2011年11月09日

【ギリシャ】EUにおけるクーデター?(スーザン・ジョージ)

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EUにおけるクーデター?
スーザンジョージ
2011年10月
[トランスナショナル研究所のウェブより。原題は"A Coup D'Etat in the European Union?"]

EUの労働者の高望み - よりよい賃金と労働条件、より短い勤労生活と潤沢な退職金、長い休暇や休憩時間 - は抑制しなければならない! もうたくさんだ!

欧州委員会が解決策を持っていることに感謝しよう。もうすぐ新自由主義モデルは逆転不可能になり、この厚かましい成り上がり者たちは永久に黙るしかなくなるだろう。ここが潮時だ。欧州委員会は華麗な立ち回りで、”シックス・パック”(ビールの6本入りケース)と呼ばれる一連の政策をゴリ押ししてきた - ビールがふんだんに酌み交わされるパーティーを示唆する陽気なネーミングだ。この一連の政策はむしろ陰鬱であり、委員会にEU加盟国の国内問題に対する前代未聞の影響力を与えるものである。

2011年9月28日に欧州議会は、委員会の計画 - 各国が自国の予算を決定し、自国の国家債務を管理する権限を徹底的に奪い取る - を僅差で可決した。これからは欧州議会と欧州評議会は(当然のこととして欧州委員会の監督の下で)、最近少し加盟国から注意を払われるようになってきたマーストリヒト条約 - 「安定と成長のための協定」とも呼ばれる - に基づく勧告の遵守を各国政府に強制することができる。2005年以降、この条約はまるで奇異な遺物のように見られてきた。しかし、今ではシックス・パックのおかげで、3%を超える財政赤字やGDPの60%を超える国家債務は容認されないことになった。この人たちが必要としているものは、厳格な規律であり、誤りを犯さないことである。

2012年以降、欧州議会と欧州評議会は各国の国家予算に対して、各国議会が検討する前に、それどころか、各国議会に示される前に、それを精査することになる。もし加盟国が債務を十分な速さで減らさなかったり、予算についてのブリュッセルからの"提案"を拒否した場合、強制措置が始動する。加盟国がさらに抵抗した場合には、罰として、違反の重大度についての判定に基づいてGDPの0.01%、0.02%、あるいは0.05%をEUに預託するか、またはEUに没収される。たとえばフランスはGDPが約1兆9000億ユーロ(2兆6000億ドル)であり、違反を認定された場合に委員会は200〜400億ユーロ、あるいは(GDPの0.05%までエスカレートされた場合には)1000億ユーロの預託または罰金を要求することができる。

これらの恒久的なシックス・パック政策は、欧州委員会のいつもの密やかで効率的な方法に従って、ほとんど何の抵抗もなく、ごくわずかな議論で、市民の参加を実質的に排除して全ての承認手続きを通過した。ヨーロッパの大部分の人々は、何か変化が起こったことを少しも感じることはなく、政府の統治権限に対する露骨な攻撃に全く気付いていない。この法律のおかげで、私たちは全ヨーロッパ、特にユーロ圏における新自由主義の原理の永続的な権力を約束された。そこでは選挙で選ばれた議員が自国の予算を編成する権限を、任命制で誰に対しても責任を負わない人たちによって奪われている。

議員たちは金融政策についての発言権をずっと前に失った。今ではシックス・パックもまた、欧州議会の多数を占める右派のおかげで、しっかりと根拠づけられ、逆転は不可能ではないにしても難しくなる。他の地域においては、加盟国の政府や国民に対するクーデターについての非難の声を聞くことがあるかもしれない。しかし、これまでのところ、「EU戦線異状なし」である。

同時に、委員会は加盟国に対して、新自由主義のシナリオの別の部分も進めるよう圧力をかけている - 労働時間の延長と退職年齢の引き上げ、賃金と社会保障を最低の基準に従って段階的に均等化することを強制する種々の指令を通じてである。このプロセスは多少時間がかかるかも知れないが、シックス・パックによって強化されるだろう。欧州司法裁判所は、特に2つめの目的[賃金と社会保障の段階的に均等化]との関連で、労働者がスウェーデンやフィンランドのような強い労働者保護の法律を持つ国で働く場合でも、基準以下の賃金を受け入れるよう義務付ける少なくとも4つの独立した判決を下すことで自分たちの役割を遂行しつつある。

委員会の独断専行と、加盟国の国民や議会を不必要に混乱させることなく物事を成し遂げる能力には感嘆するしかない。これらの政策とそれを実施するプロセスが一見すると技術的に複雑であるかのように見えることは、物事を密かに進める上で好都合であるが、実際にはこれらの政策は非常に単純である(また、すべての書類の上にドイツの指紋が付いていると付け加えておこう)。一方、新自由主義的な傾向が強いヨーロッパのメディアはブリュッセルの舞台裏で起こっていることを問題にする理由が見当たらず、市民による介入が手遅れになるまで抵抗に蓋をしようとしている。これらのすべては、新自由主義の一層の勝利とヨーロッパ経済の失敗が迫っていることを告げている。いや、失礼、失敗と言っても、90%の人々にとっての失敗に過ぎない。それ以外の人々は大丈夫だ。ご心配なく。マーティン・ウルフが最近の「フィナンシャル・タイムズ」紙で、ヨーロッパの情勢についてタキトゥスを真似て述べたように、「彼らは砂漠を造り、それを安定と呼ぶ」。
posted by attaction at 21:06 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする