2007年06月11日

G8オルタナティブを終えて--新自由主義への対抗

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attac japaの秋本です。

ドイツ・ロストクでのG8反対闘争について、全体的な感想を述べたいと思います。

□ 概観

結論的には、G8サミットの存在について批判するグループも、またそれを肯定した上でロビーイングを求めるグループも含めて、6月7日のG8オルタナティブ最終日には、ほとんどのグループ(とりわけドイツのグループ)が「ハイゲンダムG8サミット反対」「G8サミットを認めない」「新自由主義グローバリゼーション反対」という立場で一致できたのではないかと思います。そして、それには、ATTACドイツの果たした役割が大きいといえます。

そもそも「G8オルタナティブ」は、G8に対抗的な運動として、ドイツ全体の運動として作っていこう動きが、2005年夏ごろからATTAC内で始まり、2005年秋には、ワークショップやセミナーを開催しました。しかし、様々な潮流(左派のグループから、環境系のグループ、また政府との対話を求める穏健的なグループ)が存在したために、統一的な方針やイベントのあり方を巡って、様々な議論がありました。そして、その意見の違い/対立は、かなり最近まで解消されなかったようです。事実、ナイロビWSFで、ドイツのグループが「G8オルタナティブ」セミナーを3(あるいは4)セッション開催する予定でしたが、内部の意見調整がつかず(大きな意見の違いとして、U2ボノのコンサートを「G8オルタナティブ」の主催としてやるのかどうか、ということがあったようです)、結局キャンセルになりました。しかし、もともと様々な政治的傾向の集まりとして存在しているATTACドイツが、それらをうまくまとめた、と言えます。
 そしてその突破口を作ったのは、皮肉にも警察の弾圧であったのかもしれません。警察がG8開催のためと称して、事前に過剰な「ガザ入れ」や「逮捕」をしたことが「やりすぎである」という世論を作り出しました。おかげで、ATTACドイツは新規メンバーを500人増やすことになりました。

しかしながら、それでも「G8オルタナティブ」のフォーラムを開くだけでは意味がない、という声がATTACドイツの中(とりわけATTAC内のIGメタルの労組活動家や社会運動系のメンバー)から出始めて、6月2日にデモを開催することになりました。そして、このデモは、欧州(ならびに世界)の様々な社会運動(欧州社会フォーラムを基盤として作られた様々な横断的なネットワーク)に呼びかけられ、欧州からロストクを目指して大行進(フランスのAC!やNO-VOXなど)が計画されました。さらに、それぞれのグローバルなネットワーク(ビア・カンペシーナ、債務帳消しグループ、OWINFSなど)もロストクへの動員を呼びかけました。

 そこで、社会運動系の活動家たちは、「G8オルタナティブ」よりも、むしろこの6/2のデモに力点を置き、6/2のデモのあと、個別の戦略会議などの予定があるグループ、あるいは個別行動を予定していたグループ(ビア・カンペシーナ、移民支援グループなど)を除けば、ほとんどの労組活動家たちは帰国してしまいました。

 そういう中で、6/2のデモがあり、アナキスト系の人たちが投石を始めたことで、警察が改めて本腰を入れた警備体制を敷き、覆面していた者たちを次々に逮捕していき、この日だけで約200名が身柄を拘束されました(しかしほとんどが翌日または数日で釈放)。翌日、あちこちでアナキスト系と警察の衝突が起こり、警察の側に2名の重傷者が出たことで、ATTACドイツをはじめ、債務帳消しグループ(ジュビリーサウスなど)やOWINFS(「私たちの世界は売り物ではない」ネットワーク)などから、アナキスト系の人たちの行動に対して「そこまでやらなくても」という声が出されました。またメディアも「暴動」であることをさかんに伝えていました。

しかし、6/4、6/5、6/6、6/7と連日、G8リーダーたちに「8人で世界を勝手に決めるな」という声を届けるために、非暴力の、平和的な、市民としての不服従デモを続けていた者たちに対して(ハイリゲンダムに通じる道路をデモ隊が封鎖)、警察が放水や暴行を加えたために、メディアの論調は変わり、むしろ警察の過剰な弾圧に対して批判的な報道がされるようになりました。

そしてまたこうした非暴力の平和的なデモ(道路封鎖も含む)は、「G8オルタナティブ」に参加していた人たちからも支持されることになり、6月7日の「G8オルタナティブ」最終のクロージング・セッションでは、警察の過剰な警備に対して批判が出されました。

また今回のG8サミット反対行動については、ピープルズ・プラン研究所の木下茅さんが、デモや道路占拠などのいわゆる直接行動に参加していたのは、若者で、シンポジウムに参加していたのは、「年配」という指摘がありますが、それは違います。確かに、フォーラムには、退職された年配の方もいましたが、圧倒的に多かったのは、むしろ若者でした。20代の学生らしき人たちがスピーカーの話を熱心に聞いていました(☆)。ここに今回のドイツで行われた「G8オルタナティブ」も含む一連のG8サミット反対行動が成功した大きな理由があると私は見ています。道路封鎖に参加した若者の方もいれば、フォーラムでスピーチを聞いた若者も大勢いたということです。そして、その両者には政治的な意識の隔たりがあったとは思えません。

 事実、大屋さんが報告の中で触れていたattacドイツのSvenさんは、7日の9:00からattacフランス、ドイツ、スペイン、オーストリアが主催した欧州社会運動のセミナー(参加者100人くらい)でスピーカーとしてスピーチした後、デモに参加して、過剰警備をする警察に抗議していました。

 ☆ 例えば、私が参加したセミナーAnother development is possible!では、ナイジェリアのIke Okorieさんが、ナイジェリアの石油産業の話(石油収入がほとんどナイジェリアに入らず、米国に流れる構造になっていることや、EUとアフリカのEPA)をし、attac Stuttgartシュットガルト/attac EU-AGのAnnette Grothさんが、EUのリスボン戦略と、それに関するネオリベ社会改革と、EU-ACP諸国のEPAについて話をすると、若者から次々に質問が出されました。

□「G8オルタナティブ」

 比較的穏健な(あるいは政治的立場を鮮明にしない)環境系NGOも参加して結成されたこの集まりは、おそらく学習会や討論を経る中で、G8の問題点が浮き彫りにされ、少なくとも「ハイリンゲンダムG8反対」、「新自由主義グローバリゼーション反対」という見解で意志一致されたのだろうと思います。そしてその方向性のもとに、全体のプログラムが組み立てられたのでしょう。

 そうでなければ、オープニング・セッションで、司会の一人であるPeter Wahlさん(環境NGOのWEED/ATTACドイツ、テレビ取材にはATTACドイツの名前で頻繁に登場していた)が、暴力シーンばかり伝えるメディア報道を批判し、ネオリベラルな経済、政治構造に問題があると指摘し、基調スピーカーとして、Jean Ziegler(☆)を呼んできた理由がありません。さらに、またクロージング・セッションで、司会が、貧困やプレカリアートの人たちが拡大している今日、もう一つの世界は可能なのか、新自由主義に代わるオルタ・グローバリゼーションをどのように作っていくのか、という問題提起をする意味がないし、スピーカーとして、バンダナ・シバさん(☆)や、メキシコ・チアパスの運動に関わっているフェミニストのAna Esther Cecenaさん(フェミニストのGigi Franciscoさんも参加予定だったが、都合により参加できず)を呼んで来た理由がないはずです。

 ☆ 食糧への権利に関する元国連特別報告者であるJeanさんは、「こうして話している間にも、死ぬ必要のない子供たちが飢えで死んでいっている。私たちは直ちにこれをひっくり返さなければならない。資本主義は最大利潤を生み出すことしか考えない。今、ネオリベラル戦略でアフリカ市場が食いつぶされようとしている。先進国は明日の朝、直ちに輸出補助金をストップすべきである。IMFやWBにはネオリベラル・イデオロギーが必要なのだ・・。シアトルからジェノバ、ポルトアレグレヘ、そしてハイリゲンダムへとつながっている。我々はネオリベラルに対するカウンタープログラムを持つべきである・・」などと言明し、またバンダナ・シバさんは「インドはもともと豊かな農地、豊富な種があり、また綿を世界中に供給してきた。ところが今、農民が自殺している。農民は生きていけなくなっている。G8がこのようなシステムを作っているのだ。WTO、IMFのルールとは地球の資源の窃盗である・・・」とはっきりと述べた。

 おそらく「G8オルタナティブ」のセミナー/ワークショップに参加して、参加者は事実/真実について、しかもそれはサウスの人たちの意見を直接聞くことで、相当学んだのではないかと思います。前述したAnother development is possible!のセミナーでは、「ではどうしてこういう重大な情報が伝わらないのか」という質問が出され、教育と広めることが重要だ、という提起がされました。

□ ATTACの活動

 欧州のATTACは頻繁に連絡を取り合い、欧州規模の会議をしているようです。
 私は、前述したセミナーの後、ATTACオーストリアとフランスの仲間が、GATSに関して労組への取り組みをどう作っていくかという討論をする場に参加させてもらいました。欧州の状況がよく分からないので、黙って聞いていただけですが、詳細な戦術について討論し、12月の欧州社会フォーラムに向けた具体的なスケジュールを決めていました。私は、最後にコメントとして、ATTACジャパンと郵政労働者ユニオンや、解雇された国鉄労働者たちとの交流の話をしました。

 なお、今回、G8反対行動で私が出会ったATTACの仲間たちは、フランス、スペイン、オーストリア、スウェーデン、イタリア、モロッコ、ベルギー、ノルウェー、スイス、フィンランド、でした。

□ ATTACジャパンのロストクでの行動

 6月2日のデモを最後に、非暴力市民的不服従の「直接行動派」と「フォーラム派」に別れて(?)行動することになりました。
 私は結局「フォーラム派」になり、セミナーやワークショップに参加したほか、海外の活動家たちと意見交換したり、会議に参加しました。

 WSFナイロビで取材したCADTMコート・ジボワールの人とも再会し、ナイロビでインタビューしたビデオ編集がまだ終わっていないことをお詫びしておきました。

 また、あちこちで質問されたのが、来年のG8についてでした。すでに東京で結成されたNGOフォーラムの案内パンフ(英語版)を見ていた人から、日本での取り組みについて質問が来ました。ATTACとしては、前回の運営委員会での討論を受けて、まだ具体的に考えていないけれど、ATTACとしての取り組みを追求することになると思う、という程度の返事をしておきました。最も、これには、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウス、ジュビリーサウス、またOWINFSが協力してくれそうなので、これに期待したいと思います。

 通貨取引税のセミナーは、3セッション行われました。シラクの航空券税導入を積極的に支援してきたイギリスのMAKE POVERTY HISTORYのデービッド・ヒルマンさんや、WEEDのピーター・ヴァヒルさんらと、ワールド・パブリック・ファイナンス(WPF)のチームが共催したセミナーです。私は最後の1セッション(参加者約50人)しか参加できませんでしたが、ATTACベルギーのフランシーヌさんが、「我々に必要なものは何か」という基調提起をしたあとで、ATTACフィンランドのマティさんがWPFがどのような経過で作られたかを説明しました。面白かったのは、ピーターさんが、「ところで、どうしても僕には分からないことがある。君たちは一体何を目指しているのか」という質問をしたことでした。フランシーヌさんは「その質問は絶対来ると思っていた」と言って、「我々は目先のことだけを考えていない」と返していました。

 このセミナーはとても画期的でした。つまり、互いに目指しているものは同じである(金融市場の安定やタックス・ヘブンの廃止など)という認識の上で、この場として、共通に取り組めるステートメントのようなたたき台を作ろうということになりました。そして、作成のためのチームを作り、メールやSkypeで討論していこうということが決まりました。そこで、私も作成のためのチームに入れてもらうことにしました。

 私は、ピーターさんとはMLを通じて、またドイツとの連絡のときに、メールでやりとりをした程度でしか知りませんでしたが、このセッションで日本人が私一人だったので、ATTACジャパンからだとすぐに分かったようでした。そして、7日の9時に、G8オルタナティブとしてキャンプ場で記者会見をやるので、ATTACジャパンに参加して、来年のG8に向けたメッセージを発してほしい、と要請され、また午後のクロージング・セッションのときには、セレモニーとして、G8オルタナティブの旗を日本に渡すということをやるので、バンダナ・シヴァの話の後に登壇してほしい、と要請されました。

 この場では、OKの返事をしましたが、私は、およびATTACが日本を代表しているわけではないので、記者会見への出席はすっぽかし、またクロージング・セッションでは、NGOフォーラムの人たちが登壇したので、遠慮しました。したがって、NGOフォーラムの人たちは、G8オルタナティブの旗を託された(渡された)わけですが、実は、なんと、これは%マークがしっかり入ったATTACドイツの旗でした。

 もちろん私自身もATTACドイツから直接、この横断幕をもらい、またその小旗バージョンももらいました。

□ 個人的な感想

 最後まで参加すべきかどうかを迷っていましたが、参加してよかったと思っています。いろんな人たちと交流できたことに加えて、やはりATTACドイツの運動の力強さを改めて知らされました。そして、またATTACが設立以来ずっと新自由主義の問題をテーマにしていることは、決して間違っていないことを認識しました。
posted by attaction at 17:05 | G8/G20 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする