
通貨取引税(トービン税)についてはattacのサイトにも資料がありますので、ご参照ください。
■□ 国際的な投機マネーに課税を!
■□ 通貨取引税(トービン税)導入を求める市民運動の呼びかけ
いま、自由化・民営化のかけ声のもと、あらゆるものが商品に変えられようとしています。自由化・民営化の推進者は、市場原理こそが豊かな生活をもたらすと主張しています。
しかし、現実はどうでしょうか。経済的効率性ばかりが追求されるなかで、雇用は破壊され、農業は衰退し、地域経済は疲弊し、自然環境や健康の破壊もすすんでいます。安全性の軽視は、JR西日本の脱線事故のような、多くの人命を奪う悲劇すら引き起こします。日本に限らず世界各地で同じような問題が起きています。市場原理を優先する新自由主義的グローバリゼーションは、豊かな生活をもたらすどころか、さまざまな弊害を引き起こし貧困を増大させています。国連開発計画(UNDP)の 1999年度人間開発報告によれば、「最も豊かな国々にすむ世界人口の5分の1と、最も貧しい国々の5分の1の人々の所得の差は、1960年の30対1から、90 年には60対1に、97年には74対1に拡大した」のです。また、2005年度報告では、「1日2ドル以下で生活する者は世界の総人口の40%にあたる25億人であり、それは世界の総収入の 5%である」とも指摘しています。
私たちは、このような流れのなかで、とりわけ国際的な通貨取引とそれに関連する投機が大きな役割を果たしていることに注意を向けるべきだと考えます。1980年代以降、それまで国家間の交渉のなかでコントロールされてきた国際金融システムは、無政府的な「自由」に委ねられたのです。国際金融市場に参加して力を発揮しているのは、莫大な資産を保有するメガバンクや巨大多国籍企業、そして富裕層から預かった資産を運用するヘッジファンドです。それらの人たちは、自分たちの資産を増やすため、国境を越えて、株式や債券をはじめとする膨大な量の金融商品を売買し、さらに通貨そのものさえもレート(交換比率)の変動によって差益を得る手段にして、膨大な額の通貨を売買しています。1977年には183億ドルだった通貨取引額は、2004年には1兆8800 億ドル(国際決済銀行の発表による)にまで膨れあがりました。現在の通貨取引市場での取引の多くは、実質経済の目的には役立たない投機、つまり「賭け事」によって占められています。全世界の財貨やサービスの貿易に必要な通貨取引は、取引総額のわずか5%にすぎないのです。95%は投機マネーなのです。
こうしたなかで、世界の人々の生活は、通貨取引市場をはじめとする一部の人たちの思惑で決まる国際金融市場の動向に左右される不安定な状況に追いこまれています。90年代にはアジア、中南米諸国で金融危機が発生し、この危機は多くの人々に失業と貧困をもたらし、社会を荒廃させました。世界の大多数の市民は、カジノ化した国際金融市場に対して何の発言権も影響力も持っていないにもかかわらず、この「賭け事」の代償を払わされているのです。
また、メガバンクや多国籍企業は、政府の規制の及ばない国際金融市場のなかで自由に資本を移動させ、税金逃れをしています。その結果、租税を基盤とした社会保障の枠組みが崩れ、その代償を増税ないしや福祉予算の縮小という形で、国際金融取引とは無縁な民衆が払わされているのです。さらに、ひとたび財政赤字に陥れば、巨大企業や富裕層は、ますます自らの資産を増やすために「小さな政府」を要求し、累進税率の緩和、法人税率の引き下げ、投資に対する優遇措置、自由化・規制緩和を実現させようと政府に圧力を加えます。富裕層の「自由」の代償を、幾重にも低所得者が払う̶̶これが現在のグローバリゼーションの実態なのです。
このような新自由主義的グローバリゼーションに歯止めをかけ、世界のすべての人々が貧困と飢え、環境破壊の影響から解放されることが優先される社会経済を実現していく必要があります。そのための有効な策として、ヨーロッパなど多くの国々で「通貨取引税(トービン税)」が提案されています。この税制度は、すべての通貨取引に対して通常は0.01%程度のごく低率の税金を課すことによって、貿易を損なうことなく投機的な取引を抑制し、0.01%では抑制しきれないほどに為替レートが変動した時にはより高い税率にするというものです。さらにその税収は、国際市民社会の創意によって、世界の貧困の解消や環境問題解決のために活用されます。
通貨取引税は、以下の3つの主要目的をもっています。私たちはこの考え方を支持して、日本でもその導入に向けた一歩を踏み出すことを呼びかけます。
@為替市場と国際的な短期資本移動を抑制する。これによって金融市場を安定化させ、国家の経済政策上の自立性を強化し社会保障の基盤を守る。
Aグローバルな公共福利のための世界基金を、つまり国際的な所得再分配のしくみを創出する。
B国際金融市場と、それによって解き放たれ強化された多国籍企業や金融資本家に対する民主的規制を可能にする。
通貨取引税は非現実的なものではありません。技術的には容易で、実行する意思さえあればすぐにでも実現できます。カナダ、フランス、ベルギーは、すでに議会で通貨取引税の導入あるいは支持を決議しています。スペイン、イタリアは法案を提出しました。イギリス、ドイツ、スウェーデン、フィンランド、ノルウェーでは閣僚が支持表明をしています。
東京は、ロンドン、ニューヨークに次ぐ大きな通貨取引市場です。したがって、日本国内への通貨取引税導入を求めることは、日本を含め世界の市民生活を安定化させ、とりわけ貧困に苦しむ人々の生活水準の向上にとって極めて重要です。
通貨取引税の実現のためには、国際金融や税制、国際条約等についての専門的知識だけでなく、幅広い市民の経験や創意を結集する必要があります。市民、学者・研究者、議員、非政府組織が協力して通貨取引税導入に向けて準備を進め、広く議論を巻き起こしましょう。
グローバル化に対応した金融界の利益を口実に奪われていく市民の権利の守るために、そして、富の創造と分配のあり方を私たち市民が決定する民主的な世界=「もうひとつの世界」を可能にするために、私たち日本で暮らす市民も世界の市民とともに、一歩を踏み出しましょう。
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