート・ジャスティス」ヘマンサ・ウィサネージ(FOEスリランカ)
−「壊れる村と人−グローバリゼーション下の日本の村から」大野和興(TPP
に反対する人々の運動)
−「ADBと食料主権」アルゼ・グリポ(Asia-Pacific Network for Food Sovereignty
(APNFS)、フィリピン)
[参加費] 1,000円(事前申込不要)、英日通訳付き
[定員]100人

<2日目>
5月3日(水・祝)15:00-21:00 ワークショップ(WSによって時間帯が異なります)
[場所] 文京シビック3F会議室A、B
[スケジュール]
A: 気候変動と石炭発電(ヘマンサ・ウィサネージ、CEEバンクウォッチ他)
B: 開発金融・債務(CADTMインド、PSI-APRO他)
C: 食料主権(アルゼ・グリポ他)
D: 貿易(アフサール・ジャフリ他)
[参加費] 500円(1日通しです)
[定員] 各30人
*詳細および更新情報は、以下のブログでお知らせします。
http://int.attac.jp/2017_01_01_archive.html

[主催]「アジアの開発と環境・人権・平和を考えるシンポジウム」実行委員会
(参加・協力団体: ATTAC Japan国際ネットワーク委員会、Focus on the Global South、Asia-Pacific Network for Food Sovereignty (APNFS)、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、FoEジャパン、国際公務労連アジア太平洋地域事務所(PSI-APRO)、TPPに反対する人々の運動)
[連絡先]:peopleadb50@gmail.com(担当:秋本090-9824-9081)
posted by attaction at 15:52 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年10月14日

企業をコントロールする−−多国籍企業と人権に関する国連条約を支持する理由

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企業をコントロールする
多国籍企業と人権に関する国連条約を支持する理由

原題“Controlling Corporations - The case for a UN Treaty on Transnational Corporations and Human Rights”
http://www.globaljustice.org.uk/sites/default/files/files/resources/controlling_corporations_briefing.pdf

2016年9月

[以下は英国の「グローバル・ジャスティス・ナウ」(ATTAC UK)のウェブに掲載されているレポートの全訳である(原注は割愛)。TPPを始めとする国際通商協定で企業が国家を訴えるISDS条項が大きな焦点となっているが、これに対抗して、人々が企業を訴える国際的な仕組みを作ろうという動きが広がっている。このレポートで紹介されているように、石油大手のシェブロン(旧称テキサコ)による環境破壊への賠償を求め、シェブロン側の悪辣な逆訴訟と闘っているエクアドル政府や、ISDSによって巨額の賠償金を請求されてきた「南」の諸国を中心に、ISDS条項の廃止、企業による人権侵害の訴追、タックスヘイブンの廃止等のための国連条約の制定に向けた動きが始まっており、それと連動しながらグローバルな社会運動の側でも、「企業の権力を解体するためのキャンペーン」、「条約連合」、「民衆法廷」などの運動が展開されている。注目を!]

企業の権力という問題

世界には40,000以上の多国籍企業(TNC)が存在する。この数十年の間にこれらのTNCはあまりにも大きく成長し、今では国家よりも金持ちになっている。現在、国と企業を金持ちの順に並べると、上位100のうち69が企業であり、国は31である。

これらの企業は経済のさまざまなセクターに関わっており、その活動や報告の方法はさまざまであるが、1つだけ共通する点がある。つまり、利益をすべてに優先するという責務である。

企業の権力はわれわれの政治経済の中であまりにも巨大であるため、民主主義制度や公共セクターを掘り崩す力を保持してきた。企業の投資を誘致することが政府の最優先の仕事となった。「企業の投資が失われる」あるいは「大企業がどこかへ移転する」という脅しが、増税や労働者保護の充実あるいは金融規制を導入しようとする政府の手を縛ってきた。

実際、グローバル経済は企業の利益を中心として設計されてきた – 金がいつでも、どこへでも自由に移動でき、政府が公共の利益に反する投資を規制できないようにする。WTOやIMFなどの国際経済を統括する機関はこのような企業の関心によって深く影響され、これらの機関の政策や活動は人々の権利、ニーズや環境よりも大企業の「権利」に大きな配慮を示してきた。企業は、社会を組織するためには別の方法があるという考え方そのものを無力化してきた。

企業が何をしても責任を問われないという問題は、多国籍企業が国境を超えて活動している一方で法律およびその執行が依然として基本的には国家をベースにしているという事実によって増幅される。企業は「投資裁判所」のようないかなる民主主義的責任も負わない機関による特別の「正義」を享受できるが、企業の横暴の犠牲となった人々のためには救済のための国際的なメカニズムは存在しない。国際的なレベルで企業の責任を追及する試みの大部分は、市民による自発的な活動であり、したがって現実には強制力を伴わない。

企業の権力に対して何ができるのか

企業の権力を押し返すことは容易ではない。それは長期にわたる運動である。しかし、それはわれわれが現在直面している問題を解決しようとするならば、避けられない課題である。それは不可避的に、企業がそのような権力を保持することを可能にしている構造を変革することと、既存のシステムの中で企業による権力の乱用と免責を是正することの両方を含む。

この作業の1つは、われわれが必要とする物やサービスを生産・分配するための代替の方法を開発すること、つまり大企業だけが経済を「まわす」ことができるという考え方を掘り崩すことである。食料主権とエネルギー民主主義は企業抜きで経済を確立できることの2つの例である。しかし、同時に、企業がわれわれの経済の中で一定の役割を果たす限りにおいて、われわれは企業の活動をコントロールし、企業の横暴を防止する方法を見つける必要がある。この点において国際法は非常に重要な役割を果たすことができるだろう。

企業の権力のコントロールの長い歴史

企業の権力を規制するための闘争は長期にわたる闘争であり、その途上でいくつかの重要な成果を実現してきた。

世界史上の最大の多国籍企業の1つであった東インド会社は、18世紀に英国政府の代理人としてインドを搾取し、支配したが、大衆的な非難の高まりの中でその活動を禁止された。

20世紀には、米国における独占禁止法や銀行分割から、ラテンアメリカにおける民主的に管理された産業や協同組合の形成、インドにおける難病治療のためのジェネリック医薬品の生産まで、企業の行動を規制するいくつかの成功した試みがあった。

1970年代以降には、非同盟運動に参加した「第三世界」諸国からの圧力によって国際的レベルで企業を規制するための国連条約を起草する試みがあった。そのような試みは米国やヨーロッパ諸国の政府と手を組んだ企業グループによって撃退された。彼らは拘束力のある条約や法律を避けるため、「国連・ビジネスと人権に関する指導原則」のような自主的メカニズムを提案した。

多国籍企業に関する国連条約

しかし、2013年にわれわれは新たなチャンスを与えられた。エクアドルが、85の加盟国(大部分が「南」の諸国)を代表して、国連に多国籍企業の活動を規制するための国際法の制定を求める声明を提出した。そのような国際法は、多国籍企業による人権侵害の犠牲にされようとする人々を保護し、すべての政府がそれぞれの国の企業に人々や地球環境への影響に責任を負わせるよう義務付けるだろう。

2014年6月に国連人権理事会(UNHRC)が採択した決議26/092は、「国際人権法の下で、多国籍企業およびその他の企業の活動を規制する国際的な、法的拘束力を有する法律文書」が必要であることを明記している 。そのような法律文書(国際法または条約)の概要を検討する作業グループが設立された。この作業グループは、エクアドルが主宰し、1915年7月に第1回会合を開き、2016年10月に第2回会合が開かれる。このような国連条約は企業に対する実質的かつ拘束力のあるコントロールを確立するための稀なチャンスとなるだろう。

誰が国連条約を支持しているのか

この国連人権理事会の決議は、20カ国(主に「南」の諸国)の賛成によって採択された。アフリカのアルジェリア、ブルキナファソ、アジアのパキスタン、インドネシア、南米のキューバ、ベネズエラなどである。さらに、5つの主要な「新興国」のうち4つ –ロシア、インド、中国、南アフリカ-も賛成した。残念なことに、反対した国は米国、英国、ヨーロッパの大半の国など、世界の多国籍企業の多くが本社を置いている国である。特に米国と英国は大企業をコントロールすることを目的とする国際法の制定に一貫して反対し、拒否してきた。われわれはこの立場に異議を唱える運動を緊急に起こす必要がある。

また、広範なグローバルな市民社会団体から成る条約連合(Treaty Alliance)は国連条約の制定を支持し、条約の内容が有益かつ有効なものになることを目指している。

国連条約による企業のコントロール

国連条約は大きな可能性がある。なぜなら、それは企業がこの数十年間に手に入れてきた特権を取り消し、彼らに国際人権法、国際労働法、国際環境基準の遵守を強制できるからである。国際条約は各国政府が企業の権力の問題を真剣に取り上げ、彼らが行使している権力に関わる責任を問うことを義務付けることができる。それは各国政府が多国籍企業に対処する方法の基準を確立し、多国籍企業が各国を相互に対立させて底辺に向けての競走を強いることを許さず、最小限の基準を課すことを可能にするだろう。

これは非常にラディカルな変革を意味するだろうし、人々の生活に有益な影響をもたらすだろう。条約の範囲には、市民的、政治的、経済的、社会的、文化的権利など広範な権利を含めることができる。条約は企業の以下のような有害な活動を効果的に中止させることができる。

・ 鉱山開発を通じて地域社会に退去を強制したり、地域の環境を荒廃させる。
・ 水道事業を私営化し、水道料金を最も貧しい人々の支払い能力を上回るように引き上げることによって人々の水へのアクセスを制限する。
・ 労働者を健康に有害な環境で働かせ、尊厳のある生活ができないような低賃金で働かせる。
・ 国家と結託してインターネットを検閲し、抵抗運動を弾圧し、言論の自由やプライバシーの基準を侵すような治安的手法を導入する。
・ 知的財産権を利用して命を守る医薬品を一般の人々の手に届かない価格に維持する。

国連条約はどんな内容を含むのか

条約というものは本当に意欲的である場合にだけその目標を実現できる。だからグローバル・ジャスティス・ナウは、政府が画期的な条約を締結するように圧力をかけようとする国際的な運動の連合に参加している。合意される条約は以下の内容を含むべきである。

a) 条約は企業(とその出資者)とその子会社、請負業者、供給チェーンに人権侵害に関する責任を負わせる実効性のある法律を導入しなければならない。

b) 条約は各国が多国籍企業を規制し、自国で活動しているまたは自国に本社を置いている多国籍企業が国際人権法、労働法、環境基準をはじめとするすべての人権基準を遵守していることを保証するよう求めなければならない。

c) 条約は人権が通商協定や投資条約よりも優先されることを再確認しなければならない。それは通商および投資協定が拘束力を持つ人権優先条項を含まなければならないことを意味する。

d) 条約は多国籍企業の法的責任を規定しなければならず、それには企業の経営者、執行役員、取締役の個人的責任も含まなければならない。

e) 条約は企業による条約の遵守を監視し、企業による不正行為に関する調査を実施するための国際機関を設立しなければならない。また、多国籍企業によって人権を侵害された市民やコミュニティーが参加できる国際裁判所を設立する必要がある。人権を侵害した企業の本社が外国にあるという理由で公正な裁判に訴える権利を妨げられることがないようにするためである。

f) 条約は各国が人権擁護に関わっている人々や不正を告発した人々の活動を尊重し、保護し、奨励するよう求める規定を含まなければならない。

g) 条約に関する交渉は企業の影響から隔離されていなければならず、多国籍企業が自分たちに有利なルールを作ることは許されない。

h) 条約は企業に対して賠償を求めようとする個人が、自分が居住する国だけでなく、当該企業に対して司法管轄権限を持ついかなる国においてでも裁判に訴えることを可能にしなければならない。

民衆法廷の運動

多国籍企業に責任を負わせる国際的な法的機構が存在しないため、いくつかの象徴的な「民衆法廷」が開催されてきた。市民社会の諸団体がここに結集して、企業に責任を負わせるための実現可能な方法を示してきた。

1つの例として、ローマに本部を置く常設民衆法廷(Permanent People’s Tribunal、PPT)は、企業によって権利を侵害されたが、国内の法制度を通じて救済を求めることができない人々からの訴えを審理している。PPTは70年代以来、約40件のケースを扱い、法律専門家が既存の国際法に基づいて審理を行っている。もちろん判決は拘束力がなく、基本的には象徴的なものであるが、証人が証言できる重要な機会となっている。

たとえば、2010年5月にはマドリードでヨーロッパの多国籍企業のラテンアメリカにおける犯罪に関する審理が行われた。 この民衆法廷はヨーロッパの多国籍企業のこの地域における活動の非常に典型的な例として27のケースを取り上げている。それにはブラジル・アマゾンの人々がサンタンデール[スペインの銀行]およびGDFスエズ[フランスの電力・水道企業]による水力発電所の建設が環境被害と水汚染をもたらしたことに対する提訴が含まれる。この事業はデング熱、黄熱病、マラリアの感染拡大などの健康への影響をもたらした。

2016年10月にはモンサントに対して同様の民衆法廷が開かれる。全世界から収集された証拠は、モンサントによる環境破壊の犯罪や、モンサントの製品や生産方法が農民に及ぼしてきた影響に焦点を当てている。裁判官は法的枠組みとして 「国連・ビジネスと人権に関する指導原則」を適用してそれらの証拠を検討する。

★関連情報(英語)
The campaign to dismantle corporate power (企業の権力を解体するためのキャンペーン): www.stopcorporateimpunity.org
The treaty alliance (条約連合): www.treatymovement.com

企業による犯罪のケース・スタディー
世界では多国籍企業による人権侵害が告発されているケースが何千件にも及んでいる。国連条約の下で審理が可能になる典型的なケースの例を以下に示す。
[以下はいずれも英国に本社を置く多国籍企業が関係するケースである]

1)トラフィグラ社がコートジボワールでの有害廃棄物の不法投棄に関与(2006年)
トラフィグラ社は英国に本社を置く多国籍の石油販売企業である。同社は2006年にコートジボワールで有害廃棄物の不法投棄に関与した。これは地域コミュニティーに甚大な影響をもたらした。少なくとも15人が死亡し、10万人が治療を必要とした。10年にわたってトラフィグラ社に対する訴訟が追求された。アムネスティー・インターナショナルは5000ページに及ぶ証拠を収集し、英国の当局に対してトラフィグラ社がこの不法投棄の中で果たした役割を立証した。10年間にわたって、国内の裁判所への提訴の試みが繰り返されたが、犠牲者に対するいかなる公正な補償も行われていない。

2)ボーダフォン・グループがエジプトの反独裁運動に対して通信サービスを拒否(2011年)
通信企業ボーダフォン・グループはエジプト民衆の表現の自由・集会の権利を阻害したことで告発されている。2011年のムバラク独裁政権に対する民衆蜂起の中で、多くのデモ参加者たちはソーシャル・メディアを使って人々を組織したが、ボーダフォンは政権と協力して通信サービスを停止し、人々がモバイル通信を利用できないようにした。その結果、政治的な組織化が制限されただけでなく、救急治療へのアクセスも妨げられた。エジプト住居権センターは通信の停止による損害の賠償を求める訴訟を起こしたが成功しなかった。

3)BHPビリトン社のボルネオでの石炭開発に関連する土地強奪と水危機
英国・オーストラリア資本の鉱業企業BHPビリトン社が出資するインドネシア・ボルネオのインドメット・コール・プロジェクトは、10年間にわたる土地強奪のプロセスの中心となった。この採掘プロジェクトを進めるために地元住民の土地が強奪され、また、多くの住民がこのプロジェクトによって水の供給に重大な影響がもたらされ、十分な水を得られなくなったと訴えている。住民たちは現在、自分たちの土地所有権の法律上の承認を求めている。

4)GCMリソーシズ社のバングラデシュでの石炭開発に反対する住民が殺害される(2006年)
英国の鉱業企業GCMリソーシズ社は、バングラデシュのフルバリ石炭開発プロジェクトの調査と採掘のために設立された。2006年に鉱山開発に反対する平和的デモに民間警備隊が発砲し、3人が死亡、多数が負傷した。住民たちは計画されていた50平方キロの露天掘りの炭鉱が数千人の立ち退きと、バングラデシュで最も肥沃な農地の1つであるこの地域の農地の破壊をもたらすことを懸念していた。国連の7人の人権専門家によると、このプロジェクトはこの地域の住民の水、食料、適切な住宅へのアクセスの権利など多くの権利を脅かすものだった。2012年に2つのNGOがこの問題について、企業の不法行為に関する英国代表部に提訴した。英国NCP(連絡窓口)は2年間の調査の結果、GCMリソーシズ社に企業行動基準に対する部分的な違反があったことを認めたが、プロジェクトが将来にもたらす可能性がある影響については無視した。

5)多国籍民間警備会社G4Sがイスラエルの占領政策に協力
多国籍民間警備会社G4Sはイスラエルの子会社を通じてパレスチナの占領地におけるチェックポイント(尋問所)や監獄に警備サービスおよび警備用の機器を供給しており、パレスチナ人の人権を侵害しているとして告発されている。パレスチナ人の人権を擁護する弁護士の会(LPHR)による苦情申し立ては、同社がパレスチナの子どものイスラエルの監獄への収監を助長するなどの人権侵害に関与していると主張している。


タグ:多国籍企業
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2016年06月02日

EWGならびにユーログループに対してギリシャ債務帳消しを求める書簡 EWGならびにユーログループへ、ギリシャ債務帳消しを求める書簡

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市民社会グループからEWGならびにユーログループへ、ギリシャ債務帳消しを求める書簡
2016年5月19日


原文

ユーログループ[EU財務大臣グループ]ならびにユーログループワーキンググループ[同副大臣グループ]参加者各位

昨秋、我々のうちのいくつかの組織が、ヨーロッパ15カ国53団体ならびに10万の個人署名を集め、ギリシャ債務帳消しを求める請願を提出いたしました。その請願ではさらに、強制的緊縮政策の撤廃と、債務危機を早急、公正かつ人権を尊重した形で解決する新たな制度の、世界規模での導入も要請しています。

ゆえに我々は、ギリシャ債務問題がようやくユーログループ会合の議案に含まれたことを喜ばしく思います。が、同時に、直近(5月9日)の会合で提出された草案には、深い懸念を抱いています。

提案されている債務のリプロファイリング(リスケ対象期間内に決済期日の到来する債権のみをリスケの対象とする:訳注)では、ギリシャ債務問題を迅速かつ維持可能な形で解決するには不十分です。いわゆる“コンティンジェンシー・メカニズム(緊急時対応メカニズム。経済目標が達成できないという確証が得られ次第、議会審議を経ずに即座に開始される:訳注)”は、、民主的な決定手続きを無視しており、また、ギリシャが何らかの経済ショックに見舞われた場合、同国をどん底の状況に引き落とす危険性があります。

さらに、三方面から考案された様々なリプロファイング提案(支払期日延期を含む)は、ギリシャ債務危機の真の解決をはるか遠い未来に引き延ばすものです。解決の遅れは、この問題に関与する誰の利益にもならないとわれわれは信じます。それどころか、政治的配慮から解決がぐずぐずと引き延ばされ、挙句に「あまりに少なく、あまりに遅い」債務再編しかなされなかった、という事態が再び繰り返されることになりかねません。このような政治的配慮による対策の遅れは、すでにギリシャで、そして世界中の他の債務危機において、多大の損害を引き起こしてきました。

1980年代の途上国債務危機は、加重債務にリプロファイリングで対処する政策が、債務国を維持不能な債務の重圧の下に押し込め続け、何十年も開発の機会を失わせることを立証しています。加重債務の解決と経済成長の再開をもたらすのは、現実に債務削減しかありませんでした。これは現在のギリシャにも十分当てはまります。われわれは再び声を大にして、ギリシャ債務の大幅な削減を要求します。

しかし、債務問題解決の負担を欧州の納税者が負わねばらないないとすると、それは大変遺憾なことです。これは明らかに、元々は商業(私的)債務であったものを、公的資金で銀行を救済することによって、公的支出にすり替えた結果、生じたものです。いくつかの研究(最新のものはベルリンのthe European School of Management and Technologyによる)は、トロイカの貸付の95%が、欧州内外の古い債務の返済と銀行救済に使われたことを示しています。このように使われた費用の返済責任をギリシャ市民に要求することは不当です。

しかし同時にわれわれは、ギリシャ債務危機の解決は、欧州の納税者と公的予算への負担を最小にする形で行われるべきだという数カ国の財務大臣と同意見でもあります。よってわれわれは、欧州各金融機関への弁済ならびに債務帳消しにかかる費用は、救済融資の恩恵を被った銀行に負担させるべきだという主張を再度、強力に訴えたいと思います。

EWG(ヨーロッパワーキンググループ)は、この措置のための法的技術的提案の策定を即座に開始すべきです。
われわれは、民主主義の尊重、一致と団結、そしてすべての人の人権の尊重というEUの基本的理念を反映したギリシャ債務危機解決策を、EWGが策定し、ユーログループが承認するであろうことを深く信頼しています。


敬具

Attac Finland
Attac Ireland
Both Ends
Bretton Woods Project
CADTM - Committee for the Abolition of illegitimate Debts
Centre national de coopération au développement CNCD-11.11.11
Debt and Development Coalition Ireland
Ecologistas en Acción
Ekumenická Akademie
Enabanda, Erlassjahr.de – Entwicklung braucht Entschuldung
Eurodad - European Network on Debt and Development
European Information Human Rights Centre
Jubilee Debt Campaign UK
Společenství Práce a Solidarity
War on Want
Zukunftskonvent
 
 
posted by attaction at 16:20 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年08月03日

ギリシャ債務真実委員会のレポート翻訳に向けて

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ギリシャ債務問題について、会員の皆さんにも協力してもらおうという話になりました。翻訳など、ご協力よろしくお願いします。

 + + + + +

ギリシャ、スペインの問題を皮切りにして、

(1)スペイン・ギリシャの広場占拠から続く「もうひとつの道」(8月5日、海老原さん)
(2)ギリシャ債務真実委員会の予備レポート
(3)フランスの反資本主義新党の公的債務レポート

という三回連続の学習会(トロイカ)をやりましょうか、ということになりました。ただし(2)は、レポートがギリシャ語、英語、仏語しかなく、ありません。

ギリシャ語英語仏語 

レポートは全部で9章60頁ほどあり、

 第1章 トロイカ以前の債務
 第2章 2010〜2015年のギリシャ公的債務の展開
 第3章 2015年のギリシャ公的債務
 第4章 ギリシャにおける債務システム機構
 第5章 持続可能性に反する賦課条件
 第6章 「財政支援計画」が人権に及ぼす影響
 第7章 メモランダム(覚え書き)と貸し付け協定に関する法的諸問題
 第8章 正統性の欠如、悪質性、不法性、持続不可能性に関する債務評価
 第9章 ギリシャの公的債務の清算と一時棚上げに向けた法的基礎

という構成です。

運営委員会では、英語とフランス語なので、会員の方にお願いして読み込んでもらい報告してもらってはどうか、ということになりました。一人よりも数名で分担してもらった方が、負担も軽減されるのではないかと思っています。

国会が落ち着いた9月後半と10月に、上記の(2)と(3)の学習会を行えば三回連続の学習会になります。どちらが先になるかはちょっとまだ決めていませんが、みなさんの協力と都合次第で決めたいと思います。

具体的には、一つあるいはいくつかの章を読んでいただき、それをレジメにまとめる、という作業です。もちろん全編を通して読んでいただいた方がより理解は深まると思います。時空的に可能であれば上記の学習会に参加していただき報告もしてもらえると嬉しいです。

ということで、ギリシャ債務真実委員会のレポートに挑戦してみよう、という方がおられましたらぜひご一報ください。8月5日のイベントの時には、(2)と(3)の企画を発表したいと思っていますので、ぜひご協力を。

こちらのattacフランスのサイトに、ギリシャ債務についてメディアで言われていることに対する反論「ギリシャ債務8つの誤解」というQ&Aと、それをもとにして(?)つくったアニメ・ビデオ・クリップ「ギリシャ危機の三つの神話」が公開されています。けっこうわかりやすそう。


 
posted by attaction at 09:39 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年07月06日

ギリシャ:反対票のみごとな勝利

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反対票のみごとな勝利

エリック・トゥサン

ギリシャ公的債務真実委員会の科学コーディネーター
CADTM[第三世界債務帳消し委員会]国際ネットワーク代表世話人

 「反対」票のすばらしい歴史的な勝利は、ギリシャの市民が債権者からの恐喝を受け入れるのを再び拒否したことを示すものだ。ギリシャ議会が創設した公的債務真実委員会の予備的報告が示したように、不法であくどく正統性のない債務に対し、国家が一方的に支払いを猶予したり、拒絶したりすることを認める法的論拠が存在している。

 ギリシャのケースでは、こうした一方的行為は以下のような論拠に基づいている。

●国内法や、人権に関する国際的義務を違反するようギリシャに強制した債権者側の背信
●前政権が債権者やトロイカ(EU、欧州中央銀行、IMF)との間で調印したしたような協定に対する人権の優越
●その抑圧性
●ギリシャの主権や憲法を無法にも侵害する不公正な用語
●そして最後に、故意に財政的主権に損害を与え、あくどく不法で正当性のない債務を引き受けさせ、経済的自己決定権と基本的人権を侵害する債権者の不法行為に対して国家が対抗措置を取る、国際法で認められた権利

返済不可能な債務について言えば、すべての国家は例外的な状況において、重大で差し迫った危機に脅かされる基本的利害を守るために必要な措置に訴える権限を、法的に有しているのである。

こうした状況の中で、国家は未払い債務契約のような危険を増大させる国際的義務の履行を免除されうる。最後に諸国家は、不正な行為に関与せず、したがって責任を負わない場合には、自らの債務の支払いが持続不可能な時に一方的に破産を宣告する権利を持つのだ。

CADTM@facebook

その他、日本語の資料としてはalterglobe.netのギリシャ関連情報など参照
 
▼左からチプラス首相、エリック・トゥーサン、ゾーイ議会議長
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posted by attaction at 10:16 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年06月03日

ネパールの債務の全面的で無条件の帳消しを! ジュビリーサウスからの呼びかけ

ネパールの債務の全面的で無条件の帳消しを!

5月22日

債務と開発に関するアジア民衆運動/ジュビリーサウス


原文(英語)
http://cadtm.org/Total-and-Unconditional-Debt

債務と開発に関するアジア民衆運動(APMDD)とその加盟団体、ジュビリーサウス・ネットワークの仲間たち、そして国際社会の中のパートナーたちは、4月25日と5月12日の地震のあと、生存のために苦闘し、想像を絶する荒廃と苦難と損失に立ち向かっているネパールの人々と共にあります。

またもや、巨大な災害によって、貧困と剥奪の下で生きている人々が直面しているひどい脆弱性に注目が集まり、世界がそれを思い知らされることになりました。最初の地震だけで8000人近くの人が死亡し、さらに多くの人々が行方不明、負傷、飢え、ホームレスの状態に置かれました。

ネパールは後発発展途上国(LDC)の1つであり、国連の人間開発指数の底辺に近く、187カ国中145 番目です。 2014年からのわずかな改善も地震によってほぼ一掃されてしまいました。アジアでは10億人以上の人々が極端な貧困レベルを辛うじて上回る1日1.25ドルから2.50ドルの所得で生活しており、ネパールはアジアの多くの貧困国の1つです。すでに何重もの社会経済的剥奪の下に置かれてきた彼ら・彼女らは、大災害や危機に直面して、以前よりも一層深刻な貧困に陥る大きな危険にさらされています。

ネパールは38億ドルの対外債務の返済のために、2013年だけで2.13億ドルを債権者に支払わなければなりませんでした。この債務はネパールの人々を貧困から脱出させるためにはほとんど役に立っていないにもかかわらずです。債権者の中には世界銀行とアジア開発銀行が含まれます。これらの銀行の融資は、地域共同体を追い出し、環境を破壊し、民間セクターの社会サービスへの投資を優遇するようなプロジェクトにのみ使われ、ネパールの人々を借款と援助への経済的依存の状態に縛りつけてきました。たとえばアジア開発銀行の水プロジェクトへの「譲許的融資」は、中央政府から地方政府にわたるまでにいくつかの段階を通り、そのたびに金利が高くなっています。

ネパールの災害はIMFの災害抑制救援基金(CCR基金)の適用を受けると考えられます。これがネパールの人々の苦難を軽減するかも知れないことは認めるとしても、困窮している人々の救済に条件を付けるような邪悪な行為について指摘しておかなければなりません。救援が実質を伴うためには、IMFはネパールの、2015年が支払期限となる1000万ドルをはじめすべての債務をただちに、無条件で帳消しにするべきです。

IMFはその顧客である国家を通じて強制される財政上の条件をますます厳しくすることによってアジア地域全体に荒廃をもたらしつつある。それは貧困層に不当な負担を強いる消費税の導入から、公共支出の削減、公共セクターのレイオフ、社会サービスの民営化やその他の形での経済の再編まで広範囲にわたっています。その悲劇的な結果として、貧困と不平等の一層の深刻化、今日における広範な人権侵害がもたらされており、それらはすべて「南」の人々にとってあまりにも明白な現実となっています。

私たちはネパールのすべての債務(多国間、二国間および民間)について、国際金融機関、政府および政府の開発融資機関、民間・商業銀行および投資家を含むすべての債権者がただちに、完全かつ無条件に取り消すことを求めます。

私たちはこの重要な時にあたって、ネパールの人々に連帯し、民衆組織/社会運動として、緊急の援助を呼びかけ、公平で、人間的で、持続可能な社会の建設に向けての闘いを進めるために断固とした集団的な努力を払うことを約束します。


第一次賛同団体:

地域および国際的ネットワーク
Asian Peoples’ Movement on Debt and Development (of the Jubilee South network)
LDC [Least Developed Countries] Watch
Migrant Forum in Asia
South Asia Alliance for Poverty Eradication (SAAPE)
CADTM International

バングラデシュ
Bangladesh Krishok Federation [Bangladesh Peasant Federation]
Coastal Association for Social Transformation Trust (COAST)–Bangladesh
Equity Equity The capital put into an enterprise by the shareholders. Not to be confused with ’hard capital’ or ’unsecured debt’. and Justice Working Group (EquityBD)–Bangladesh
​Sushasoner Jonny Procharavizan (SUPRO) Bangladesh
Community Development Library–Bangladesh
Jatiyo Sramik Jote–Bangladesh
Society of Development and Education for Small Households (SoDESH)–Satkhira, Bangladesh
Voices for Interactive Choice and Empowerment (VOICE)–Bangladesh

インド
Environics Trust
Indian Social Action Forum (INSAF)
Nadi Ghati Morcha–India

インドネシア
Aksi! – For Gender, Social and Ecological Justice
Koalisi Rakyat untuk Hak Atas Air (KRuHA) [People’s Coalition for the Right to Water]–Indonesia
debtWATCH Indonesia
Solidaritas Perempuan [Women’s Solidarity]–Indonesia

マレーシア
Monitoring Sustainability of Globalization–Malaysia

パキスタン
Pakistan Kissan Rabita Committee [Pakistan Peasants’ Coordination Committee]
Pakistan Fisherfolk Forum

フィリピン
Aniban ng Manggagawa sa Agrikultura [Alliance of Agricultural Workers]–Philippines
Freedom from Debt Coalition–Philippines
KATARUNGAN–Philippines
Philippine Movement for Climate Justice
RightsNet–Philippines
Sanlakas Pilipinas
Koalisyong Pabahay ng Pilipinas

ネパール
All Nepal Women’s Alliance
Campaign for Climate Justice–Nepal
Jagaran Nepal
Right to Food Network–Nepal
Rural Reconstruction Nepal

スリランカ
Centre for Environmental Justice/Friends of the Earth Sri Lanka
 
 
posted by attaction at 09:56 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年05月13日

ギリシャの抵抗する人々と公的債務真実委員会を支持するアピール

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第三世界債務帳消し運動(CADTM)パキスタンのサイード・アブドル・ハリク(Syed Abdul Khaliq)さんからの要請です。原文(英語)、世界各国の賛同者のリスト、署名フォーマットは

http://cadtm.org/Appeal-to-support-the-Resisting

拡散に協力をお願いします。

喜多幡




署名を!
ギリシャの抵抗する人々と公的債務真実委員会を支持するアピール


CADTM(第三世界債務帳消し国際運動)のアブドル・ハリクさんより

全ヨーロッパと全世界の人々へ

緊縮政策に反対し、不当な公的債務 – 私たちの知らない所で、私たちの利益に反して合意され、私たちを窒息させようとしている – の返済を拒否するすべてのみなさん。

このアピールに署名する私たちは、2015年1月25日の選挙での投票を通じて、北半球で初めて緊縮政策の政治 – 人々の知らない所で、人々の利益に反して、トップの地位にある人たちによって取り決められたいわゆる「公的債務」を返済させるために押し付けられた – を拒否した最初の国民となったギリシャの人々を支持します。同時に私たちは、ギリシャ国会議長の提案によってギリシャ公的債務真実委員会が設立されたことを、ギリシャの人々だけでなくヨーロッパおよび全世界の人々にとって非常に重要な歴史的出来事であると考えます。

実際、ギリシャ国会の真実委員会 – 全世界のボランティアの市民によって構成されている - は他の国でもモデルとされるでしょう。なぜなら、第一に債務問題はヨーロッパと全世界の大半を苦しめている災禍であり、第二に何百万人もの人々が的確にこの債務について基本的、根本的な疑問を提起しているからです。

「この融資は何に使われたのか? 融資にはどんな条件が付いていたのか? 利子がどれだけ払われたのか、どんな利率か? 元金はどれだけ返済されたのか? 元金はどんな方法で返済されたのか? 人々の何の利益ものたらさない債務がどうやって累積したのか? 元金はどこへ行ったのか? どれだけが不正利用されたか、それは誰によってか、どういう方法でか?

さらに、誰が、誰の名義で融資を受け取ったのか? 誰が、どういう立場で融資を認めたのか? それに国家はどのように関わったのか? どのような決定によってか、また、どのような承認手続きによってか? 私的な債務がどうやって公的債務になったのか? 誰がそんな不適切な仕組みを作ったのか、誰がそれを後押ししたのか、誰がそこから利益を得たのか? その資金でどんな違法行為や犯罪が行われたか? なぜ、その民事、刑事、行政責任が問われてこなかったのか?」

これらの疑問はすべて、委員会 - 「公的債務の出現と不釣り合いな増大に関連するすべての情報を収集する」権限を公式に与えられている – によって徹底的に分析され、科学的な精査が行われ、それによって債務に関する覚書の対象期間 (2010年5月から2015年1月)、および先行する期間における債務のどれだけの部分が不正または違法、不当、もしくは持続不能であるかが判断されます。委員会は正確な情報を公表しなければならず、それはすべての市民に公開され、債務帳消しの正式の宣言を支持する根拠を示し、ギリシャの人々、国際社会、国際世論の中での理解を増進し、最終的に論点と要求を書き上げなければなりません。

私たちは、これらの疑問に対する明確で正確な回答を要求することがすべての市民の最も基本的な権利であると考えます。私たちはまた、この疑問への回答を拒否することは、「債務システム」 - 金持ちを一層金持ちに、貧しい人々を一層貧しくするためのシステム – を考案し、利用している最高責任者における民主主義と透明性の否定を示すものと考えます。さらに悪いことには、この最高責任者たちは、社会の運命を自分たちの手に独占しつづけることに汲々として、圧倒的多数の市民の決定権だけでなく、自分たちの運命と人類の運命を自分たちの手に取り戻す権利を奪っている。

だから私たちは、このかつてなく非民主主義的で、非人道的な新自由主義のヨーロッパを拒否するすべての市民、社会運動、エコロジーやフェミニストのネットワークと運動、労働組合、政治団体に、以下の緊急のアピールを発しています:

ギリシャの公的債務真実委員会とその活動 – ギリシャの公的債務の内、違法、不当、不正、持続不可能な債務を明確人する – を支持することによってギリシャの人々の抵抗運動に連帯を示そう。

公的債務真実委員会とその活動を、ギリシャ国内および全世界の、「債務システム」に関する真実を隠蔽しようとしているすべての勢力からの激しい攻撃から守ろう。

ヨーロッパや世界各地で取り組まれている市民の債務監査に積極的に参加しよう。

あなた方の支持、連帯をあなた方の社会的ネットワークで共有しよう。なぜなら、この支持と国際連帯こそが、私たちの共通の敵、緊縮政策と私たちを絞め殺そうとしている債務に対して闘っているギリシャの人々に対する支配権力の攻撃を止める唯一の手段だからです。

私たちの敵は、経験豊富で、団結していて、見事に連携していて、強力な権力を持っており、私たち – 私たちの社会の圧倒的多数を占める人々 - に対する攻撃を最後までやり遂げることを固く決意しています。私たちはバラバラになって、それぞれが自分の領域だけで闘っているという余裕はありません。だから、ギリシャの抵抗闘争との連帯、ギリシャ国会の真実委員会への支持、そしてそのような債務監査委員会を可能なあらゆる所へ広げるための巨大な運動へと私たちの力を統一しようではありませんか。なぜならギリシャ人民の闘争とその勝利は私たちの闘争であり、私たちの勝利であるからです。団結こそが私たちの唯一の力です。団結すれば私たちは抵抗でき、分裂すれば倒れる。

サイード・アブドル・ハリク
(Syed Abdul Khaliq)

Executive Director,
Institute for Social & Economic Justice (ISEJ)
Focal Person, (CADTM) Pakistan




参考:反新自由主義の改革に着手するギリシャ新政権
「労働情報」誌5月1/15日合併号より)


トロイカの圧力に抗し、圧倒的支持を背景に緊縮政策の撤回へ

シリザ政権は4月1日、EU・欧州銀行・IMF(トロイカ)が緊急融資の期限である4月末以降の融資継続の条件として提出を求めていた財政改革計画を提出した。

トロイカ側は前政権の下で進められてきた緊縮政策・新自由主義的な「改革」の継続を強く要求しているが、シリザ政権が示した計画は課税の強化・脱税の防止などにより税収を確保しつつ、前政権による「改革」や緊縮政策については撤回する方向を示している。

課税の強化については、海外への送金・税回避に対する監査の実施、石油・タバコ・酒類の不正な輸入の取り締まり、多国籍企業に対する「OECD移転価格ガイドライン」の厳格な適用、付加価値税の徴収強化のため領収書発行の奨励(受け取った領収書を提示した消費者に対して宝くじを発行する)、テレビ広告税・富裕税などの新税やテレビの周波数割当料の導入等の措置が、その効果額と共に示されている。

民営化については、前政権の下で行われた民営化が失敗していることを指摘し、今後はケース・バイ・ケースで進めていくとしている。

労働市場改革をめぐっては、中小企業等で就労に関して届出が行われていないケースがこの4年間に急増していること、団体交渉の規制が悪影響をもたらしていること[最低賃金以下でのアウトソーシング(外注)など]を指摘し、団体交渉権の確立、企業の法令順守の監視、最低賃金の段階的引き上げ、労働法制の整備等の計画を示している(英国の「フィナンシャル・タイムズ」紙が電子版4月5日付で公表)。

欧米のメディアは、EUがこの計画を受け入れず、シリザ政権は窮地に立たされるという観測を流し、交渉の決裂、シリザ政権による解散・再選挙あるいはEU離脱の可能性について書きたてている。ギリシャからの資本の流出も続いている。

しかし、世論調査によるとギリシャ国内で新政権の支持率は75-80%に達しており、現時点で再選挙が実施された場合に前政権の与党の壊滅的な敗北が確実である。また、EU離脱については反対が圧倒的に多数であり、シリザもEUとの協調を強く意識している。

一方、IMFのラガルド総裁自身が、13年6月に「IMFは緊縮政策がギリシャにもたらす損害について認識していなかった」と認めており(英国「ガーディアン」同年6月5日付)、EU内のイタリア、フランスなどの有力国も緊縮政策の軌道修正を求めている。

シリザ政権はすでに、「一方的措置を認めない」というトロイカの圧力をはねのけて、緊縮政策からの転換の第一歩を踏み出している。最初の法案として、3月18日に最貧層へのフードスタンプ支給、電力料金無償化などの支援に関する法案が可決された。この措置には総額約2億ユーロが割り当てられる。この法案はギリシャがこの5年間で初めて、トロイカの指図を受けずに制定した法律だと言われている。こうしてギリシャの人々は尊厳と主権の回復を実感しはじめている。

不正な債務の監査がスタート、返済拒否を射程に

3月17日、国会議長が記者会見で、債務監査委員会の設立を発表した。これは財政危機の深刻化の中で市民グループが提唱してきたものである。

ギリシャの公的債務の多くの部分は国際的な金融機関(主にドイツの銀行)が仕組んだものであり、法外な金利や、金利支払いのための新たな借款という循環の中で膨れ上がったものである。また、国の規模や周辺国との関係と不釣り合いな巨額の兵器輸入(主にドイツ、フランスから)のための借款など、ギリシャ経済や国民に何の利益ももたらしていない借款が大部分である。

同委員会には、ソフィア・サコラファ欧州議員、ゲオルゲス・カトロウガロス機構改革相のほか、CADTM(第三世界債務帳消し委員会)のエリック・トゥーサン氏など市民グループの活動家も参加する。4月4日に最初の会合が開かれ、6月に債務返済の要求に対するギリシャの立場を明確にした予備的レポートが発表される。全体の監査は12月までに完了する。政府は、監査の結果に基づいて、不当な債務の返済を拒否することを射程に入れている。

エリック・トゥーサン氏によると、これまでにも債務の帳消しは多くの事例があり、多くの場合、その後の経済復興あるいは経済発展の出発点となっている。最近では、トゥーサン氏自身も関わったエクアドルの例がある(CADTMのウェブ等より)。

シリザ政権はまた、ドイツ政府に対して第二次世界大戦に関連する賠償に言及することによって、執拗に債務返済を迫るメルケル首相を牽制している。

4月8日にはチプラス首相がロシアを訪問し、プーチン大統領と会談した。シリザ政権はEUの対ロシア制裁に反対し、ロシアとの貿易の再開を目指している。イタリアのレンティ首相も同様の動きを行っている。

対決の第2ラウンドへ


2月のトロイカとの融資継続に関する交渉では、トロイカ側の強硬な姿勢を前に、新政権側は債務返済の確約と前政権による約束の尊重の代償として4月までの融資延長を確保するのが精一杯だった。政権内外で新政権の「現実路線」への批判あるいは危惧が語られはじめた。

シリザの外交・防衛委員会の書記のアントニス・マルコポウロス氏はベネズエラの国際放送「テレスール」とのインタビューで次にように述べている(3月22日付)。

「現在、政府にとっての最優先課題は選挙公約を果たすことであり、2年をかけてそれを実現したい。可能であれば最初の4カ月間に、その主要な部分について実現したい。目的はもちろん、ギリシャのすべての人々の生活水準を高めることだが、国全体を変革すること、特に選挙で最も大きな期待が寄せられた部分について変革することが必要だ。それらの部分については保守的な人々からも支持が集まっている。彼らは私たちの約束の10%でも実現してくれたらうれしいと言っている」。

「最初の4カ月間に実施する政策のリストは、3月18日に議会で可決された。これは人道的危機に対応する政策を含んでいる。ギリシャの人々が、過大な負担なしに国家に税金を払えるようにするためのいくつかの措置も含まれる。また、社会権、労働権についてヨーロッパの法律やILOの基準に一致させるための措置も含まれる。・・・最初の4カ月の後は、最低賃金を引き上げていく。最初に若者の賃金、その後、徐々に全体の賃金を引き上げていく」。

こうして新政権は攻勢的にトロイカとの攻防の第2ラウンドに入りつつある。
posted by attaction at 08:32 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする