2012年11月06日

【IMF/世銀総会】10・13 No!No!No!No! IMF Partyでの発言

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稲垣 豊 ATTAC Japan(首都圏)運営委員
10/13 カフェ・ラバンデリア:No! No! No! No! IMF Partyでの発言

◎ 戦後資本主義を支えてきた2大国際金融機関

IMF/世銀は1945年に設立されたことでわかるように、金融危機やファシズムという資本主義自らが生み出した大混乱の極限であった第二次世界大戦が終わった資本主義体制を支えるために設立されたものと考えるべきです。「金融危機におけるIMF政策の失敗」とか「貧困削減プログラムにおける世銀の失敗」という考え方は、では「IMF/世銀に対して、正しいあるいは成功する政策をせよ」ということにしかなりません。国際規模で活動する資本主義が必然的にもたらす歪みや危機を先延ばしし、それでも危機が発生した場合は、いかに資本主義大国の利害に沿った解決を図るのか、ということがIMF/世銀の役目なのです。事実、世界銀行の融資は、冷戦の時代には親米反ソというイデオロギーが支配しており、反共・反ソ・反社会主義であればどんな独裁政権でも支援してきたのです。

そう考えると、独裁者への融資や、途上国に金を貸して危機になったらすぐに資金を回収するために押し付けてきた構造調整政策が「失敗」などではなく、IMF/世銀を支配するアメリカ、イギリス、日本、ドイツ、フランスという資本主義大国の利害をなによりも反映した政策だといえるでしょう。グローバル資本主義の変化(戦後復興、高度成長、国際化、途上国債務危機、ソ連東欧崩壊、経済の金融化、先進国バブルとその崩壊…)に伴ってIMF/世銀の役割も変化してきたといえます。

◎ 誰が誰に借りがあるのか?

「世界経済の安定化のため」や「貧困削減のため」などと言っても、これまでIMF/世銀体制の犠牲になってきたラテンアメリカやアフリカの人々は、「そんなことは大ウソでしょ」ということはわかっています。これは数字でも明らかにされています。1970年代に700億ドルだった第三世界の債務残高は2007年には3兆3600億ドルになり、1980年代から2007年まで第三世界諸国は70年代の102倍に当たる7兆1500億ドルを返済したにもかかわらず債務は48倍になっています。

1980年代に途上国の債務危機が表面化してきましたが、1985年から2007年までの期間、先進国から途上国に流れた資金よりも、途上国から先進国に流れた資金の方が7590億ドルも多いのです。世銀は戦後の欧州経済復興を目的に設立されましたが、それとほぼ同時にアメリカが行った欧州復興支援の「マーシャルプラン」は総額1000億ドルでした。その7倍以上もの金が、1985年から2007年の間に途上国から先進国に流れたのです。

途上国では借りた金はもうとっくに返済しているにもかかわらず、一向に債務は減らず、経済状況や人々の生活だけが苦しくなっているのです。これまで、このような状況は「途上国債務」の問題として語られてきましたが、いまや危機は欧州にまで拡大しているのです。

◎ ニジェールの貧困が解決しない理由はラガルド、お前だ!

いま資本主義の危機が一番目立っているのは外でもないIMFのラガルド専務理事のお膝元の欧州ですね。2010年のギリシャ危機から始まった欧州経済危機はいまだに収束の気配を見せていません。世界の金融屋は、ギリシャやスペインでのデフォルトの噂などに一喜一憂しつつ、「ちゃんと借金を払え!」と緊縮財政を押し付けています。しかしギリシャ、スペイン、ポルトガルなどの人々は「これは金融危機ではなく金融詐欺だ、私たちの危機ではなく資本主義の危機だ」と主張し、押し付けられる緊縮財政や債務の支払いに対して強い批判を持っています。

さて、そのラガルドですが、ギリシャの人々から緊縮政策への批判が出ているがどう思うかと新聞のインタビューで聞かれてこう答えています。「三人で一つのイスを分かち合い、教育を得ようと切実に熱望しつつも、日に一時間しか教育を受けていないニジェールの小さな村の子どもたちのことの方をもっと考えています」。ニジェールはウランを産出しており、フランス企業も現地で活動しています。原発大国フランスとフランスの原子力産業にとってニジェールは重要だということは置くとしても、IMFトップのラガルドがニジェールの貧困を持ち出したことには改めて怒りを覚えます。

ニジェールは、1996年7月からIMFの構造調整政策を実施している国で、いまだに40歳以下でなくなる人が25%もいる最貧国のひとつです。つまり、20年近くもIMFの構造調整政策を実施してきたにもかかわらず、貧困は一向になくならず、「三人で一つのイスを分かち合い、教育を得ようと切実に熱望しつつも、日に一時間しか教育を受けていないニジェールの小さな村の子どもたち」がいるのです。子どもたちのイスと教育の機会を奪ったのは、他でもないIMFの構造調整政策ではないですか。

※参考:年内に出版予定の『世界銀行:終わりなきクーデータ』(仮題/エリック・トゥーサン著)の第21章「構造調整とワシントン・コンセンサス−これらはすでに過去のものか?」に構造調整を実施したニジェールにおける抵抗闘争が記されているので紹介しておきます。
「2004年12月のママドゥ・タンジャ大統領再選直後から、待ったなしでIMF指導による法改正が行われ、05年1月には基本的物資・サービス(小麦、砂糖、ミルク、水、電気)の消費税が19%へと引き上げられ、大規模な抵抗運動が起こった。3月には、すでに何年にもわたる不作(旱魃と砂漠イナゴの害)や構造調整政策(民営化、社会支出予算削減、公務員のレイ・オフや賃金凍結などな)で貧窮していた人々が街頭で不満を爆発させた。三つの消費者団体が、29の組織と4つの労働組合連合をまとめ上げ、『生活費高騰反対同盟』という巨大な統一戦線を作り上げるのに成功した。数日にわたる『死の町』抗議行動と無差別逮捕の後、政府の政策を撤回させるのに成功した。19%の消費税はミルクと小麦粉には適用されず、水と電気に関しては大口利用の場合にのみ適用されることになった。砂糖に対する消費税だけは、IMFに対する民衆の激しい闘争にも関わらず、ニジェール当局によって忠実に実施された。」


◎ ギリシャ危機に責任があるのはラガルド、お前だ!

同じ新聞のインタビューでラガルドはこうも答えています。「アテネ(ギリシャ)に関する限り、終始税金を逃れようとする人々すべてについて考えている」と。また失業者が増えているという事態に対しては、ちゃんと税金を払って、それで雇用対策を考えるべきだという旨の発言をしています。ギリシャで一番の税金逃れはギリシャ正教会や国際海運会社(ギリシャでは国際海運税制に優遇措置がある)などです。それに引き替え普通の人々は所得税や消費税など税逃れが難しいわけです。

それだけではありません。ギリシャ危機の直前の2008年時点で、ギリシャをはじめ、PIIGSと呼ばれる国々(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)に貸し付けられた資金の四分の一近くがフランスの金融機関からの貸付でした。オリンピックなどでバブルが続いていたギリシャは儲かる、とおもって貸し付けたんですね。しかしバブルは国の粉飾財政がばれて、あえなく破綻します。

ラガルドは、2007年から2011年には、フランス金融資本の代弁者である財務省大臣を務めてきました。そして2011年7月にはIMFの専務理事に就任しています。つまり、ラガルドは、ギリシャ危機の原因でもある多額の貸付を行ってきたフランス金融機関をつかさどる金融行政のトップとして危機の直前に財務大臣に就任し、危機ぼっ発後すぐにIMF専務理事に就任して、借金の回収に乗り出したというわけです。

◎ 税金を払っていないのはラガルド、おまえだ!

「目玉でも肝臓でも売って金をつくってこい!」とやくざの借金取り立て屋は言いますが、ラガルドも同じようなことをギリシャの人々に言っているのです。IMFやEUなどによる緊急融資の条件としてギリシャに押し付けられた緊縮策は公共サービス補助金削減、2015年までに15万人の公務員解雇、最低賃金22%引き下げ、労働法制改悪、空港・港湾・鉄道、エネルギー事業、観光業の民営化等々です。そのどれもが人々の労働者の権利や生活レベルを大幅に引き下げる政策です。

ラガルドはギリシャ人に対して「税金を払ってない」と批判します。しかしみなさん、ご存じでしょうか。ラガルドは、IMF専務理事という国際公務員であり、所得税や関税がかかりません。彼女の年収ですが、給与が32万ユーロ、特別手当5万7千ユーロで、日本円にして合計約3800万円の年収に所得税はかからないのです。

昨日(10月12日)、EUにノーベル平和賞を授与するという報道がありました。これには怒りを通り越してあきれるばかりです。EUは、IMFやECB(欧州中央銀行)とともに緊縮財政を押し付ける「トロイカ」としてギリシャの人々から強く批判されています。attacフランスはEUへのノーベル平和賞授与に対して、「ギリシア、スペイン、ポルトガルにおいて数百万の民衆が2年間にわたって、社会的権利の破壊に抗議しつづけている。EU、IMF、ECBのトロイカに反対してきた」とし、EUと緊縮財政の新自由主義政策に抗議した人々への警察による弾圧を非難しています。

◎ 世界で見捨てられてきたすべての人々のために

今日、世界中で呼びかけられたグローバルノイズは、「危機は詐欺だ!借金は返さない!」というスローガンでデモを呼びかけています。これまで途上国債務問題に取り組み、先進国の押し付ける債務は不当であり支払う義務はないという主張をしてきた社会運動が、いまギリシャやスペインをはじめ、金融危機と緊縮財政に怒る人々とともに運動をはじめています。この運動は欧州だけでなく、債務帳消しを実施したラテンアメリカのエクアドル、あるいはアラブの春の発端となったベンアリ独裁体制を打倒したチュニジアの民衆たちとのネットワークのなかで広がりつつあります。これまで、国際政治からは無視され見捨てられてきた人々の声がいま世界中に響きわたろうとしています。

水谷橋公園からのデモの説明の際に、発言の中でトーマス・サンカラという、債務支払い拒否を主張したことで暗殺されたブルキナファソ大統領のことを紹介しました。時間がなくて紹介できませんでしたので、ここで彼の演説の一部を紹介して僕からの発言を終わりたいと思います。

「わたしは、世界の片隅で、もがき苦しんでいる、すべての人々を代表して語りたい。」
「男性によって作り上げられた、システムによって苦しんでいる、すべての女性を代表して、わたしは語りたい。」
「マラリヤや下痢といった簡単に救う方法があるにもかかわらず、貧しさや、知識の不足から、子どもたちが死んでいくのを目の当たりにしている、すべての母親たちのために、わたしは語りたい。」
「お金持ちの人々のショールームの武装された警備で守られている厚いガラス窓を、いつも、お腹を空かせて見ている貧しい子どもたちのために、わたしは語りたい。」
「死の商人たちが独占している最新の科学技術、それをじっと見つめる不安げな病人たちに代わって、わたしは打ち震えるのだ。」
「そしてわたしは、自然破壊の犠牲となったすべての人々、飢餓という恐ろしい武器によって死に至っている年間3000万人の人々に思いを馳せている。」
「世界中の国際会議で発言しようとしているすべての人々、彼らの声が届くように、そして真剣に問題を取り組むために、わたしはここに立ち上がる。」
「建前上はみな平等の権利をもって会議に臨んでいるとしても、実際の決定権を握っているのはごく少数の人々だけである。」
「だからこそわたしは、世界中の国際会議で発言しようとしているすべての人々の声が届くように、代弁者となろう。」
「そう、わたしは世界で見捨てられているすべての人々のために語りたい。」
「なぜなら、わたしは人間であり、人間である限り、わたしと無関係ではないのだから」

(トーマス・サンカラ:1984年10月にニューヨークで行われた第39回国連総会での演説)

posted by attaction at 16:05 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする