2003年06月24日

Q11:これらの反対論に信憑性はあるのでしょうか?

「真の」価格の発見?

現実に起きていることを検討すれば、金融市場が「真の」資産価格へと収斂していくわけではなく、全般的な上昇局面(バブル)と下方調整局面(暴落)が相互に起きていることがわかります。というのも金融市場には、「実体経済における」財やサービスを取引する他の市場とは異なる特徴があるからです。金融市場では需要と供給の法則が逆向きになっているのです。

通常は、財の価格が上がれば需要は減ります。つまり潜在的な買い手は、他の〔もっと安い〕ものを買おうとします。金融資産の場合は逆に、価格が上がれば需要が増えます。価格上昇で利益を得ようとして、買いに回る投機家が増えるからです。それゆえ、金融市場は根本的に不安定なのです。投機家はこぞって奈落へと向かう羊の群れのような決定を行っています。

「リスクヘッジ」は経済的に有用?

(先の輸入業者のように)デリバティブによって安心を得ることのできる市場参加者もありますが、彼らの金融取引は(コーヒーの輸入のように)現実の財やサービスの取引と結びついているため、それほど頻繁ではなく、税を課してもほとんど負担とならないことになります。

金融取引税は相場のボラティリティを促進させる? [1]

金融取引税の導入が市場のボラティリティを促進すると結論付ける研究に説得力はありませんし、そこで導き出されている結論は一様ではありません。金融取引税の想定する税率はいずれも低率ですし、情報技術の進展によって取引に要するコストは過去30年間で大きく下がりました。金融取引税の導入によって取引コストが上がるとしても、ほとんどの市場で20年前に見られた程度の水準に戻るだけです。取引コストの上昇によって実際にボラティリティが促進されたとしても、1980年代の水準になるだけでしょう。そしてそれは今日よりもずっと低い水準でした。

金融取引税は市場の流動性を低下させる?

反対論は、金融取引税が金融市場の流動性を低下させ、投資家による株の売却を困難にすると主張します。確かに金融取引税は取引コストを増加させ、それによって取引量を減少させるでしょう。市場の流動性はやや低下するわけですが、取引コストは1980年代の水準に戻るだけですから、好況期の1980年代よりも流動性が下がるとは考えられません。経済が発展すれば、産業はより効率的になると考えられますが、金融はといえば複雑化して不透明になり、それにつれて社会的有用性を失うことがすでに実証されています。

取引地の移転が起こる?

金融取引税が世界のあらゆる取引と金融商品を対象とするのでない場合には、税金逃れをするために扱う金融商品を変更したり、取引の場所を変えようとする動きが起こるでしょうが、それによる税収への影響は極めて限定的でしかないでしょう。主要金融センターの関係者たちは地の利(大口取引先の有無、インフラストラクチャーなど)を受けています。税コストが移転コストよりも低ければ、金融機関は移転よりも納税を選ぶでしょう。

たとえば現在でも取引コストは国によって大きく違いますが、費用がもっとも低い場所に取引地を移転するようなことは起きていません。金融機関は、アメリカ合衆国、イギリス、大陸ヨーロッパ、日本という主要証券取引市場の安全性や、取引コストを補うだけのネットワークの効果を考慮するでしょう。イギリスでは0.5%という比較的高率の「印紙税」が課されていますが、ロンドン証券取引所の魅力を変えはしませんでした[2]。

租税回避行動が起こる?

新税が導入されれば租税回避が発生します。監督制度 を整備するかどうか、またタックス・ヘイブンを禁止するかどうかは、政治的な意志の問題です。

消費者と賃金労働者へ負担が転嫁されることになる?

新税が導入されれば、その負担を経済の川下の担い手に転嫁しようとする企てが必ず起こるものです。銀行手数料の引き上げを防ぐのは公権力と消費者団体の役割です。賃金と雇用がさらに圧迫されることを阻止するのは労働組合の役割です。売上高の減少により極度に弱体化する金融業界は、生産部門への圧力を維持するのさえ一苦労でしょうから、それ以上の圧力を行使できる可能性は低いでしょう。

[1] 以下の3つの反論はDean Baker,≪ Réponses aux critiques sur les taxes sur la spéculation financière ≫
CEPR, January 2010からの引用。
[2] Dean Baker, CEPR January 2010


前へもどる
最初へもどる
次へすすむ

arton334.jpg
posted by attaction at 14:29 | 通貨取引税(トービン税)、金融 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする