2017年10月02日

【連続講座】『絶望のユートピア』(桂書房)を枕に、社会を変える夢を見るための連続講座(2017年10月〜18年2月)

20171002zet.jpg

『絶望のユートピア』(桂書房)を枕に、
社会を変える夢を見るための連続講座

絶望から希望を発掘する

おはなし 小倉利丸さん(批評家)


第1回  2017年10月17日(火)19時〜
「まえがき」 『絶望のユートピア』とはいったいどんな本なのかを紹介します。また、このタイトルの「絶望」と「ユートピア」を繋ぐ「の」の意味についても話します。

第2回 11月21日(火)19時〜
情報とイデオロギー:情報社会のナショナリズム、コミュニケーションという労働、サイバースペースの階級闘争。

第3回 12月21日(木)19時〜
戦争の再定義:国家安全保障と民衆の抵抗運動、憲法と戦争、文化戦争。

第4回 2018年1月23日(火)19時〜
ナショナリズム:グローバリゼーンとナショナリズム、「日本人」という虚構、労働とナショナリズム。

第5回 2月20日(火)19時〜
資本主義批判を再定義する:国家と市場を廃棄するとは。

※ 会場は各回ともATTAC首都圏事務所です。

◆参加を希望される方へ:
・読んでくる必要はありません。
・講座が終ってから「面白そう」と思ったら、その箇所を読んでみてください。
・1話完結の5回連続です。途中からも参加できます。途中欠席もできます。
・参加費は500円(attac会員は無料)。
・本をお持ちでない方は各回1000円で書籍がもれなくついてきます。
・小倉さんの話のあと、参加された皆さんから忌憚のない意見や提案、感想をいただきながら具体的にどのテキストを中心にして進めるか、どのようなテーマを更に絞りこんで設定するかを決めたいと思います。

※参加申し込みはattac-jp[a]jca.apc.orgまで。

posted by attaction at 10:32 | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

パブロ・ソロンさん、マリー・ルーさんの講演ツアー(東京)

20171027boli.jpg
PDFファイルはこちらからダウンロードできます。
Pablosolon1027tokyo.pdf
posted by attaction at 10:06 | エコロジー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月13日

【公開セミナー】共謀罪とグローバル化する刑事司法 ──対テロ戦争と対峙する社会運動の課題──

attac20170921.jpg
【公開セミナー】共謀罪とグローバル化する刑事司法
 ──対テロ戦争と対峙する社会運動の課題──


★お話し 小倉利丸さん(批評家)
★日時 2017年9月21日(木)午後6時半〜
★会場 文京区男女平等センター(本郷三丁目下車徒歩5分)
    アクセス
★参加費 500円
★主催 ATTAC Japan(首都圏)※申込不要

日本は米国の同盟国としてまぎれもなく対テロ戦争の当事国です。戦場は、ネット空間も含めて地理的な限定がなく、軍事諜報機関は国の内外を問わずをスパイし、警察は軍隊さながらの装備で国境を越えて活動し、軍隊は自国の民衆に銃口を向ける存在になっています。そして、IT産業は、グローバル資本主義の基幹産業であるとともに、こうした対テロ戦争を支える軍事産業になっています。

共謀罪は治安維持法の再来と言われる一方で、このような全く新しい戦争の時代、グローバル資本主義の時代に人々のコミュニケーションを犯罪化するものとして導入されました。本集会では、この新たな戦争とグローバル化の時代に焦点をあてて、対テロ戦争と対峙する社会運動の課題を考えます。

小倉さんには10月から新著『絶望のユートピア』を使った連続講座をお願いしています。9月21日の集会は「絶望」から「ユートピア」に向けたスタートラインです
posted by attaction at 09:09 | 人権 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月06日

一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム 閉会のあいさつ

20170903lixiaomei.jpg

「一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム」閉会のあいさつ

李美笑(食物環境衛生署職工権益工会副主席)


2日間にわたる「一帯一路&BRICSに関するピープルズフォーラム」はこれをもって円満に終了します。わたしはこの会議を代表して参加されたゲスト、スタッフ、そして参加者の皆さんに感謝を述べたいと思います。

グローバル化の第二波

講演者と参加者の発言によって、一帯一路についての共通認識がふかまりました。わたしは2005年に韓国で行われたWTOとグローバル化に反対するシンポジウムを思い出しました。そこでは多くのワークショップが開催され、影響を受ける各国から市民団体の代表が集まり、経済的グローバリゼーションのもとで大国が小国に対して、環境、労働、医療、教育、文化、芸術など各方面におよぼす負の影響について報告がされました。一帯一路も同じような影響を及ぼしているようです。違うのは、そのけん引役が「欧米」から「中国」に代わり、中央アジアからアフリカにかけて影響が及ぶということです。これはグローバル化による経済侵略の第二波とみることができるでしょう。

経済発展

「一帯一路」(BRICSサミット)のロゴは帆船をかたどっており、これは中国がブラジル、ロシア、インド、南アフリカのBRICS諸国をナビゲートすることをほのめかしています。この5か国は急速な経済成長が見込まれています(原注)。多くの人が「一帯一路」によってBRICSから利益が見込まれると考えるさなか、IMFのエコノミストStephen L.Jenは次のように述べています。「GDPと人口統計のデータにのみ依拠して投資を行えば間違いを犯す」。「汚職と政府のガバナンスなどの問題は一貫して無視されてきた。政治と経済の権力エリートから利益をうける都市部において過度な融資が行われていることは言うにおよばずである」。エコノミストらは、このような現象がみられるブラジル、インド、南アフリカ、トルコ、インドネシアをFragile Five(脆弱な5か国)と呼び、これにロシアを加えた6か国をSorry Six(お気の毒な6か国)と呼んでいるのです。

弱肉強食

中国で長年続いてきた改革開放政策は、国有資産を私有私産に転換したことで、一部の人が豊かになったことは確かです。しかしその一部の人々の富は海外に流出していき、国内の民衆に流れることはありませんでした。中国が進めてきた経済発展は、必ずしも安定的でも長期的でもなく、そして草の根の民衆に恩恵を及ぼすものでもないのです。それは政治と経済の権力エリートらに新たなビジネスチャンスをもたらしただけでした。かれらは環境を破壊する多くの鳴り物入りのプロジェクト契約を締結してきましたが、その建設にかかる費用の借り入れは、民衆が一生、あるいは次の世代以降にまでかけて返済を迫られることになるのです。

香港は、このような経済発展戦略における融資プラットフォームと位置付けられており、金融、物流、電子ビジネスの発展においてチャンスがあると言われています。しかし中国における投資の経験から、小資本の投資は成功よりも失敗のほうが多く、大規模な国有あるいは民間企業のみが利益をえることになるだろうと予測されます。クジラが小魚を飲み込むような事態になってしまうでしょう。

環境破壞

中国では経済開発のために、多くの高速道路、高速鉄道、ダムが建設されてきました。道路沿いの農村は天をひっくり返したような変化にみまわれ、田畑は収用され、家屋は取り壊され、伝統的建築や祠が破壊されて工場が建設されました。多くの出稼ぎ労働者が汗、ときにはその命とひきかえに生活の糧を得ました。しかし環境保護と労働安全衛生はまったく軽視されました。経済発展は自然環境と資源から限界以上の搾取を行い、多くの河川と農地は不可逆的な損害を被りました。このような環境の破壊と労働者に対する搾取、そして文化の喪失という特性は、今後の一帯一路によって他の国々にも拡大することが予見されます。

グローバル資本の魔の手に対抗するには、まず自身の立ち位置を固めることです。労働者教育とサービスのネットワークを確立し、地域労働者とつながり、労働組合の聯盟をつくり、アジア全体の研究をおこない、ボーダレスな社会運動にとりくみ、グローバルなモニタリングで、正義と平和の精神をすべての場所に送り届けることで、労働者の権利を保障し、わたしたちの住むこの地球を守ることができるのです[訳注]。

最後に、8カ国地域から参加していただいた18名のゲスト、通訳を担っていただいた友人の皆さん、すべてのボランティアスタッフと参加者の皆さん、もちろん7つの主催団体と実行委員会のみなさんに、あらためて感謝します。今日の集まりをスタートとして、今後も引き続き協力していきましょう。団結こそ力です。謝謝!謝謝!


(原注) 
BRICS5か国が全世界に占める割合は人口45%、貿易額17%、GDP25%になる。2020年にはブラジル、中国、インドの経済的生産高の合計は、イギリス、アメリカ、カナダ、ドイツ、イタリアの合計を超えると予測されている。

[訳注] 
「労働者教育とサービスのネットワークを確立し……正義と平和の精神」は、主催7団体の名称を組み込んだ内容になっている。主催はアジア・モニタリング・リソース・センター(AMRC)、香港天主教正義和平委員会、無國界社運、香港職工会聯盟(HKCTU)、労働者教育サービスネットワーク、全球化監察、街坊工友服務處の7団体。

タグ:一帯一路
posted by attaction at 15:22 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月05日

【香港】一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム(1日目)

【香港】一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム(1日目)

20170829.jpg

『一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム』プレス・リリース
2017年9月4日


全球化監察 Globalization Monitor

中国アモイでのBRICSサミットにあわせて、香港で7つの団体(香港職工会連盟HKCTU、アジアモニタリングリソースセンターAMRC、無國界社運ボーダレスムーブメント、全球化監察グローバリゼーションモニター、香港天主教正義和平委員会、労工教育サービスネットワーク、街坊工友服務處勞工組)が9月2日から3日までの日程で「一帯一路とBRICSに関するピープルズ・フォーラム」を開催し、政府の公式見解に挑戦する民衆の声をあげた。このフォーラムでは、BRICSの貿易協力および中国の「一帯一路」の関係諸国と民衆に及ぼす影響を議論した。フォーラムには8カ国地域から13名の研究者および社会運動アクティビストが参加し、200名近くの市民らと交流した。

パトリック・ボンド(南アのマンデラ政権時代の経済顧問):BRICSの希薄な関係

20170902_01.jpg

フォーラムは、最初に職工会連盟HKCTUの蒙兆達幹事が開会のあいさつを行った。今回のフォーラムは国際的プラットフォームであり、国境を越えた民衆の連帯を示すものであり、民主的な政治システムには強力な市民の力こそが重要だと強調した。

つづいて、南アフリカのネルソン・マンデラ政権時代に政府の経済顧問をつとめたパトリック・ボンド氏(現ウィットウォーターズランド大学教授)の講演がおこなわれた。BRICS五カ国の関係性が脆弱であり、中国とインドのあいだには緊張関係があること、アメリカはトランプを筆頭にネオコンが中国との対決姿勢を強めていると指摘した。他方、中国主導の「BRICSサミット」は市民社会の声を封鎖して行われており、さらに五カ国の間で監視体制を強めていこうという主張もみられると批判した。かれは最後に、資本はこれらの国際的な協定によって海外に展開しているが、他方でまた「反グローバル化」現象もみられると指摘。民衆の側はこのような矛盾を利用して、国際連帯を通じて人権問題を解決する方向に進むこともできると指摘した。

インドネシア:われわれは中国の「厨房」なのか

20170902_02.jpg

ピープルズ・フォーラムはBRICSだけでなく、一帯一路の沿線諸国における開発問題にもテーマが及んだ。カナダの民主経済学院から参加したインドネシア籍のHendro Sangkoyo博士は、中国の一帯一路のプロジェクトによって、インドネシアには中国から多くの投資が流入しており、その多くが大型インフラであると指摘した。Hendro博士はインドネシア経済回廊の事例を紹介した。地元政府はこれらの経済活動のために、巨大なコンクリート工場を建設しなければならず、熱帯雨林をはじめとする環境に大きな影響を与えるという。同じくインドネシアから参加したFahmi Panimbangは、中国から投下される多額の資金は精錬工場、石炭火力発電、農業などに向けられており、なかでもパームオイル生産関連の投資が群を抜いているという。中信建設は2005年に180万ヘクタール、中国海洋石油公司は2007年に100万ヘクタールの熱帯雨林をパームオイル、砂糖、キャサバ畑の開発に着手。Panimbang氏によると、中国は現在世界第二位のパームオイルの消費国であり、「われわれは中国の厨房のようになっている。われわれの土地から必要なものだけを持って行き、ゴミだけを置いていく」。このほかにスリランカ、ミャンマーのアクティビストからも現地のレポートを受けた。

區龍宇(香港):一帯一路は地政学的危機を招く

20170902_3.jpg

中国の労働運動を研究する香港の區龍宇は、「一帯一路」プロジェクトにおいて、中国は香港を重要な融資プラットフォームと位置付けていると指摘した。しかし一帯一路の推進は、必然的に地政学的危機を招くと指摘し、香港人は意図せずしてそのなかに引き込まれ、香港の政治的リスクを高めることになると述べた。

参加者の一人、陳さんは、一帯一路という言葉は聞いていたが、それは政府の説明だったので、市民の側がどのような意見を持っているのかを聞きたくて参加した、と語った。
タグ:一帯一路
posted by attaction at 15:30 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年09月04日

AIIBとADBの補充と協力関係について

20160502_adb_aiib_mou.jpg
写真は2016年5月にADBの中尾武彦総裁(右)とAIIBの金立群総裁が両機関の協力を維持する覚書(MOU)を締結、署名した際のもの。

9月4〜5日の日程で中国・アモイで開かれているBRICsサミットにあわせて、香港で一帯一路やBRICSの問題点を議論する【一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム People's Forum on One Belt One Road and BRICS】が開催されました。南ア・元マンデラ政権の経済顧問を務めたこともあるパトリック・ボンドさんの基調講演からはじまり、これまでもADBや世界銀行などの経済政策によって影響をうけ、さらに一帯一路でも深刻な影響を受けるであろうミャンマー、スリランカ、インドネシア、インド、香港、台湾などからのスピーカーも各国における影響を論じました。今後、翻訳などで紹介したいと思います。以下は日本からの発言(15分)です。

AIIBとADBの補充と協力関係について
ATTAC首都圏(日本)

みなさんこんにちは、日本のattac首都圏という団体でオルタ・グローバリゼーション運動に参加しています。今回、日本の社会運動団体に発言の機会を与えていただき感謝しています。というのも、日本はBRICSでもなく、一帯一路の沿線諸国でもなく、またアジアインフラ建設銀行(AIIB)にも参加していませんし、日本政府は一帯一路やAIIBに対しても公然と慎重な姿勢を示しているからです。さらには、今回の発言者リストを見ると、私だけが帝国主義国からきた発言者のようですし。この国の帝国主義はかつて多くのアジア諸国――来場のみなさんの住んでる香港、中国、台湾、インドネシア、ビルマなど――を銃で抑圧し、戦後はカネで抑圧しています。そんな国からの参加者に発言の機会あたえていただいた主催者の包摂性にあらためて感謝します。

先ほど司会の區龍宇さんから、AIIBと日本主導といわれるアジア開発銀行(ADB)の比較について話してもらうとありましたが、私は専門家ではないので、比較ではなく関係性について短く提起したいと思います。

ADBは1966年に設立された多国籍開発機関です。日本政府がいわば最大の株主であり、また歴代の総裁も日本の財務相の高官が歴任しています。いわばAIIBの先輩格にあたるのですが、この「先輩」はこれまでもずっと市民社会からの批判を受けてきました。まずそのことを紹介したいとおもいます。

スクリーンに映っているのは、今年の4月に発表されたNGO Forum on ADBというNGOネットワークの声明の一部です。

◎アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり(2017年4月20日)
・ADBは搾取的な開発モデルである
・ADBは圧政を支持している
・ADBは偽りの解決策を提供している
1)ダム建設への融資、住民の追い出し、環境破壊
2)不平等、負債、民間部門への富の移転
3)気候変動と設立50年にあたってのADBの脱炭素化
4)透明性の欠如、抑圧、市民社会団体のためのスペースの縮小
5)ADBによる労働の搾取
6)社会的包摂と、脆弱な立場のグループに対するADBの影響


全文は英語ですがhttps://www.forum-adb.org/apcで見られます(日本語はこちら)。

今年の5月、ADB設立50周年の総会が日本で開催されました。その際にも日本で、ADBはこれらの問題に対して責任を回避することはできないという抗議の声をあげていました。

孔子いわく「五十而知天命」(50にして天命を知る」)だそうですが、アジア民衆の批判の声を聞けば、ADBもいくらかは自らの天命を理解したのではないか、と思います。

次の表はAIIBとADBの対比表です。しかし先ほども言いましたように専門家ではありませんし、数字上の比較はあまり面白くないとおもいますので、ここではADBとAIIBの協調関係について一点だけ提起したいと思います。

はじめに指摘しておきたいことは、ADBの最大の融資対象国は中国だということです。

昨年は中国がADBに加盟して30年です。1986年に加盟して、89年5月には北京でADB総会も開催しています。この総会で楊尚昆国家主席は祝辞を述べていますが、同じ時に北京の街頭では学生と労働者が民主主義のための声をあげていました。それから30年弱が経過しましたが、この30年は「改革開放」の時期とほとんど重なっています。「改革開放」を進める中国政府にとってもADBをはじめ国際開発金融機関との良好なパートナーシップは極めて重要でした。

AIIBの初代総裁の金立群氏は、中国財務省で80年代から国際金融畑で経験を積んできたベテランです。これまで中国政府の世銀、ADB担当などを歴任し、88〜93年に世銀副執行理事、03〜08年にはADB副総裁を務めてきました。その後、08〜13年に中国投資公司(政府系ファンド)監理長、13〜14年に中国国際金融公司会長に就任しています。金氏のあとも続けて中国の財務官僚からADBの副総裁を出し続けています。

このようにADBとAIIBの上級管理職は密接なつながりがあります。それは上級管理者だけでなく、スタッフにおいては密接という以上に、代行業務さえおこなっています。ADBの職員数3000人に比べ、AIIBは職員が100人弱ということもあり、ADBの職員はAIIBのプロジェクト準備などに関する業務を有料で支援しています。

このような「補完と協力」の関係は、高官を含むスタッフのあいだだけでなく、実際の融資業務においても同様です。

ADB総裁の中尾武彦氏は、AIIB創設前からも協力することを表明していましたし、2015年6月にAIIB創設に向けた調印が行われた際にも次のように声明のなかで述べています。

「ADBはアジアにおける長い経験と専門性を活用し、同地域が直面する膨大なインフラ需要に応えるべく、AIIBと緊密に連携し、協調融資を行っていくことにコミットしています。」

この「長い経験と専門性」がなにを意味するかは、さきほどインドネシアの先生が具体的に述べました。

この声明ののち、ADBはAIIBと協調融資でパキスタンの道路建設プロジェクトにそれぞれ1億ドルを融資することを決めています。このプロジェクトは、1,800kmにおよぶ中央アジア地域経済協力(CAREC)交通回廊の重要な一部を構成しています。そしてこれはAIIBにとって初めての融資プロジェクトになります。

同年11月にはADBとAIIBの二件目の協調融資案件として、バングラディッシュ天然化ガス生産・輸送プロジェクトへの協調融資がADBで承認されています。

このようにAIIBは誕生のときからADBをはじめとする国際開発金融との協調融資をおこなっています。この傾向は、しばらくは引き続き継続されるでしょう。

もちろん今後のAIIBが順調に発展しADBの支援が必要となったとき、ADBとAIIBの協調・補完関係がどうなっていくのかを予測することは難しいですが、すくなくとも現在の中国政府の政策が続く限り、中国マネーが世界に影響を与えるように、グローバル資本主義が中国マネーにもこれまで以上に影響を与えることは断言できます。

日米欧の中央銀行の金融緩和によって、巨額のマネーが金融機関や多国籍企業に貯まっています。一帯一路やAIIBは金融資本主義にとっても重要な資本輸出のルートになる可能性もあるでしょう。

ADBによると、アジアの途上国の経済成長を維持するには2016年から2030年までに、26兆ドルの資金が必要となるといいます。

日本をふくむ先進国のマネーは投資先を探しています。それゆえ私たち日本の社会運動もひきつづき一帯一路とAIIBの動向に注目していかなければなりません。日本帝国主義はかつては銃で、そして戦後はカネでアジアの友人たちをひどい目に合わせましたが、わたしはそのような資本主義のグローバリゼ―ションによる包摂性や持続可能性を望みません。みなさんと一緒に別な解決方法を探りたいとおもいます。

そろそろ時間のようです。このあとは食事の時間です。かつて日本帝国主義はみなさんに恐ろしい被害と飢餓をもたらしましたが、わたしはそのような歴史もここで繰り返したくはありませんので、最後に一つだけ紹介したいと思います。

国際的な債務帳消し運動である債務帳消委員会の共同代表、エリック・トゥーサンの著書『世界銀行』から、最後の一章「世銀に対する告発状」の結論部分を紹介したいと思います。

・総じて、世界銀行は世界寡占システム(一握りの大国とそこに籍を置く多国籍企業)に支配された専制的独裁機関だ。これは人類と環境に害を及ぼす国際資本主義システムの増強を担ってきた。
・富を再分配し、社会正義を重視し、自然を尊重した発展に向けて、人々の努力を後押しする民主的な新しい国際機関が早急に立ち上げられるべきである。
・世界銀行とともに、その主要な柱となっている資本主義システムのラディカルな転換が必要である。

わたしは、この結論はADBやAIIBに対しても適応できると思います。

ありがとうございました。

(了)
posted by attaction at 10:28 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月29日

【香港】一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム

20170829.jpg
【一帯一路&BRICSに関するピープルズ・フォーラム】
People's Forum on One Belt One Road and BRICS

今回のフォーラムにはアジア各地の社会運動活動家と研究者が香港に集まり、香港のスピーカーや参加者と経験および研究の交流を行います(英語通訳あり)

【ヘビー級の豪華ゲスト(入国の安全を考え一部は匿名です)
1. 南アフリカのマンデラ政権時代の経済顧問
2. 香港バプテスト教会大学の鄭韋教授
3. アジアの社会運動活動家や著名な研究者
4. 本土研究社の陳剣青
5. 工傷(労災)権益協会の陳錦康
6. 労働運動研究者の區龍宇
7. 馬寶寶ファームの卓佳佳
8. 香港職工盟工會(HKCTU)の幹事

【9月2日】BRICsの矛盾、民衆による統制が重要となる
時間:午後1時から夜10時30分
場所:黄大仙聖雲先小堂(黄大仙正?街102號)
交通:黄大仙港鐵站D2出口
内容:午後1時から5時 一帯一路とBRICsの紹介
   夜7時半から10時 アジア各国と「一帯一路」の状況について
 
【9月3日】資本の拡張が各国にもたらす影響 一帯一路の得失
時間:午前9時30分から午後1時30分
場所:The Good Lab 小劇場 (西九龍通州街500號星匯居L1)
交通:港鐵長沙灣站B出口8分鐘,南昌站A出口步行10分鐘
内容:中国から香港への投資について

【事前の申し込みが必要です。申し込みはこちらから: https://goo.gl/7Uxt2n

共催団体
アジアモニタリングリソースセンター(AMRC)
香港天主教正義和平委員會
無國界社運
職工盟(HKCTU)
労工教育及服務網絡
全球化監察
街坊工友服務處
タグ:一帯一路
posted by attaction at 09:27 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月22日

中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

attac20170822.jpg

中国の自然環境と住民にとって一帯一路は何を意味するのか

ロビン・リー
中文 英文

一帯一路は中国の海外における政治経済の影響力を大幅に引き上げる外向型発展戦略であるが、それはまた国内にも大きな影響をもたらす。前稿(こちらhttp://attaction.seesaa.net/article/452765275.html)のように、一帯一路の目的のひとつが生産能力の過剰を解決するなどの国内問題であるという面があるが、他方で、中国企業による海外投資の利潤回収だけが、この戦略の成否を判断する基準となるともいえる。一帯一路の計画によれば、この戦略はさらなる貿易と投資の機会をもたらすのであり、国内の繁栄の発展を促すものとされている。確かに一帯一路は中国のすべての省と自治区(以下、省区)の発展と改革を支持する意図を持っているのである(原注1)。

この計画では、それぞれの省と自治区は、それぞれ独自の役割を果たすとされている。多くの省区ではそれに対応する地方開発計画が制定されている。顕著なのは新疆ウィグル自治区と福建省である。両者の地理的位置によって「核心地区」に認定されている。新疆は中央アジア、南アジア、西アジアに対する「西側の窓口」と中国西部の金融中心とされた。福建省は海のシルクロードにとっても重要な位置づけであり、物流、運輸、海運業のさらなる発展を期待されている。重慶(直轄市)、陝西省、四川省、雲南省の西部地区は新疆とあわせて、インフラと都市化計画を重点的に発展させ、国際貿易の機会を拡大する。甘粛省、寧夏省は新疆とともに良好な自然環境と農業資源を有していることから、それらの産業の発展を目指している。福建省、広東省、江蘇省、浙江省などの東部の沿海省は、金融や専門サービス、航空物流、ハイエンド製造業、eビジネス、医療保険、バイオテクノロジーなどのハイテク産業の発展が期待されている(原注2)。

中国各地の発展の不均衡ゆえに、一帯一路の一部のプロジェクトは発展途上地区の開発を進めることを目的としている。この目的も極めて重要視されている。というのも中国共産党の支配の正当性と中国社会の安定は、かなりの程度において経済成長と就業形態の安定に依拠しているからである。しかし近年、経済成長の鈍化の圧力がこれらの安定を脅かしている。

新疆は以上のような発展途上の状況にある。前述のように、一帯一路と中国−パキスタン経済回廊の政府の計画によって経済効果がもたらされる可能性がある。しかし他方で、中国政府はウィグル人を厳しい統制下におき、抵抗には弾圧で応えており、それにくわえて他の地区から多くの移民を新疆に送り民族同化をおこなっている。このような政策によって新疆は極めて不安定な地区になっている。

「ウィグル人権プロジェクト」という団体が発表したレポートは、一帯一路およびそれが新疆にもたらす影響を報告している。レポートでは、中央政府がこれまでインフラ建設、投資、移民を奨励した発展戦略―たとえば大西北開発(1992年)、西部大開発(2000年)、新疆工作フォーラム(2010、2014年)―は、ウィグル人の経済状況を改善しなかっただけでなく、その分散化が促進され、さらにはウィグル人が開発計画の策定に関与する権利を奪われていたとされている。このレポートでは、一帯一路とそれまでの国家主導の発展モデルは継承関係にあるので、ウィグル人の文化的アイデンティティを阻害し、同化と周辺化がさらに加速され、投資利益もウィグル人が公平に享受できないだろうと分析している(原注3)。レポートでは、新疆研究と中国の台頭を研究しているマイケル・クラークの分析を紹介している。

「2008年以降、ウィグル人とチベット人の中国統治者に対する抵抗はさらに激化しており、それがこの地域の経済発展と現代化の進展をさらに加速させる必要を北京に迫っている。なぜならこれがかれらを現代中国に融合させる主要な手段だからである」(原注4)

漢人の研究者の王力雄は、著書『私の西域、あなたの東トルキスタン』で、上記の批判者が提起した問題を指摘している。つまり中国政府は新疆のいわゆる現代化計画において、ウィグル人が政策決定の過程に参加する権限を保障しておらず、少数民族にとっての本当の権利も享受できてないという指摘である(原注5)。

一帯一路は比較的新しい政策であることから、現在のところ全面的評価を下すことは困難である。しかし中国の過去数十年の開発の結果は次の疑問を提起させずにはおかない。大多数の中国人が一帯一路の成果を享受し、本当の意義での有効性を獲得することが、果たして本当に可能なのか、という疑問である。1980年代以前は、中国の経済的不均衡の程度は大きくなかった。改革開放以降、経済的不均衡は拡大しはじめ、現在は世界でもっとも格差の大きな国家のひとつとなっている。2000年以降、中国政府はジニ係数[格差指数]の公式発表を停止した。しかしいくつかの統計では2012年のジニ係数は0.73、あるいはそれ以上の数値を示している。これは人口のなかで最も豊かな1%の人間が、全国の富の三分の一を保有していることを意味している(原注6)。

また急速な経済成長と開発によって、自然破壊と環境汚染が中国における深刻な問題になっており、民衆の健康に深刻な影響を及ぼしている。大気を例にとれば、大量の燃料用石炭と工業生産、自動車の排気ガスが増加し、中国の多くの大都市でスモッグが発生している。とくに北方でそれは深刻である。南京大学環境学院が2016年に発表した研究では、中国の市民の死亡原因の三分の一近くがスモッグと関連があるという(原注7)。別な報道では、中国の地下水の60%以上がすでに汚染されているという。原因の大半は工場からの排水と化学品による汚染だという。グリーンピースの指摘では、中国では3.2億人が清潔な水を得ることができていない(原注8)

中国政府がこの発展の方向性を近い将来に変更するという兆候はみられない。一帯一路は、海外投資によって国外の生態系と住民に悪影響を及ぼすだけでなく、中国国内においても、これまでの開発戦略と同様に、エリートの利益と共産党支配の擁護を目標の主眼に置いていることから、庶民と環境への影響が劇的に好転することはないだろう。


原注(英語版とは若干の差異がある:訳注)
[1] One Belt One Road: A role for UK companies in developing China’s new initiative, China-Britain Business Council.
[2] One Belt One Road: China-Britain Business Council and 2015 OBOR action plan http://en.ndrc.gov.cn/newsrelease/201503/t20150330_669367.html.
[3] End of the Road: One Belt, One Road and the Cumulative Economic Marginalization of the Uyghurs, Uyghur Human Rights Project, March 2017.
[4] Ibid p20 and Understanding China’s Eurasian Pivot, Michael Clarke, 10th September 2015, The Diplomat: www.thediplomat.com/2015/09/understanding-chinas-eurasian-pivot/.
[5]《我的西域,你的東土》, 大塊文化,台北,2007年。
[6] 北大報告:中國1%家庭佔有全國三分之一以上財產,人民網
2014年7月26日, http://news.163.com/14/0726/05/A22CNRP90001124J.html
[7] Smog linked to a third of deaths in China, study finds. Alice Yan. 22nd December 2016. South China Morning Post. http://www.scmp.com/news/china/society/article/2056553/smog-linked-third-deaths-china-more-deadly-smoking-study-finds.
[8] World Water Day: 10 facts you ought to know. Ma Tianjie. 22nd March 2013. Greenpeace. http://www.greenpeace.org/eastasia/news/blog/world-water-day-10-facts-you-ought-to-know/blog/44439/.
タグ:一帯一路
posted by attaction at 16:40 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年08月16日

中国の一帯一路がグローバル化2.0なのか? それは自然環境にどのような影響をあたえるのか

attac2017081702.jpg


中国の一帯一路がグローバル化2.0なのか? 
それは自然環境にどのような影響をあたえるのか


ロビン・リー
中文 英文

 中国が2013年末に初めて「一帯一路」発展戦略を提起して以来、より多くの国際的注目を受け、ますます多くの国々が中国とのあいだで関連する連携協定を締結している(原注1)。「グローバリゼーション2.0」と称されるこの提起の趣旨は「シルクロード経済ベルト」(一帯)と「海のシルクロード」(一路)の建設を通じて、アジア、アフリカ、ヨーロッパのあいだで連携、貿易、インフラ建設のネットワークを発展させるというものである。これによって世界経済に大きな影響を及ぼすとともに、中国の国際的な政治と経済の利益をさらに拡大するものになるだろう。多くの政府と企業がこの政策を歓迎しているようにみうけられる。というのも彼ら自身にもチャンスをもたらすと考えられているからだ。彼らは、政治エリートと資本が最大限の利益を獲得できように、それに対応する戦略を策定した。だがこの政策が民衆と我々の生活世界に対して与える影響については、より厳しい分析と判断が必要である。なかでも中国が「一帯一路」を通じて推進するグローバリゼーションが自然環境にとってどのような意味を持つのかは、極めて注目すべき分野の一つである。

「一帯一路」に関する政府文書や声明は、いずれも気候変動対策と環境保護の必要性が指摘されており、この戦略を実施する際にはエコ建築と投資が環境の及ぼす影響に配慮することを約束している。さらに中国は「一帯一路」を通じて、他の途上国の持続可能な発展の実施能力の向上支援も可能になると論じる評論家もいる。いずれにしても、政府の声明において、いかに環境の持続性を確保しながら投資プロジェクトを実施するのかという明確な政策指導は基本的には示されていない。実際には、現有のプロジェクトの実施状況および今後発生する可能性のある影響を詳細に分析すれば、「一帯一路」が自然環境に対して深刻な影響を構成し、自然環境の後退、汚染、自然資源の枯渇をもたらす可能性があり、さらには「一帯一路」の沿線諸国の人口構成に不利な影響を与えることになるかもしれない。

中国国家発展・改革委員会が2015年に公表した「シルクロード経済ベルトと21世紀の海のシルクロードの共同建設の展望と行動を推進する」のなかで、風力エネルギーと太陽光エネルギーなどのクリーンで再生可能なエネルギーへの投資と協力を推進することを約束しているが、同時に「石炭、石油、天然ガス、金属鉱物、その他の従来のエネルギー資源の調査と開発」の協力についても強化する、とされている(原注2)。

石炭投資についていえば、中国はすでに多くの海外投資プロジェクトに参加している。地球環境研究所(Global Environment Institute)の統計によると、2001年から2016年までに、中国は「一帯一路」諸国域内の240の石炭火力発電プロジェクトに参加しており、そのうちインド、インドネシア、モンゴル、ベトナム、トルコの五カ国のプロジェクトへの参加が最も多くなっている(原注3)。パキスタンの石炭火力発電への投資はさらに注目するに値する別のケースである。それは中国−パキスタン経済回廊の一部であり、中国はこの投資に数十億ドルを投じており、そのうちガシム港電力発電所は中国が海外で行う石炭火力発電投資のうちでも最大の投資額である。つまり、世界中が気候災害に直面し、炭素密集型エネルギーの使用をただちに減少させなければならないにもかかわらず、「一帯一路」は海外での化石燃料の使用を引き続き拡大させるのである。それゆえこの戦略は環境の持続可能な発展という約束と相反することになる。

また、中国のクリーンエネルギーと再生可能エネルギーにかんする約束も、いま以上に原子力発電――このエネルギーは環境と人類の安全にとってのリスクとなっている――を使用することを含んだものである。原子力発電を拡大させている中国は、安全基準の低さに批判が集まっている。中国の水力発電投資においても環境リスクをもたらす。大規模ダムは自然環境を破壊し、生物多様性に大きな影響を及ぼす。また巨大ダム建設によってその地を追われる住民への社会的影響については言うに及ばずである。中国は国内外ですでに多くのダムプロジェクトに参加している。2010年までに49カ国の200余りのプロジェクトにかかわっており、その多くが世界でも最大規模の水力発電所である(原注4)。そのうちのいくつかのプロジェクトについては、多くの懸念が示されている。三峡ダムプロジェクトを例にとれば、このプロジェクトでは2300万人の住民が移転し、環境や住民の生活用水にも悪影響を与えた。国外では、カンボジアのメコン流域の大型ダムプロジェクトにおいても、人類と自然環境にとって脅威を与えており、十分な環境評価が行われることなく、プロジェクトが開始された(原注5)。

新シルクロード経済帯と海のシルクロードが通過する地域の多くは、自然環境が脆弱であり、資源も非常に希少であることから、気候変動と人類の活動にとってもさらに悪化が懸念される。一部の地域では住民の移転が問題になっているが、新しいプロジェクトによって沿線の多くの地区に人口が集中することで、さらなる自然環境の破壊が懸念されている。このような脆弱性は、一帯一路戦略がもたらす懸念の一因となっており、環境の持続可能性にもとづいて「一帯一路」投資を行うのであれば、この種の脆弱性にたいする厳しい分析と評価が必要となろう(原注6)。たとえばタンザニアのバガモヨでは、アフリカ最大の港湾建設の計画があるが、周辺地域では絶滅に瀕するマングローブと地元住民の漁場があり、住民の生計への影響や敏感な環境条件が存在している(原注7)。またロシアでは、環境団体が中国資本によるザバイカエリでの潜在的な影響を指摘している。この投資プロジェクトはアマジャル林−パルプ一体化プロジェクト(原注8)とポクロフカ−ログノフ港湾プロジェクトと関連しており、どちらも黒竜江省の「一帯一路」の重要な構成部分とされている。正確な環境影響評価を欠いたまま、プロジェクトに関連して伐採とダム建設が始まっているが、これは資源の枯渇と現地の豊富な生物多様性を破壊する可能性がある(原注9)。

実際、環境の汚染と破壊の問題は中国資本による海外投資プロジェクトに対する信頼を喪失させているのかもしれない。中国が「世界の工場」となるにつれて、アフリカは自然資源の原産地として中国にとってますます重要になっている。というのも中国国内だけでは石油、天然ガス、鉱物、木材などの資源を十分に提供することができないからである。中国企業はときには現地の腐敗役人と結託し、環境破壊を行い、現地の環境法に違反しているという指摘もなされている。たとえば中国石油化工工業が2005年にガボンで石油埋蔵調査をした際にガボンの国定自然公園と熱帯雨林を広範囲に汚染した事件は、多くの非難を巻き起こした(原注10)。

注目すべきは、中国政府は中国海外企業が海外投資プロジェクトの多くで真剣な環境影響評価を行っておらず不評であることを受けて対策に乗り出したことである。しかし中国商務部と環境保護部が2013年に共同で公表した「対外投資協力における環境保護ガイダンス」は法的強制力がなく、海外経営をおこなう中国企業に対する拘束力に乏しい。これは投資受け入れ国側に環境基準を制定させて(多くの諸国で環境基準は緩い)、企業それぞれに各自の企業の社会的責任(CSR)、もしくはアジア開発銀行などの融資機関(原注11)の基準を順守させることを期待している、ということを意味する(しかしこれらの基準では環境は守れないだろう)。

さらに注目すべきは、「一帯一路」の目標のひとつ、鉄鋼やセメントなど、中国の高汚染産業の過剰生産能力を国外に吸収させるという目標である。しかしこれは国内の過剰生産力をさらに激化させることになるかもしれない。なぜなら海外市場の開拓によって、これらの業界では生産量を削減しなくなるかもしれないからだ。中国の地方政府も、国内の汚染を減少させる代わりに地方政府の収入も減少することになるので、生産を減少させたくないと考えている。中国は国内の過剰生産能力を吸収するために、海外で鳴り物入りの箱物インフラ・プロジェクトへの投資をおこなうことで、さらなる環境リスクを作り出すかもしれない。中国国家発展銀行と中国の商業銀行は、すでに「一帯一路」関連諸国のプロジェクトに対して数十億ドルの融資を行っている。しかしこれらの銀行は資源配分の効率化と過剰投資に関する記録においては不評を重ねている。中国国家発展・改革委員会の研究レポートによると、1997年以来、これらの金融機関の非効率投資の累計は66.9兆人民元に達しており、計画に従って実現した投資プロジェクトは60%に満たないという(原注12)。それゆえ、もしこの状況が進展すれば、「一帯一路」の投資プロジェクトの一部では、投資プロジェクトは不必要あるいは十分に活用されない可能性があり、それは世界の資源とエネルギーを浪費することになるだろう。

中国は過去において海外での環境保護にかんして不名誉な実績を記録してきたが、「一帯一路」においても明確な約束と執行メカニズムを欠いており、加えて投資と発展戦略の一部において本質的に環境に対して有害なものもある。それゆえ「一帯一路」が環境に及ぼす影響に懸念を表明することには十分な理由があるのである。中国は環境保護ではなく経済成長を優先して考慮してきたことから、自らも深刻な環境的後退に直面している。そして今また、途上国を利用して自然資源に対するみずからの需要を満たしはじめつつあるが、実際のところそれは自国の問題と環境コストの一部を他国に移転することに他ならない。このような発展経路を歩んだのは中国が最初ではないが(北米と欧州はこの歩みの長い歴史を持っている)、いかなる国家にあってもこの種の搾取的な方法を継続する理由も口実もない。我々の世界は気候の危機に直面しており、人類のある種の活動はすでに地球環境に破壊的な影響を与えており、それは人類の未来にとっても脅威となっている。われわれは公然たる透明性の努力を通じて、生態系を修復・保護し、未来の世代に居住可能な地球を残さなければならない。これは世界各国の政府と民衆が早急に取り組まなければならないことである。だが「一帯一路」はこの取り組みと相反する戦略なのである。


原注1 2017年5月現在、68の国と国際機関が関連する協定を締結している。

原注2 《願景与行動》http://www.ndrc.gov.cn/gzdt/201503/t20150328_669091.html

原注3 China’s Belt and Road Initiative Still Pushing Coal, Feng Hao, 12th May 2017, https://www.chinadialogue.net/article/show/single/en/9785-China-s-Belt-and-Road-Initiative-still-pushing-coal.

原注4 Hydropower: Environmental Disaster or Climate Saver? China Water Risk, 6th July 2010, http://chinawaterrisk.org/resources/analysis-reviews/hydropower-environmental-disaster-or-climate-saver/.

原注5 China Dams the World: The Environmental and Social Impact of Chinese Dams, Frauke Urban and Johan Nordensvard. 30th January 2014. E-International Relations.

原注6 一部の研究者は、プロジェクト実施前であっても、ベースラインを測定し、モニタリングを行う必要があるとしている。詳細はBuilding a new and sustainable ‘Silk Road Economic Belt’, Li, Qian, Howard and Wu. 2015.
を参照。

原注7 http://thediplomat.com/2015/12/the-port-of-bagamoyo-a-test-for-chinas-new-maritime-silk-road-in-africa/.

原注8 このプロジェクトの中国語資料はこちら。
https://www.banktrack.org/download/summary_chinese_and_english_of_the_dodgy_deal_information/170428_amazar_chineseenglish_summary.pdf。(中国語訳者注)

原注9 Environmentalists warn Shenzhen stock exchange about risks of Amazar “Belt and Road” project in Russia. 12th May 2017, http://www.transrivers.org/2017/1922/

原注10 China’s environmental footprint in Africa, Ian Taylor, February 2007, China Dialogue, https://www.chinadialogue.net/article/show/single/en/741-China-s-environmental-footprint-in-Africa

原注11 《商務部環境保護部関於印発“対外投資合作環境保護指南”的通知》。 2013年2月28日,中華人民共和国商務部。

原注12 ‘One Belt’ infrastructure investments seen as helping to use up some industrial over-capacity, Eric Ng, 2nd November 2015, South China Morning Post. http://www.scmp.com/business/article/1874895/one-belt-infrastructure-investments-seen-helping-use-some-industrial-over

posted by attaction at 00:00 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年04月26日

アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり

898604_067a555e9b8946f28237f1f4c13b9af4~mv2_d_6000_4000_s_4_2.jpg

アジア民衆の訴え:アジア開発銀行(ADB)の免責に異議あり
ASIAN PEOPLES CALL: CHALLENGING ADBS IMMUNITY

原文(英語):https://www.forum-adb.org/registration

2017年4月20日

はじめに

アジア開発銀行(ADB)は1966年の設立以来、この地域から貧困をなくすために貢献する機関であるという幻想を流布してきた。同行は半世紀にわたるアジア太平洋地域における活動の中で、インフラ、研究、技術移転のために2500億ドル以上の融資を行ってきたと言っている。 ADBは恥知らずにも、その加盟国に不当な債務を押し付け続けている - 融資したプロジェクトや政策が破滅的な結果をもたらした場合でもである。ADBの50年にわたる活動は、人々を居住地から追い出し、貧困と栄養不良と空腹に追いやった実績を残してきた。森林、川、海、耕作地など環境のあらゆる面に破壊的な影響を及ぼし、そこを生息地とする多くの動物種や植物種の生存を脅かし、絶滅の危機に追いやってきた。ADBはまた、環境を汚染するエネルギー・プロジェクトに融資することを通じて地球温暖化に寄与したという点でも有罪である。

2017年4月19-20日にフィリピン大学SOLAIR(労働・労働関係学部)に集まった地域コミュニティー、青年組織、学生、市民団体の代表は、以下のことを宣言する。

●ADBは搾取的な開発モデルである – ADB のビジネス・モデルは国家を経済成長の基本的な推進機関とみなす偏狭な開発観である。ADBはこの考え方に基づいて、国別戦略的パートナーシップ戦略(CPS)や改革政策(構造調整計画、政策・金融・統治改革に関する技術支援)を通じて搾取するべき部門や資源を選び出し、民間部門の輸出指向型の利益追求に供してきた。ADBは貸し手の力を悪用して政府に対して慣習法に基づいて管理されている自然資源を取得するよう強制し、政府はADBに依存しているという虚偽の物語を作ってきた。それらはすべて融資を押し付け、民間部門の事業機会を開放することを目的としている。

●ADBは圧政を支持している - ADBは良い統治と民主主義について語っている。しかし独裁的で抑圧的な政権や、不安定な紛争地域 - ミャンマー、サモア、パプアニューギニア、インド北東部、アフガニスタン、パキスタンなどの - への融資を続けている。ADBはそのような融資を通して圧政を支援し、国家機関を利用して資源を強奪し、人権を抑圧し、市民社会やすべての反対意見を圧殺することを助長している。

●ADBは偽りの解決策を提供している – 思い上がったADBは、自らをアジアにおける知識供給者であるとみなしており、この十年間はいわゆるクリーン・エネルギー投資と社会投資(保健、教育、農業)の組み合わせを通じて偽りの解決策を提供してきた。これらの投資はすべて民間資本に社会開発部門を開放するものであり、利用者にとっては料金の値上げ、格差と債務の拡大をもたらすものである。ADBはアジア・インフラ投資銀行(AIIB)との競争に脅威を感じ、国境を越えたインフラ・プロジェクトへのより無謀な融資に突き進んでおり、地球温暖化の真っ只中で環境を汚染する化石燃料への投資を続けている。ADBは人権問題への冷淡な姿勢を維持し、一貫して人権問題を否認しており、どの事業方針やガイドラインにも人権という用語を使用していない。ADBは設立50周年を迎えるが、いまだにアジア全域におけるどのプロジェクトや事業にも、中核的な労働基準を適用することを頑強に拒んでいる。われわれは長年にわたってADBの内部統治メカニズムに批判的に関与し、その中で、ADBがその方針や手続きを遵守しているか否かの最終判断がすべてADB理事会に委ねられていることを現認してきた。つまりADBは自身の行為についての調査官、裁判官、陪審員を兼任しているのであり、外部に向けた、あるいは公的な説明責任に関するいかなる義務も負っていない。ADBの免責は、国際機関としてのADBに奔放な自由を許容しているが、50年にわたって破壊的な事業実績が継続していることを考えれば、この免責に異議を唱えることが決定的に重要である。

われわれはADBの免責が各分野に及ぼしている破壊的な影響を検討した結果、次の結論に達した。

1) ダム建設への融資、住民の追い出し、環境破壊

●ADBのダム建設への融資は、現地の地域社会に多くの災禍をもたらしてきた。バングラデシュ、ネパール、キルギス共和国、カンボジア、ラオスで共通に見られることは、ADBの約束と、地上で起こった現実の差である。ラオス、バングラデシュ、キルギスタンではADBのプロジェクトは環境の破壊をもたらし、住民の生活に影響を及ぼした。

●特に、ラオスのセバンファイ川下流では、水質の劣化のために流域のコミュニティーの住民が皮膚病に罹った。環境破壊の問題だけではなく、コミュニティーの住民への補償が支払われなかったか、遅延したか、あるいは住民の苦境に対応していなかった。ADBによる地域コミュニティーとの協議は行われなかった。これらの地域におけるADBのプロジェクトは、コミュニティの利益を増進する政策を実施するのではなく、環境の悪化、生計の喪失、病気、非自発的移転をもたらした。このことはさらに、人権侵害をもたらしている。

●ラオスの事例にみられるように、影響を受けた人々は、政治的および社会的な状況のために、説明責任を求める手段にアクセスできなかった。バングラデシュとカンボジアでは苦情申し立てが行われたが、ADBの苦情処理メカニズムが迅速でないため、いまだに問題への対処は行われていない。経済成長が環境や人々の生命、生活に優先すると考えられていることは明らかだった。

2)不平等、負債、民間部門への富の移転

●ADBが融資したプロジェクトは社会・環境への負の影響に責任を負っている一方で、民間部門債務の救済や人権侵害にも責任を負っている。それは公的債務の増加、プロジェクトの遅延、目標の未達成、企業の不当なやり方からの当事者の保護の欠落、環境および健康の保全の欠落をもたらす。退去を強制された家族の移転が生活条件の回復をもたらすことはなかった。それは開発の恩恵よりも大きな被害をもたらした果たされない約束を物語っている。

●債務監査を通じてADBの免責に異議を申し立てるべきである。不当な債務を宣言する際の原則は、現在では国際的な原則とみなされている。したがって、われわれは債務返済の停止を要求し、最終的にはすべての不当な債務の帳消しを要求する。

3)気候変動と、設立50年にあたってのADBの脱炭素化

●ADBが継続的に石炭部門を支援していることは、アジアの人々を気候変動や健康および環境への危害に対してますます脆弱な立場に追いやっている。それは人々を居住地から追い出し、気候に起因する移民/気候難民になることを強制する。これは人権 - 健康的で清浄な環境への権利を含む – への重大な違反である。

●したがって、われわれはADBに対して、石炭部門への融資を中止し、アジアの脱炭素化を開始することを要求する。われわれはまた、ADBが地域社会に根ざした持続可能なエネルギーのためのプロジェクトを優先することを要求する。さらに、ADBが気候変動および気候に起因する移民/難民の対策に貢献することに全責任を負うことを求める。

4)透明性の欠如、抑圧、市民社会団体のためのスペースの縮小

●ADBは融資条件(コンディショナリティー)を課すことによって免責と不処罰の機構を拡大してきた。融資条件には民間部門との利益分配を可能にするための法律改正が含まれる。ADBは自らの政策や、国内法・政策の遵守すら保証していない。われわれはすべての政府が、企業に便益を図り、民間部門の利益に叶うために法律を改定する権限を行使するのをやめるよう求める

●ADBは人権に関わる法律や原則に違反するプロジェクトを支援するべきではない。ADBは政府と結託して軍事化と腐敗を伴うプロジェクトを推進するべきではない。ADBはそのような体制を容認、支持、支援するのではなく、抑圧的な体制による人権侵害や強制的行方不明などの重要な問題について発言するべきである。

●ADBの免責は不処罰につながり、プロジェクト開発者や国家が人々の権利を無視すること、また、企業が国内法に違反して環境を破壊することを許容することになる。ADBはそのような違反に無関係を装い、免責の背後に隠れることはできない。

5) ADBによる労働の搾取

●われわれはADBがプロジェクトの全期間を通じて労働基準違反を許容しているために民間企業が労働者の権利を尊重していないことを目撃してきた。これは特にフィリピンの例に見られる。そこでは地区の水道管理機関が、当該地区の職員や組合労働者や住民との協議なしに民営化または閉鎖された。そのため、われわれはADBが公共サービスを公共部門に戻し、公共財や公共施設の提供において公共機関間、または公共機関・住民間のパートナーシップのための、より革新的な措置を導入するよう要求する。

●ADBはいまだに中核的労働基準を導入しておらず、それが基本的な権利侵害につながっている。ADBの免責のために、これらの違反行為を現地の裁判制度の下で告発できない。したがってわれわれはADBに対して、すべての事業においてILOの中核的労働基準を尊重すること、また、労働権の侵害に対する告発から逃れるために免責を利用するのをやめることを要求する。

6) 社会的包摂と、脆弱な立場のグループに対するADBの影響

●ADBの事業には脆弱な立場のコミュニティの真の参画がない。ADBは協議に女性、障害者、先住民族などの脆弱な立場の人々を含めるための真剣な努力を払っていない。特に、障害者について、ADBはエンパワメントとアクセス可能性を強化するメカニズムをほとんど導入していない。

●移住を伴うプロジェクトのために、女性は一層貧困に陥りやすい状況にある。先住民族も、特に先祖伝来の土地において福祉の向上よりも権利の侵害を経験している。特に懸念されるのは、地域コミュニティーとの協議が強制(軍事化)を伴っているケースがあることである。いくつかの事例においては市民社会団体に対して共産主義者、テロリスト、過激派という決めつけが行われ、批判的主張をターゲットとすることで民主主義的スペースを縮小させている。

●したがって、われわれはこの問題をADBの「2030年までの道筋」戦略の検討の中で取り上げ、全範囲にわたる人権を追求することと、対話のための民主主義的スペースを広げることにより強い強調を置くことを要求する。

アジア民衆はADBの免責に異議を唱えることを呼びかける

われわれはまた、これまで述べてきた闘争および証拠は、ADBがアジアの人々に対する責任を全く果たしておらず、免責を主張し続ける根拠がないことを証明していると宣言する。今やアジアのあらゆる地域でADBの偽りの免責の主張に異議を唱える時である。ADBは借り入れ国およびその国民の開発パートナーとしての信頼を裏切っており、自らのすべての行動と影響に対して完全な責任を負うべきである。

したがって、われわれアジア民衆はわれわれの政府と国民の代表に対して、ADBの免責を剥奪し、ADBにわれわれの尊厳、権利、主権、そしてマザーアース(母なる大地)に対して行ってきたすべての行為の責任を負わせることを要求する。

posted by attaction at 10:19 | 貿易、債務、貧困 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする