「気候を変えるな、システムを変えろ」
クリマフォーラム09民衆宣言
要約
気候危機の解決策は存在する。民衆および地球が必要としているものは、私たちの社会を、すべての人々の生活と尊厳の権利を保障し、将来の世代に、より豊かな地球とより充実した生活をもたらす形へと、公正かつ持続可能な移行をしていくことである。
私たち、コペンハーゲンのクリマフォーラム09に集った個人、コミュニティおよびすべての団体は、すべての人々、組織、政府ならびに国連を含む政府機関に、この必要不可欠な移行のための努力に参加するよう呼びかける。これは手腕が問われる仕事である。今日の危機には、経済的、社会的、環境的、地政学的、およびイデオロギー的な側面があり、それらは気候の危機とも、ならびに相互にも作用し、補強しあっている。
それゆえ、私たちは以下の気候変動に対する緊急行動を呼びかける。
*今後30年以内に化石燃料の使用を完全に中止する。
これには5年ごとの具体的な短期目標が盛り込まれることとする。私たちは、2020年までに先進国の温室効果ガス排出量を対'90年比で40%以上、即時削減することを要求する。
*大気空間の過剰消費、および被害を受けたすべてのグループおよび人々に対する気候変動の悪影響に対して、気候債務の確認、返済および補償を行う。
*完全な市場経済および技術主導タイプの誤った、危険な解決策を拒否する。
原子力発電、アグロ燃料、炭素回収貯留、クリーン開発メカニズム、バイオ炭、“気候変動対応”遺伝子組換作物、地球工学、REDD(森林減少と森林劣化による排出の削減)などであり、これらは社会および環境の対立を深刻化させる。
*天然資源に対する安全な、クリーンな、再生可能な、および持続可能な利用、ならびに食料、エネルギー、土地および水の主権への移行を前提とする気候の危機に対する真の解決策。
よって、私たちは、COP15が、環境的に、社会的に、および経済的に持続可能かつ公平な手段により、地球の環境的、社会的および経済的な均衡の回復に着手するための合意を達成し、最終的に法的拘束力を持つ条約を策定するよう要求する。
人為的原因による気候変動の影響は、多大な人権侵害を引き起こしている。すべての国が、国連憲章に従って、世界のどこにおいても人権尊重が確実に保障されるよう国際的に協力する義務を負っている。気候変動に関するどのような特定の合意であっても、それは私たちの社会の持続可能な移行を達成するという広い文脈の中でなされなくてはならない。
私たち、クリマフォーラム09に参加した個人と団体は、このような移行を進める活動を全面的かつ積極的に継続していくことを宣言する。持続可能な社会への移行には、社会・政治・経済構造の根本的な変化と、ジェンダー・階級・人種・世代・民族間の不平等と不正義の是正が不可欠である。
そのためには、地域コミュニティの民主的主権、ならびにそれらの社会・政治・経済の基礎単位としての役割の復活を必要とする。天然資源に対する地域的かつ民主的な所有権、支配権、および利用権は、コミュニティの意味のある、持続可能な発展の基礎となり、同時に温室効果ガス排出削減の基礎にもなる。共有かつ分かち合うべき資源の管理に関して、より強力な地域的および国際的な調整が求められるとともに、より強力かつ民主的な国連も必要である。
私たちは、関係する全ての個人、社会運動、文化・政治・経済団体に対し、私たちと共に、民衆のビジョンと要望を社会の全てのレベルにおいて推し進める強力なグローバルな運動を構築するよう呼びかける。私たちは共に、持続可能な未来へとグローバルに移行していくことができる。
1、序文
気候危機の解決策は存在する。私たちの社会が、公正で持続可能なものへと転換していくこと、それこそがまさに、人々が、そしてこの地球が必要としているものだ。持続可能な社会とは、すべての人々の生きる権利と尊厳が保障される社会であり、より豊穣な地球と、人間らしく満たされた人生を、今の世代のすべての人が享受し、かつ将来の世代にも残せるような社会のあり方だ。この転換は連帯(特にもっとも弱い立場にある人々との)、反差別、ジェンダー平等、公平、持続可能性の原則に基づいて達成されなくてはならない。私たちは自分たちが愛し、尊重する自然の一部であることを深く認識しなくてはならない。そして、気候危機に立ち向かうには、人権を基盤とし、しっかりとした意識を持ち、断固としたアクションを起こしていかなくてはならない。「世界のどこにおいても人権が確実に尊重されるよう国際的に協力する義務をすべての国が負う」と国連憲章は規定している。
私たち、コペンハーゲンでのクリマフォーラム09に集った個人、コミュニティ、すべての団体は、すべての人々、組織、政府ならびに国連を含む政府組織に、この必要不可欠な転換の努力に共に参加するよう呼びかける。これは非常に大きな挑戦だ。今日の危機は気候だけではなく、経済、社会、環境、地政学的側面、そしてイデオロギーの各方面に広まっており、それらが相互に作用し助長しあっている。現在支配的な社会・経済システム、そして世界規模のガバナンスを私たちが団結して変えていくより他に、今この瞬間、同時発生している複数の危機 − 特に気候、エネルギー、金融、食料、水など − を生き延びる道はない。現在支配的なシステムや、腐敗したガバナンスが、気候危機の解決を阻んでいる。
以下の運動に今後取り組んでいくことをここに提唱する。
環境債務・気候債務が返済されなくてはならない。原子力発電、アグロ燃料、排出オフセット、二酸化炭素回収貯留(CCS)、バイオ炭、地球工学的手法、カーボン・トレードといった、危険で誤った、かつ目先のことだけを考えた解決法が進められ採択されてはならない。代わりに私たちは、エネルギー消費の削減と共に、クリーン、安全、再生可能な資源に基づく真に持続可能な技術への転換を進めなくてはならない。私たちは年齢、ジェンダー、民族、信仰、コミュニティ、国籍などすべての違いを乗り越えた社会運動ならびにセクター間の協働を歓迎する。私たちは若者、女性、男性、労働者、小農民、漁民、先住民、あらゆる肌の色の人々、都市・農村社会グループによる強力な社会運動を打ち立てることによって自分たちの未来を自らの手で掴み取りたい。社会のすべてのレベルにおいて、環境劣化と気候変動に取り組む運動を作りださなくてはならない。私たちは新しい国際経済体制の構築を求め、G8,G20,その他、権力を握る国々の閉鎖的グループに対峙するものとして強力かつ民主的な国連を支持する。
2、私たちが挑戦すべき課題について、
私たちは以下のように考える;
大気中の温室効果ガス(GHGs)はすでに気候システムのバランスを崩す濃度に達している。CO2濃度と地球の温度は過去50年、地球上の歴史始まって以来のスピードで上昇しており、今後数十年にはそのスピードは更に加速すると見られている。他の重層的かつ深刻な生態系のバランスの崩壊に加えて、温暖化による被害は世界中の人々、特に貧しい人々、弱い立場に置かれた人々の生命と生活を脅威にさらしている。
気候システムのバランス崩壊は、気温上昇、降雨パターン、熱帯性サイクロン、ハリケーン、台風、洪水と旱害の激しさと頻度を増加させ、生物多様性を失わせ、地滑り、海水面の上昇、飲み水の不足、作物を育成できる期間の短縮化、収量の低下、農地の喪失あるいは劣化、農業生産の減少、生計手段の喪失、生態系の消滅、魚種資源の減少などを引き起こしている。これらの現象が食料危機、飢餓、疾病、死、移住、持続可能な生活手段の喪失に繋がっていく。
そしてそれを助長するのが遺伝子組み換え作物(GMOs)の導入や単一作物栽培、大規模産業化された農業である。これらはすべて企業により強力に推進されている。これらは生態系の安定と多様性に深刻な脅威をもたらし、小規模農民を隅に追いやり貧窮させ、食料主権を侵害している。企業にコントロールされた農業は、地域のニーズに基づいたものではなく、特に北の過剰消費や煽られた国際需要を満たすことに焦点が当てられている。同様の指摘は近代産業化された漁業、集約型森林経営、鉱山採掘にも当てはまる。これらは生態系を破壊し、生物多様性を脅かし、地域コミュニティの生命と暮らしを破壊する。
これら気候変動による影響は、ますます拡大する社会格差、我々が共に分かち合うべき環境の深刻な破壊とともに、すでに何百万人もの人々やそのコミュニティの生活を直撃している。しかし私たち民衆は、この事実が我々の運命なのだと受け入れてしまう気はない。環境破壊を助長する力(これは最終的には自滅へと我々を追い込む)やその原因に立ち向かい、生活を守ろうという断固とした民衆運動が急速に成長していることは、その証左である。
アジア、アフリカ、中東、太平洋、中南米だけでなく、北米やヨーロッパの周辺でも、海外資本による土地の収奪に立ち向かい、自分たちの資源に対する権利を取り戻そうとする民衆運動が盛り上がっている。新しいタイプの活動が環境運動を再活性化させ、鉱山開発、ダム、森林伐採、火力発電、航空業、新道路建設に反対するさまざまな抵抗運動や活動が生まれている。現在の経済パラダイムを根本から変革する必要性に対する認識がますます深まっている。様々な運動、中でも代替的な生活方法を求める運動が急速に育っている。これは同時に、ますます多くの人が、現在権力を握る側が気候変動や環境破壊を直視する気も本気で取り組む気もないことに気づき始めていることを示している。いわゆる「緑の成長」「持続可能な成長」戦略は、裏を返せば、環境破壊と気候危機を引き起こした経済発展モデルと結局は同じ経済モデルを、そのまま追求し続ける言い訳でしかない。
3、気候危機の原因を私たちはこう考える:
人間活動による気候変動の直接的な第一の原因は、主に工業、商業、運輸、軍事目的の化石燃料燃焼の増加がもたらす温室効果ガス(GHGs)の排出である。その他の気候変動の重大な原因には、森林劣化(これには先住民族の持続可能な移動耕作は含まれない)、森林伐採、採掘産業、水循環の撹乱、土地収奪を通して大規模産業化した農業地域の拡大、増大する大規模食肉生産、その他天然資源の持続不能な利用が上げられる。
資源に対する不公平な管理および所有権
これら直接的な原因は、地球の限られた資源やその利用から生じる利益へのアクセスや管理が、不平等な状況に置かれていることによる。これは持続不能な世界経済システムの結果である。このシステムは、地域・各国内・地球全体の共有財を、地元ならびに国内外のエリートたちが専有することを前提としている。技術や生産の躍進・人類の進歩と賞賛されてきたものが、実際には、地球の生態系と発展にとっての災厄だった。いまだに世界の特権エリートたちは無謀な利益中心の生産活動と大量過剰消費に邁進し、一方で、非常に多くの人々が単に生存ぎりぎりか、時にはそれ以下の消費量という貧困の泥沼にあえいでいる。これは南の国だけではなく北の国でも起こっていることだ。主に北の国々や租税回避地に本拠を置く大多国籍企業(TNCs)が、自らの事業の拡大を通してこの非道な状況をさらに蔓延させている。
世界的企業や豊かな国々は資源と市場をめぐって競争を繰り広げている。これは自由貿易協定や条約と共に、南の民衆の自らの資源に対する正当な所有権や管理を奪い取り、彼らに新植民地主義的抑圧をもたらしている。世界貿易機関(WTO)や国際金融機関が、二国間貿易協定を利用する欧州連合(EU)・米国(US)と共に、公共の資源の私有化と商品化を推し進め、開発後進国の天然資源の略奪を強化し、貧しい国の対外依存の度を高めるような条件を押し付けている。
現在主流の考え方とそれに代わりうるもの
これらの機関が推し進める開発モデルは、「経済的」意味でのみ問題なのではない。現在主流の経済パラダイムは、人間を「経済的存在」としてしか考えることのできない思考パターンと強力に結びついている。このイデオロギーは、エゴイズム、競争、物質主義的消費主義、飽くなき私的財産の蓄積を煽る企業メディアとマーケッティング会社により、強化される。それにより社会や生態系にどのような結果が引き起こされるかはまったく考慮されない。このような思考システムは、家父長制や父権的温情主義的思考パターンと親密に絡まりあっている。
私たちが本気でこの危機を克服したいなら、人間は自然と社会両方の一部なのであり、どちらか一方だけでは存在できないことを深く認識する必要がある。それゆえ人類が生き残るには、私たちは一つの存在としての母なる地球を敬い、自然との調和、各文化内の、あるいは異なる文化同士の平和共存のために努力しなくてはならない。私たちは異なる国の市民であると同時に、一つの地球の住人でもある。すべての人が、現在そして将来の人類、そしてより広く、命あるもの全ての「よい生」に対する責任を分かち持っている。人間同士の連帯の心、すべての生命に対する親近の気持ちは、「多くの存在に囲まれた唯一の一人(一つ)」という理念によってより一層強く感じることができる。
4、公正で持続可能な社会への転換
気候危機を解決するには、長期的視野に立った社会変容が必要であることは明らかだ。このような転換は、現在の政府や多国間機関のアジェンダには含まれていない。人々は“旧態依然”の制度の温存ではなく、システムの変革を求めている。技術や市場の無批判な利用は、現在権力を握る側が設定した気候変動対策のアジェンダをさらに固定化する。
人々の運動は、様々な代替的社会のビジョンやそのための具体的なステップを生み出している。私たちは気候、水、食料、経済などの危機に同時に取り組みながら、持続可能な未来への歩みを進めなくてはならない。持続可能社会への転換が、数多くのさまざまな新しい取り組みによって起こっている。
そのような例をいくつかを挙げてみよう:
*食料主権と生態系に則した農業:
人々、コミュニティ、国々に自分たち自身の生産システムを決定する権利が認められなくてはならない。
それには生態系、社会、経済、文化の各観点から見て環境に適切であると判断された農業、漁業、食料、森林、土地利用の各政策が含まれる。人々、特に女性の、土地、種子、水といった生産資源へのアクセスと管理が尊重され、保障されなくてはならない。
農業生産は、まず第一に地域の知識や適正技術を生かし、例えばCO2や水を在来の多様な植物システムに固定する、土地から奪われた以上の栄養源を土地に返すといった、生態系の面から持続可能な技術に依拠しなくてはならない。食料と農業生産は第一に地域の必要を満たし、自給を奨励し、地域の雇用を生み出すものでなくてはならない。また、そのプロセスにおいて資源消費や浪費や温室効果ガスの排出を最小限にするものでなくてはならない。
*経済の民主的所有権と管理
人々の基本的必要、たとえば雇用の創設、水へのアクセス、住居、土地、保健医療、教育、食料主権、生態系の持続可能性などを満たすために、より民主的所有権と管理のもとに社会の生産単位を再構築しなくてはならない。金融システムは公共の利益に奉仕し、産業、農業、サービス業を持続可能な形態に転換するための資金経路となるべきで、そのための公共政策が確実に取られなくてはならない。
*エネルギー主権:
再生可能で公共のエネルギー源、たとえば太陽、風力、地熱、小規模水力、波力、潮力などの利用と共に、エネルギー消費の劇的な削減、特に豊かな国における削減が必要である。コミュニティに確実に電気を供給するためのオフグリッド[分散型]発電の開発が行われ、同時に配電網の公共の所有権が確保されなくてはならない。
*生態系に則った都市計画・農村計画
エネルギーと資源の投入量、ならびに廃棄物と汚染の排出量、双方の劇的減少を目指す。都市の基本ニーズを、基本的に近隣地域で生産されたもので満たすことを奨励する。社会正義、すべての人への公平なサービス提供、輸送の必要性の減少の各理念に基づいた都市・農村計画を立てる。軽量・高速な鉄道システムのような公共交通システムや自転車利用を奨励し、自家用車の必要を軽減し、それによって道路状況を改善し、健康増進とエネルギー消費の削減を図る。
*教育、科学、文化的機関:
公共研究ならびに教育を、現在のように商業的利益を上げるための開発や、知的所有権に有利になるように偏ったものから、人々・環境の必要に添う方向に位置づけし直す。調査・開発は人類全体の利益の理念のもとに、オープンかつ協調的に行われなくてはならない。アイディアや技術への特許は廃止されるべきである。国家間で、適正技術、伝統的知恵、先住民の先駆的実践やアイディアを、公正で正義にかなった方法で情報交換することが奨励される。
*軍事化と戦争を終結させる
現在の化石燃料に基づく発展モデルは、エネルギー、土地、水、他の天然資源の管理をめぐる暴力、戦争、軍事紛争をもたらす。これは米国主導のイラク・アフガニスタン侵略・占領や、世界中の化石燃料その他天然資源が豊富な地域の軍事化現象に如実に現れている。アグロ燃料プランテーションのために、小農民や先住民族もまた暴力的に彼らの土地から追い出されている。軍事複合産業に何兆ドルという金がつぎ込まれ、これによって莫大な物的・人的資源が失われている。この資金は、持続可能社会への転換のためにこそ生かされるべきなのだ。
前に進むこと、そのこと自体を通して私たちは学ぶことができる。このステップを進めることで、私たちはより多くの人々に、持続可能社会への転換がより充実した「よい生」を約束してくれるのだということを理解してもらえるだろう。社会・政治・経済・環境の各分野は互いに密接に繋がりあっている。この「上記の各分野を分けて考えることはできない」ということこそが、持続可能社会への転換の中心的アイディアである。従ってこれらすべての分野に対して首尾一貫した政策が取られなくてはならない。
この概念の一つの側面は、世界市場ではなく地元のコミュニティを、基本的な社会・政治・経済単位として復活させようというものである。社会的一貫性、民主的参加、経済的側面における説明責任、生態系に対する責任、これらは、一番底辺かつ適切なレベルでの意思決定システムを復活させることによってのみ達成できる。これは私たちが各民族の文化、地域のコミュニティから学んできた基本的教訓である。
このコミュニティを基盤とするアプローチは、より広い国際協力と矛盾するものではない。むしろ農業、森林、漁業、その他の産業の直接生産者たちは、すべての国境・境界の内部で、あるいはそれを越えて、より強い協力関係を打ち立てる必要がある。この協力関係はジェンダーやすべてのレベルの不公正な力関係の、認識と克服に基づいて築かれなくてはならない。これにはまた、共通かつ分かち合うべき資源(例えば多国間の水資源)の管理に関する、より強力な地域・国際間の協力的アレンジメントの必要性も含まれる。さらに国際協力によって、アイディアや技術の交換や専門家養成が、すべての境界を越えて広がり、相互尊重の精神に基づいた、異なる文化間での心を開いた対話が推進されるだろう。
5、移行への道のり
多くの人が農業、林業、漁業、再生可能エネルギーといったセクターや、より持続可能な産業を生み出す活動に従事している。これらの経済活動はすでにシステム内に存在しており、それに従事する人々は、そこからさらに他の社会セクター、たとえば労働組合、消費者グループ、都市居住者、教師、研究者など、持続可能な生き方への道を求めて努力するすべての人々との協力関係を作り上げてきた。
国連(UN)と締約国会議(COP)
私たちは国連気候変動交渉、そして国連気候変動枠組条約(UNFCCC)第15回締約国会議(COP15)を軌道修正しなくてはならない。これまでの交渉ラウンドからは希望は感じられない。1992年リオ・デ・ジャネイロで開催された第一回気候変動枠組条約会議、ならびに1997年の京都議定書で、共同行動に向けてのプログラムが鳴り物入りで発足したにも関わらず、結果は貧弱で問題はいまだ解決していない。実際、条約も議定書も原則・目標・タイムラインなどすべての面において後退しており、少しも先に進んでいない。
気候変動を生み出したその責めの多くを負うべき同じ大企業が、国内レベルでも国際レベルでも気候政策に圧倒的な影響力を持つ存在として立ち現れている。私たちは現在のCOP交渉に非民主的な影響力を及ぼしている企業のロビー活動に断固として抗議する。同時に私たちは、すべての政策やその実施手段を対象とした評価メカニズムをUNFCCCの下に設置するよう各国政府に呼びかける。これは現在のCOP交渉中のあらゆる形の不平等 − ジェンダー、人種、年齢、“障害”の有無や他の差別に起因する− を修正し、多様なステークホルダーを包含する審査プロセスを確実に実施するためである。
私たちはCOP15が、環境・社会・経済の各面において持続可能で平等な政策を通してこの惑星地球の環境・社会・経済のバランス修復に取り組むための合意を生み出し、最終的には法的拘束力を持つ協定に到達することを求める。
私たちは以下のことを求める
私たちはUNFCCCに集う首脳たちが、人々の要求と代替的な政策を取り入れることを求める。
1、化石燃料の終焉:
私たちは今後30年以内に化石燃料時代を終わらせるための、明確な戦略を立てるよう求める。これには5年区切りの明確な短期目標が含まれていなければならない。私たちは産業発展国の温室効果ガス排出に関して、2020年までに最低でも1990年レベルの40%削減を目指しその政策を即時に実施するよう求める。
2、気候債務、気候犯罪の修復と補償:
私たちは北の政府、多国籍企業、タックスヘイブン機関に対し、南の国々や貧しい人々に対する補償を全額支払うことを求める。これによって私たちは、歴史的な不公正 − 先住民族虐殺・大洋を越えた奴隷貿易・殖民地支配・侵略 − や気候変動に関連する不均衡な産業化を、部分的にではあるが修復することができる。これには、豊かな国が負う気候債務、ならびにより広いエコロジカル・デット(生態系債務)の賠償を、貧しい人々にいかに支払うか、明確な戦略を伴わなくてはならない。気候変動の犠牲者を直接支援する民主的な基金が、地球規模で創設されなくてはならない。
産業発展国は新しい・義務的な・十分かつ信頼に足る資金と、特許制限なしの技術を、気候変動被害への適応と排出量削減のために提供するべきである。これによって途上国は、気候変動減少の面での彼らの役割を果たすことができ、かつ、その国民の必要や要求を満たすことができる。国際金融機関、ドナー機関、貿易メカニズムは、この賠償のプロセスに参加することは認められない。
3、世界全体での原生林伐採の即時の禁止:
それと並行して、先住民・森林に依存するコミュニティとのパートナーシップによる、在来種かつ種の多様性に基づいた、野心的で世界規模の植林プログラムに取り組むこと。同様に、産業型大規模漁労を禁止し、基本的に地域の伝統的な漁法に回帰すること。最後に、海外からの投資家のための土地収奪を禁止し、民衆の天然資源に対する主権を全面的に実現すること。
4、私たちは、多くの企業・政府・国際金融機関が進めようとしている、純粋に市場誘導型で技術中心の、偽りかつ危険な解決手段に断固たる反対を表明する:
これには原子力発電、アグロ燃料、炭素回収貯留、クリーン開発メカニズム、バイオ炭、“気候変動対応済み”遺伝子組換作物、地球工学、REDD(森林減少と森林劣化による排出の削減:UNFCCCの定義)が含まれる。これらは気候危機になんら真の解決をもたらさず、単に新たな環境破壊の危機を作り出すだけである。カーボン取引とオフセットもまた偽りの不公正な仕組みである。これらは人類共有の地球上の資源−大気−を所有し、売り買いできる商品として扱っている。これまでこのシステムのメリットは証明されていない。そして豊かな国にその削減義務のオフセット(相殺)を許すことで、このシステムは不公正で持続不可能なあり方を存続させている。
5、炭素排出への公平な課税:
排出取引量の割り当て制度の代わりに、炭素排出への公平な課税を行うよう私たちは要求する。この炭素税からの収入は公平に人々に分配されるべきであり、賠償と適応/削減に必要な資金として使われるべきである。しかしこれは、すでに蓄積されている気候債務の返済の代わりにはならない。この賠償と資金提供は無条件のもので、かつ、市場メカニズム・金融機関を介入させてはならない。排出削減は、大幅に累進的で透明性のある炭素税、化石燃料廃止を進める直接的な法規制、安全・クリーンな再生可能エネルギーの導入によって大きな成果が上げられるであろう。
6、多国間機関と多国籍企業:
不公正で持続不能、かつ説明責任を果たさない国際経済/金融機関(WTO、世界銀行、国際通貨基金、地域開発銀行、ドナー機関)ならびに自由貿易協定は、人々の資源に対する主権を尊重し民衆間・国家間の連帯を推進する国連憲章に則り、民主的かつ公平に機能する機関に取って代わられなくてはならない。多国籍企業の動きを厳しく調査し、管理するメカニズムも作られるべきである。
最後に、私たち自身、この宣言で提示されている持続可能な社会のあり方への転換に全面的かつ積極的に関与していくことを公約する。
6、持続可能な社会への転換を目指す地球規模の運動
コペンハーゲン気候変動サミットの結論がどのようなものであれ、私たちの社会を持続可能なものへと転換させる、地球規模の長期的運動−各運動を繋ぐ運動−の構築が早急に必要である。現在の権力構造とは反対に、この運動はボトムアップで作りあげられなくてはならない。環境保護運動、社会運動、労働組合、農民、市民社会ならびに日々の政治闘争の中で協働できる様々な政党との広範な連携が、地域・国内・国際の各レベルで必要となってくる。このような連携は同時に、新しい発想、新しいタイプの社会活動を必然的に生み出す。そしてまたこのような連携は、単に持続不能な現行のあり方に対抗するだけではなく、新しい持続可能な経済のあり方が本当に機能することを例証できなくてはならない。
私たち、クリマフォーラム09に参加した個人・コミュニティ・社会組織は、このイベントにおいて勝ち取られた成果に基づき、運動を繋ぐ運動の更なる発展のために力を尽くす。
この宣言は、私たちが進む方向を一般的に示すことによって、このような運動が更なる発展を遂げる刺激となることを目指している。私たちは、共に持続可能な将来へとこの地球を転換できる。これを読んでいるあなたもそこに加わってほしい