2017年08月22日

中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

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中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

ロビン・リー
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一帯一路は中国の海外における政治経済の影響力を大幅に引き上げる外向型発展戦略であるが、それはまた国内にも大きな影響をもたらす。前稿(こちらhttp://attaction.seesaa.net/article/452765275.html)のように、一帯一路の目的のひとつが生産能力の過剰を解決するなどの国内問題であるという面があるが、他方で、中国企業による海外投資の利潤回収だけが、この戦略の成否を判断する基準となるともいえる。一帯一路の計画によれば、この戦略はさらなる貿易と投資の機会をもたらすのであり、国内の繁栄の発展を促すものとされている。確かに一帯一路は中国のすべての省と自治区(以下、省区)の発展と改革を支持する意図を持っているのである(原注1)。

この計画では、それぞれの省と自治区は、それぞれ独自の役割を果たすとされている。多くの省区ではそれに対応する地方開発計画が制定されている。顕著なのは新疆ウィグル自治区と福建省である。両者の地理的位置によって「核心地区」に認定されている。新疆は中央アジア、南アジア、西アジアに対する「西側の窓口」と中国西部の金融中心とされた。福建省は海のシルクロードにとっても重要な位置づけであり、物流、運輸、海運業のさらなる発展を期待されている。重慶(直轄市)、陝西省、四川省、雲南省の西部地区は新疆とあわせて、インフラと都市化計画を重点的に発展させ、国際貿易の機会を拡大する。甘粛省、寧夏省は新疆とともに良好な自然環境と農業資源を有していることから、それらの産業の発展を目指している。福建省、広東省、江蘇省、浙江省などの東部の沿海省は、金融や専門サービス、航空物流、ハイエンド製造業、eビジネス、医療保険、バイオテクノロジーなどのハイテク産業の発展が期待されている(原注2)。

中国各地の発展の不均衡ゆえに、一帯一路の一部のプロジェクトは発展途上地区の開発を進めることを目的としている。この目的も極めて重要視されている。というのも中国共産党の支配の正当性と中国社会の安定は、かなりの程度において経済成長と就業形態の安定に依拠しているからである。しかし近年、経済成長の鈍化の圧力がこれらの安定を脅かしている。

新疆は以上のような発展途上の状況にある。前述のように、一帯一路と中国−パキスタン経済回廊の政府の計画によって経済効果がもたらされる可能性がある。しかし他方で、中国政府はウィグル人を厳しい統制下におき、抵抗には弾圧で応えており、それにくわえて他の地区から多くの移民を新疆に送り民族同化をおこなっている。このような政策によって新疆は極めて不安定な地区になっている。

「ウィグル人権プロジェクト」という団体が発表したレポートは、一帯一路およびそれが新疆にもたらす影響を報告している。レポートでは、中央政府がこれまでインフラ建設、投資、移民を奨励した発展戦略―たとえば大西北開発(1992年)、西部大開発(2000年)、新疆工作フォーラム(2010、2014年)―は、ウィグル人の経済状況を改善しなかっただけでなく、その分散化が促進され、さらにはウィグル人が開発計画の策定に関与する権利を奪われていたとされている。このレポートでは、一帯一路とそれまでの国家主導の発展モデルは継承関係にあるので、ウィグル人の文化的アイデンティティを阻害し、同化と周辺化がさらに加速され、投資利益もウィグル人が公平に享受できないだろうと分析している(原注3)。レポートでは、新疆研究と中国の台頭を研究しているマイケル・クラークの分析を紹介している。

「2008年以降、ウィグル人とチベット人の中国統治者に対する抵抗はさらに激化しており、それがこの地域の経済発展と現代化の進展をさらに加速させる必要を北京に迫っている。なぜならこれがかれらを現代中国に融合させる主要な手段だからである」(原注4)

漢人の研究者の王力雄は、著書『私の西域、あなたの東トルキスタン』で、上記の批判者が提起した問題を指摘している。つまり中国政府は新疆のいわゆる現代化計画において、ウィグル人が政策決定の過程に参加する権限を保障しておらず、少数民族にとっての本当の権利も享受できてないという指摘である(原注5)。

一帯一路は比較的新しい政策であることから、現在のところ全面的評価を下すことは困難である。しかし中国の過去数十年の開発の結果は次の疑問を提起させずにはおかない。大多数の中国人が一帯一路の成果を享受し、本当の意義での有効性を獲得することが、果たして本当に可能なのか、という疑問である。1980年代以前は、中国の経済的不均衡の程度は大きくなかった。改革開放以降、経済的不均衡は拡大しはじめ、現在は世界でもっとも格差の大きな国家のひとつとなっている。2000年以降、中国政府はジニ係数[格差指数]の公式発表を停止した。しかしいくつかの統計では2012年のジニ係数は0.73、あるいはそれ以上の数値を示している。これは人口のなかで最も豊かな1%の人間が、全国の富の三分の一を保有していることを意味している(原注6)。

また急速な経済成長と開発によって、自然破壊と環境汚染が中国における深刻な問題になっており、民衆の健康に深刻な影響を及ぼしている。大気を例にとれば、大量の燃料用石炭と工業生産、自動車の排気ガスが増加し、中国の多くの大都市でスモッグが発生している。とくに北方でそれは深刻である。南京大学環境学院が2016年に発表した研究では、中国の市民の死亡原因の三分の一近くがスモッグと関連があるという(原注7)。別な報道では、中国の地下水の60%以上がすでに汚染されているという。原因の大半は工場からの排水と化学品による汚染だという。グリーンピースの指摘では、中国では3.2億人が清潔な水を得ることができていない(原注8)

中国政府がこの発展の方向性を近い将来に変更するという兆候はみられない。一帯一路は、海外投資によって国外の生態系と住民に悪影響を及ぼすだけでなく、中国国内においても、これまでの開発戦略と同様に、エリートの利益と共産党支配の擁護を目標の主眼に置いていることから、庶民と環境への影響が劇的に好転することはないだろう。


原注(英語版とは若干の差異がある:訳注)
[1] One Belt One Road: A role for UK companies in developing China’s new initiative, China-Britain Business Council.
[2] One Belt One Road: China-Britain Business Council and 2015 OBOR action plan http://en.ndrc.gov.cn/newsrelease/201503/t20150330_669367.html.
[3] End of the Road: One Belt, One Road and the Cumulative Economic Marginalization of the Uyghurs, Uyghur Human Rights Project, March 2017.
[4] Ibid p20 and Understanding China’s Eurasian Pivot, Michael Clarke, 10th September 2015, The Diplomat: www.thediplomat.com/2015/09/understanding-chinas-eurasian-pivot/.
[5]《我的西域,你的東土》, 大塊文化,台北,2007年。
[6] 北大報告:中國1%家庭佔有全國三分之一以上財產,人民網
2014年7月26日, http://news.163.com/14/0726/05/A22CNRP90001124J.html
[7] Smog linked to a third of deaths in China, study finds. Alice Yan. 22nd December 2016. South China Morning Post. http://www.scmp.com/news/china/society/article/2056553/smog-linked-third-deaths-china-more-deadly-smoking-study-finds.
[8] World Water Day: 10 facts you ought to know. Ma Tianjie. 22nd March 2013. Greenpeace. http://www.greenpeace.org/eastasia/news/blog/world-water-day-10-facts-you-ought-to-know/blog/44439/.
タグ:一帯一路
posted by attaction at 16:40 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする