2007年01月11日

ブリュノ・ジュタンさんと語るもうひとつの世界--講演録

20061013jetin01.JPG2006年10月13日、ATTACフランス学術委員会メンバーで『トービン税入門』(社会評論社)の著者であるブリュノ・ジュタンさんを囲むattac cafe「ブリュノ・ジュタンさんと語るもうひとつの世界」が行われました。

多岐にわたるジュタンさんの講演からattac japanも多くを学ぶ必要があるでしょう。

またcafeに先立って行われた「討論会 ブリュノ・ジュタン(ATTACフランス学術委員会)さんを囲んでトービン税──新自由主義グローバリゼーションに対抗する国際戦略」の講演録も主催団体の一つ、ピープルズプラン研究所の機関紙『ピープルズプラン研究』の最新号に掲載されていますので、そちらもぜひご覧下さい。

ATTAC Japan(首都圏)通貨取引税部会では、今後『トービン税入門』をテキストにして学習会を行います。(次回部会は2月4日(日)14:00〜attac事務所にて)

司会あいさつ

ATTAC Japanの秋本です。私たちは、2001年12月のATTAC・ジャパンの設立以来、一貫して新自由主義の問題をテーマとして闘ってきました。従って、WTO体制の問題や戦争の問題にも関わってきました。なかでも一番大きなテーマとして通貨取引税(Currency Transaction Tax=CTT)の問題を取り上げてきました。

 通貨取引税はその発案者の名前から「トービン税」とも呼ばれています。この通貨取引税の導入だけで新自由主義の問題が解決できるわけではありませんが、通貨取引税導入の運動を進めることによって、新自由主義の下で起こっている事態について考える、といった教育的な観点からも、この運動は進める価値があると思っています。

 ATTACというのは、皆さんご存じのように、民衆教育というものをひとつの大きなテーマとしています。民衆教育というのは、もちろん自らが学習し、人に広め、行動するという三点からなっているわけです。通貨取引税運動というものは、今の世の中を考える一つの起点となりますし、運動として広めることができる大きなメリットのあるものです。今回、ATTACフランスの学術委員会メンバーのブリュノ・ジュタンさんが、千葉大学主催のセミナーに招かれ来日されました。この機会を通じて私たちも、ぜひジュダンさんのお話をお聞きしたいということで本日の企画を持ちました。

ジュタンさんの著書『トービン税入門』(和仁道郎訳/社会評論社)をお読みになった方もいらっしゃるかもしれませんが、私も実際全部は理解できていません。しかし理解できないことを悩む必要は全くなく、通貨取引税導入の運動が投げかけているものは非常に大きな問題であり、その点をジュダンさんの方からお話を聞いて、お互いに意見交換ができたらいいと思っています。

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ブリュノ・ジュタンさん講演 

こんばんは。日本のATTACの皆様と今日お会いできてとてもうれしいです。私たちはATTACという点で家族みたいなものです。この機会にお互いよく知り合っていきたいと思います。 私は今回初めて来日しました。まだ日本の労働状況、社会状況などについてよく飲み込めていません。外から分析した文献は幾つか読みましたが、自分なりに見るのは初めてです。

 話は少し前にさかのぼりますが、なぜフランスやヨーロッパで通貨取引税が注目を集め得たのか、それをお話ししたいと思います。通貨取引税がどうしてこのような支持を集めたのかということは、日本においても通貨取引税という考え方を広めていく上で役に立つと思います。

■新自由主義の嵐がCTTを押し上げた

ジェームス・トービンは、60年代アメリカでロバート・ケネディのアドバイザーをしていた人間です。彼は左派のエコノミストではありませんでしたし、ラジカルな考え方の持ち主でもありませんでした。彼はケインズ派のエコノミストで、資本主義は国家の介入によって調整されなければならないという主張の信奉者でした。しかし、1968年からこのかたというもの、ジェイムス・トービンはブルジョア的なエコノミストだという評価をされてきました。

1972年、彼は通貨の取引に関わる税を提案しましたが、その時点において左からも右からも全然取り合われませんでした。それから何十年経った現在、彼の考え方はむしろ「革命的」だと思われてきています。というのも現在、国際的に(ヨーロッパですら)政治の考え方の柱は右の方に寄ってきているからです。吹き荒れる新自由主義の嵐というものは、私たちのこの世紀まで追いやって来ています。今日、改革を目指すということは、「革命的」ということになってしまっています。これは冗談っぽい言い方ですが…。結局そういうことです。

■通貨取引税が広まったわけ

 フランスでは、年金制度を防衛する闘争がありました。1970年、年金制度というものは、若者を国家に対して反抗させる課題ではありませんでした。しかし今日、政治的な課題に対する考え方というものは変わってきています。というのは、私たちは幾度か敗北を味わってきました。これは、フランスのような、常に新自由主義に対して抵抗運動があったような国でさえ、そうでした。フランスでの社会問題に対する考え方・ものの見方から、国際問題に対する考え方・ものの見方ということが広まってきた。

1997年からアジアの通貨危機があったわけですが、通貨取引税はその時点から考え方として広まってきました。その2年後、公務員のゼネストがありました。それは年金制度を守るためのゼネストでした。1995年からフランス政府は、経済のグローバル化にとって年金制度の改革ということはどうしても必要なことだと主張してきました。その結果、グローバリゼーションということは、社会に出て生活していく上では自分たちにとって有害なものだ、という考え方が受け入れられるようになっていきました。当初、グローバリゼーションはドイツをより強くすると考えられていました。しかし、実際にはドイツの労働者は、正反対の経験をしたわけです。

1995年フランスのストライキは、半分勝利、半分敗北という結果に終わりました。アジア危機以来、フランスの活動家たちは、グローバリゼーションに抵抗するために何かしなければならないと考え始めたのです。「ルモンド・ディプロマティク」という新聞でイグナシオ・ラモネが論陣を張り、金融のグローバリゼーションに対抗するためのこの抵抗の考え方は、非常に明快に多くの人々に映りました。イグナシオ・ラモネが論陣を張ったのは、通貨取引税という考え方であり、多くの人々はこの通貨取引税が非常に単純明快で、そして通貨投機に対して闘う有効な手段であると認識したわけです。グローバリゼーションと言ってしまえば、非常に国際的で、人々の暮らしから遠い問題であるように思えます。ですから、そういう遠くて抽象的な問題には、簡単な方法で対峙するのがいいと人々は思ったわけです。

■万能薬ではないが討論のきっかけになる

通貨取引税という考え方は、通貨取引税があれば投機を押さえることができ、通貨危機をなくすことができるというように受け止められました。フランスでは知識人が、様々な問題に対してロビン・フッド(弱いもののために闘う)のような存在であり続けています。ロビン・フッドというのは、金持ちから取り上げて、貧しいものに配ったわけですが、通貨取引税というものは、金持ちから取り上げて、貧乏なものに奉仕する税金だと受け止められました。単純な考え方ですが、投機に対して「革命的」な他の解決策を即座に見つけられないために、この考え方は支持されました。

金持ちからお金を取り上げ、貧乏人からは取らない。グローバリゼーションという考え方が猛威をふるう環境にあって、この考えが良心的な考え(本来なら改良主義的な考え方ですが)として決定的になっています。だれも通貨取引税があらゆる問題を解決するものだとは思っていませんが、フランスでは広範な人々の間で討論を巻き起こし、そしてグローバリゼーションというものが一体何かということを人々に考えてもらうきっかけになったのです。ですから通貨取引税は、具体的・効果的な資本主義に対する闘いであると同時に、人々にとって大変、教育的な考え方でした。

■タックス・ヘイブンとのたたかい

 1999年から2000年にかけて、ATTACは、投機はヨーロッパでも起こっていることを知らせてきました。まず、通貨取引税とタックス・ヘイブン(租税回避地)との関係です。タックス・ヘイブンはヨーロッパのガンです。犯罪マネーをマネー・ロンダリング(資金洗浄)するたくさんの方法や場所があります。脱税のマネーを隠す、投機で得たお金を隠す、そういう場所がたくさんある。この脱税と闘うということは、フランスでも他の国でも犯罪と闘うことと同じでした。銀行の守秘義務ということを銀行の利益のために許している政府に対して追及してきました。ルクセンブルグやスイスという国では、銀行の守秘義務は伝統的に非常に大切な問題でした。

フランスでは、タックス・ヘイブンという問題は切実ではありませんが、フランスのすべての銀行もタックス・ヘイブンであるルクセンブルグをはじめ各地に子会社を持っています。私たちは、ヨーロッパの様々な国のATTACの活動家と連帯して闘ってきました。平和的にタックス・ヘイブンに「侵入」するということをしてきました。本来なら単独では持続していけないような小さな国、モナコとかアンドラーもタックス・ヘイブンです。それからイギリスにある小さな諸島にもタックス・ヘイブンがあります。このような小さな国の存在意義というのは、マフィアがマネー・ロンダリングをしたり、秘密の機関がこっそりお金を隠しているような場所でした。このような地域では、武器の売買とか麻薬、人身売買の利益などが出入りしています。

フランスには「お金に臭いはない」ということわざがあります。つまりお金になってしまえば、みな同じだということです。ATTACの活動家がアンドラーの高速道路で「のろのろ作戦」を実行しました。そこでは魔法使いに変装し、皆でふいごを持って、道行く運転手にお金というものは臭いがあるということを証明して見せた。それは投機マネーの投機の臭いであり、犯罪の臭いです。このようなシンボリックな運動を繰り広げ、人々に訴えてきました。

■失業を引き起こす投機マネー

 また、投機が失業にとってどのような関係にあるかという告発も行ってきました。人々にとって、投機の結果は、非常に具体的に現れています。国際的連帯と人々の日々の暮らしとの間をどうつないで対比させて考えるかということです。

フランスではミュシュランという世界的なタイヤのメーカーがあります。日本のタイヤのメーカーと競合関係にある会社です。ミュシュランは高収益をひねり出すために、従業員の解雇を発表しました。ヨーロッパでは、企業が労働者解雇を発表すると株価が上がります。ミュシュランは、この解雇のアナウンス効果を狙って、株主を喜ばせようとしました。すると株主たちは、ミュシュラン株への投機を引き起こしました。私たちはこれを株式市場によって起こされる解雇と呼んでいます。もし組合が、そのような解雇に対する抗議の運動を作っていこうとしたときに、ATTACは労働者の権利を守るために一緒に闘います。このような株式市場によって起こされる解雇を告発するために、私たちは多くの出版物を発行してきました。

失業という問題を引き起こしているものも投機マネーであり、投機の帰結であるという考え方を広めています。株式市場における課税が、それだけで労働者運動を惹きつけるとは言えません。階級闘争が必要ないというわけではありません。課税はストライキに対置されるものではありません。しかし、株式市場に対する課税という要求を出すことによって、大勢の労働者を運動に招き入れることができると考えています。

■通貨取引税をめぐる二つの考え

 ATTAC・フランスは、ジェームス・トービンによって唱えられた通貨取引税だけを振りかざしているだけではありません。通貨取引税は、新自由主義に対する闘いの武器の一つです。ですから、通貨取引税が開発に対する単なる経済的ファイナンスとしての役目を持っているとしか見ていない人々は間違っています。フランスでは、通貨取引税に対して好意的な見方をする人々は、開発資金としての役目を非常に評価します。特に国連のミレニアム開発目標を達成するための資金を捻出できると考えています。

しかし私たちはいろいろな見解の相違があるにせよ、一つの統一的要求を掲げることができているということです。大陸ヨーロッパレベルでは、投機を抑制するために税金を活用しようという考え方が大きく、イギリスにおいては通貨取引税というのは、開発に対するファイナンス、資金調達である、という考え方に重きを置かれています。私たちとは意見の相違があるわけですが、フランスでは私たちは一緒に活動しています。

■金融の大火事に消防車は間に合うのか

国によって、市民の見方というのはこの二つについて違っています。戦術的な観点から、キャンペーンを行うときにその国々にあったキャンペーンの作り方を工夫しています。私のビジョンとして、アジアにおいて通貨取引税の有効性について語るときも、この方法は役に立つのではないでしょうか。

政治的・経済的に各国の置かれている立場は様々です。私が最初にタイにおいて通貨取引税について発言したのは1999年のことでした。ということは経済危機の直後でした。タイの人々が言ったことは「その考え方は非常に興味深い、しかし、あなたは来るのが遅すぎた。危機は実際もう起こってしまった。あなたはそういう投機が起こらないようにするために来たのだが、もう危機は起こってしまった。火事場へ消防車が遅れてきたようなものだ」と。

その時点ではアジアはすでに危機を脱して、どうやったら成長に持って行けるかということを考えていました。その時点で、人々はマレーシアの外資管理政策により興味を抱いていました。中国のような国が、どうして危機に見舞われずに済んでいたか興味を持っていました。中国においては外資の流入管理がとても厳重だったのです。

それ以来、様相は変わってきています。経済危機は忘れ去られてしまいました。失業問題はタイのような国ではほとんど大きく取り上げられなくなりました。タイ人にとって問題は、仕事がないことよりもたくさん働かされることになってしまっています。労働者は週に60、70時間働かなければいけない状況になっています。私がタイの工場を訪れたときに、労働者たちはもう疲れ切って、機械の間で眠っているような状況でした。8時間働き、さらに数時間の残業をした後というのは、そういう風になってしまいます。

おそらく経済危機というのは、再度巡ってくるでしょう。それが問題です。というのは、危機の原因というものが取り除かれていないからです。ですから、経済危機を避けられるようなシステムの導入は今後も必要になってくるでしょう。その時は、火事に消防車が間に合うのではないでしょうか。

■過渡的な政策としての通貨取引税

タイのような強い国ではない国は、中国のような外資の規制ができない状況にあります。世界の資本家たちは中国を避けることはできません。中国市場に参入するために競争を繰り広げています。しかし、カンボジアやラオスのような貧しい国に殺到する資本家はいません。フィリピンやタイのように、それほど大きな問題を抱えていない国でも資本家たちは、いつでも資金を引き揚げようとしています。タイではクーデタが起こりましたが、いまでは、資本は留まろうとしています。留まる方を望んでいます。

貧しい国やタイのように中程度に発展している国では、単独で外資をコントロールすることはできません。一時的には可能であっても、恒常的にコントロールすることはできません。ですから私は、通貨取引税のような税金は、中国のような厳格な為替管理政策がとれないときの中間的・過渡的な政策として考えています。

中国のような厳しい資本規制を採用している国では、為替レートは固定されています。通貨取引税は通貨を守り、投機から保護する役目を持つはずです。変動相場制、国家によって管理された変動相場制をとっている国、完全変動相場制の国にとっては、金利を政策手段に据えなければなりません。少し経済的なことになりますが、為替レートが下がれば、中央銀行は金利を上げるわけです。それは外資を導入して、為替相場を上げるためです。

金利が上がると景気が悪くなり失業が増えます。日本を例にとることはとても難しいことです。なぜなら、この10年来、金利がほとんど0%という状況ですから。日本の中央銀行・日銀は、何十億というドルを売って円を高くするように買い支えなければなりませんでした。しかし、開発途上国は、日本のようにドルを売る手段はありません。売れるようなたくさんのドルを持っていないからです。こうゆうところに通貨取引税の有効性があるわけです。世界市場の中で生きていくための通貨取引税という妥協案です。

■独裁と不平等から脱した国に必要な資金

アジアに関して言えば、開発のための資金というのはいつでも大事なことです。東南アジアの中には、大変貧しい国があります。南アジアにはもっと貧しい国があります。それらの国々に対して、通貨取引税が全部問題を解決すると言えば、それは幻想をもたらすことになるでしょう。貧困というのはまず、政治的かつ社会的な問題であるからです。それは国内に不平等があるからでもあり、その国の政治的・経済的システムが貧困を再生産する形になっているからです。

もしもこういった不平等が広範囲に存在している国に投資を繰り返したとしても、貧困は再生産されるだけです。ですから私たちは、国の政治体制というものも告発しなければならないでしょう。それでもなおかつ貧困国には、貧困から脱出するための資金は必要です。ビルマで独裁政権が倒れたとき(私はそれを希望しますが)、その時点で多額の資金が必要になってくると思われます。国の再建に緊急を要するため、そして将軍によって貧困に打ちひしがれた人々を救済し、人々の生活の立て直しを図るためにも緊急の資金が必要になるでしょう。

重要なことは、グローバル課税を創設する際には、この地域で活動してきた多くのNGOの協力が必要だということです。NGOの中には政治的に目覚めた人がいます。連帯のために闘おうとする人がいます。難民に対する援助や資格外滞在者に対する支援などしている人たちがいます。NGOの中には、チャリティ団体になっているところもあり、必ずしも立派なところばかりではありませんが。

■環境税と公共交通の充実

通貨取引税という考え方が広まって以降、様々なグローバル課税が提起されています。グローバル課税というのは政治的なことです。これまで話してきたように、通貨取引税についてもいろいろな運動に取り組んできました。私たちは、環境税についても取り上げてきましたし、多国籍企業に対する課税も提唱しています。環境税を考えていく上で、大切なことは社会的な影響、社会的広がりでしょう。

フランスは日本同様、ガソリンが非常に高価です。リットル当たりの課税もフランスは高額です。一リットルのガソリンにおける税の占める割合は80%にも及びます。ですからガソリン税を上げるということは、フランスでは一般的には支持されません。ドイツでは、公共交通をどんどん削減しています。車がないと仕事にも行けません。そうしますと車を買えない貧しい人は、いつまでも貧しいままです。それ以前に仕事先を見つけることすらできません。ですから質の高い公共交通手段を要求することなしに、ガソリンに対する課税要求ばかりしていたら間違ったことになります。

ドイツでは環境運動がガソリンに対する高率の課税を要求していましたが、政府によって却下されました。そのためにも環境税は、汚染源となっている企業から徴収しなければなりません。日本ではどうか分かりませんが、ヨーロッパでは車の使用と結びついた環境汚染に大変な関心が集まっています。

■税金を払わない多国籍企業

多国籍企業に対する課税は非常に有効なものだと思います。多国籍企業は、その利益に応じた多額の税金を払わなければならないはずなのに、今日ではほとんど払っていません。多国籍企業は、外資導入のために各国が争って課税率を引き下げてきた状況を利用して、ほとんど税金を払わずに済ませているからです。これに対して、私たちはユニタリー・タックスという考え方を提案しています。多国籍企業は、どの国であっても同じ税率の税金を払わなければいけないというものです。もちろん、その実現は難しいでしょう。というのも多国籍企業の利益に対して闘いを挑むということは、システムそのものに対して闘いを挑むようなものですから。

しかし、それは非常に教育的です。つまりみんなにこう聞くわけです。「あなたいくら税金を払っていますか? そしてこの大企業はいくら払っているか知っていますか」とね。もちろんこれで何かができるというわけではありませんが、可能性はあるわけです。

■さまざまな社会運動とつながる

ATTACはもちろん、グローバル課税だけに関心があるわけではありません。いろいろな領域に対する提言をしてきています。それも人々の具体的な要求に結びつけて提案しています。環境に関して言えば、遺伝子組み換え作物に対する闘争を行っています。ジョゼ・ボベに代表される農民連盟といった農民組合を支援しています。農民連盟のキャンペーンを支援しています。農民連盟もATTAC・フランスのメンバーです。公共部門の民営化に対しても反対しています。それも労働組合と一緒に行っています。

もちろん、ATTACの運動が組合に取って代わろうというわけではありません。労働組合のキャンペーン活動を支援する役目をはたしています。なぜ民営化が人々にとって危険であるか、その理論的な資料を提供しています。労働組合というものは、まず労働者を組織しなければなりません。しかし、労働組合が常に労働者とコンタクトできる力があるとは限りません。そこでATTACが協力するのです。


■教育の現場へ入り込む

たとえば学校にリベラルな考え方を広めるというものです。フランスの教育には数学コンクールというものがあります。いままではとてもうまく機能してきました。その数学コンクールの性格が変わってきました。どうやったらうまく市場でより多くのお金を得ることができるかという考え方を競う場になってきたのです。

ATTAC・フランスは、それに対して闘いを繰り広げ、勝利しました。というのも労働組合に参加する大勢の教員たちが、ATTACのメンバーでもあったからです。それはATTAC・フランスが教員たちの組合と一緒に活動してきたせいでもあります。それは簡単なことでも、自然なことでもありませんでした。なぜなら、当初フランスの教員組合は次のようなリアクションをしていたからです。「学校というのは私たちのものだ、あなたたちが入ってくるところではない」と。学校に関して介入できるのは自分たちだけだというのです。

ですから一緒にやるためには、議論をし、中に入って行って話し合いをしなければなりませんでした。労働組合の同意を得ることには成功しましたが、簡単にできたことでも自然にできたことでもないということを理解していただきたかった。こういうことをお話しするのは、こういう展開があり得るということを説明するためです。なぜならば、新自由主義というのは広範囲に受け入れられている概念だからです。

■ATTACフランスの再生に向けて

最後に、現在、ATTACフランスを揺さぶっている危機についてお話ししたいと思います。その危機というのは深刻なものです。それも組織内民主主義に関わることだからです。私は、旧執行部がATTACを独占しようとしているのではないか、と考える人々のひとりです。この問題に中立的な立場というのは、あり得ません。労働組合や政党の中で成功を収めてきた政治勢力というのは、かならずそういう問題を起こします。権力を持てばそこに留まりたいものです。指導部の刷新あるいは交替という問題はどこにでもあります。政治的なプロジェクトに対し、労働組合や社会運動を利用したいという欲望は常にあります。

それがフランスのATTACにおいて起こっていることです。最初の段階でATTACのパワーであったことが、今は弱点になっています。ATTACフランスというのは、いろいろなアソシエーション、NGOや組合によって創られました。そこに個人会員が入ってきたのです。その人たちは、各都市において地方委員会のもとに組織されています。そこで活動的な会員は様々な運動を担いますが、ATTACの本当の権力というのは、創設団体であるアソシエーションや労働組合にあります。

今年(2006年)行われた執行部選挙で不正疑惑が起こりました。そのため不信感がうまれ、非常に角突き合わすような状況が生まれました。誰がそのような不正を行ったのかは、突き止めることはできません。しかし、実際に不正行為があったことは確かです。ATTACを守り救うためにも、その解決方法は見い出されなければなりません。12月に新しい選挙があるはずです。その時には執行部が刷新されることを望んでいます。そうなることを私は期待しています。

ATTACフランスには2万人の加入者がいましたが、半分の1万人がこの危機のために去ってしまいました。12月にもし解決方法を見つけ出すことができれば、来年にはATTACフランスはまた最出発できると思います。フランスの大統領選もありますが、その大統領選に私たちの影響力を行使して、私たちの声を届けることもできるはずです。

■質疑応答

〔Q〕

いま、日本の一部のエコノミストは、中国人民元の暴落がこの5、6年内に起こり得ると警鐘を鳴らしています。その理由として、中国が2005年WTO加盟時に約束した金融サービスの全面的自由化が今年12月から開始されることに伴なって、短期資本を含めた自由な資本投機が解禁されることにあります。

今後2008年北京オリンピック、2010年上海万博に向かって大規模に流れ込む資本が、その後一挙に引き上げることで、人民元の暴落が引き起こされるだろうと予測されています。たぶんブリュノさんが中国政府や中国民衆の前で、今すぐ語らなければならないことは、先の遅れてきた消防車ではないですが、火事はいまにも起こるということではないかと思います。


〔A〕ブルノ・ジュタンさん

中国の問題は重要です。今日、中国がどのような状況に置かれているかを理解しなければなりません。今まで中国政府は、入ってくるお金、出て行くお金のコントロールを続けてきた。これまでは、生産的投資は歓迎し、金融投資は受け入れてこなかった。金融投資というのは、中国の会社の株を買おうとして入ってくるお金のことです。これは中国人の投資家に任されていました。その状況は今後変わっていくでしょう。もし中国政府が中国市場を今以上に世界市場に一体化していこうとするならば、そうなるでしょう。

中国政府は、元がドルに張り付いていることを求めています。3年前まで人民元はドルに対して固定相場制を採ってきました。その後、いくらかの変動制を組み込みました。それはアメリカにとってあまり気に入ることではありませんでした。というのも、アメリカはドルを政治的・経済的武器として中国に対して使いたかったからです。アメリカはいま現在、いろいろな為替との比較でドルを切り下げようとしています。ユーロに対しても、日本円に対しても、中国人民元に対しても、切り下げたがっています。それで中国政府当局に圧力を掛け、中国元が上がるようにしています。その結果、中国政府当局はいくらか中国元を切り上げることにしました。

将来的にも中国元は上がり続けるとの約束の下でそうなっています。しかし、アメリカは現在、中国元が30%ないし40%切り上がることを望んでいます。それも中国製品がアメリカに輸入されてくることを食い止めるためです。アメリカに対する中国製品の輸出ということを見てみますと、実際は中国で生産されるヨーロッパ企業の製品や日本企業の製品なのです。もし中国が変動相場制をすぐ採用すれば、即座に元は上昇するでしょう。なぜならば、多額の資本がすでに外から中国に入っているからです。それらの企業は、円とかドル、ユーロで元を買うでしょう。

もしも中国の人民元が自由な市場にあるとしたら、ただちに相場は大変上がるでしょう。そういう状況を避けるために、資本の自由な移動をコントロールしています。いまのところ自由な中国市場は避けています。もし中国元が上がるようなことがあれば、日本にも大きな影響があるでしょう。円はドルに対して相場は上がっています。もしも、中国人民元がドルに対して上がると、日本の企業が中国で生産しているものは売れなくなるでしょう。

現在、日本の工業製品は、ドルに対する円高のために大変困難な状況になっています。円というのは、実は最も変動幅の激しい通貨になっています。基幹通貨の内ではユーロよりも、とても変動幅が大きくなっています。そして、強い円は日本では失業を生んでいます。私は外国人として外から見て、日本で円の強さが問題になっていないのはとても不思議に思います。

(了)

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ブリュノ・ジュタン(Bruno Jetin)さん

パリ・ノール(パリ第13)大学経済センター経済学教員。自動車産業の社会的生産モデル、発展途上国の労働市場と労働組織、金融市場の規制などを研究。ATTACフランス学術委員会メンバーで、資本規制、通貨取引税、その他国際公共財と開発の金融のためのグローバル課税を担当。グローバル課税を支持して欧州議会で証言、世界社会フォーラムに参加。関連論文多数。現在はタイで自動車多国籍企業の分析をしている。(社会評論社『通貨取引税入門』より)
posted by attaction at 14:39 | 通貨取引税(トービン税)、金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする