2009年12月01日

2009世界社会フォーラムとアンデス先住民からの呼びかけ

2009世界社会フォーラムとアンデス先住民からの呼びかけ

不都合でない文明の危機
The convenient crisis of civilisation

(英国「ガーディアン」紙2009年2月11日付)
クリストフ・アギトン

グローバルな経済危機はアンデスの先住民たちには、ポストコロニアル[植民地以後]の時代の中で自己を主張する機会を提供しているかもしれない


10万人が参加した今年の世界社会フォーラムは、いたるところで危機がテーマとなった。金融・経済危機、気候の危機、食糧危機をめぐって多くのセミナーが開催された。いくつかのセミナーでは宣言が採択された。特に注目するべき宣言の1つは、「文明の危機に関する先住民からの呼びかけ」である。

この呼びかけは、アンデス地域の先住民組織によって提案されたものだが、南北アメリカ、インド、アフリカからやってきた数十の組織によって支持された。この呼びかけは、文明の危機とは経済、環境そして民主主義の危機の結合であると定義している。そして、解決策として、「よりよく生きる」のではなく、「よく生きる(スマク・カウセイ)」という考え方を提案している。「よりよく生きる」ということは物質的富の成長と、より多くの消費を意味しているのに対して、「よく生きる」ということは生活の質を問題にしており、そこには自然との調和、時間についての生産中心ではなく人間中心の考え方が含まれている。

この呼びかけは、成長を否定するのかどうかという堂々巡りの議論を避けて、問題は一般的・抽象的な消費の抑制(それは飢えに苦しみ、住宅や基本的サービスにも事欠いている何億もの人々に対して説得力を持たないだろう)ではないことを強調している。この呼びかけは、「よく生きる」という考え方を手掛かりとして、新しいグローバルな転換の構想を示しており、それはラディカルな社会変革を信奉することをやめ、「人生哲学」や「自己啓発」に関心をむけてしまっている人々に対しても呼びかけられている。それは、連帯と相互主義に基づいて共有財産 - 自然資源だけでなく、知識、伝統を含む - を保全することを基本とした、普遍化しうる展望を提示している。

先住民の呼びかけの中の、制度的な側面では、植民地主義的な「国家」という概念を解体し、それぞれの共同体が互いに対等な関係を確立し、選挙で選ばれた人たちが、彼ら・彼女らを選んだ人たちに対して直接に責任を負うような民主主義的なプロセスを組み込んだ非集権的な、多民族共生の国家に置き換えることを提案している。

アンデスの先住民の背景的な事情について知ることは、この構想の特徴を理解するのに役立つ。アマゾンや中米地域の先住民と違って、アンデスの先住民の間ではケチュアとアイマラの2つの主要言語が使われている。そのため、アンデス山地の6つの国の先住民の間のコミュニケーションは比較的容易である。中部の3つの国、エクアドル、ボリビア、ペルーでは、先住民は人口の半数以上を占めているが、ごく最近まで政治権力は常に、インカ帝国を滅ぼし、この地域に対するスペインの支配を確立したフランシスコ・ピサロ以来の白人エリート層が握っていた。

この中で、人口の多数を占める先住民の、政治権力の分有を求める民主主義的闘争は常に、先住民の共同体の具体的な権利の防衛と、この地域のそれぞれの国において国家との新しい関係を見い出そうとする試みの一環として組み込まれてきた。

先住民のアイデンティティーは、コロンブス以前のアメリカにルーツを持っているが、それは活動家や知識人、そして最近におけるポジティブな経験によって豊かにされてきた。ボリビアでは、この国の現代の労働運動の支柱である鉱山労組が、1953年の革命と1960-70年代における軍事独裁政権に対する抵抗闘争の中で中心的な役割を果たした。鉱山が閉鎖されたり、労働者が解雇されたあと、一部の組合員は農園に戻り農民運動のオルガナイザーとなり、リーダーとなった。この運動を背景にエボ・モラレスが大統領に当選した。ペルーでは、先住民運動はセクト主義的な武装闘争組織センデロルミノソと、政府によって支援された治安部隊の両方から攻撃されたことによって、国家に対する不信感を深めた。思想的には、ペルーの先住民たちは、ラテンアメリカにおける植民地支配とその後の権力の構成における人種差別主義の間の不可分の関係や、ヨーロッパ的普遍主義の特殊な性格についての最近における研究から着想を得ている。

先住民からの呼びかけが示している近代についての理解の転換は注目に値するし、批判的論争、論点の明確化、さらには精緻化に値する。世界社会フォーラムは、植民地的な権力支配のパターンの逆転が、ついに、アマゾンの先住民たちの世界観から学び、交流する新しい機会を開いたことを示した。
posted by attaction at 04:53 | 世界社会フォーラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする