2017年09月04日

AIIBとADBの補充と協力関係について

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写真は2016年5月にADBの中尾武彦総裁(右)とAIIBの金立群総裁が両機関の協力を維持する覚書(MOU)を締結、署名した際のもの。

9月4〜5日の日程で中国・アモイで開かれているBRICsサミットにあわせて、香港で一帯一路やBRICSの問題点を議論する【一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム People's Forum on One Belt One Road and BRICS】が開催されました。南ア・元マンデラ政権の経済顧問を務めたこともあるパトリック・ボンドさんの基調講演からはじまり、これまでもADBや世界銀行などの経済政策によって影響をうけ、さらに一帯一路でも深刻な影響を受けるであろうミャンマー、スリランカ、インドネシア、インド、香港、台湾などからのスピーカーも各国における影響を論じました。今後、翻訳などで紹介したいと思います。以下は日本からの発言(15分)です。

AIIBとADBの補充と協力関係について
ATTAC首都圏(日本)

みなさんこんにちは、日本のattac首都圏という団体でオルタ・グローバリゼーション運動に参加しています。今回、日本の社会運動団体に発言の機会を与えていただき感謝しています。というのも、日本はBRICSでもなく、一帯一路の沿線諸国でもなく、またアジアインフラ建設銀行(AIIB)にも参加していませんし、日本政府は一帯一路やAIIBに対しても公然と慎重な姿勢を示しているからです。さらには、今回の発言者リストを見ると、私だけが帝国主義国からきた発言者のようですし。この国の帝国主義はかつて多くのアジア諸国――来場のみなさんの住んでる香港、中国、台湾、インドネシア、ビルマなど――を銃で抑圧し、戦後はカネで抑圧しています。そんな国からの参加者に発言の機会あたえていただいた主催者の包摂性にあらためて感謝します。

先ほど司会の區龍宇さんから、AIIBと日本主導といわれるアジア開発銀行(ADB)の比較について話してもらうとありましたが、私は専門家ではないので、比較ではなく関係性について短く提起したいと思います。

ADBは1966年に設立された多国籍開発機関です。日本政府がいわば最大の株主であり、また歴代の総裁も日本の財務相の高官が歴任しています。いわばAIIBの先輩格にあたるのですが、この「先輩」はこれまでもずっと市民社会からの批判を受けてきました。まずそのことを紹介したいとおもいます。

スクリーンに映っているのは、今年の4月に発表されたNGO Forum on ADBというNGOネットワークの声明の一部です。

◎アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり(2017年4月20日)
・ADBは搾取的な開発モデルである
・ADBは圧政を支持している
・ADBは偽りの解決策を提供している
1)ダム建設への融資、住民の追い出し、環境破壊
2)不平等、負債、民間部門への富の移転
3)気候変動と設立50年にあたってのADBの脱炭素化
4)透明性の欠如、抑圧、市民社会団体のためのスペースの縮小
5)ADBによる労働の搾取
6)社会的包摂と、脆弱な立場のグループに対するADBの影響


全文は英語ですがhttps://www.forum-adb.org/apcで見られます(日本語はこちら)。

今年の5月、ADB設立50周年の総会が日本で開催されました。その際にも日本で、ADBはこれらの問題に対して責任を回避することはできないという抗議の声をあげていました。

孔子いわく「五十而知天命」(50にして天命を知る」)だそうですが、アジア民衆の批判の声を聞けば、ADBもいくらかは自らの天命を理解したのではないか、と思います。

次の表はAIIBとADBの対比表です。しかし先ほども言いましたように専門家ではありませんし、数字上の比較はあまり面白くないとおもいますので、ここではADBとAIIBの協調関係について一点だけ提起したいと思います。

はじめに指摘しておきたいことは、ADBの最大の融資対象国は中国だということです。

昨年は中国がADBに加盟して30年です。1986年に加盟して、89年5月には北京でADB総会も開催しています。この総会で楊尚昆国家主席は祝辞を述べていますが、同じ時に北京の街頭では学生と労働者が民主主義のための声をあげていました。それから30年弱が経過しましたが、この30年は「改革開放」の時期とほとんど重なっています。「改革開放」を進める中国政府にとってもADBをはじめ国際開発金融機関との良好なパートナーシップは極めて重要でした。

AIIBの初代総裁の金立群氏は、中国財務省で80年代から国際金融畑で経験を積んできたベテランです。これまで中国政府の世銀、ADB担当などを歴任し、88〜93年に世銀副執行理事、03〜08年にはADB副総裁を務めてきました。その後、08〜13年に中国投資公司(政府系ファンド)監理長、13〜14年に中国国際金融公司会長に就任しています。金氏のあとも続けて中国の財務官僚からADBの副総裁を出し続けています。

このようにADBとAIIBの上級管理職は密接なつながりがあります。それは上級管理者だけでなく、スタッフにおいては密接という以上に、代行業務さえおこなっています。ADBの職員数3000人に比べ、AIIBは職員が100人弱ということもあり、ADBの職員はAIIBのプロジェクト準備などに関する業務を有料で支援しています。

このような「補完と協力」の関係は、高官を含むスタッフのあいだだけでなく、実際の融資業務においても同様です。

ADB総裁の中尾武彦氏は、AIIB創設前からも協力することを表明していましたし、2015年6月にAIIB創設に向けた調印が行われた際にも次のように声明のなかで述べています。

「ADBはアジアにおける長い経験と専門性を活用し、同地域が直面する膨大なインフラ需要に応えるべく、AIIBと緊密に連携し、協調融資を行っていくことにコミットしています。」

この「長い経験と専門性」がなにを意味するかは、さきほどインドネシアの先生が具体的に述べました。

この声明ののち、ADBはAIIBと協調融資でパキスタンの道路建設プロジェクトにそれぞれ1億ドルを融資することを決めています。このプロジェクトは、1,800kmにおよぶ中央アジア地域経済協力(CAREC)交通回廊の重要な一部を構成しています。そしてこれはAIIBにとって初めての融資プロジェクトになります。

同年11月にはADBとAIIBの二件目の協調融資案件として、バングラディッシュ天然化ガス生産・輸送プロジェクトへの協調融資がADBで承認されています。

このようにAIIBは誕生のときからADBをはじめとする国際開発金融との協調融資をおこなっています。この傾向は、しばらくは引き続き継続されるでしょう。

もちろん今後のAIIBが順調に発展しADBの支援が必要となったとき、ADBとAIIBの協調・補完関係がどうなっていくのかを予測することは難しいですが、すくなくとも現在の中国政府の政策が続く限り、中国マネーが世界に影響を与えるように、グローバル資本主義が中国マネーにもこれまで以上に影響を与えることは断言できます。

日米欧の中央銀行の金融緩和によって、巨額のマネーが金融機関や多国籍企業に貯まっています。一帯一路やAIIBは金融資本主義にとっても重要な資本輸出のルートになる可能性もあるでしょう。

ADBによると、アジアの途上国の経済成長を維持するには2016年から2030年までに、26兆ドルの資金が必要となるといいます。

日本をふくむ先進国のマネーは投資先を探しています。それゆえ私たち日本の社会運動もひきつづき一帯一路とAIIBの動向に注目していかなければなりません。日本帝国主義はかつては銃で、そして戦後はカネでアジアの友人たちをひどい目に合わせましたが、わたしはそのような資本主義のグローバリゼ―ションによる包摂性や持続可能性を望みません。みなさんと一緒に別な解決方法を探りたいとおもいます。

そろそろ時間のようです。このあとは食事の時間です。かつて日本帝国主義はみなさんに恐ろしい被害と飢餓をもたらしましたが、わたしはそのような歴史もここで繰り返したくはありませんので、最後に一つだけ紹介したいと思います。

国際的な債務帳消し運動である債務帳消委員会の共同代表、エリック・トゥーサンの著書『世界銀行』から、最後の一章「世銀に対する告発状」の結論部分を紹介したいと思います。

・総じて、世界銀行は世界寡占システム(一握りの大国とそこに籍を置く多国籍企業)に支配された専制的独裁機関だ。これは人類と環境に害を及ぼす国際資本主義システムの増強を担ってきた。
・富を再分配し、社会正義を重視し、自然を尊重した発展に向けて、人々の努力を後押しする民主的な新しい国際機関が早急に立ち上げられるべきである。
・世界銀行とともに、その主要な柱となっている資本主義システムのラディカルな転換が必要である。

わたしは、この結論はADBやAIIBに対しても適応できると思います。

ありがとうございました。

(了)
posted by attaction at 10:28 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする