2006年08月19日

レバノン戦争停止についての声明

【解説】8月12〜16日、国際平和派遣団がレバノンを訪問した。 イスラエルの爆撃にさらされたレバノン社会運動団体は、海外の運動団体にレバノンへのピース・ミッションを要請した。これに応えて、フォーカス・オン・ザ・グローバル・サウスは、世界社会フォーラムの社会運動団体ネットワーク、ならびに2004年9月にベイルートで開催された「反戦と反グローバリゼーションのための国際戦略会議」で作られたグローバルなネットワークに呼びかけて、急遽、派遣団を編成して、フォーカスのウォルデン・ベロー氏ら12名がレバノンを訪問した。12名は惨状を確認し、様々な運動団体や住民にインタビューするとともに、レバノンのラフード大統領を始め、国会議員と面談した。

国際平和派遣団のメンバーは次のとおりである。

・ウォールデン・ベロ(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス フィリピン)
・モハメド・サリム(国会議員、インド共産党〔マルクス主義〕 インド)
・キェルド・ヤコブセン(CUT、ブラジル・南半球社会連盟 ブラジル)
・ムジブ・ハタマン(国会議員、アナク・ミンダナオ フィリピン)
・シーマ・ムスタファ(「アジアン・エイジ」副編集者 インド)
・カマル・チェノイ(全インド平和・連帯組織、核廃絶連合 インド)
・カリ・コベロード・ブルスタッド(ヴィア・カンペシーナ ノルウエー)
・ジェラール・デュラン(フランス農民連盟、ヴィア・カンペシーナ フランス)
・フェロゼ・ミシボルワラ(戦争とテロに反対するフォーラム・ムンバイ インド)
・ビジャヤ・チョーハン(「レストラ・サバ・ダル」〔青年組織〕 インド)
・ハーバート・ドセナ(フォーカス・オン・ザ・グローバルサウス フィリピン)
・ゲルマン・ギロット(通訳 スペイン)

attacのメーリングリストに転送された国際平和派遣団による「レバノン戦争停止についての声明」および同派遣団に参加しているウォールデン・ベローのレポート「この過酷な勝利」を転載する。

なおウォールデンベローの所属するフォーカス・オン・ザ・グローバルサウルのサイトには他のレポートも掲載されている。

(ATTAC Japan)

国際市民社会平和視察団の声明

■レバノン戦争停止についての声明
BY THE INTERNATIONAL CIVIL SOCIETY AND PARLIAMENTARY PEACE MISSION

記者会見, Beirut, August 14, 2006

我々India,Philippines, Brazil, Norway, France, and Spain からの平和使節団はイスラエルの攻撃に抵抗したレバノン民衆に連帯を表明する。

このレジスタンスの勝利は、ここに民衆の力が再び表明されているのを見た全世界の人々に勇気を与えた。 このレジスタンスは、イスラエル無敵という神話を初めて打ち破った。これは米イの「新しい中東」政策、すなわちグローバルな帝国主義の不可欠の一部たるシオニストの膨張主義とアメリカの覇権に対する勝利である。

ヒズボラとナスラッラー事務局長の率いる勇気あるレバノン民族抵抗運動がこの勝利を導いた。宗派、階級を超えたレバノン人民の結束と、市民社会の抵抗が、その中心である。

私たちは、無辜の市民の犠牲を悼むことにおいても、レバノンに連帯する。
市民への広範囲の狙い撃ちによる殺害をおこなったイスラエルの国家テロを糾弾する。これは重大な国際法違反であって、戦争犯罪として処置されるべきものである。

この攻撃のなかで国外退去を余儀なくされた外国移民労働者にも同情を表明する。彼らの国の政府に、援助を要請する。

イスラエルの「集団的懲罰」政策は、市民生活の基盤である施設、設備
(residential complexes, entire villages in south Lebanon, bridges, roads,power stations, gas stations )を大々的に破壊し、その修復コストは莫大である。国際社会に援助を要請する。

停戦を歓迎する。イスラエル軍が即座に南レバノンを撤退することを要求する。イスラエルは、犠牲の修復の費用を負担すべきである。イスラエル国内のものを含め世界の平和運動はイスラエル・米国の犠牲に抵抗するよう、我々は求める。

イスラエル・米国の情報操作に加担した国際メディアを糾弾する。

我々は勧告する。

・国際戦争犯罪法廷設置。被告:イスラエル政界、軍。世界の平和運動はこれに協力されたい。
・イスラエル軍はシェバー農場を含めレバノンから撤退
・独立主権国家パレスチナ確立
・イスラエル軍ゴラン高原撤退
・イスラエル牢獄の全捕虜(all prisoners in Israeli jails)解放
・米国のイラク・アフガン占領終了
・米国・イスラエルはイラン、シリアを脅かすのをやめること

Mission members:

Walden Bello, Focus on the Global South, Philippines
Mohammed Salim, MP, Communist Party of India (Marxist), India
Kjeld Jakobsen, CUT Brazil and Hemispheric Social Alliance, Brazil
Mujiv Hataman, MP, Anak Mindanao, Philippines
Seema Mustafa, Resident Editor, Asian Age, India
Kamal Chenoy, All India Peace and Solidarity Organization, Coalition for Nuclear
Disarmament, India
Kari Kobberoed Brustad, Norsk Bonde-Og Smakbrukarlag, Norway, La Via
Campesina
Gerard Durand, Confederation Paysanne, France, La Via Campesina
Feroze Mithiborwala, Forum against War and Terror, Mumbai, India
Vijaya Chauhan, Rastra Seva Dal (Youth Organization), India
Herbert Docena, Focus on the Global South, Philippines
German Guillot, interpreter, Spain
(翻訳:Hagitani Ryo)

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■この苛酷な勝利(A Bittersweet Day)

Beirut, August 14:
By Walden Bello*

BEIRUT - 停戦当日のベイルートの苦い勝利の感情をいちばんよく表しているのは、タクシー運転手ラフルが私に言ったひとことだ「勝ったよ、だけどなんて大きな犠牲だ。こんなに大勢の者が立ち退かされて、死んで、建物が壊されて」おそらく死者は1400名を下らず、経済的損害は60億ドルに達する。

午前8時に停戦が発効したとたん、たくさんの車が、ベイルートに避難していた人々を載せて、南に出発した。

「帰っても家もなくなってるだろうけど、土地はある。なんといっても我が家にまさるものなしさ」と、彼らの一人は言う。国民の3分の1が家を捨てたのだ。向こう数日、この国の道路は彼らの帰郷で大混雑が続く。

負けたのは誰だ

 この戦争の敗者は誰か。現地英字紙「レバノン・スター」論説が、人々の声を代表している。
「イスラエル政府は信用を失墜し、米国・イスラエル関係の深刻な欠陥を露呈した。イスラエルは混乱に陥った政界に対処しなければならない。政府閣僚ですら、イスラエルの敗戦だと言う者がいる。ユダヤ国家にとって近年最悪の政治危機である。この気分をよく表しているのが日刊紙ハアレツのゼエヴ・シフの論説だ。それは「陸軍がヒズボラの仕掛ける種類の戦闘にもはや適切に対処できないことが明らかになったからには、軍事・戦略管理の見直しを」と要求している。

 誰が敗者かは疑いない。レバノンの政治家やアナリストの多くは、この戦争がヒズボラの7月初旬の攻勢でイスラエル兵士2名が捕虜となるよりはるか以前に米国政府がたくらんだのたと確信している。レバノンのラフード大統領は我々平和使節団に語った「イスラエルの攻勢が予め計画され、外部の力に支援されていたことはわかっている」。エル・ハリル議員は米国が仕組んだ戦争だと公言して憚らず、最近の米国誌ニューヨーカーに載ったジャーナリスト、シーモア・ハーシュの記事が、ネオコンが1996年のときのようにイスラエルを通じて中東再編をするという基本構想をもっていると書いたことを指摘した。

 ヒズボラ殲滅は、米国にとって、たぶんイスラエルより大事だろう、と元米国務省政策企画スタッフでリーハイ大学国際関係学部長のアンリ・バーキーは言う。
 最近の記事でバーキーは、イスラエルはヒズボラをリタニ川の北に追いやれば済むが、米国はそうはいかないと書いた。「ヒズボラ・モデルは、装備も整いよく訓練された民兵という米国にとっての悪夢を表している。それがレバノンで成功するなら、世界中で模倣者が出てくる。ヒズボラはアルカイダより高度で社会に根を下ろしている。負かそうと思ったら市民に犠牲者を出さずには済まない。それは外部世界の同情を買う」 この見方からすれば、ヒズボラがイスラエルに勝つのは最悪のことなのだ。

勝利者

 レバノン人は別の見方だ。この戦争でレバノンの政治集団と国の大半がともにシーア派主導の機関による対イスラエル抗戦を支持した。第一にマロン派クリスチャンのエミル・ラフード大統領が、「国民的抵抗におけるヒズボラの指導性」を讃えた。 ヒズボラの水際立った戦いぶりが、レバノン・スターの言う「レバノン社会の前例を見ぬ連帯」を生んだことは誰もが認めている。最初のうちは、ヒズボラが捕虜交換の目的でイスラエル兵士2名を人質に取ったことを、レバノンを戦争に引きずりこむ行為と批判する声もあったが、それも国民が誇りに高揚した数日間に聞かれなくなっていった。

 この30日間で、ヒズボラはテロ組織という嘘は消え去った。イスラエルが故意に市民を標的にしたのに比べ、ヒズボラは戦闘中のイスラエル兵士を狙ったのだから、形勢は逆転した。いまや世界の市民運動から、イスラエルの政界・軍部指導者を戦争犯罪と国家テロの容疑で裁けという声が澎湃と湧き起こっているのだ。

 ヒズボラは軍事力ばかりを見せつけたのではない。福祉活動でも並々ならぬ働きを示したのである。今回の場合、貧困層のための社会事業が立ち遅れているこの社会で、退去した難民のために尽力した彼らの活動は、効率的な近代的社会のひとつの模範となった。たとえば、46箇所の診療所、病院を運営している。彼らの「建設のためのジハード」【訳注 ジハードは「アッラーの御心にかなうための精進」の意】は90年代、南レバノンの物質的、社会的基盤を維持・発展させるうえで功績をあげており、いまや戦後の再建にさらに大々的に取り組もうとしている。

 ヒズボラが地域レベルでも国際的場面でも、有能な知識人とスポークスパーソンを擁していることも明らかになった。とりわけアリ・ファヤド博士の率いる「研究・資料作成諮問センター」( Consultative Center for Studies and Documentation (CCSD)は300点を越える社会・経済・政治・行政上の問題に関する報告を作成している。

 洗練された知識人のアリ博士はヒズボラの勝利の要因を3点挙げる。ロケットでイスラエルの空軍力を無力化し、飛行機をもたないヒズボラが攻撃能力をもったこと。ゲリラ戦によって、アラブの通常軍と戦うために投入されたイスラエル陸軍の裏をかいたこと。ヒズボラ戦士は独力で戦えるよう訓練されたゲリラであったばかりでなく、自分は正しい者の側に立っているというイデオロギー的信念に満たされていたこと。

 ヒズボラの社会政策は「主にレバノンの国内問題によって決められることはもとよりだが、パレスチナ人の闘争と国際連帯も考慮している」と博士は言う。このアラブ全体、世界全体に対する国際的展望があったからこそ、アラブ世界ばかりでなく、広く全世界から、ヒズボラの闘いに共鳴する声が寄せられたのだ。ヒズボラの指導者はベネスェラのウーゴ・チャベス大統領を賞賛する。そしてこの賞賛は相互的なものだと言われる。

 政治局員であるファヤドは30日戦争でヒズボラを対外的に代表する顔ぶれの一人だったため、イスラエルに特に狙われ、住む家も乗る車も毎晩のように変えた。.

 8月14日のベイルートは悲しみと誇りにみちた都市だったが、明らかに後者が優勢を占めていた。市内いたるところでヒズボラとハッサン・ナスラッラー事務局長を讃える自動車行列が見られた。9時にナスラッラーがテレビに出て「レバノンの素晴らしい戦略的勝利」を発表し、ヒズボラにはリタニ川の後方に兵士を撤退させる用意があると発表したときには、誰もがチャンネルをそれに合わせた。

 彼がそう語っているとき、レバノン共産党の幹部の一人が、このイスラム政界の顔となった人物を「我々アラブ人のチェ・ゲバラがターバンを被って、ここにいる」と評したのは、レバノン世俗政界の声を代表するものと言えよう。


*Walden Bello is professor of sociology at the University of the Philippines
and executive director of the research and advocacy institute Focus on the
Global South based in Bangkok. He is one of the members of the
International Civil Society and Parliamentary Peace Mission to Lebanon.

(翻訳:Hagitani Ryo)
posted by attaction at 10:06 | 反戦 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする