2013年01月28日

ドーハCOP18は万事休すだが、希望は会議場の外にある

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ドーハCOP18は万事休すだが、希望は会議場の外にある
(Doom At Doha, But Hope Outside)


マッズ・ライル(「デモクラシー・センター」)

2012年12月8日

[原文(英語): http://www.zcommunications.org/doom-at-doha-but-hope-outside-by-mads-ryle]

あなたがすでに国連気候変動枠組条約締約国会議(UNFCCC COP)における気候変動への対応のプロセスがちょっとしたジョークだと思っているなら、あなたは今年カタールの首都ドーハで開催されているサミットに最高に悲劇的な皮肉を感じているかも知れない。地理的に隔離され、政治的に非民主主義的なカタール首長国は、国民一人当たりGDPが世界最高であるだけでなく、そのオイルマネー経済のおかげで二酸化炭素排出量も世界最高である。

気候変動に関わっている活動家にとって、会議に参加するため、あるいは会議に抗議するためドーハにやってくるのは困難で、多くの費用がかかっただろう。しかし、おそらくは活動家やジャーナリストたちが(あるいは各国政府も)この年次会合を信用する、あるいは少なくとも気候変動に対する実効性のある行動を進めるためのフォーラムとみなしている時代は過ぎ去っただろう。会議場の中と外に最大の群衆を集めた2009年コペンハーゲンの会合で、街頭のデモに参加していた人たちはすでに、公正な取り決めが行われる可能性についていかなる幻想も持っていなかった。この人々は、交渉が企業の利益と、「グローバルサウス(地球の南側)」の人々にとって構造的に不公正な交渉プロセスによって行き詰っていることに光を当てるためにデンマークにやって来たのである。

コペンハーゲンでは、抜け穴だらけの「拘束力のある合意」にさえ失敗し、3年後には京都議定書が失効寸前となった。2011年のダーバンでは合意を先延ばしにし、2015年までに、2020年に発効する合意を実現することが決定された。締約国会議の出発となったリオ地球環境サミットの20周年(2012年6月)は、悲しい成人式となり、人々の意識に上ることはほとんどなかった。それはいかがわしい「グリーン経済」 - それは悲しいほど痛めつけられた自然の最後の欠片に搾取のための市場価値を与えようとしている - をめぐる進展を除けば、見るべきものはほとんどなかった。

大いに賞賛された京都議定書について言えば、オスカー・レイエス[環境ジャーナリスト、「インスティテュート・フォー・ポリシー・スタディーズ」の研究員]が2011年のCOP会合の後で述べているように、「ダーバン会議は京都議定書をゾンビのような状態に追いやり」、排出量に関する拘束力のある目標から一層遠ざかってしまった。カナダ、ロシア、日本が京都議定書から離脱する意図を一斉に表明した。「インスティテュート・フォー・ポリシー・スタディーズ」のジャネット・レッドマンが「こんな条約を施行することにどんな意味があるのか?」と問うのももっともである。

もちろん、すべての環境団体がこの国連のプロセスから完全に離れたわけではない。ドーハに来ることが予想されていた1万7千人のうち約7千人はNGO活動家だと思われる。クライメート・アクション・ネットワーク(CAN)は依然としてCOP交渉に積極的に関与しており、ダーバン会合で新たに設立された「公正で野心的かつ法的拘束力を持つ協定」の実現の方法を検討するための「特別作業グループ」に、楽観的に、要求を提出しつづけている。また、市民社会の監視がなければ交渉担当者たちが好き勝手に交渉を進める危険性があると指摘する人々もいる。以前にボリビア政府の気候変動交渉チームの一員であったネレ・マリエンは、「交渉担当者はいずれにしても好き勝手に進める」ということを認めているが、それにもかかわらず、NGOが彼らを監視している方がよいと考えている。大衆の関心を引き付けることだけが目的だとしてもである。

ボリビアの交渉チームは、過去数年間、特別の役割を果たし、富裕国の企業寄りの主張に対する抵抗の中心点として、また、困窮化させられてきた「南」の代弁者としての地位を確立してきた。交渉チームの中のマリエンと彼女の同僚たちは自分たちを、会議場の外に集まったクライメート・ジャスティス(公正な気候変動対策)運動の一部だと考えていたし、ボリビアの提案(炭素会計の推進など)が多くの諸国の旧態依然のアプローチに対する重要な対案であると考えていた。しかし、彼女は2011年のCOP会合の前に、ボリビアがダーバン合意に署名しようとしていることを知って、「同意できないものに同意したくない」という立場で交渉チームを辞めた。

驚くような連携

現在ではこのような抵抗の足がかりすら失われているようであり、多くの人々は国連のプロセスが気候問題の活動家にとって時間の無駄であると考えている。コペンハーゲン以降、運動は分散化の時期に入っており、依然として再評価の時期である。しかし、私が話した何人かの活動家は、「オキュパイ」運動や同様の経済的公正を求める運動が草の根の行動と市民的不服従を鼓吹しており、それによって気候変動に関連する行動が再び活性化していることを指摘している。これは化石燃料の採掘を阻止するための具体的なキャンペーンという形をとっており、そこにはしばしば、驚くような連携が生み出されている。

スコット・パーキンは熱帯雨林アクション・ネットワークの活動家であり、この数年、「ライジング・タイド・ノースアメリカ」(RTNA)で活動してきた。後者のグループは、コペンハーゲン以降の企業主導のプロセスに一切の幻想をもつことなく、「採掘が行われる場所での草の根の行動に本気で取り組むという戦略に着手した。これは約3年後の今、成功しはじめている」。パーキンは米国における気候変動に関わるさまざまな運動を楽観的に見ており、2012年は「ビッグイヤー」だったと言っている。

彼は、ラディカル派が主流の環境運動団体に圧力をかけ、徐々に左傾化させることができたと言っている。「今ではこれらの団体はみんな、最前線となっているコミュニティーと協力することに心から同意し、非暴力直接行動の戦術に対して、より開かれている。彼はこれを世界経済の状態と、「オキュパイ」運動や同様の運動の帰結であると言う。

現在米国で起こっている大きな闘いは、テキサス州におけるタールサンド採掘地の封鎖と、キーストーンXLパイプライン計画に反対するキャンペーンの第2段階である。パーキンによると、封鎖の行動に最初に駆けつけたのはダラスとオースティンからの「オキュパイ」運動の活動家だったが、「彼ら/彼女らはテキサスの地主たち、保守主義者とも肩を組んで闘った。その中には自称ティーパーティーのメンバーも含まれる」。企業による石炭採掘や輸送あるいは危険で有毒な原油パイプライン建設のための「土地収用」、土地強奪と、そこからの汚染物による地域社会の汚染の最前線にさらされることによって、想像できなかったような連合が形成されている。

キーストーンの運動はすでに「決着済み」となっているかも知れないが、パーキンにとって、「もっと重要なことは、それが直接行動運動のための訓練場所であり、そのような行動への関与を強化する機会だということである。私たちは『オキュパイ』運動が実現したことにさらなるパワーと信頼性を与えており、それを化石燃料に対する運動に応用している。それは気候変動に関する運動の創生の瞬間である」。

草の根に戻る

クリス・キッチンは「コーポレート・ウォッチ」の研究員で、英国のクライメート・ジャスティス・コーポレートに参加している。彼は(2008年に)ポーランドのポツナンで開催されたCOP14にクライメート・アクション・ネットワークとともに参加した後、「COPのプロセスに影響を与えようとするのは時間の無駄だ」という結論に達した。彼は翌年、COPの失敗を強調し、真の行動のためのネットワークを確立するためにコペンハーゲンに行った。彼は、コペンハーゲンで得られたようなメディアの注目は、メッセージを伝えるための良い機会となる - メッセージが正しく表現されるならば - ことを認めているが、しかし、「COPはすでに企業や国家の利益にあまりにも完全に牛耳られており、市民社会の側からのいかなる形での関与も、それを正当化する力として作用する・・・街頭でのデモも場合によっては交渉プロセスを支持するものとして解釈されることがあり、よく注意しなければならない」。 '

気候変動に関する草の根の運動は常に、エコロジーの危機を資本主義に対する社会・政治的批判という、より大きいレンズの中で見てきた。クリスは、米国のパーキンと同じように、経済危機の中で緊縮財政政策に反対する運動が世界的に高揚しているのに伴って、英国でも気候変動に関する行動が「回復期」に入っていると見ている。彼は「それはすごいことだ。デモを続けて、国会議員たちに何かに署名させても、成果が得られないということを人々が認識したのだ」と言う。

英国におけるいくつかの運動団体のエネルギーは、シェールガス採掘のためのフラッキング[水圧による岩層の破砕]に対する闘いに向かっている。現在「フラック・オフ・UK」などの運動に参加している活動家の多くは、コペンハーゲンでのクライメート・ジャスティスを要求する行動の中心的なオルガナイザーだった。その一人は私に次のように語った。「人類の現在の苦境に真剣に取り組むような国際的な取り決めへの期待は(そのような期待があったとしても)、今では完全に霧散してしまった。今ではいわゆる『グリーンな資本主義』、つまりこれまで通りのビジネスに若干のグリーンウォッシュをふりかけただけのやり方が前面に出てきている」。

この状況に直面して、「考えられる唯一の希望は、地域社会による草の根からの一斉の行動によって変化を強制することである。これは夢物語のように思えるかも知れないが、実際には、気候変動や化石燃料の採掘の影響に対する反応は、私たちに多少の希望を与えている。化石燃料を供給しつづけるための強引で急速な動きの中で、採掘場所が文字通り人々の裏庭まで迫っている。ますます多くの人々が、このシステムの影響を目の前で、個人的な体験として目撃するようになっている。

最前線での運動

ボリビアに本拠を置くデモクラシー・センターが最近まとめたいくつかの報告は、気候変動に影響を及ぼす決定の最前線にあり、その直接の影響にさらされるコミュニティーが、その問題に自分たちの決定権を行使しようとしている多くの事例を提供している。さらに、彼ら/彼女らがそのために必要な支持を獲得することに成功しているのは、地域の人々に対して「世界的な気候変動」について話すよりも、これらの決定が彼ら/彼女らに及ぼす影響に焦点を当てるという戦略がベースとなっている。

キーストーンと同じように、大きく注目されているキャンペーンの1つであるワシントン州の「パワー・パースト・コール」連合(石炭の輸出に反対している市民運動)は、環境を汚染するエネルギーを供給する(アジア市場への輸出向け)施設をターゲットにしている。このキャンペーンが急速に支持を拡大したのは、巨大な石炭輸送列車が観光産業や地域の空気の質などに及ぼす悪影響について語ることによってである。このダイナミックな運動はまた、これらの問題について決定する権利を、国家機関や世界銀行などの国際機関に委ねるのではなく - それらの機関では企業の力が強く、市民の力は最も弱い - 地方レベルで確保するための闘いの重要性を示している。

世界銀行は米国務省とともに、コソボに新世代の石炭火力発電所を建設する計画を推進してきた。コソボは小国で、所得水準が低く、現在の不十分かつ非効率的なエネルギー供給システムを考えれば、そのような圧力に弱い。コソボの活動家たちは、米国でそのような計画への財政支出に反対している活動家たちの支持を得て、この計画を阻止するために全力をあげており、対案として、長期的に持続可能なエネルギー戦略を主張している。学術的な分析によって、新しい石炭火力発電所は現在稼働している汚い、非効率的な発電所に代わるものだから「クリーンである」という神話を粉砕するのと同時に、コソボの活動家たちは、ここでも、農民や農村の地主を巻き込むことに成功し、彼ら・彼女らが自分たちの土地での露天掘りによって受けた直接の影響について話す機会を提供した。

米国とヨーロッパ以外でも、同様のことが起こっている。タイで、非常に変わったキャンペーンだが、エネルギー問題に関するタイ政府の意思決定プロセスに精通しているある夫婦が、大臣や国営の電力会社と協力して、再生可能エネルギーの静かな革命を起こした。太陽光、バイオマス、バイオガスや他の資源を利用する小規模のエネルギー生産者による発電と送電網を通じた販売を認可する政策は、発展途上国のための持続可能なモデルとして注目されている。

一方、インドは、急増するエネルギー需要を満たすために石炭火力発電の建設を推進しているもう1つの国であり、化石燃料に依存した発展というおなじみの道を進もうとしている。しかし、ここでも活動家たち - 漁民や農民 -は、法律上の支援を提供する活動家たちと共に、発電所ごとに、政府の計画を阻止し、自分たちの生活を守るために文字通り命をかけて闘っている。

ドーハから期待できるものは何もないが、私たちはこのような化石燃料産業に対する草の根の運動の多くの、多様な例に注目するべきである。ここにこそ本当の行動がある。ここでこそ人々と思想の間の新しいつながりが形成されつつある。
posted by attaction at 10:22 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする